リーガが済んでもすぐCLが来る…/原ゆみこのマドリッド

2022.10.11 20:00 Tue
「ワルシャワとキーフはかなり離れているのね」そんな風に私が地図で確認してしまったのは月曜日、ちょっと情けない話なんですが、午前中に記者会見のあったシャフタールのヨベチェビッチ監督とGKトゥルビンのコメントを読んでいたところ、その日の朝にはロシアのミサイルが何発もウクライナの首都を始め、複数都市に着弾。大きな被害が出ているのを知った時のことでした。いえ、もちろんシャフタールは先週水曜、サンティアゴ・ベルナベウでのCLグループリーグ3節が終わった後、ワルシャワに戻り、そこから動いていないため、チーム自体に被害はまったくないんですけどね。
PR
月曜の朝、バラハス空港からポーランドに飛んだレアル・マドリーも影響は受けなかったようですが、母国が戦争中だというのに試合をしなければいけないシャフタールの選手たち、そしてGKルニンの気持ちは如何に。各国代表戦明けから坐骨神経痛を患っているクルトワはまだ遠征に参加しておらず、4試合連続で代理を務めることになるウクライナ人GKは、アンチェロッティ監督によると、「Lunin es muy tímido, no es una persona que hable demasiado/ルニン・エス・ムイ・ティニドー、ノー・エス・ウナ・ペルソナ・ケ・アブレ・デマシアドー(ルニンはとても内気で、よく喋るたちではない)」そうですが、こんな国際情勢でサッカーだけは何事もないように続いているって、ホント、世の中って、不条理ですよね。まあ、CLについてはまた後で話すとして、先に先週末のリーガのマドリッド勢の試合をお伝えしていくことにすると、1部の4チームは揃って土曜にキックオフ。トップバッターを務めたのは午後2時から、パワー・ホース・スタジアムでアルメリア戦に挑んだ弟分のラージョだったんですが、これがまた期待を裏切って、降格圏にいた相手に前半だけで3点も取られてしまうとは!ええ、早くも8分には古巣相手ということで張り切ったか、エリア内に突進してきたエンバルバを昨季までエスパニョールでチームメートだったGKディエゴ・ロペスが倒し、もうこれだけでペナルテイ相当のファールだったんですけどね。
おそらく主審も転がったボールを空のゴールに撃ち込んだロベルトネの得点を認める方が簡単だと思ったんでしょう。これでアルメリアに先制点が入ると、次はどちらもCKから、17分にはバビッチのヘッド、39分にも足元に落ちて来たボールを蹴り込んだエル・ビラルにゴールが決められているようではたまったもんじゃありません。後半からファルカオを投入してもなかなか、ラージョの反撃は実らず、ようやくカテナのゴールで1点を返せたのは36分のこと。終盤にはエンバルバが退場したものの、結局、3-1の完敗で終わってしまいましたっけ。

おかげでその頃にはシビタス・メトロポリターノに向かっていた私もちょっと憂鬱になっていたんですが、聞けば、前節、後半ロスタイムのウナイ・ロペスのゴールで劇的な勝利を挙げたエルチェ戦でGKディミトリエフスキがボジェに先制点を決められるミスをしたため、イラオラ監督はディエゴ・ロペスを起用することにしたのだとか。それがデビュー戦であんなベテランらしからぬミスをされては、金曜の弟分ダービーでの先発GK選択がますます難しくなる?ラージョにスペインU21代表に招集されている若いモロもいるため、ちょっと気になるところです。
そして午後4時15分から、アトレティコがジローナを迎える一戦が始まったんですが、この日もコケ祭りは続行。いやあ、木曜にはクラブ歴代最多出場となった記念イベントも開催してもらった当人なんですが、まさか入場時に両チームの選手たちが花道を作って迎えてくれるって、Pasillo de campeones(パシージョ・デ・カンペオーネス/チャンピオンの花道)以外、そんな光景、見たことありませんって。ただ、良かったのはキックオフ後すぐ、前半5分にはアトレティコが先制点を入れて、ファンのお祝い気分に水を差さなかったことですが、この時の主役はコレア。

ええ、レイニウドがエリア内右奥までボールを運び、グリーズマンに折り返すと、そのラストパスを反対サイドから来た彼がワンタッチで決めたんですが、どうやらその1点でアトレティコは安心してしまったんですかね。それ以降、ずっとジローナが攻めていたため、最少得点差でハーフタイムに入った時にはスタンドの不満も溜まっていたんですが、大丈夫。後半2分、またコレアがゴールを挙げてくれたんですよ。ええ、GKファン・カルロスがボールをエリア内にいた彼に出してしまい、敵の痛恨のミスをちゃっかり2点目に変えてくれたんですが、こちらはドリンクなどを買いに行って、まだ席に戻っておらず、見逃して悔しい思いをしたファンも結構、いたかと。

え、2点差にもなれば、普通は十分だろうに、どうしてアトレティコはいつもファンをハラハラさせるのかって?いやあ、最初は18分にミチェル監督がエースのストウアーニを投入した時、第4審判の挙げた電光ボードには交代選手としてリケルメの背番号を表示。ファンも昨季のミランデス(2部)に続き、今季もジローナでのレンタル修行で成長しているところを見せてくれたカンテラーノ(アトレティコBの選手)を拍手で送ったんですが、どうやら手違いがあったようで、ヤンヘル・エレーラが退き、彼はそのままピッチに残ることになったのが肝でしたかね。丁度、シメオネ監督も水曜のCLクラブ・ブルージュ戦を考えたか、先発のグリーズマン、クーニャ、カラスコをモラタ、レマル、サウールに一気交代していたんですが、その2分後にはリケルメに古巣恩返し弾を決められてしまったから、さあ大変!

彼のエリア外からのシュートがヒメネスに当たり、軌道を変えて、GKオブラクを破ったんですが、1点差に迫られたとなると、かなり状況が変わってきますからね。後でシメオネ監督も「ほぼ勝っていた試合に落ち着きがなくなって、プレスも上手くかけられないから、守るために自陣に固まるようになる。カウンターで追加点も奪えなくて、en los últimos 20 minutos te genera esa situación de pánico/エン・ロス・ウルティモス・ベインテ・ミヌートス・テ・ヘネラ・エサ・シトゥアシオン・デ・パニコ(ラスト20分はパニック状態に陥った)」と言っていたように、それこそオブラクがアレイス・ガルシアの2発をparadon(パラドン/スーパーセーブ)してくれなければ、逆転されていた可能性も。何とか、2-1のまま、試合終了の笛を聞けた時には胸をなでおろしたファンも多かったに違いありません。

おかげでリーガでは前節セビージャ戦から2連勝となり、コケも心おきなく場内一周して、ファンに感謝することができたんですが、ええ、順位もCL出場圏内の4位に上昇できましたしね。ただ、やはりこんな有り様ではグループリーグで2連敗して、最下位で迎えるCL4節、クラブ・ブルージュ戦が心配だったんでしょう。この試合の終盤もスタンドを煽るのに余念がなかったシメオネ監督は、「Los necesitamos cerca y es importante que el miércoles vuelva a estar/ロス・ネセシタモス・セルカ・イ・エス・インポルタンテ・ケ・エル・ミエルコレス・ブエルベ・ア・エスタル(ウチには彼らが近くにいることが必要で、水曜もまたいてくれることが重要だ)」とファンに応援を頼んでいましたが、まさしくその通り。

まだCLは3試合残っているとはいえ、水曜午後6時45分(日本時間翌午前1時45分)からの試合ではとにかく勝っておかないと、また昨季のように最終節までヒヤヒヤすることになりますしね。ちなみにジローナ戦勝利の立役者となったコレアは今季2度目の先発だったんですが、試合後は「今季は出場機会が少なくて、ちょっと個人的に辛かった」と真情を吐露。それでも「cuando está enojado fuera lo demuestra dentro del campo/クアンドー・エスタ・エノハードー・フエラ・ロ・デムエストラ・デントロ・デル・カンポ(彼は怒りを感じている時、ピッチの中でそれを示す)」(シメオネ監督)とはよく言ったもので、いざ出番が回ってきた時に結果を出してくれるんですから、まったく見上げた心意気じゃないですか。

ただ、「その姿勢が更なる出場チャンスを招くことになる」というシメオネ監督の賞賛の言葉には、この日も途中出場で、ほとんど見せ場を作れなかったジョアン・フェリックスへのあてこすりもあったという見解も。実際、月曜の練習では仮想先発組にモラタ、そして移籍金2000万ユーロ(約29億円)でバルサから、アトレティコへの完全移籍が決まったことが正式発表。もう時短勤務をしなくて済むグリーズマンと共に入っていたのはコレアで、ジョアンはまた控えスタートのようですしね。あとはカラスコがサウールに代わるぐらいで、幸いヒメネスもサビッチもケガをしなかったため、ブルージュ戦にはベストメンバーで挑めるようですが、果たしてここまで3連勝、首位を独走している相手に初黒星をつけることはできるのでしょうか。

そして土曜、最後の時間帯には弟分のヘタフェがコリセウム・アルフォンソ・ペレスにマドリーを迎えたんですが、いやあ、私ったら、ひどい勘違いをしていて、最近、兄貴分に勝った記憶がないなんて言っていながら、それこそ昨季、エネス・ウナルのゴールで1-0と勝っていたんですよね。何でそんな滅多にない偉業を忘れていたのかといえば、その日は連続時間帯でラージョ、更にはアトレティコの試合も開催。顔馴染みのイギリス人記者がタクシーを呼ぶというのに便乗して、ハーフタイムでコリセウムを後にしたため、チームが下剋上勝利を祝うシーンを見ていなかったせいかと思いますが、この日は全然、余裕です。ええ、午後7時にメトロポリターノを出れば、メトロ、セルカニアス(国鉄近郊路線)を乗り継いで、問題なく9時のキックオフに間に合いますから。

実際、この試合も遅刻しなかったのを喜ぶべき展開で前半4分、モドリッチの蹴ったCKからミリトンがヘッドで決めて早々とマドリーが先制。ヘタフェも20分にはアンギレリがゴール前に送ったラストパスに突っ込み、ボルハ・マジョラルが古巣への恩返しゴールまだあと一歩に迫ったんですが、それぐらいでしたかね。数少ない枠内シュートを撃ったアレニャもGKルニンに止められてしまい、それこそ「1週間のフィジカルデータを見るだけでいい。彼らの数字はスーパークラックのものだ。Te ganan en la carrera larga, en la corta, en los duelos/テ・ガナン・エン・ラ・カレラ・ラルガ、エン・ラ・コルタ、エン・ロス・ドゥエロス(長距離走でも短距離走でもボール争いでも負かされる)」とキケ・サンチェス・フローレス監督も言っていたように、ビニシウス、ロドリゴ、バルベルデ、チュアメニ、カマビンガら若手の精鋭を揃えた兄貴分には到底及ばず。となると、マドリーが追加点を奪わなかったのは、その方が昨季のリベンジ感が増すから?

いやまあ、ツキもあって、前半41分など、ルイス・ミジャがビニシウスをエリア内で倒し、VAR(ビデオ審判)がその前のドリブルでボールがサイドラインを出ていたことを注進してくれなければ、その日は体力温存のために休養したベンゼマの代わりにPKマークの場所でモドリッチが蹴る準備していましたしね。確実に点差が広がっていたはずですが、後半もヘタフェはロドリゴのゴールがオフサイドで認められないという幸運に恵まれることに。最後は今季から、RMカスティージャを出て、レンタル修行をしているラタサまで入れて、同点を目指したものの、ロスタイムにエリア内でジェネがカルバハルに倒されたのもスルーされ、そのまま試合は0-1で終了です。

まあ、両チームの選手層を考えれば、これは当然の結果で、キケ・サンチェス・フローレス監督も「Ojalá haber estado así de serios contra el Valladolid/オハラ・アベール・エスタードー・アシ・デ・セリオス・コントラ・エル・バジャドリッド(前節のバジャドリー戦でも今日のように真剣にやってくれていたら良かったのに)」と言っていたように、ヘタフェにとって、大事なのは1部残留の直接ライバルに勝つことですからね。今は金曜にエスタディオ・バジェカスでの弟分ダービーで勝利して、降格圏まで勝ち点1差の16位となってしまった現状を改善していく他ありませんが、といっても10位のラージョも3ポイント差とそれ程、離れている訳ではなし。それだけに、こちらはかなり競った闘いが期待できるかと。

一方、火曜午後9時(日本時間翌午前4時)から、シャフタール戦に挑むマドリーでは、アンチェロッティ監督がヘタフェ戦でお休みしたベンゼマやメンディ、クロースらの先発を考えているようですが、とにかくここで勝てば、4連勝でグループリーグ突破が決定。11月にW杯で止まるまで、リーガに専念できるようになりますからね。次節のクラシコ(伝統の一戦)も、相手のバルサはアトレティコ、セビージャ同様、ここで勝たないと後がないというCLグループリーグでの苦境から脱出すべく、インテルとの総力戦に挑むのに対し、余裕でローテーションができるマドリーは本当に羨ましくありますが…現在のウクライナ情勢を考えると、ちょっとシャフタールに肩入れしたくなっちゃいますよね。

PR

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly