勝者と敗者が授賞式で同席…/原ゆみこのマドリッド

2022.10.18 20:00 Tue
「気分良くパリに行けて良かったわ」そんな風に私が喜んでいたのは月曜日、バルデベバス(バラハス空港の近く)での午前練習を終え、前日には負傷から復帰後初ゴールを挙げたベンゼマと、ようやく坐骨神経痛が治り、その日からセッションに加わったクルトワがプライベートジェットに乗り込む映像をお昼のニュースで見た時のことでした。いやあ、もう随分前から、昨季はリーガとCLのdoblete(ドブレテ/2冠優勝のこと)に大貢献したレアル・マドリーのエースがバロンドールの本命であることはわかっていたんですけどね。

クルトワもヤシン賞(最優秀GK賞)をもらいに行ったんですが、実はサンティアゴ・ベルナベウで悔しい思いをしたばかりのバルサはそれより大人数で移動。ええ、2年連続となる女子バロンドール受賞のアレクシア・プテジャスはともかく、昨季バイエルンとポーランド代表で計57ゴールを挙げたレバンドフスキはミュラー賞(最多得点賞)、18才のガビはコパ杯(21才以下の最優秀選手賞)を受賞し、そしてそのトロフィー授与役として昨季、コパ杯に選ばれたペドリが付きそうことになったんですが、本来なら、彼らだって、クラシコ(伝統の一戦)勝利で前祝いして、参加したかった?
まあ、そんなことはともかく、先週末のリーガがどうだったか、お伝えしていくことにすると。金曜に9節の口火を切ったのは弟分ダービーで、マドリッド第3のチームの座が懸かっているだけに熱い展開を期待して、私もエスタディオ・バジェカスに赴いたんですけどね。蓋を開けてみれば、確かに後半にはダミアンのハンドでゲットしたPKをトレホがGKダビド・ソリアに弾かれてしまったり、この日は早めにピッチに入ったファルカオがヘッドで決めたゴールをオフサイドで認められなかったりと、ホームチームの方が点を取るチャンスが多かったんですが、結局、残念なスコアレスドローで終了。

うーん、折しもラージョは前節にアルメリアに3失点して負けたばかりとあって、イラオラ監督も「Era un partido para no equivocarnos y no regalar contras o jugadas a balón parado/エス・ウン・パルティードー・パラ・ノー・エキボカールノス・イ・ノー・レガラル・コントラス・オ・フガダス・ア・バロン・パラードー(ミスをしない、相手にカウンターやセットプレーのチャンスを与えないようにする試合だった)」と言っていた通り、あまりガンガン行けない感じでしたからね。それ以上に守り倒す姿勢を見せたヘタフェは、直近の試合では兄貴分のレアル・マドリーにCKから、ミリトンのヘッドで決められた1点を返せず、最少得点差で敗戦。

それは仕方ないんですが、キケ・サンチェス・フローレス監督は、昨季は堅固な守備が自慢だったチームが今季になって、8試合で16ゴールと、リーガ3位につける失点の多さを改善することを第1目標にしていたようで、この日のヘタフェは自陣に引いての専守防衛に特化。相手は同格のラージョというのに序盤から、引分けを目指しているような時間稼ぎまでしていたため、金曜の夜を潰して応援に来たファンたちもちょっとガッカリだったんじゃないかと思いますけどね。
ちなみにキケ監督は「ウチがもっと力と自信をつけて、勝ち点も増えれば、cada vez que tiremos la línea más adelante/カーダ・ベス・ケ・ティレモス・ラ・リネア・マス・アデランテ(その度にもっと前で守れるだろう)」と話していたんですが、この引き分けでは勝ち点1増えただけ。まだ降格圏との差も1のままですし、このミッドゥークの火曜にコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えるアスレティックは今季、好発進して、ヨーロッパの大会出場圏にいる上位にいるとなれば、また引きこもる展開になりそうな気配もチラホラと。

え、土曜にサン・マメスでそのアスレティックに0-1と辛勝したのが、兄貴分のアトレティコじゃなかったかって?その通りで、いえ、前半9分にナウエルのロングボールに反応してジェライの先手を取り、GKウナイ・シモンもかわしてモラタが決めたゴールがスコアボードに挙がっていれば、もっと楽だったはずなんですけどね。先週のCLクラブ・ブルージュ戦でも20本以上シュートを撃ちながら、1点も挙げられなった効率最悪の彼らにしては上手すぎる話だと思いきや、はい。VAR(ビデオ審判)の注進を受けた主審がモニター確認に走り、大したことなかったジェライとの接触がモラタのファールとされて、得点を認めてもらえなかったんですよ。

でも大丈夫。というのも後半2分には最近になって、ようやく実力が発揮できるようになってきたナウエルが再びモラタにスルーパス。エリア内奥まで侵入した彼が今度はグリーズマンに折り返し、そのシュートが決まって先制点が入ってくれたから。ただ、アトレティコファンが幸せな時間を過ごせたのは短くて、8分にはベレンゲルに空中戦でぶつかられ、GKオブラクが肩から落ちて負傷。15分程は耐えていたんですが、「No se acordaba de lo que pasó en los últimos minutos/ノー・セ・アコルダバ・デ・ロ・ケ・パソ・エン・ロス・ウルティモス・ミヌートス(最後の数分間は何があったか、思い出せなかった)」とシメオネ監督も後で言っていたように、同時に頭も打っていたため、プレー続行が不可能に。

急遽、控えGKのゲルビッチがピッチに入ったんですが、その頃にはアスレティックもラウール・ガルシアを投入して、大攻勢に出ていましたからね。どうなることかとヒヤヒヤしながら、私も近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)のTV画面を見入っていたんですが、いやあ、ゲルビッチもやってくれますね。ええ、まずラウール・ガルシアのヘッドをparadon(パラドン/スーパーセーブ)すると、イニゴ・マルティネスの一撃も防ぎ、その跳ね返りもレイニウドが体を張って弾いてくれて、一難去ったと思いきや…。

何でレイニウドがハンドを取られないといけないんですか!幸い、この時も主審はモニターを確認に行き、彼が顔面ブロックしていたのを発見。アスレティックにPKを与えずに済みましたが、レイニウドはロスタイムにもベレンゲルのシュートをゴールライン前でクリアするお手柄ぶり。ゲルビッチと彼の尽力あって、何とか逃げ切れたアトレティコだったんですが、え?ブルージュ戦で出番がなく、先週はシメオネ監督との不仲説から、この冬にも河岸を変えたがっているという話に発展していたジョアン・フェリックスはピッチに入ったのかって?

それが37分にコケ、レマルとの交代でビッツェルと一緒に途中出場したんですが、またしても敵との接触プレーで腰を打撲してしまう始末。この試合前には、シメオネ監督も「リーガ優勝したシーズン序盤は良くて、それからケガした。昨季のCL出場が懸かったラスト14試合でもオサスナ戦からプレーし始めて、ゴールやチームプレーで貢献していたが、その後、ケガした」と決して、彼をムゲにしている訳でないことを丁寧に説明していたんですが、今季も9月のparon(パロン/リーガの停止期間)直前、マドリーダービーで負傷しながら、ポルトガル代表に行ってしまいましたからね。

それを考えると、リハビリ後の今、彼の出番が少ないのは納得なんですが、この悪循環、本当にどうにかならないんでしょうか。ただ幸い、今回は大したことがなかったようで、月曜の練習には参加していた彼だったんですが、実はコケが太ももに全治3週間ほどの筋肉系の負傷をしていたことも判明。頭を打ったオブラクも用心のためにジムだけと、火曜午後9時(日本時間翌午前4時)、シビタス・メトロポリターノでのラージョとの兄弟分ダービー前にちょっと不安材料が出てきたんですが、せっかくアスレティックを抜いて、3位に上がれたばかりですしね。

お隣さんとはまた6差に戻ったものの、2位のバルサとは3差の射程圏内とはいえ、同じ勝ち点でベティス、レアル・ソシエダも並んでいるため、ここ2試合、イラオラ監督のチームが白星なしで停滞しているのを利用しない手はない?ちなみにラージョの方ではヘタフェ戦で指の骨を骨折したトレホが欠場となりますが、古巣対決となるファルカオはもちろんのこと、先日のジローナ戦ではカンテラーノ(アトレティコBの選手)仲間、昨季は一緒にミランデス(2部)で修行したリケルメ(今季はジローナにレンタル)に恩返しゴールで先を越されたカメージョもきっと、張り切っているはずです。

そして日曜、いよいよ待望のクラシコが到来したんですが、世界の52カ国に生中継されるため、アジアやアメリカでも見やすい時間帯である午後4時15分にキックオフとなったのは、家に早く帰れて、私にも嬉しい限り。キックオフ前にはfondo sur(フォンド・スール/南側ゴール裏席)に「El estandarte del campeon/エル・エスタンダルテ・デル・カンペオン(チャンピオンのスタンダード)」という横断幕や白のモザイクも現れ、ビッグマッチの雰囲気を盛り上げてくれたんですが、大多数のファンの期待に背かず、マドリーは前半12分には早くも先制してくれます!

ええ、センターでブスケツに押されて仰向けに倒れながらもクロースが正確無比なスルーパスを出し、それを追ったビニシウスが至近距離からシュート。逆に近すぎたのが災いしたか、GKテア・シュテーゲンに弾かれてしまったんですが、それが完璧なアシストとなって、エリア内でフリーだったベンゼマが決めてくれました。いやあ、昨季後半のサンティアゴ・ベルナベウでのクラシコには0-4と大敗したマドリーでしたが、その時はケガで彼がいませんでしたからね。このところ、負傷者多発の影響もあって、崩壊寸前のバルサ守備陣が揃ってビニシウスの方へ行ってしまい、誰1人、ベンゼマを見張っていなかったのにも大いに助けられましたっけ。

そして25分にゴール左前からのシュートをレバンドフスキが外してしまったバルサは35分にも守備ミスをリピート。ええ、今度はカルバハルがセンターから出したパスをエリック・ガルシアが頭でクリアしたところ、そのボールが丁度、エリア前にいたビニシウスへ。そこからチュアメニ、メンディと繋がり、最後はバルベルデの弾丸シュートがネットに突き刺さったとなれば、あとで当人が「ellos dejaban muchos huecos y lo pudimos aprovechar/エジョス・デハバン・ムーチョス・ウエコス・イ・ロ・プディモス・アプロベチャール(彼らは沢山、スペースを空けていて、ウチはそれを利用できた)」とニンマリしていたのもムリはない?

後半6分に決まったベンゼマのゴールは残念ながら、オフサイドで認められなかったんですが、バルサも15分にはラフィーニャ、ブスケツ、バルデをフェラン・トーレス、ガビ、ジョルディ・アルバに代えて、ようやく反撃を開始。実際にそれが実ったのは28分にアンス・ファティが入ってからになったんですけどね。ええ、前回の対戦ではベンゼマ不在のせいで、falso nueve(ファル・ヌエベ/シャドーCF)をやらされて、惨々だったモドリッチが、「Esta vez no inventé nada; cada uno jugó en su sitio/エスタ・ベス・ノー・ンテンテ・ナーダ、カーダ・ウノ・フゴ・エンス・シティオ(今回は何も発明しなかった。それぞれ自分の場所でプレーした)」(アンチェロッティ監督)おかげで、この日はクロースと一緒に中盤で卓越したプレーを披露。

スタンドから大きな拍手を受けながら、カマビンガと交代した後の38分、アンス・ファティがエリア内左からゴール前に出したパスをレバンドフスキがtaconazo(タコナソ/ヒールキック)で後ろに送り、フェラン・トーレスが押し込んでGKルニンを破ってしまったから、さあ大変!1点差に迫られて、事態は風雲急を告げるかに思われたんですが、「si las cosas no salían bien teníamos a Rodrygo y Camavinga/シー・ラス・コーサス・ノー・サリアン・ビエン・テニアモス・ア・ロドリゴ・イ・カマビンガ(上手くいかなければ、ウチにはロドリゴとカマビンガがいる)」(アンチェロッティ監督)とはよく言ったものです。

この日は控えに戻った12人目のレギュラー、ロドリゴがビニシウスに代わってピッチに入ったのは40分だったんですが、ロスタイムにエリック・ガルシアにエリア内で足を踏まれ、いえ、最初、主審は倒れている彼を無視して、プレーを続行。それでも「yo estaba seguro de que era penalti porque hay VAR, así que esperé/ジョ・エスタバ・セグロ・デ・ケ・エラ・ペナルティ・ポルケ・アイ・VAR、アシー・ケ・セウペレ(あれはペナルティだって確信していたよ。VARがあるからね。だから待ったんだ)」というロドリゴの期待を裏切ることなく、モニターを見てPKを宣告してくれたんですよ。

もうこの時にはベンゼマもアセンシオと代わっており、モドリッチもいなかったため、ロドリゴがそのPKを蹴ることに誰からも異論は出ず。当人も落ち着いて3点目を決めることができたんですが、さすがに3-1となってはもうバルサも白旗を揚げざるをえません。こうなるとリードしてから、マドリーがパスを繋いでいる間、「Ole!/オーレ」と掛け声をかけていた観衆がとうとう、「Xavi quédate/チャビ・ケダテ(チャビ監督、残って)」やら、「A la Europa League/ア・ラ・エウロッパ・リーグ(ELへ行ってしまえ)」と永遠の宿敵を揶揄するカンティコを歌いだしたとしても責められませんよね。

ちなみにこの勝利でバルサに勝ち点3をつけて、見事首位奪還したマドリーはこのミッドウィーク、水曜午後9時から、アウェイでのエルチェ戦に挑むんですが、相手はまだ今季未勝利の最下位チーム。それでも3節前に土壇場でラージョに2-1と負けて、フランシスコ監督を解任した後、マジョルカ、バレンシア戦では何とか、引分けに持ち込んでいますからね。2年ぶりに戻って来たアルミロン新監督も今回は任期をまっとうしようと気合を入れているはずし、また先発ローテーションとなりそうなマドリーも過信は禁物ですが…果たして、今や唯一のリーガ無敗となった彼らを止められるチームは存在するんでしょうか。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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