この先、当分休めない…/原ゆみこのマドリッド

2022.09.30 20:00 Fri
©Atlético de Madrid
「どうして同じじゃないんだろう」そんな風に私が不思議がっていたのは木曜日、W杯前最後のparon(パロン/リーガの停止期間)が明けて、いよいよ11月第2週まで続く、週2試合ペースのノンストップ日程をチェックしていた時のことでした。いやあ、ちょっと前にレアル・マドリーにはリーガ8試合、CL4試合の計12試合が控えていることを知り、当然、CL出場組のお隣さんもそうだろうと思っていたんですけどね。まさか、11月9日にリーガ14節が終わった後、12、13日にはコパ・デル・レイ1回戦が組まれていたとは、これは一体、誰の陰謀?
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いえ、要はこの1回戦、1月のスペイン・スーパーカップに参加するマドリー(昨季リーガ優勝)、バルサ(同準優勝)、ベティス(昨季コパ優勝)、バレンシア(同準優勝)の4チームは免除されるラウンドで、リーガ3位で終わったアトレティコの単なる自業自得ではあるんですけどね。スペイン代表の例で見てみると、W杯用の招集リスト発表が11月10日近辺、14日にはアンマンでヨルダンとの大会前唯一の親善試合が組まれているため、コパの日にはすでに合宿が始まっている可能性も大。もちろん相手はRFEF2部、3部(実質4部、5部)ら、格下のチームなはずですが、スペイン以外の各国代表に招集される選手も多いアトレティコですからね。万が一、W杯決勝が12月18日に終わり、1部チームの試合再開となる21日のコパ2回戦にはその姿がないなんてことになったら大変ですが、よく見ると、リーガ15節の設定は大晦日。これではW杯参加選手のあまりいないチームが暇を持て余すのもムリはありません。選手たちも1回、夏のプレシーズンキャンプで体を作った後、冬にもう1度、やり直しをするのもイヤかもしれませんし、ホント、異例の秋開催W杯なんて、今回限りであってほしいものですが…。
え、そんなことより、スペインのネーションズリーグ最終戦がどうだったのかの方が気になるって?そうですね、5節のスイス戦に0-2で負け、グループ首位から陥落しただけでなく、CKからあっさり失点してしまう守備の穴やゴール不足等々、世間から批判にさらされる中、火曜にブラガでポルトガルに挑んだルイス・エンリケ監督のチームでしたが、今回はスタメンに7人もの変更が。とりわけ目を惹いたのは中盤がバルサトリオから、ロドリ(マンチェスター・シティ)、コケ(アトレティコ)、カルロス・ソレル(PSG)に一新されていたことですが、もしや、そのせいもあったんでしょうか。

だってえ、とにかく前半のスペインは恒例通り、ボールポゼッションこそ70%以上あったものの、ほとんど自陣でDF同士がパスを回しているという有り様。時々、バレンシアではボランチ担当、今回はCBとして代表に招集されたギジャモンやパウ・トーレス(ビジャレアル)が縦パスを試みるんですが、うーん、スイス戦の後、ルイス・エンリケ監督がこれまでにない程、不正確なプレーをしていたと言っていたせいですかね。狙いを定めるのにやたら時間がかかるというか、受けた選手もすぐバックパスで戻すとか、あんな躊躇いサッカー、見せられた日にはポルトガルに勝って、ファイナルフォー進出を果たすどころか、コスタリカ、ドイツ、日本と当たるW杯のグループリーグだって、暗澹たる予感しかしない?
実際、枠内シュートが1本もなかった前半に関しては、後でルイス・エンリケ監督も「ウチはボールを持つことを優先したが、奥行きのあるプレーができなかった。Ha sido por mi culpa. Teníamos que haber arriesgado más/ア・シードー・ポル・ミ・クルパ。テニアモス・ケ・アベール・アリエスガードー・マス(私の責任だ。もっと危険を冒すべきだった)」と反省していたんですけどね。「Estos partidos hay que llevarlos a los últimos minutos, cansarlos/エストス・パルティードス・アイ・ケ・ジェバールロス・ア・ロス・ウルティモス・ミヌートス、カンサールロス(こういう試合は終盤までもつれさせないと。相手を疲れさせないといけないんだ)」というロドリの言葉など聞くと、どうやら0-0のまま、ハーフタイムに入るのは計画通りだったよう。

まあ、それには引分けでもファイナルフォーに行けるポルトガルがガムシャラに点を取りに来なかったおかげもあったんですが、後半はイエロカードをもらったギジャモンを下げ、今のスペインの総大将であるブルケツ(バルサ)が、コケからキャプテンマークを引き継いでピッチへ。代わりにロドリがCBのポジションに入ったんですが、勝利を求めるチームの積極姿勢が明らかになったのは、クリスチアーノ・ロナウド(マンチェスター・ユナイテッド)のシュートをGKウナイ・シモン(アスレティック)が弾いた後、15分にソレル、コケ、サラビア(PSG)に代わり、ガビ、ペドリ(バルサ)、ジェレミー・ピノ(ビジャレアル)が出場してからだったでしょうか。

ええ、25分にはようやく、この日、真正CFとして先発したモラタ(アトレティコ)がスペイン初の枠内シュートを撃ったからですが、これはGKジオゴ・コスタ(ポルト)が難なくセーブ。更にフェラン・トーレス(バルサ)がニコ・ウィリアムス(アスレティック)に代わると、まさに「Los últimos 35 minutos han sido espectaculares/ロス・ウルティモス・トレインタイシンコ・ミヌートス・アン・シードー・エスペクタクラーレス(最後の35分間は見物だった)」(ガヤ/バレンシア)という状態に。押されてポルトガルが引いていくのもわかったんですが、ゴールが入らないまま、とうとう43分まで来てしまったとなれば…。

丁度、私が「こんな時間に勝ち越し点を取れるのはあのクラブしかない」と夢想しつつ、でもベンゼマもロドリゴもビニシウスもモドリッチもいなかったら、さすがにムリだろうと思い直していた頃のことでした。その奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)体質チームの一員、カルバハル(マドリー)が右サイドからクロスを上げたのは。するとゴール左前に詰めていたニコが、「Yo le he visto ahí solo y se la pasé/ジョ・レ・エ・ビストー・アイー・ソロ・イ・セ・ラ・パセ(あそこに1人でいるのが見えたから、パスしたんだ)」と右側から来たモラタにヘッドでボールを送り、やはりマドリー育ちの彼が先制点を決めてしまったから、ビックリしたの何のって!

うーん、首位交代となる1点を奪われてすぐ、リーガ中断直前のマドリーダービーで負傷して、チェコ戦を欠場したジョアン・フェリックスが投入されながら、何もできなかったのには、アトレティコ前線コンビの明暗を見た気がしないでもないんですけどね。試合はそのまま0-1で終わり、ポルトガルの地で19年ぶりの勝利を挙げたスペインは来年6月にオランダで開催予定のファイナルフォーに、史上初となる2大会連続で出場できることに。

ちなみにそれは昨年10月にスペインに準決勝で負けているイタリアも同じなんですが、向こうは今回のW杯に出ませんからね。そう思うと、スイスに負けて、大きく株を下げたルイス・エンリケ監督が翌水曜、ヨーロッパ強豪代表の近年の成績を比べる表を自ら、ツィートしてしまった気持ちもわからなくもない?

ただそうは言ってもこのポルトガル戦、ファンの心臓に悪かったのは確かで、いくら「相手のSBを消耗させるため、サラビアとフェランの仕事が必要だった」(ルイス・エンリケ監督)と言われても今季、所属クラブで控えに甘んじている2人はとてもゴールを決められそうには見えませんでしたしね。「今日のチームにはこれまでなかった、最後まで待つという成熟ぶりを見た」(ロドリ)と言われても、そりゃあ、決定力抜群のFWが揃っているどこぞのチームなら、土壇場での勝利に賭けてもいいかもしれませんが、”El nueve de Espana/エル・ヌエベ・デ・エスパーニャ(スペインのCF)”はモラタなんですよ。

昨年のユーロ2020準決勝で最後に彼が失敗して、PK戦でイタリアに負けたのはともかく、何度も悔しい思いをしているアトレティコファンも多いため、それこそW杯には現在、負傷のリハビリ中や調整不足で呼ばれなかったダニ・オルモ(ライプツィヒ)、ジェラール・モレノ(ビジャレアル)、オジャルサバル(レアル・ソシエダ)、アンス・ファティ(バルサ)辺りでゴール力をもっと、充実させて挑んでもらいたいところですが、まあ、それはまだ先の話。ルイス・エンリケ監督がユーロのように24人にするか、フルで26人連れていくか、迷っていることもありますし、今は週末に迫ったリーガ7節に向けたマドリッド勢の様子を見ていくことにすると。

土曜に先陣を切るのは弟分のヘタフェで、コリセウム・アルフォンソ・ペレスに降格圏18位のバジャドリーを迎えるんですが、どうやら背筋痛でトルコ代表を早退してきたエネス・ウナルは順調に回復しているよう。何せ、ここ2連勝で14位まで躍進した彼らは弟分仲間のラージョとも、順位は向こうが12位と上なんですが、勝ち点7で並んでいますからね。月曜に最下位のエルチェとの試合が組まれているイラオラ監督のチームは各国代表出向組が8人と意外と多いとはいえ、ケガ人は皆無。コロンビア代表の親善2試合で先発したファルカオも休養は十分となれば、キケ・サンチェス・フローレス監督も今節をイーブンで乗り切って、8節の弟分ダービーでマドリッド第3のチームの座を争いたいはずですが、果たして結果どちらに吉と出るか。

そして先日、本家マドリーダービーで明暗が分かれた兄貴分たちの方は土曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)にまず、アトレティコがサンチェス・ピスファンを訪れてのセビージャ戦。こちらはすでに各国代表選手の帰還が火曜から始まっていて、マドリー戦に続き、フランスが何とかネーションリーグのAグループ降格を免れた2試合でも先発したグリーズマン、オランダにお株を奪われ、2大会連続のファイナルフォー進出が叶わなかったベルギーからもカラスコ、ビッツェルらが第1陣だったんですが、木曜にはオブラク(スロベニア)、コケ、ジョアン、コレア、デ・パウル、ナウエル(アルゼンチン)、クーニャ(ブラジル)らも支障なく合流し、その上、サビッチ、ヒメネスも負傷が治ってチーム練習に参加しているとなれば、こんなに心強いことはないかと。

何せ、今季は序盤で躓いて現在7位、すでに首位のお隣りさんとは勝ち点差8がついてしまったアトレティコですからね。それでもまだ、4位のアスレティックとは3差しかないため、このW杯までの8試合では、少なくともCL出場圏内まで上昇するのを目標にしてもらいたいところ。人の不幸を喜んじゃいけないんですが、マドリーと勝ち点差2で2位につけるバルサがこの代表戦週間、アラウホ(ウルグアイ)、クンデ(フランス)、デ・ヨング、メンフィス・デパイ(オランダ)、更にはお留守番練習中のベジェリンまで、ケガで離脱することになったのも高みを狙ういい機会になるかもしれません。

折しも相手のセビージャはこのシーズン序盤、1勝2分け3敗とシメオネ監督のチーム以上のスランプ中。現在、15位と振るっていないため、水曜にはマルカ(大手スポーツ紙)から、代表MVP賞をもらっていたモラタがまたゴールづいてくれれば、ケガを克服して、モロッコ代表の2試合に出場したGKボノを破れないことはないと思いますが、こればっかりはねえ。今節のアトレティコはエルモーソが出場停止、レマルだけがまだリハビリが終わっていないようですが、11月までの13連戦、とにかく歯を喰いしばって、リーガでもCLでも結果を出してくれることを祈っています。

そして日曜午後9時(日本時間翌午前4時)、新しく芝を貼り直したサンティアゴ・ベルナベウに現在5位と好調ながら、前節ヘタフェに負けた試合で退場したチミ・アビラを出場停止で欠くオサスナを迎えるのがマドリーなんですが、まずはいいニュースから。それはフランス代表には行かず、リハビリを終えたベンゼマが、「Estoy listo para jugar/エストイ・リストー・パラ・フガール(プレーする準備はできている)」と、昨季のピチチ(リーガ得点王)、ディ・ステファノ賞(リーガMVP)、ファンが選ぶ最優秀選手賞の3トロフィーをもらったマルカの授賞式で言っていたことで、いやまあ、9月上旬のCLセルティック戦で彼がケガした後も3連勝。今季最初の公式戦だったUEFAスーパーカップのフランクフルト戦から9試合全勝とまったく、チームの成績に影響はなかったんですけどね。

それでもこの先の連戦を考えて、アンチェロッティ監督もエースの復帰を喜んでいるはずですが、悪いニュースはデンマーク、オーストリアに連勝。後者のキャプテンであり、チームメートのダビド・アラバの前でゴールまで決め、クロアチアを初のネーションズリーグ・ファイナルフォー出場に導いたモドリッチが腰の筋肉痛で8~10日間の離脱となってしまったことでしょうか。まあ、それでもマドリーは中盤もチュアメニ、クロースの他、カマビンガ、バルベルデ、セバージョスと人材豊富ですからね。モドリッチも16日のクラシコ(伝統の一戦、バルサ戦のこと)までには戻れるようですし、CLでも2連勝中とあって、来週からのシャフタールとの2連戦にも余裕を持って臨めるため、そんなに心配することはないかもしれません。


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