いよいよノンストップ日程が始まった…/原ゆみこのマドリッド

2022.10.04 20:00 Tue
©Atlético de Madrid
「ちょっと前進できたような」そんな風に私が幾分、気が楽になっていたのは月曜日、週明けのリーガ順位表を眺めていた時のことでした。いやあ、前夜にレアル・マドリーが首位を陥落、同じ勝ち点ながら、ゴールアベレージの差でバルサに追い抜かれてしまったのは決して、嬉しいことではないんですけどね。とはいえ、おかげでparon(パロン/リーガの中断期間)中、アトレティコとずっと勝ち点差8だったのが、6になったとなれば、何せ、先週末まではもしかして、今季は全勝で優勝するんじゃないかとさえ、思えたお隣さんでしたからね。
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それがオサスナと引き分けて、9連勝でストップ。勝ち点6なら、たった2試合分ですから、16日には、土曜にFIFAウィルスのせいで、アラウホ、クンデ、デ・ヨング、デパイ、更にお留守番練習中だったベジェリンまでをケガで失いながら、マジョルカに0-1と勝って、今季リーガ無敗を維持したバルサとサンティアゴ・ベルナベウで対決するクラシコ(伝統の一戦)も到来。シーズン後半マドリーダービーもあることを考えれば、アトレティコファンもそれ程、悲観しなくて良くなりましたが、ちょっと皮肉ですよね。9月の各国代表戦に行かずにリハビリを続けていたヒメネス、サビッチが復帰したアトレティコはそれが吉と出て、ベンゼマが戻ったマドリーは凶と出てしまうなんて。まあ、その辺はおいおい語っていくことにしますが、先週末の再開リーガのマドリッド勢は土曜に弟分のヘタフェがバジャドリーをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えてスタート。それがまた、前半は稀に見る撃ち合いとなったんですが、そのキッカケは19分、ジェネがエリア内にいたプラタに猛タックルを見舞い、PKを献上したことでした。セルヒオ・レオンに決められて、先制点を奪われたヘタフェでしたが、27分にはアランバリのラストパスから、ボルハ・マジョラルが今季自身初ゴールを挙げて同点に。その3分後にはドゥアルテのロングボールから、ドリブルで上がったダミアンがメッシ級のvaselina(バセリーナ/ループシュート)でGKマシップを破り、あっという間に勝ち越し点をゲットしちゃったんです。
とはいえ、相手も負けておらず、その日はイスラエル代表帰りだったバイスマンの代わりに先発に入り、「Cuando me vi en el once, le dije a mi gente que iba a meter dos goles/クアンドー・メ・ビ・エン・エル・オンセ、レ・ディヘ・ア・ミ・ヘンテ・ケ・イバ・ア・メテール・ドス・ゴーレス(自分の名前がスタメンあるのを見た時、家族に2ゴール決めるって言ったんだ)」というセルヒオ・レオンが36分、キケ・ペレスのアシストを受け、doblete(ドブレテ/1試合2得点のこと)を達成。前半のうちに2-2にされてしまうんですから、困ったもんじゃないですか。

ただ、問題は後半で、ヘタフェは早くも3分にオスカル・プラーノにエリア外から、golazo(ゴラソ/スーパーゴール)を撃ち込まれてしまったんですよ。それでも27分、アグアドのハンドでもらったPKをエネス・ウナルが、いえ、近年のヘタフェは誰が蹴っても失敗することが多いんですけどね。この日もマシップに弾かれてしまい、最高の同点のチャンスをフイにしてしまったんですが、どうやらそれより痛かったのはアランバリ、そして後半から入ったセアオネと続けて、2人も負傷交代となったこと。
キケ・サンチェス・フローレス監督によると、おかげで選手たちが動揺してしまったそうなんですが、ムニル、ラタサも加え、FW4人で攻めても点が取れず。そのまま2-3で敗戦と、代表戦週間前、2連勝だったいい流れが途切れてしまったのはつくづく、残念だったかと。更に最悪なのはこの試合を欠場していたマクシモビッチも含め、MF3人がいない状態で次節、土曜にはマドリーを迎える兄弟分ダービーに挑まないといけないことですが、少なくとも順位は14位のままで変わっていないのは、ヘタフェにとって、唯一の慰めになるでしょうか。

そして次の時間帯では兄貴分、アトレティコがサンチェス・ピスファンに乗り込んでのセビージャ戦だったんですが、嬉しいことにまだ、私がコリセウムのプレスルームにいるうちに先制点が入ったんですよ!ええ、前半29分に敵のサイドスローからボールを取り戻すと、コケが反対サイドにいたマルコス・ジョレンテにラストパス。彼が直前にレキクのケガで入っていたアレックス・テレスをかわして、シュートしたボールが何と当人、47試合ぶりとなるゴールになってくれたとなれば、私が駅前のバル(スペインの喫茶店兼バー)に走ってしまったのもムリはない?

とはいえ、チームをしょって立つヘスス・ナバスとラキティッチが入ったセビージャは後半序盤から、ずっとアトレティコを自陣エリア付近に囲い込んで攻めていたんですが、それでも失点しなかったのは、いえ、シメオネ監督も「Cuando están bien y sanos, nos dan esa seguridad defensiva/クアンドー・エスアン・ビエン・イ・サーノス、ノス・ダン・エサ・セグリダッド・デフェンシーバ(健康でいい時はウチに守備面で安心感を与えてくれる)。そこからチームも成長していける」と言っていたんですけどね。サビッチ、ヒメネスのCBレギュラーコンビが戻ったせいだったのか、実際、12分など、GKオブラクのロングフィードをモラタが落とし、クリアに失敗したカルモナからクーニャがボールを取り戻すと、ボールを返してもらったモラタがGKボノの頭を越えるシュートで2点目を奪っているって、え?スペインのネーションズリーグ・ファイナルフォー進出を勝ち取るゴールを挙げたポルトガル戦から、また彼はracha(ラチャ/好調期)に入った?

2点取られては、この夏、ディエゴ・カルロス(現アストン・ビラ)、クンデ(同バルサ)、2人の守備の要を売却した後の補強に失敗し、現在、降格圏と勝ち点差1の17位という、かつてないスランプ状態のセビージャにはどうすることもできず。一応、再び時短勤務に戻ったグリーズマンやカラスコ、コレア、そしてジョアン・フェリックスも残り4分にピッチに入ったアトレティコも追加点は取れなかったんですけどね。そのまま試合は0-2で終了となり、ようやく彼らもCLレバークーゼン戦、マドリーダービーの2連敗の悪夢から脱却できたんですが、試合後、一番注目を浴びていたのは何故か、キャプテンのコケでした。

というのもこのセビージャ戦で彼はアトレティコでの出場数が554試合となり、クラブのレジェンド、アデラルドを抜いて、歴代最多出場選手に躍り出たからで、まあ、この日はシメオネ監督が4人DF制に戻したため、ようやくビッツェルがCBを卒業して、本職のブランチで睨みをきかせることが可能に。おかげで中盤の底の任務から解放されたコケも先制点アシストというお手柄でしたが、まだまだリーガ優勝した2季前などと比べると、ピッチで影が薄い感はなきにしろあらずかと。

できれば、このクラブ史に残る記録を達成したのをいい機会にして、火曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのCL3節、クラブ・ブルージュ戦では、アトレティコが2勝目を挙げるのに貢献できるといいのですが、さて。ちなみに月曜には先週金曜に負傷したフェリペを残し、リハビリが終わったレマル、代表戦後、病気の父親を見舞うため一時帰国するとクラブに言いながら、実は彼女のアルゼンチン人タレント、ティニ・ストエセルさんと一緒にマイアミでのビルボードのイベントに行っていたと批判されているデ・パウルも伴って、チームはベルギーに移動。2018-19シーズンのグループリーグでも顔を合わせた相手ですが、その時はヤン・ブレイデルスタディオンでスコアレスドローだった上、今季はレバークーゼン、ポルトに連勝。しかも後者からは4点も奪って、堂々たる首位に立っているだけに油断はできませんよね。

そして翌日曜はまず、ブタルケにレガネスがアルバセテを迎える試合を見に行った私だったんですが、この2部の弟分、かなり重症みたいですよ。だってえ、前半4分にはフェデ・ビコが、自身が獲得したPKを決め、早々に先制しながら、ハーフタイムはGKダニ・ヒメネスのparadon(パラドン/スーパーセーブ)連発でようやく失点を免れている有り様に。その途中で彼がケガをしてしまったせいもあったんですが、柴崎岳選手も入った後半、7分、8分と立て続けにドゥバシンにゴールを決められて逆転されてしまったから、さあ大変!

いやあ、もう前日の土曜にはラシン・サンタンデールとマラガが引分けたため、この日のキックオフ前には最下位に落ちていたレガネスなんですが、39分のミラモンのゴールもオフサイドで認められず、そのまま1-2でアルバセテが勝利。バスを連ねて応援に来たファンと昇格プレーオフ圏の3位上昇をアウェイチームが喜んでいるのをよそに、いよいよスタンドから「Inaki vete ya!/イニャキ・ベテ・ジャ(イディアケス監督、もう出て行け)」のカンティコが聞こえてきたのも当然だった?

うーん、ただこれは、イディアケス監督も「El problema no soy yo, el Leganés lleva años cuesta abajo/エル・プロブレマ・ノー・ソイ・ジョ、エル・レガネス・ジェバ・アーニョス・クエスタ・アバホ(問題は自分ではなく、レガネスがここ数年、下り坂なことだ)」と言っていたんですが、1部から降格して早や3年目。この夏には旧経営陣がサジを投げ、アメリカの投資グループにクラブを売却したばかりですし、大した補強もできませんでしたからね。とはいえ、ここで諦めては2部のマドリッド勢が消滅。来季はお隣さんのアルコルコンやフエンラブラダのように、RFEF1部(実質3部)に落ちて、RMカスティージャ(ラウール監督率いるマドリーのBチーム)とのダービーぐらいしか、ファンの楽しみがなくなってしまうのもイヤですし、何とか態勢の立て直しが図れるといいのですが…。

そしてこの日は続いてマドリー戦だったんですが、午後7時にブタルケを出ても、バスでアルーチェ駅まで行って、午後9時前にサンティアゴ・ベルナベウに着くのは、メトロの乗り換えも1回だけと超楽勝。こちらもfondo norte/フォンド・ノルテ(北側ゴール裏席)の最上階に陣取ったオサスナファンが元気に応援していましたが、今季勝利以外、見てない私としては、ベンゼマも満を持してスタメン復帰したことですし、絶対、勝つに決まっていると確信していたところ…。

実際、前半終わり近くにギアを上げたマドリーはビニシウスから受けたラストパスを2度、枠外にベンゼマが飛ばした後の42分、うーん、いや多分、その時も彼はクロスのつもりだったんでしょうけどね。エリア外から蹴ったビニシウスのボールが誰も触ることなく、ゴールに入ったから、ビックリしたの何のって。おかげでスタジアムのゴールアナウンスが響くまでも少々、間があったんですが、大丈夫。オフサイドの位置にいたリュディガー、ベンゼマもプレーには影響なしとして、スコアボードに1点が挙がります。

とはいえ、相手はここ5回のベルナベウ訪問で3回もドローを勝ち取っているアラサーテ監督率いるオサスナ。前半も上手く守って時折、20才の新鋭アブデ(バルサからレンタル移籍)を先頭に切り込んでいたんですが、後半5分には意外な形で同点弾が入ることに。ええ、マドリー選手たちが傍観する中、CBのウナイ・ガルシアがクロスを上げ、落ちてきたボールをリュディガーと争った同姓のキケが後ろ向きにヘッド。試合後のピッチインタビューで「どこにゴールがあるかも、GKの位置もわからなかったんじゃないか?」と尋ねられ、「Por intuición/ポル・イントゥイシオン(勘だよ)」と当人も答えていたんですが、まさかそれがすっぽりゴールに入ってしまうとは一体、誰に予想できた?

その後はバルベルデ、カマビンガ、アセンシオ、ミリトンとピッチにエネルギーを注入したアンチェロティ監督ですが、31分、ベンゼマがゴール前で押し倒され、最初はスルーされたものの、見直しVAR(ビデオ審判)モニター判定で主審がペナルティを宣告。当事者のダニ・ガルシアもレッドカードで退場となった時には、マドリーの勝利を疑うファンはいなかったはずですが、いやあ。実は昨季の4月、エル・サダルでのオサスナ戦でベンゼマはPKを2本、GKセルヒオ・エレーラに弾かれていたんですが、そのせいで用心しすぎたんでしょうか。ゴール上部ギリギリを狙った彼のPKはバーを直撃し、「Pensé cambiar el lanzador/ペンセ・カンビアール・エル・ランサドール(キッカーを代えることを考えた)が、彼は昨季、最高に大事な場面で2度、PKを決めていたから」というアンチェロティ監督を大いに後悔させることに。

結局、このPK失敗が響き、最後はマリアーノも加わって、FW5人体制で攻めながら、10人のオサスナが必死に守ったため、試合は1-1で終わったんですが、まだまだ全然、心配するには及びません。そう、バルサに首位を奪われたとはいえ、10試合で9勝1分けとなれば、これは完全に優勝確定ペースですからね。ただ、気になるのは試合当日に欠場が決まったGKクルトワが、アンチェロッティ監督は楽観していたものの、月曜の検査で坐骨神経痛を患っていることが発覚。いつ復帰するかもわからず、とりあえず、水曜午後9時からのCLシャフタール戦もルニンがゴールを守ることになりますが、これは奇しくも母国ウクライナのチームとの試合に出場機会を得られるという、当人にとっては天の配剤かも。

いえ、まあ、3節をサンティアゴ・ベルナベウで戦った後、ウクライナはまだロシアと戦争状態にあるため、来週のシャフタールのホームゲームはポーランドのワルシャワで開催されるんですけどね。ちなみにこの相手とは3シーズン連続グループのリーグ対決となり、昨年は2勝したマドリーながら、その前年、ジダン監督の下では2敗という苦い思い出も。それだけに月曜のバルデベバス(バラハス空港の近く)でのグラウンド練習で姿が見えた、クロアチア代表戦で腰を痛めて戻ってきたモドリッチが復帰できそうなのは、ファンにとっても心強いんじゃないでしょうか。

そして月曜試合となったもう1つの弟分、ラージョはエスタディオ・バジェカスに最下位のエルチェを迎え、前半32分にCKから、ボジェのヘッドで先制されたものの、40分にはカメージョがエリア外から撃ったシュートが決まって同点に。前日、久保建英選手が5点目を挙げたレアル・ソシエダに3-5で負けてしまったものの、ジローナの1点目を挙げたアトレティコのレンタル修行組カンテラーノ(Bチームの選手)仲間、リケルメに負けじとばかり、ラージョでの初ゴールを祝ったんですが、勝負が決まったのは後半ロスタイム5分のことでした。

ええ、エルチェDFのクリアしたボールをウナイ・ロペスがvolea(ボレア/ボレーシュート)で決めて、土壇場の勝ち越し点を奪っているんですから、見上げた心意気じゃないですか。これで、とうとう10位まで上昇したラージョですが、次節はまた、18位と降格圏にいるアルメリアと対戦。ヘタフェと比べると相手にも恵まれているようですが、とにかく稼げる時に勝ち点は稼いでおくに限りますよね。


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