リーガはともかく、もうCLに待ったはない…/原ゆみこのマドリッド

2022.10.25 20:00 Tue
「ホントに休む間もないのね」そんな風に私が同情していたのは月曜日、お昼のニュースでもうレアル・マドリーがライプツィヒのホテルに着く映像を見た時のことでした。いやあ、9月の各国代表戦が終わって以来、週2試合で回転するのももう4週目ともなると、見ている方も結構、疲れてきて、それが実際にプレーする選手たちとなると、相当なものだと思うんですけどね。実際、火曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのCL5節、ライプツィヒ戦の遠征メンバーも主力が3人欠けており、ベンゼマ、モドリッチは筋肉痛、バルベルデはセビージャ戦で受けた打撲が原因なんですが、これも過密日程の弊害と言えるかと。
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といっても、そのせいでアンチェロッティ監督が困っているなんてことはまったくなく、ええ、彼らは前節のシャフタール戦で分けて、すでにグループ突破を決定済み。もちろん、あと勝ち点1を稼いで、1位通過した方が決勝トーナメント16強対決で他グループ2位突破の手頃なチームと顔を合わせることになるため、そっちの方がいいのは確かですが、CL敗退の崖っぷちにいるスペイン勢残り3チームと比べたら、天と地の差ですからねえ。ただ、先週末のブンデスリーグの試合でようやくダニ・オルモも復帰したライプツィヒは3位のシャフタールと勝ち点差1の2位。グループ突破に向けて、ここが踏ん張りどころと全力でかかってくるはずですし、マドリーとしては、スペイン語が得意なシャフタールのヨビチェビッチ監督から後で文句を言われないよう、ローテーションも程々にしておかないといけない?幸い今季はベンゼマ不在時のゴール不足も克服できたマドリーなので、とりあえず、焦点は今季開幕から、公式戦16試合無敗を続ける彼らが記録をどこまで伸ばせるのかといったところでしょうか。
まあ、そんなことはともかく、今は先週末のリーガ戦を振り返っていくことにすると。土曜はエスタディオ・バジェカスとサンティアゴ・ベルナベウの梯子をした私だったんですが、このところ、マドリッドは雨模様の天気が多かったにも関わらず、午後2時のラージョvsカディス戦はお日様が出て、いい感じの陽気に。スタジアムに着いてから、ミッドウィークの兄弟分ダービー、シビタス・メトロポリターノで終盤にPKを決め、ラージョに勝ち点1をもたらしたファルカオがベンチにも入っていないのに気づいた時はドキッとしたものの、この日はまったく不足なかったんです!

ええ、前半8分にコメサニャのダブルチャンスで先制点が決まらなかった後、しばらく待たされたんですが、ようやく42分には転機が。最初は主審にスルーされたイサにアルバロ・ガルシアがエリア内で足を踏まれて倒されたプレーがVAR(ビデオ審判)注進でモニター確認となり、ペナルティの判定が出たんですよ。この日は手の指の骨折でアトレティコ戦をお休みしたキャプテンのトレホも先発していたんですが、その前の弟分ダービー、ヘタフェ戦でPKをGKダビド・ソリアに止められていたせいか、イシにキッカーを代わって大正解。
見事に彼がPKを決めて先制したラージョは、うーん、同時にカディスはイサがレッドカードで退場になっていたんですが、ハーフタイムまであまり時間がなかったせいでしょうね。「相手は右サイドのMF、ソブリーノを右SBにしてプレーしていた。Han dejado muchos huecos a su espalda y sabíamos que podíamos aprovecharlo/アン・デハードー・ムーチョス・ウエコス・ア・ス・エスパルダ・イ・サビアモス・ケ・ポディアモス・アプロベチャールロ(背後に大きな沢山、穴を残して、ウチはそれを利用できることを知っていたよ)」というアルバロ・ガルシアがロスタイムに追加点を奪ってくれたとなれば、バジェカスのファンも大喜びですって。

そして「彼らはいい方のバージョンだったが、ウチはそれには程遠かった」とセルヒオ監督も後で言っていたように、後半もカディスは迷走を続け、16分にはアルカラスが2枚目のイエローカードを受けて、とうとう9人に。おまけにその退場を引き起こしたファールでもらったFKをルジューヌに直接決められるわ、34分にはイシからスルーパスをもらったカメージョが今季自身2点目を挙げるわと、差は4点まで広がったんですが、こうなると、ゴールライン上でカテナがクリアしたボールがバリウの顔に当たり、オウンゴールで敵に1点を献上したことぐらい、笑い話で済ませられるかと。

いえ、だからって、残り3分に途中出場したエヌテカがファリを頭突いて、一発レッドを喰らっていいという訳ではありませんけどね。それでもそのすぐ後、CKをカメージョがヘッドで落とし、再びCBのルジューヌが5点目を挙げると、とうとうバックスタンドの一角に固まって応援していたカディスファンまで一緒になって、場内全員がゴールを祝うという不思議な光景が起きることに。まあチームは降格圏19位に沈んでいますし、こんなgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を見せつけられた日にはもう、ヤケッパチにもなってしまいますよね。

最後は5-1という、滅多にない大勝となったんですが、残念ながら、彼らの順位は10位から動かず。ただ、降格圏との差が勝ち点6に広がったため、「今日勝てずに次のセビージャ戦、マドリー戦にも負けたら、降格圏に落ちる可能性もあった」というイラオラ監督もホッとできたようですけどね。昨季のようにシーズン前半は白星街道を歩みながら、後半なかなか勝てずに苦しんだ経験からか、今季の目標も1部残留と揺るぎなかったんですが、心配なのはアトレティコ戦フル出場のせいで、筋肉痛かと思われたファルカオに、「puede tener alguna rotura en los isquios/プエデ・テネール・アルグーナ・ロトゥーラ・エン・ロス・イスキオス(ハムストリングに肉離れがあるかもしれない)」(イラオラ監督)こと。

この日こそ、彼のゴールは必要なかったとはいえ、現在、イシと並んでチーム最多の3得点のCBルジェーヌにいつもいつも期待する訳にもいきませんしね。土曜のセビージャ戦までにとは言わずとも、ファルカオにはなるたけ早く戻って来てもらいたいかと。あ、申し訳ないですが、カディスが次節、「El partido ante el Atlético nos tiene que despertar sí o sí/エル・パルティードー・アンテ・エル・アトレティコ・ノス・ティエネ・ケ・デスペルタール・シー・オ・シー(アトレティコとの試合では絶対に目を覚まさないといけない)」(セルヒオ監督)というのはまだ、ちょっと待ってくれた方が有難いですね。

そして夜にはマドリーvsセビージャ戦を見に行った私だったんですが、一旦、帰宅して休んでいる間に天気が急変。突風が吹いた後、気温がグングン下がったため、今シーズン、初めてウルトラダウンを着る破目になったんですが、せっかくのバロンドール受賞を祝うセレモニーがドシャ降りの雨の中だったのは気の毒だったかと。ええ、fondo sur(フォンド・スール/ゴール裏南側席)の応援団が「Orgullosos de Courtois y Benzema/オルグジョーソス・デ・クルトワ・イ・ベンゼマ(クルトワトベンゼマを誇りに思う)」と書かれた横断幕が掲げ、スタンド全面が金色のモザイクで覆われるという気合の入りようだったんですけどね。

ヤシン賞(最優秀GK)をもらったクルトワは坐骨神経痛が治って、この日から先発に戻ったため、まあいいんですが、トロフィーの渡し役にスーツ姿で現れたカシージャス、バロンドール受賞の先輩として、モドリッチと共にベンゼマへの渡し役となったジダン元監督、そして筋肉痛で急遽、招集外となった当人まで私服がズブ濡れになる破目に。こういうケースがあるからこそ、ベルナベウの上部を開閉式屋根で覆おうと今も改装工事が猛スピードで進んでいるんですが、やっぱりまだ、ピッチに近い席だと濡れてしまうのは変わっていないようでしたっけ。

その雨の降り具合は試合前半のアンチェロッティ監督とサンパオリ監督がすっぽりフードを被って、テクニカルエリアに立っていたことからも想像できるかと思いますが、マドリーは前半5分にはもう先制。ビニシウスのラストパスをゴール前に駆けつけたモドリッチが決めてくれたんですが、その後がパッとしなくてねえ。追加点を取らずにハーフタイムに入ったため、後半はセビージャが勢いづき、9分にはモンテティルのラストパスから、ラメラがシュート。GKクルトワの手をかすめて同点弾となってしまったから、さあ大変!

そこで恒例通り、アンチェロッティ監督はチームにエネルギーを注ぐため、20分にはチュアメニをカマビンガに、32分にもメンディ、カルバハル、モドリッチをリュディガー、ルーカス・バスケス、アセンシオに3人一斉交代したんですが、これがまた当たったんですよ。そう、その2分後には、アセンシオからパスを受けたビニシウスがエリア内でルーカス・バスケスにアシストして、マドリーに勝ち越し点が入ると、36分にもアセンシオがバルベルデにラストパス。最近はまるでラージョのベベのように、ボールを持った途端、スタンドから「Tira!/ティラ(撃て)」という声が飛ぶようになった彼がエリア外から、またしても弾丸シュートのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めてしまうんですから、まったく空恐ろしいったらありません。

そのシュートの破壊力には日々、バルデベバス(バラハス空港の近く)でのセッションで苦しめられているというクルトワも、「Va muy fuerte y si va un poco a un lado es imposible de parar/バ・ムイ・フエルテ・イ・シー・バ・ウン・ポコ・ア・ウン・ラドー・エス・インポシーブレ・デ・パラール(とても強いボールが来るから、ちょっとでも横に飛ぶと阻止不能)」と証言していた程なんですが、いえ、別にあまりに強く蹴り過ぎたせいじゃないんですよ。バルベルデがロスタイム中、脚が痛くて動けなくなってしまったのは。パプ・ゴメスの膝蹴りを太ももに受け、打撲しただけなんですが、3-1で快勝してもこう、試合のたびにケガ人が増えては、アンチェロッティ監督もたまったもんじゃありませんよね。

そして翌日はアトレティコの番だったんですが、実は今週も彼らは木曜にメトロポリターノでスポンサーのヒュンダイが貸与する車の贈呈セレモニーを開催。ここ2年ぐらい、コロナ禍のせいで中断していた行事なんですが、今回はピッチではなく、スタジアムの地下駐車場。しかも選手全員を呼ぶのではなく、チームを代表してシメオネ監督、コケ、オブラク、モラタ、マルコス・ジョレンテ、そして同数の女子チームメンバーだけだったのは少しは昨今の過密日程に配慮した?

大体がして、コケもジョレンテもまだ負傷のリハビリ中で試合に出らませんからね。サン・マメスで頭と肩を打ち、ラージョ戦を控えGKゲルビッチに託したオブラクもその時はベティス戦に出られるのか、微妙だったんですが、幸いベニト・ビジャマリンではスタメンに復帰。前半は20分に相手のルイス・フェルナンデスがケガでビクトル・ルイスに代わった程度で、特筆すべきこともほとんどなく、0-0のままで後半が始まったところ…。

2分、FKからの攻撃をクリアされたボールをレイニウドが敵にパスしてしまったせいで、ベティスがカウンターを発動。ボルハ・イグレシアスがエリアまで持ち込み、最後はルイス・エルナンデスにシュートを決められてしまった時には開いた口が塞がらなかった私ですが、オフサイドでノーゴールにしてくれるとはまさに、VAR様々です。それ以上に衝撃だったのは、アトレティコがかろうじて失点を免れたショックでろくろくパスが繋らない状態に陥っていた9分、グリーズマンの蹴ったCKがゴールになったことで、うーん、最初、TV画面ではサウールの名前が出て、彼がヘッドしたのかと思ったんですけどね。

GKルイ・シウバの脇を通ったボールにはゴールライン上でペッツェッラも当たっていたように見えるんですが、そこはグリーズマンのコミュ力の賜物でしょうか。ええ、「Le he dicho al árbitro que me faltaba un gol olímpico/レ・エ・ディッチョー・アル・アルビトロ・ケ・メ・ファルタバ・ウン・ゴル・オリンピコ(審判に自分はオリンピックゴール/CKからの直接ゴールはまだ入れていない)」と言ったせいか、この先制点のスコアラーとして記録されることになったんですが、彼は25分にも2点目をゲット。今度はコレア、モラタと交代したクーニャと繋ぎ、ルイ・シウバの股間を通るシュートでゴールが入ったんですが、これってもしや、運も実力のうち?

ただその後の彼らはほんといいところがなく、負傷明けで、プレー時間20分限定だったフェキルが30分に入り、39分に直接FKで得点。ベティスに1点差に迫られると、バル(スペインの喫茶店兼バー)で見ているアトレティコファンのおじさんたちが、「Como siempre/コモ・シエンプレ(いつもと同じだ)」、「絶対、追いつかれる。Ya veras/ジャー・ベラス(すぐわかるから)」と次々とネガティブなことを言い出したせいで、私も不安になっていたんですが、ホント、45分にアレックス・モレノのヘッドがゴールバーに嫌われてどんなに助かったことか。

結局、1-2でアトレティコは逃げ切り、「Un equipo que salió a no perder ganó y un equipo que salió a ganar perdió/ウン・エキポ・ケ・サリオ・ア・ノー・ペルデル・ガンオ・イ・ウン・エキポ・ケ・サリオ・ア・ガナール・ペルディオ(負けないようにプレーしたチームが勝って、勝とうとしたチームが負けた)」なんて、ペレグリーニ監督に嫌味をかまされていたんですが、サッカーは勝てば官軍。おかげで「Importa más a actitud que el talent/インポルタ・マス・ア・アクティトッド・ケ・エル・タレント(才能より大事なのは取り組む姿勢だ)」という、シメオネ監督のチームは3位に返り咲けましたし、アウェイで5勝1分けと無敗も維持できましたしね。

惜しむらくはこれがホームゲームでもできていたら、首位のお隣さんに勝ち点差8の高みから、見下ろされるなんてことはなかったはずですが、こればっかりはねえ。今はただただ、水曜午後9時から、メトロポリターノにシャビ・アロンソ監督率いるレバークーゼンを迎えるCL5節に勝ってくれるのを祈るばかりですが、相手はブンデスリーガ15位と2節で戦った時から、状況はあまり改善していないよう。もっともその時でさえ、2-0で負けてしまったアトレティコなので、まったく予断は許さないんですが、果たしてどうなるんでしょうか。


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