CLがない週もヒマにはならない…/原ゆみこのマドリッド

2022.10.22 04:00 Sat
「これじゃ、W杯前に息切れしちゃうかも」そんな風に私が危惧していたのは木曜日、アトレティコのトップチームに健康なメンバーがたった16人しかいないという記事を読んだ時のことでした。いやあ、11月開催のカタール大会の売りは、これまでは選手たちが国内リーグなどで疲弊した後の夏にプレーしていたのに比べ、その時期はまだ体力十分。むしろ、ギアが程よく上がったところで迎えられるため、白熱した試合が見られるということだったんですけどね。
PR
ただ、計算外だったのはそのW杯用の日程を空けるため、リーガもUEFAもシーズン前半の試合をparon(パロン/停止期間)が来る前にできる限り消化しようと調整。とりわけヨーロッパの大会参加のチームは週2試合ペースで7週間も走り続けることになり、今週のようにCLがないと、これ幸いとばかりにミッドウィーク開催リーガが入ってくるんですよ。いえ、アトレティコの場合、ヒメネスやサビッチらは9月の代表戦前、まだそんなに忙しくなかった頃に負傷。よって、過密日程だけが悪い訳ではないんですけどね。ようやくCB不足が解消されたと思いきや、今度はMF不足に陥っているって、もしかしてアトレティコの選手は体が弱い?そう、DF陣ではまだフェリペとレギロンが欠けている上、CL3節のクラブ・ブルージュ戦で全治5週間のケガをしたマルコス・ジョレンテを始め、最近はアスレティック戦でコケ、火曜のラージョ戦ではレマルがそれぞれ全治3週間の負傷。これは選手にもよりますが、スペイン代表の常連であるジョレンテやコケなど、下手したら、それこそW杯出場の夢もおしゃかになってしまうかもしれないタイミングで、逆にカタールに行かなければ、12月後半までヒマになるって、あまりに極端すぎですって。当面はビッツェル、コンドグビア、サウールの3人で乗り切ることになりますが、ホント、試合があるたび、ケガ人が増えていくのは心臓に悪いですよね。
まあ、そんなことはともかく、平日開催となった10節のマドリッド勢の試合がどうだったか、見ていくことにすると。火曜は弟分のヘタフェが一足早く、午後8時からアスレティック戦だったんですが、1時間後にシビタス・メトロポリターノでアトレティコとラージョの兄弟分ダービーが控えていたため、私もコリセウム・アルフォンソ・ペレスには行けず。先週末の弟分ダービーではエスタディオ・バジェカスで失点回避を最優先、専守防衛体制を敷いていたキケ・サンチェス・フローレス監督のチームですが、この日は前半2分早々から、ウィリアムスのゴールで先制されてしまったせいだったんでしょうね。

おかげで攻撃に積極的にならざるを得なかった彼らは27分、エネス・ウナルが空中戦から送ったボールをアレニャが決めて同点にすると、後半17分にラウール・ガルシアのゴールで再度、リードされても31分にムニルが2-2に持ち込むという根性を披露。残念ながら、木曜にはアルメリアがジローナに勝ったため、順位は残留圏ギリギリの17位に落ちてしまったんですが、この辺りは少ない勝ち点差で多数のチームがひしめいていますからね。中5日と余裕ができる来週月曜の次節、セルタ戦で相手がバジャドリーに4-1と大敗したショックに浸っているのを利用できれば、弟分仲間のラージョと同じ勝ち点に並ぶのも夢じゃないため、それまでしっかり気合を入れて、練習に励んでもらいたいですね。
そして午後9時にはメトロポリターノにいた私だったんですが、この日は乳癌早期発見促進キャンペーンに合わせて、スタジアム外輪がピンク色にライトアップ。そんな中、イラオラ監督が気をきかしてくれたか、今季はほとんどの試合で控えだったアトレティコのレジェンド、2012年のEL優勝、2013年のコパ・デル・レイ優勝と、久々にクラブにタイトルをもたらしてくれたファルカがスタメンとなったんですが、代わりにベンチスタートとなった、レンタル修行2年目のカンテラーノ(アトレティコBの選手)、カメージョにもラインアップのアナウンス時には温かい拍手が沸き起こります。

試合の方も前半20分には、前節のアスレティック戦で決勝ゴールを挙げた後、今更という気はしますが、3年前にバルサに移籍したことについて、「ボク自身の口からファンが聞きたがっているのはわかっているから、この場で迷惑をかけたことを謝るよ。Pero el mayor perdón que quiero pedir es sobre el campo, dando todo por el equipo/ペロ・エル・マジョール・ペルドン・ケ・キエロ。ペディール・エス・ソブレ・エル・カンポ、ダンドー・トードー・ポル・エル・エキポ(でも何より謝罪したいのはピッチの上でだ。チームのために全力を尽くしてね)」と話していたグリーズマンがこの日も有言実行。

右サイドでフラン・ガルシアからボールを奪うと、モラタにラストパスを出し、いえ、サン・マメスでは、「El otro día ni le toco/エル・オトロ・ディア・ニー・レ・トコ(あの日は相手に触れもしなかった)」(モラタ)ジェライへのファールで得点を認めてもらえなかった彼なんですけどね。それでもまた照準は合ってきたようで、ゴールに流し込んで先制点をゲット!でもねえ、その後が続かないんですよ。いえ、40分にはレマルが負傷して、最近、まったく冴えが見えないカラスコに代わったのも影響はあったと思いますが、もっとマズかったのは後半16分、シメオネ監督がビッツェルとモラタを下げ、コレアとクーニャを入れたこと。ええ、差し引き、ピッチにFWが1人増えて、MFが1人減ったせいで、敵の大攻勢を招く破目になったから、さあ大変。

時期を同じくしてラージョはカメージョを投入し、ファルカオと2トップで前線をパワーアップ。メトロポリターノでは先日、昨季は一緒にミランデス(2部)でレンタル修行していたカンテラーノ仲間のリケルメ(今季はジローナ)が恩返し&来季のアトレティコ・トップチーム入りアピールゴールを挙げていたせいもあったんでしょう。「Quiero demostrar, aqui se que me esta viendo todo el mundo/キエロ・デモストラール、アキー・セ・ケ・メ・エスタ・ビエンドー・トードー・エル・ムンド(ここじゃ、皆が見ているのを知っているから、自分の力を示したいんだ)」という当人が23分に放ったシュートなど、ゴール枠をかすめて、ファンをヒヤリとさせていましたしね。

その2分後にもカメージョはエリア内にスルーパスを送り、ファルカオをGKゲルビッチと1対1にしたんですが、この時はエル・ティグレ(虎、ファルカオの愛称)のシュートは弾かれ、最後はサビッチが何とかクリア。いえ、アトレティコの方もクーニャに3度程、チャンスがあったんですけどね。「Si te presentas contra el portero varias veces, tiene que ser gol/シー・テ・プレセンタス・コントラ・エル・ポルテーロ・バリアス・ベセス、ティエネ・ケ・セル・ゴル(何度も敵GKの前に立ったら、ゴールにしないといけない)」と後でシメオネ監督も苦言を呈していたように、追加点が取れないようでは、サッカーの神様だって、味方してくれませんって。

そう、ラージョが蹴ったCKがクリアされたように見えた43分、エリア内で何か揉めているなと思いきや、VAR(ビデオ審判)から、エヌテカのヘッドがヒメネスの腕に当たっているという連絡があったんですよ。モニターで確認した主審がPKを宣告し、47分にファルカオのゴールで同点に追いつかれてしまったとなれば、泣くに泣けないとはまさにこのこと?結局、そのままロスタイムの残り時間も終わり、「1-0の危ないスコアでは、cualquier cosa que pueda pasar, y pasó, te priva de los tres puntos/クアルキエル・コーサ・ケ・プエダ・パサール、イ・パソ、テ・プリバ・デ・ロス・トレス・プントス(どんなことでも起こりうることは起きるし、それが起きて、勝ち点3を取り逃した)」(シメオネ監督)というオチになりましたっけ(最終結果1-1)。

え、試合後、クーニャはピッチでファンに挨拶するチームメートに加わらず、真っすぐロッカールームへのトンネルに姿を消していなかったかって?そうですね、彼の場合は、「la clave ha sido no encajar el segundo para llegar vivos al final/ラ・クラベ・ア・シードー・ノー・エンカハール・エル・セグンド・パラ・ジェガール・ビボス・アル・フィナル(カギになったのは、終盤まで生きて辿り着けるよう、2点目を奪われなかったこと)」(イラオラ監督)のまさに元凶のようなものだったため、当人も自身への怒りが抑えられなかったんでしょうけどね。今回も私が注目してしまったのは、またしても出場機会のなかったジョアン・フェリックス。

いえ、まだ1-0で勝っていた後半31分、デ・パウルをサウールに代えて、交代回数を使い切ったシメオネ監督に何故、一緒にジョアンも入れなかったのかとは誰も記者会見で尋ねていなかったため、その理由はわからないんですけどね。先日のジローナ戦とは違い、試合後のピッチには出て来た彼だったものの、応援団席に挨拶しているチームメートとは離れて、ラージョの選手たちと交流。最後はファルカオと話していたんですが、もしやユニフォームでももらいに行った?

そんなことはともかく、問題なのは今季のアトレティコがホームで躓くことが多いことで、ここまでリーガ5試合で2勝1分2敗。逆にアウェイでは4勝1分と好調なので、日曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)、ベニト・ビジャマリンでのベティス戦はキャプテンのカナレスも出場停止となりますし、安心して見ていられそうですが、何せ、来週水曜にはCL決勝トーナメント進出のため、必勝が義務付けられている残り2試合の第1弾、レバークーゼン戦をメトロポリターノでプレーしないといけませんからね。アスレティック戦で頭と肩を打ったGKオブラクが木曜からはマハダオンダ(マドリッド近郊)での練習に戻り、フェリペ、レギロンもようやく部分的に参加しだしたとはいえ、例のMF3人は当分いませんし、リーガもレアル・ソシエダに抜かれ、また4位に落ちてしまっただけに何とも、先行きが心配ではあります。

そしてラージョの方は今週末、土曜にベティスとスコアレスドローで引き分けたばかりのカディスとエスタディオ・バジェカスで対戦となるんですが、前節、クラシコ(伝統の一戦)で宿敵バルサを余裕の3-1で撃破。堂々たる単独首位に立ったレアル・マドリーが水曜に最下位のエルチェのホームに乗り込んだ試合はどうだったかというと。うーん、結果から言うと、順位上の両端を占めるチーム、勝ち点22という差を考えれば、当然の0-3での勝利だったんですが、VARのせいで、そうそう簡単にはいかなかったんですよ。

ええ、世間の予想を裏切って、メンディをリュディガーに代えた以外、ローテーションをしなかったアンチェロッティ監督のチームは前半5分にはもう、ロドリゴ、ビニシウスと繋いで、ベンゼマがゴールを入れたんですけどね。ビニシウスがオフサイドの位置にいたとして、スコアには挙がらず。それでも11分には、バルベルデがエリア外から弾丸シュートを決め、チームの先制点となる自身、今季6得点目をマークしてくれます。ええ
これには先日、彼が10得点以上しなければ、引退すると言っていたアンチェロッティ監督も「Si marca cuatro más mi carnet no se rompe y sigue intacto/シーマルカ・クアトロ・マス・ミ・カルネ・ノー・セ・ロンペ・イ・シゲ・インタクトー(あと4本ゴールを入れれば、私の監督ライセンスは安泰だ)」とニンマリしていたんですが…。

だってえ、25分にもアラバがベンゼマとのワンツーでエリア内に切り込んでゴールを入れたのに、またしてもオフサイドで認められないんですよ。後半も15分にカルバハルのクロスから、ベンゼマが決めたゴールがオフサイドでノーゴールと、いやあ、エルチェも決して勝負を諦めていませんでしたね。0-1のままでは最後の最後に追いつかれた、どこぞのチームの二の舞もありうると思ったんですが、大丈夫。とうとう30分にはロドリゴからtaconazo(タコナソ/ヒールキック)でアシストを受けたベンゼマがシュートを撃ち込み、2点目を取っている辺り、やっぱりアトレティコとは出来が違います。

おかげでベンゼマもゴールで自身のバロンドール受賞を祝えましたしね。そこまでよく耐えていたエルチェもこれで緊張の糸が切れたか、44分には交代出場したアセンシオにもジャンピングボレーで3点目を奪われていましたが、VARでオフサイドが発覚しなければ、goleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)になりかねませんでしたからね。0-3で終わったのを不幸中の幸いとして、アルミロン新監督ももっと順位の近いチームと当たる試合に勝って、降格圏脱出を目指すしかないかと。

翌木曜にはバルサがビジャレアルに3-0と八つ当たり勝利をしたため、2位との差は勝ち点3から変わらなかったマドリーは今週末、土曜午後9時(日本時間翌午前4時)から、サンティアゴ・ベルナベウでセビージャ戦となるんですが、今回、そろそろと期待されているのはGKクルトワの復帰。いえ、ルニンもエルチェ戦でテテやクルレクのシュートを弾くなど、坐骨神経痛で彼が不在だった6試合、マドリーのゴールをしっかり守ったんですけどね。ベンゼマと一緒に行ったパリでのフランス・フットボールの授賞式でもらったヤシン賞(最優秀GK)のトロフィーもファンに披露したいことでしょうし、今週はずっとバルデベバス(バラハス空港の近く)でチーム練習に参加していたので、準備はもう、整っているのでは?

その一方でミッドウィークにバレンシアと1-1で分けたセビージャは、その試合でニアンズが負傷、キケ・サラが退場して出場停止、レキクもリハビリ中とあって、使えるCBが筋肉痛を患っているマルコンだけらしいんですが、元々、彼らはベルナベウで8勝12分58敗と相性が悪く、2014年以来白星がないそうですからね。どう見てもマドリーの分がいいんですが、こちらは負傷者もレギュラーでないセバージョスとマリアーノだけ。やっぱり強いチームには体も丈夫な選手が揃っているってことでしょうかねえ。

PR

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly