自力で何とかなるだけでもましかも…/原ゆみこのマドリッド

2022.10.14 22:00 Fri
©Atlético de Madrid
「同じ引分けでも天と地の差ね」そんな風に私が溜息をついていたのは木曜日、CL4節のスペイン勢4チームが揃って、ドローで終わったことに気がついた時のことでした。いやあ、その結果を喜べたのはレアル・マドリーだけで、それもグループリーグで3連勝していた賜物なんですけどね。おかげであと2試合を残して、決勝トーナメント進出を決めるという、アンチェロッティ監督の目論見は達成できたんですが、5節のライプツィヒ戦で引分け以上としないと、まだ1位突破には届かず。それでも他3チームに比べれば、まったくお気楽なもんですって。
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だってえ、お隣さんのアトレティコなんて、開幕前にはグループ最弱と言われていたチームと引分けて、そのクラブ・ブルージュが彼らのグループのマドリー役。ええ、3勝1分けで16強行きを決めたんですが、おかげでシメオネ監督のチームは残るレバークーゼン、ポルトとの2試合に連勝しないと、突破できないんですよ。少なくともクラブ史上、初の決勝トーナメント進出を果たしたクラブ・ブルージュがこの先、勝ち点を1つも取れなくとも、自力で決められるという利点はありますが、実はそれですら、羨ましく感じているのはセビージャとバルサだったりする?そう、サンパオリ新監督の下、オリベル・トーレスのゴールで先制しながら、ベリンハムに同点ゴールを奪われ、ドルトムントと1-1の引分けで終わったセビージャは、その2位の相手と勝ち点5差あるため、突破するには自身がコペンハーゲンとマンチェスター・シティに2連勝、かつドルトムントが2連敗しないといけないという厳しい状況に。ただ、こちらは現在、リーガでも降格圏の18位にいるため、W杯のparon(パロン/中断期間)までにチームを立て直して、来年はELに河岸を変え、大会最多優勝記録の7を8に書き換えることを目標にするのもの悪くはないかもしれないんですけどね。
更に最悪なムードが漂っているのはバルサで、水曜のカンプ・ノウではインテルと3-3でドロー。それもデンベレのゴールで先行しながら逆転され、レバンドフスキが2度も同点ゴールを挙げてくれたおかげで、ようやく敗戦を免れたという惨状ではねえ。このグループでは4連勝のバイエルンがすでに1位突破を決定済みで、2位のインテルも次節、サン・シーロに迎える、ここまで勝ち点0のビクトリア・プルゼニに勝てば上がりですから、そうなるとチャビ監督のチームがバイエルン戦で何をしようが、2年連続グループリーグ敗退が決まってしまうって、それはかなり恥ずかしいことかと。

下手すると、来年は木曜にグループリーグ突破が決まったベティスとレアル・ソシエダに加え、ELにスペイン勢大量5チームが集結する可能性もあるんですが、まあ今は嘆いていても仕方ありません。とりあえず、火曜にワルシャワで行われたマドリーの試合から、お話ししていくことにすると。先週のサンティアゴ・ベルナベウでの3節ではロドリゴとビニシウスがゴールを挙げ、2-1でシャフタールに勝利した彼らだったんですが、この日は先発ローテーションを実施したため、後者はベンチスタートとなり、代わりにアザールが5試合ぶりの出場をすることに。
それは直接の原因ではないかもしれませんが、いくら、「Ellos han aprendido mucho de la ida/エジョル・アン・アプレンディードー・ムーチョ・デ・ラ・イダ(彼らは最初の試合で多くを学んでいた)。先週とは違い、スペースが少なくて、プレーするのがずっと難しかった」(クロース)とはいえ、やはり前半はどこか、トロトロしていましたよね。シュートを何本も撃ったにも関わらず、負傷から復帰後、調子が戻らないベンゼマを始め、ハーフタイムまでに誰も先制点を挙げることができません。すると後半開始1分にはサプライズが起きて、いえまあ、ベルナベウでミハイリチェンコのクロスをズブコフにvolea(ボレア/ボレーシュート)で決められ、1点差に迫られた時もそうだったんですけどね。

この日も同じ主役がリピートし、またしてもミハイリチェンコのクロスを今度はズブコフがヘッドでゴールにしてしまったから、ビックリしたの何のって。こうなると、アンチェロッティ監督も出し惜しみをしていられず、12分にはアザール、チャメニに代え、ビニシウス、モドリッチを投入することに。その後も「Hemos jugado y corrido por el pueblo ucraniano/エモス・フガードー・イ・コリードー・ポル・エル・プエブロ・ウクライアーノ(ウチはウクライナ国民のためにプレーして走った)」(ヨビチェビッチ監督)というシャフタールは20分、チームに残った数少ない外国人プレーヤー、ラシーナ・トラオレが一旦はGKルニンに奪われたボールを取り戻し、ゴール右前からシュート。それが枠を外れてしまい、点差を広げる絶好のチャンスをムダにしていたんですが…。

23分にはメンディ、バルベルデ、ロドリゴから、アラバ、カマビンガ、アセンシオへと早くも交代枠を使い切ったマドリーでしたが、30分過ぎにはシャフタールも絶対死守態勢に突入。次々とフレッシュな選手たちをピッチに出してきたため、これはもしや、今季初黒星もあるかもと思えたんですが、そこは根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)体質のチームです。それも、より発現しやすいCLの舞台となれば、いえ、ロスタイム1分のリュディガーのヘッドは惜しくも逸れてしまったんですけどね。5分には再びクロースが上げたクロスに同胞の彼が突っ込み、今度はボールがネットに入ったんですが、クリアに来たGKトゥルビンに両手パンチされた上、頭どうしの衝突となってしまったから、さあ大変!

相手も回復するのに時間がかかり、4分程、治療に要した後、再開して1分、試合は1-1で終了したんですが、スタッフに支えられて、ピッチを後にしたリュディガーが血まみれだったのにはショックを受けたファンも多かったと。幸い、アンチェロッティ監督も「額を切って、沢山血が出たが、大丈夫だ。Sólo que se ha cortado bastante/ソロ・ケ・セ・ア・コルタードー・バスタンテ(長く切り過ぎただけだから)」と言っていた通り、顔の骨は無事で、ただの切り傷だったんですが、20針も縫ったとなればねえ。

それでも顔面プロテクターを付ければ、日曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)からのクラシコ(伝統の一戦、バルサ戦のこと)に出場できるようですが、いや、CBにはシャフタール戦で休養したミリトンもいますし、アラバもナチョもいるんですから、ムリしなくていいですって。もっと心配なのは、木曜からチーム練習に加わるとアンチェロッティ監督に言われていたGKクルトワの姿がまだバルデベバス(バラハス空港の近く)のグラウンドに見られず、坐骨神経痛からの回復が遅れていることの方なんですが、丁度、ここ4試合連続で代理を務めたルニンも母国、ウクライナのファンの前でプレーできたのが励みになったことでしょうしね。

実際、9月25日にあったベルギーのネーションズリーグ最終節、オランダ戦以来、クルトワはプレーしておらず。練習も不十分な彼を、「Hay que pensar en LaLiga, porque la Champions se ha puesto difícil y complicada/アイ・ケ・ペンサール・エン・ラ・リーガ、ポルケ・ラ・チャンピオンズ・セ・ア・プエストー・ディフィシル・イ・コンプリカーダ(CLは難しくなったのだから、リーガのことを考えないと)」(チャビ監督)と、それこそ現在、同じ勝ち点ながら、ゴールアベレージ差で立っている首位の座キープが至上命題となってしまったバルサ、というか、レバンドフスキに立ち向かわせるのも怖いんですが、え?ベンゼマのゴールが入らなくなったマドリーも得点に苦労するんじゃないかって?

まあ、そうですが、クンデは復帰できるとはいえ、アラウホ、クリステンセン、ベジェリンはまだ負傷中。ピケ、エリック・ガルシアらが披露したインテル戦でのザル守備ぶりが続くなら、ビニシウス、ロドリゴ、バルベルデと期待できる選手はまだまだいるため、心配することはないと思いますが…クラシコはほとんど直近の両チームの調子と関係なく、しょっちゅう予想外の展開となるため、サンティアゴ・ベルナベウでの試合でも正直、どちらが優勢とか、言えないんですよね。

そして翌水曜はシビタス・メトロポリターノに向かった私でしたが、アトレティコがまた下手を打つんじゃないかと気が気ではなかったせいでしょうか。実は10月12日のディア・デ・イスパニダッド(コロンブスがアメリカ大陸を発見したとされる日)の祝日に合わせ、その日は2部リーガも開催。早い時間のブタルケではレガネスがマラガにアルナイスのゴールで1-0と勝利すると、これで2連勝として、降格圏から一気に17位まで上昇したのをスタンドでオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)を聴き始めて、初めて知るという情けない有り様だったんですが、朗報だったのでまあ、いいとして。

クラブ・ブルージュとの試合前には、マジョール広場でベルギー人ファンのウルトラグループと警官隊との衝突があったり、行きのメトロの中でも集団で私の聴覚の許容範囲を超える声量で歌っているのに遭遇。さすが2000人以上も大挙して来ると、かなり存在感があると思ったんですが、もちろんアトレティコファンも気合を入れて応援していたんですけどね。どうやら、私が道々、聞いていたGKミニョレのカンティコが何かの予兆になったようで、前半10分までにソワー、ジュグラと1週間前にゴールを決められたFWにシュートを撃たれた時こそ、ヒヤリとしましたが、その後はほぼ、アトレティコが攻撃を独占。そこでゴールの前に立ちはだかったのが当のミニョレだったんですよ!

そう、13分にはグリーズマンの至近距離のシュートを弾いたかと思えば、25分には彼の強烈ヘッドもparadon(パラドン/スーパーセーブ)。リーガ前節ジローナ戦では2発を決めて、ヒーローになったコレアもこの日は的を外してばかりで、22分に入ったサウールのゴールもアシストした彼がオフイドの位置にいて、認められませんでしたしね。そうこうするうち、40分にはCK攻撃を跳ね返されて、カウンターを喰らい、自陣エリアまでブキャナンを追ったナウエルが相手を倒したとして、ペナルティ判定までされてしまったんですが、いやいや。ここはVAR(ビデオ審判)のモニターで、その前にブキャナンがナウエルの足を踏んでいたことを主審が確認し、事なきを得たんですが…。

後半開始すぐのコレアのゴールもオフサイドで認められず、シメオネ監督も15分にはコレア、レマル、コケから、カラスコ、モラタ、デ・パウルへの3人一気替えを行ったんですが、一向にゴールは入らず。28分にはサウールもクーニャに代わり、うーん、この時、自分も入るもののと、コーチングエリアまで戻って来ながら、またアップに戻されたせいもあったんですかね。結局、「中盤でプレーしていたグリーズマンのエネルギーが落ちて、para atacar estaba muy bien pero no para defender/パラ・アタカル・エスタバ・ムイ・ビエン・ペロ・ノー・パラ・デフェンデール(攻める分には良かったが、守るためにはならなかった)」(シメオネ監督)という理由で、アトレティコ5人目の交代出場選手はビッツェルに。

おかげで出番のなくなったジョアンが怒って、ビブスを投げ捨ててベンチに戻ったり、試合後に選手全員がピッチに出て、ファンに感謝する時にもいなかったりと、物議を醸すことになったんですけどね。何せ、すぐ前にいたモラタに撃たれても顔で防ぎ、ゴール脇からのクーニャのシュートも弾いてしまうといったように、この日のミニョレはまさに、「El tema del portero es así, cuando te va, te va todo/エル・テーマ・デル・ポルテーロ・エス・アシー、クアンドー・テ・バ、テ・バ・トードー(GKとはそういうものだ。上手くいく時は全てセーブできる)」(オブラク)という状態。

となると、今季まだ無得点のジョアンが入ったからとて、とても決勝点が生まれるとはシメオネ監督も思えなかったのかもしれませんが、いやあ。3節同様、20本以上シュートを撃ちながら、そのまま、試合はスコアレスドローで終了。アトレティコは残り2節、「Tenemos que ganar, es lo único bueno/テネモス・ケ・ガナール、エス・ロ・ウニコ・ブエノ(勝たなければいけない。それが唯一、いいことだ)」(シメオネ監督)という境遇に陥ったんですが、何せ、「ボクらは2日おきに試合をしなきゃいけない。72時間後にはまたプレーしているんだから、今は休まないと」(ヒメネス)という事情もありますしね。

とりわけ土曜午後9時(日本時間翌午前4時)から、サン・マメスに乗り込むアスレティック戦は丁度、3位の相手。4位の彼らとは勝ち点差1となれば、CL出場圏内で足固めするにも絶対、負けられない試合ですからね。数日前から、PSGとの契約延長を後悔して、この冬には移籍したがっていると噂されているエムバペと呼応するように、ジョアンも1月の市場でアトレティコを出るつもりだなんて、報道も木曜には出ていたとはいえ、サッカーは結果が全て。今週末からはリーガ3連戦となるため、まずはそちらで頑張って、シメオネ監督の鼻を明かしてやるぐらいの心意気を見せてもらいたいものです。

そしてアスレティックもそうですが、ヨーロッパの大会とは無縁なマドリッドの弟分たちはこの週末、「el tercer equipo de Madrid/エル・テルセール・エキポ・デ・マドリッド(マドリッド第3のチーム)」の座を懸けて、金曜にエスタディオ・バジェカスで対決。「近年の歴史を見れば、ヘタフェがマドリッド第3のチーム。1部に18シーズンもいるし」とキケ・サンチェス・フローレス監督は言ってはいたものの、ラージョは20シーズンいますし、更にバジェカスでの1部弟分ダービーでは7試合でヘタフェの勝利は2回だけなんですよ。このところの2連敗でまた、降格圏まで勝ち点1まで近づいてしまった彼らの方が懐は逼迫しているんですが、10位のラージョも勝ち点4とあまり余裕はないため、かなり熱のこもった真剣勝負が見られるんじゃないでしょうか。

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