久々の悲劇に茫然としている…/原ゆみこのマドリッド

2022.10.29 01:30 Sat
©Atlético de Madrid
「どこよりマズい状況じゃない」そんな風に私が嘆いていたのは木曜日、未だに昨晩の試合のショックから抜け切れていない中、グループリーグ5節で敗退が決まった3チームを見比べていた時のことでした。いやあ、大体がして、CL決勝トーナメントにスペイン勢が1チームしかないなんてこと、私も初めての経験なんですけどね。まずは火曜の早い時間の試合でコペンハーゲンに3-0と快勝したセビージャで、サンチェス・ピスファンのファンを喜ばせたのも束の間、夜9時からの対戦で、ドルトムントとマンチェスター・シティがスコアレスドローに終わったため、最終節を待たずに3位でELに回ることに。

サンパオリ監督のチームには最多優勝記録を持つ大会で前人未踏のSeptimo(セプティモ/7回目の優勝のこと)達成の新たな目標が生まれたんですが、水曜はその逆で、早い時間の試合でインテルがビクトリア・プルゼニに4-0と大勝したため、バルサは午後9時からのバイエルン戦をすでに敗退決定状態でキックオフ。その試合も0-3と完敗したものの、3位も確定済みでしたから、チャビ監督も2年連続でELに転戦することはわかっていたかと。そちらでは4節に早くもグループ突破を決めているベティスとレアル・ソシエダが待っているんですが、年明けのELにスペイン勢が5チームになるか、4チームになるのかは、まだ不明なんですよ。

その原因はアトレティコで、最悪な形でCL敗退が決定しただけでなく、最終節まで3位の座をレバークーゼンと争わないといけないからで、いえ、そのELだって、CL3位組は16強対決に進むためにはELのグループ2位突破チーム相手のプレーオフを勝ち抜けないといけないんですけどね。要は木曜にルドゴレツに勝ち、1位突破が確定したベティス以外、バルサもセビージャもレアル・ソシエダも先行きはわからないんですが、5節前には自力突破可能な唯一のCLチームだったアトレティコだけが、来週のポルト遠征にEL行きの切符が懸かる結末になるなんて、一体、誰が想像できたでしょう。
まあ、その辺はまた後でお話しするとして、先にCLにただ1チーム、生き残っているスペイン勢、レアル・マドリーが火曜のライプツィヒ戦でどうだったか、お伝えしていくことにすると。こちらはすでに4節でグループ突破が決まっていて、1位になるにはあと勝ち点1、つまりドローで良かったんですけどね。それが油断を招いたか、シャフタールと2位の座を争っている相手の真剣度が上だったか、前半13分にはCKから、アンドレ・シウバに撃たれたヘッドはGKクルトワが弾いたものの、続いたグバルディオルのヘッドは防げず。

早々と先制点を奪われてしまっただけでなく、18分にもCKから、今度はヌクンクに決められて、2点リードを許してしまったとなれば、以前在籍した、どこぞのチームで何度も同じ経験をしているクルトワが、「Salimos dormidos/サリモス・ドルミードス(ウチは眠ったままピッチに出てしまった)。監督にもプレーの強度やアグレッシブさがないとツケを払うことになるって、警告されていたのに」と後で怒りのコメントをしていたのもムリはない?それでも44分には先発に抜擢されたアセンシオが上げたクロスをビニシウスが頭でゴールにして、1点差でハーフタイムを迎えることになったんですが…。
問題はこの日のマドリーにはベンゼマを筆頭にモドリッチ、バルベルデら、主力3人の負傷欠場に加え、マリアーノとセバージョスもおらず。よって、いつものように後半にチームをリフレッシュしたくともナチョ、ルーカス・バスケスをアラバ、カルバハルに代えたのはともかく、31分にクロースをアザールにすると、もうベンチにはトップチームのアタッカーが1人もいない状態になってしまったことで、こうなると、36分にサイドを独走したシマカンが、ゴール前のベルナーにラストパス。とうとう、ライプツィヒに3点目を挙げられてしまったのは悔やんでも悔やみきれない?

ええ、それこそまた、クルトワが「敵のSBが走って来たプレーではエリア内に留まっているんじゃなくて、誰かが止めに出ないといけなかった」と味方の守備陣を批判することになったんですが、何せ、ロスタイムには根性のremotanda(レモンターダ/逆転劇)体質のロドリゴがヌクンクにエリア内で倒されてPKをゲット。自身でそのPKも決め、最後は3-2というスコアで試合は終わりましたからね。最後の失点がなれければ、グループ1位突破というマドリーの目的も達成できていたはずですし、開幕から17試合目、今季初となる黒星も喫することはなかったかと。

いえ、「No he visto falta de actitud o intensidad/ノー・エ・ビストー・ファルタ・デ・アクティトゥッド・オ・インテンシダッド(プレーに対する態度や強度不足には見えなかった)」というアンチェロッティ監督は、クルトワのコメントも「Cada uno tiene su opinion/カーダ・ウノ・ティエネ・ス・オピニオン(皆それぞれ、自分の意見がある)」と会見ではスルーしていたんですけどね。おかげで来週水曜、すでに4位敗退が決まったセルティックをサンティアゴ・ベルナベウに迎える最終節では、勝ち点1差の2位となったライプツィヒに抜かされないよう、相手がシャフタール戦で何をするのか伺いながら、必要によっては勝利が要求されるかもしれないんですが、まあその頃にはベンゼマ、モドリッチ、ベルベルデの3人は戻っていそうな。

シャフタールもライプツィヒに勝てば、逆転で2位突破とあって、そうそう、簡単にはいかないでしょうしね。どちらにしろ、決勝トーナメントには絶対行けるんですから、マドリーも今は日曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からのジローナ戦だけを考えていればいいのでは?実際、アンチェロッティ監督としてもW杯のparon(パロン/停止期間)前のリーガ3試合では、2位バルサとの勝ち点3差をできるだけ広げられれば、満足といったところでしょうか。

え、それでシビタス・メトロポリターノでの悲劇とはどういう試合だったのかって?いやあ、私も水曜は落ち着かず、早めにスタジアムに行ったところ、さすがに決勝トーナメント程ではありませんが、同じような気持だったファンも多かったんでしょうね。チームバスが到着する入口にはかなりの人数が集まっていましたが、先にプレスルームに行ってみたところ、早い時間帯でキックオフとなったクラブ・ブルージュvsポルト戦がTVで放映中。丁度、後半5分に1点リードされていたブルージュがPKをもらい、バナケンがGKジオゴ・コスタに弾かれ、違反があったせいでのやり直しでもバ・ノア・ラングが弾かれるという失態に、それこそどうして、アトレティコはこんなチームに1勝もできなかったんだという怒りが沸き上がってきたのは私だけ?

前節、メトロポリターノでのスコアレスドローでクラブ史上初のグループ突破を決めていたブルージュはお隣さんより、もうやり遂げた感が強かったか、そのまま0-4で大敗したんですが、2位のポルトと勝ち点差が5になろうが、アトレティコのマストは変わらず。その日のレバークーゼン戦、最終節のポルト戦に連勝する以外、道はなかったため、スタンド全面にモザイクを作って、チームをピッチに迎えたスタンドもただただ、応援していたんですが…何で、前半9分から、失点するんですかねえ。

その時はグリーズマンが自陣エリア近くの右サイドでアンドリッヒにボールを奪われ、フロジェクへ繋げると、ディアビがシュートを決めたんですが、大丈夫。22分にはアトレティコもコレアとグリーズマンがカラスコへボールを送り、うーん、よくよく考えると、試合前日の記者会見に登場し、折しも今季の不調ぶりの原因ばかり尋ねられていた彼がライン前から放ったシュートが同点ゴールに。これが当人の自信となって、あの悲劇を招くことになった?

一旦はスコアをイーブンに戻したアトレティコでしたが、今度は28分。コレアが自陣エリア前でアミリにボールを奪われ、ハドソン=オドリに2点目を決められている日にはもう、どうしていいのやら。いえ、FWまで下がって、守備に協力するのはアトレティコの美点だとは思うんですよ。ただ、それが失点に繋がるミスを引き起こすのではまさに本末転倒。もうこうなると、シメオネ監督も後半頭から、コレアと、「Entendía que con Mario podíamos tener un pase de salida más rápido/エンテンディア・ケ・コン・マリオ・ポディアモス・テネール・ウン・パセ・デ・サリーダ・マス・ラピドー(マリオなら、もっと速い攻撃のパスを出すことができると思った)」(シメオネ監督)という理由でサビッチではなく、いきなり先発に入ったエルモーソをサウールとデ・パウルに代えて、反撃を試みるしかありません。

すると早くも5分には効果が現れて、カラスコがエリア内から折り返したパスをデ・パウルが撃ち込み、アトレティコは再び同点としたんですが、モラタをクーニャに代えて、総攻撃態勢に入りながら、なかなか勝ち越しゴールは奪えず。逆にレバークーゼンのカウンター攻撃を受け、2度程、GKオブラクが1対1のシュートをparadon(パラドン・スーパーセーブ)で防いでいたりしたんですが、ここまで点が必要な状況でジョアン・フェリックスの投入が42分まで遅れたのは何故?それもヒメネスと交代したため、チームには本職CBがいなくなり、ビッツェルとコンドグビアで凌ぐ破目になったのも何ですが、いよいよ、ロスタイム5分も無為に終わろうかという時…。

もうビックリですよ。だってえ、最後のCKがクリアされ、終了の笛が鳴って、場内スピーカーからは音楽が。ところが、アトレティコの選手たちが猛抗議したのが良かったのか、そこからVAR(ビデオ審判)注進が届き、モニターを見た主審がインカピエの腕にボールが当たっていたことを発見。これには、記者会見ではドイツのメディアからの質問が1つもなかったシャビ・アロンソ監督も「リーガと違って、CLでは普通、ああいう疑わしいハンドはペナルティにしなかった。El Var se está usando demasiado/エル・バル・セ・エスタ・ウサンドー・デマシアドー(VARの使い過ぎだ)」と文句を言っていたんですけどね。

ところがどっこい、このPKが命綱になるはずと希望を再燃させたファンには尚更、辛い結末が待っていようとは!うーん、後でシメオネ監督は「Griezmann estaba muy cansado/グリースマン・エスタバ・ムイ・カンサードー(グリーズマンはとても疲れていた)。審判がモニターに向かった時から、カラスコがボールを掴んでいて、誰かがそういう決意を見せる時、チームメートはPKを託すもの」と、キッカーが彼になった事情を説明していたんですけどね。でもねえ、グリーズマンは3節のブルージュ戦で失敗していたため、当人も遠慮したんでしょうが、先発出場だったのはカラスコも同じ。おまけにその場では全然、疲れていないジョアン・フェリックスがキッカーをやらせてくれと頼んでいたんですよ。

それには耳を貸さず、そのままカラスコがPKを蹴ったんですが、GKフラデツキーに弾かれてしまい、戻って来たボールをサウールがヘッドしたところ、バーを直撃。更にレイニウドがシュートするも何と、カラスコの足に当たって、枠を外れてしまうとは、さすがアトレティコです。ここまで、とことん運が悪いとはもう、私がカラスコだったら、一生、立ち直れない気がしますが、やっぱりファンは最悪の結末にも慣れているんですかね。2-2の引分けでCL敗退が決まった選手たちが、負傷中でスタンド観戦していたコケも一緒になって、応援団に感謝している時も皆、温かく励ましていましたが、それをピッチの中央に佇んで、ずっと眺めていたシメオネ監督が今度こそ、サジを投げるんじゃないかと疑ったのは私だけではない?

まあ、本人は「Soy muy cabeza dura/ソイ・ムイ・カベッサ・ドゥラ(自分はとても頭が固い)。クラブに欠けているCLタイトルを獲得するため、ここにいられる限り、追い求めることを止めない」と言っていましたから、当面、その心配はなさそうですけどね。とにかくこのCL敗退が、「Es un fracaso/エス・ウン・フラカソ(これはしくじりだ)。ウチは突破できるグループにいたのだから」(オブラク)というは事実で、同時に見込んでいたUEFA報酬などの収入もなくなるため、冬の移籍市場で選手を売却するなど、この先、何があるかわからないのは辛いところ。

少してもダメージを軽減するためにも、レバークーゼン戦のPK失敗をブルージュからの帰りの飛行機の中で見て、大喜びしていたポルトに来週火曜の試合で勝って、せめてEL出場権だけは確保してほしいものですが、果たしてどうなることやら。とりあえず、今週末は土曜の午後4時15分(日本時間午後11時15分)から、アウェイでのカディス戦をこなさないといけないアトレティコですが、コケ、レマル、マルコス・ジョレンテの復帰もまだみたいですし、とにかく選手たちがショックから立ち直ってくれていることを祈っています。

そして最後にマドリッドの弟分の予定も告げておくと、土曜にはラージョがやはりCL敗退組のセビージャと対戦。トレホが累積警告、カディス戦でレッド退場したエヌケカは2試合出場停止、そしてハムストを負傷しているファルカオの近況はわからずといった具合で、イラオラ監督もスタメン選びに苦労しているようですが、ミッドウィークがフリーとなり、相手より体力的に勝るのを利用しないに越したことはない?一方、今週は月曜のセルタ戦でも土壇場に追いつかれ、3試合連続ドローをとなっているヘタフェはまた月曜にエルチェとのアウェイゲーム。足首のケガで休んでいたアランバリの手術が決まり、せっかく楽しみにしていたW杯ウルグアイ代表に参加できず、来年まで復帰できないという、悲しい知らせがあったものの、今回は最下位との対戦となるだけに絶対、勝ち点3を獲って、帰って来てもらいたいものです。

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly