いきなり試合が増えてきた…/原ゆみこのマドリッド
2022.09.10 21:00 Sat
「こんなパターン、記憶にないわよね」そんな風に私が溜息をついていたのは金曜日、今週末のリーガ戦予定を見直していた時のことでした。いやあ、近年のマドリッドは1部のチームが多い時で5つ、少なくても3つはあるのが普通なんですが、レアル・マドリーがサンティアゴ・ベルナベウでプレーするなら、アトレティコは遠征といったように、常にホームとアウェイに試合が分かれるようにラ・リーガが調整。それがこの5節に限っては、マドリッド4チームが揃ってホーム開催、しかも土日に2試合ずつ、キックオフ時間も互いに余裕があるせいで、4試合全てスタジアム観戦できてしまうなんて、もし今、マドリッド観光に来ていたら、サッカーファン冥利に尽きる経験ができる?
まあ、その辺はあとでまたお話ししますが、今週のハイライトと言えば、W杯が11月に開催するせいで、慌ただしく、9月初旬から始まったCLグループリーグの開幕戦で、まずは火曜にマドリーがグラスゴーでセルティック戦に挑むことに。昨季はリーガとCLの二冠、今季もリーガ4連勝と好調な滑り出しを見せているアンチェロッティ監督のチームとあって、早い時間からのgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)が期待されたため、シビタス・メトロポリターノにお隣さんの試合前日記者会見を見に行っていた私も何とか、キックオフ時間までに近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に滑り込もうと急いだんですが…。
うーん、開始から活発に攻めていたのはセルティック・パークに駆けつけた6万人のサポーターに後押しされたホームチームの方で、アバダのシュート2本やマクグレゴールのゴールバー直撃などでGKクルトワを脅かしていたんですが、決定力が欠けていたのが幸い。だってえ、下手にリードされていた日には前半30分、今季のマドリー、唯一の弱み、たった1人しかいない、信頼できる真正CFが交代を要請したんですよ。そう、ベンゼマが右ヒザをケガしてしまったんですが、代わりに入ったのがfalso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)のアザールだったとなれば、最悪の事態を予想したファンも多かったかと。
でも大丈夫。前半終了間際にビニシウスがシュートを2本撃って、足慣らしをしたマドリーはハムストリングスを痛めたミリトンがハーフタイムにリュディガーに代わるという、不幸の連鎖もあったんですけどね。セルティックもアバダが前田大然選手に交代し、先発した旗手怜央選手と共にピッチに立ったんですが、11分にはマドリーのカウンターアタックが炸裂。ええ、敵陣を上がったバルベルデのラストパスを受けたビニシウスが3度目の正直で先制ゴールを決めてくれたんです!
もちろん、それだけで終わる彼らではなく、その4分後にはアザールからボールをもらったモドリッチがエリア内で敵DFを2人かわして、この金曜に迎える37才のバースデー前祝いゴールを挙げ、才能ある選手には年齢なんて関係ないことを証明。2点差にされたセルティックは27分になって、今季のチーム得点王、スコットランドリーグですでに6得点している古橋亨梧選手を入れたんですが、時すでに遅しです。勢いに乗ったマドリーは止まらず、32分にはクロースのパスをカルバハルが落とし、何とアザールまでゴールを決めているとなれば、エース抜きの試合をこれから幾つこなさないといけないか、わからなかったアンチェロッティ監督も少しは安心できたかと(最終スコア0-3)。
スペイン代表常連FWのダニ・オルモも負傷中とあって、Decimoquinta(デシモキンタ/15回目のCL優勝のこと)達成に幸先いいスタートを切ったマドリーですから、あまり心配することはないかと思いますが、それより差し迫っているのは日曜午後2時(日本時間午後9時)からのマジョルカ戦。この時間だと、正面スタンドに直射日光が差し込んでくることはないものの、今週末のスペインは再び夏日に戻るようなんですよね。アギーレ監督のチームも2節前にはエスタディオ・バジェカスで弟分のラージョを0-2で破っていて、現在11位といい感じですし、まだシーズン序盤とあって、1試合で大きく順位が動くだけに、バルサと勝ち点2差で単独首位にいるマドリーもまだまだ気を引き締めていかないといけません。
そして翌水曜はアトレティコの番で、先週末のレアル・ソシエダ戦でレイニウドに激突され、太ももの打撲で交代していたGKオブラクが何とか間に合って、ポルト戦のスタメンに入れたのは頼もしかったんですけどね。メトロポリターノに駆けつけたファンも今季最初のCLとあって、張り切って応援していたんですが、これがまた、シメオネ監督も「No jugamos un buen partido no hubo ocasiones para ninguno/ノー・フガモス・ウン・ブエン・パルティードー・ノー・ウボ・オカシオネス・パラ・ニングーノ(ウチはいい試合ができなくて、どちらにもチャンスがなかった)」と認めていたぐらい、前半は何もない展開。
ハーフタイムには覇気に欠けていたカラスコ、自陣エリア脇でのクリアボールをジェレミー・ピノに贈り、先制点のアシストをした今季ホームデビューのビジャレアル戦に匹敵するようなミスを犯しかねなかったナウエルを後半頭から、レマルとデ・パウルに代えてみても、いえ、5分にはコケのシュートが珍しく入ったんですけどね。ラストパスを出したデ・パウルがオフサイドを取られ、スコアには上がらなかったため、16分には定番、レアンタル期間の2シーズンで出場率が50%を越えないよう調整中のグリーズマンが出動。更にはスタンドからpito(ピト/ブーイング)が飛ぶ危険を承知で、シメオネ監督はモラタをCBのエルモーソに、ジョアン・フェリックスをコレアにとメンバーをリフレッシュしていったんですが…。
その後、ポルトのオタビオが負傷し、担架で運び出されるまでかなり時間がかかったり、36分にはタレミが2枚目のイエローカードをもらって退場。0-0のまま、45分が過ぎた時はまた、昨季のCLグループリーグ初戦のようにスコアレスドローで終わるのを私も覚悟していたんですが、まさかロスタイムに大波乱が待っていようとは!ええ、9分と長い時間が電光掲示板に表示されてから、たったの1分、シメオネ監督が「ジョアンをコレアに代えたのは内側から攻めるため。ジョアンはサイドでプレーしていたから、コレアには中へ行くように指示した」というのが功を奏したか、右側から中心に向けてドリブルした彼がエルモーソに繋ぎ、そのシュートが敵DFに当たって、ゴールになってしまったから、ビックリしたの何のって。
いやあ、普通だったら、もうこれで勝ったようなもんですが、そうすんなりはいかないのがいかにもアトレティコですよねえ。0-2で負けたビジャレアル戦終了後に野次られて、諍いになっていた応援団席のファンと一緒にゴールを祝ったばかりのエルモーソが51分、今度はクリアしようとしたボールを腕に当てて、PKを献上しているって、まったく何をしているんだか。ウリベの蹴ったPKはオブラクの手が触れたものの、ネットに収まり、1-1に追いつかれてしまったんですが、まあ、そのおかげですかね。後でコンセイソン監督も「ロスタイムのロスタイムはもう終わっていたのに何でプレー続行したのかわからない」と文句を言っていたんですが、まさに9分を2分オーバーした56分に奇跡が起こったんですよ!
最後のプレーとなるCKをレマルが蹴ったところ、これがビッツェルの頭を経て、ファーサイドにいたグリーズマンの前へ。マドリーファンにはお馴染みのペペがクリアしようと脚を高く上げてきたのにも怯まず、ヘッドで合わせたボールが土壇場の勝ち越し点になってくれるなんて、一体、誰に予想できたでしょう。その直後に試合終了の笛が鳴ったため、選手たちもスタンドのファンとゴチャ混ぜになって喜んでいましたが、CL初戦からこんな勝ち方するなんて、まったく心臓に悪い。
ヒメネスなど、「Hemos ganado porque nunca dejamos de creer, lo intentamos hasta el final/エモス・ガナードー・ポルケ・ヌンカ・デハモス・デ・クレエル、ロ・インタモスモ・アスタ・エル・フィナル(信じるのを止めず、最後まで諦めなかったから、ボクらは勝った)」と言っていましたが、それこそ根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)が売りのお隣りさんじゃあるまいし。これじゃ、試合後の会見でコンセイソン監督が「ポルトはマドリー、バルサに次ぐCL試合数を誇るのに誰もその重みを尊重してくれない」と、八つ当たりのように怒っていたのも仕方なかったかも(最終結果2-1)。
え、それにしたって、殊勲のゴールを挙げたグリーズマンが今季、毎試合控えで、30分程度しかプレーしないのはあまりにもったいないんじゃないかって?その通りではありますが、どうやら経営陣には強制買取オプションの移籍金4000万ユーロ(約58億円)をバルサには絶対払わないという、固い意志があるみたいでねえ。確かに「Podemos ver la realidad/ポデモス・ベル・ラ・レアリダッド(現実を見ればいい)。彼は30分間プレーして凄くよくやっているが、60分プレーしたらどうかはわからない」というシメオネ監督の言葉ももっともなんですが、もしや先発していれば、ファンも途方もなく退屈な90分間を辛抱して過ごす必要がなかった可能性もなきにしろあらず。
ただ救いは、当人も「Claro que quiero más, pero voy a dar todo en los minutos que tenga/クラーロ・ケ・キエロ・マス、ペロ・ボイ・ア・ダール・トードー・エン・ロス・ミヌートス・ケ・テンガ(もっとプレーしたいのは当たり前だけど、出場できる時間に全力を尽くすよ)。自分はクラブの人間だと感じるし、プレーしたいチームはここだけだからね」と納得しているようなところなんですけどね。何はともあれ、このポルト戦の勝利のおかげもあって、アトレレティコは翌木曜、メトロポリターノのプレスルームでアマゾン・プライムビデオのドキュメンタリー、昨季の闘いを描いた”Otra forma de entender la vida:siento lo que somos/オトラ・フォルマ・デ・エンテンデール・ラ・ビダ:シエントー・ロ・ケ・ソモス(もう1つの人生の理解の仕方:自分たちが何者であるかを感じる)”のプレミア試写会を気分良く開催。
再びホームでプレーする土曜午後9時(日本時間翌午前4時)キックオフのセルタ戦まであまり時間がないというに、ちょっと呑気なんですが、その次は火曜に初戦でクラブ・ブルージュに1-0で負けたレバークーゼンとのCL2節も迫っていますしね。金曜のマハダオンダ(マドリッド郊外)での練習では、ジョアンやコケ、マルコス・ジョレンテらが控えに回るスタメンを準備しているようでしたが、ヒメネスが背筋痛で欠席、速攻で打撲を治したオブラクもチーム練習に加わっていないというのは、相手のエース、イアゴ・アスパスが4試合で5得点と当たっているだけにちょっと怖いですよね。
そしてミッドウィークはゆるりと過ごした弟分チームたちの予定も見ていくと、ラージョは土曜の午後2時から、ホームにバレンシアを迎えることに。こちらも心配なのは暑さなんですが、もっと間が悪いのは前節、弟分仲間のヘタフェがメスタジャで5-1と大敗して、ガトゥーソ監督のチームに自信をつけてしまったことでしょうか。カバーニはまだ体調が整わないようですが、昨季の最終節で受けた出場停止4試合が明けたガヤも戻って来ますしね。ここマジョルカ、オサスナ戦と2連敗しているラージョだけに、水曜は両チームのOBということでメトロポリターノのパルコ(貴賓席)で観戦していたファルカオを筆頭にとにかく、撃ち負けないでほしいかと。
え、どこよりゴールが不足しているのは日曜午後6時30分と、こちらもまた暑そうなコリセウム・アルフォンソ・ペレスでレアル・ソシエダと対戦するヘタフェの方じゃないかって?いやあ、今週火曜にはFWムニル(セビージャから移籍)の入団プレゼンもあったキケ・サンチェス・フローレス監督のチームなんですが、この4試合で、まだ2得点しかできていませんからね。それ以上に失点が11もあるというのが、ここまでたったの勝ち点1で19位に沈んでいる原因なんですが、折しも相手は木曜のELグループリーグ初戦、オールド・トラフォードでマンチェスター・ユナイテッドにブライス・メンデスの挙げたPKゴールで0-1と勝利。
イマノル監督からして、「Ahora mismo habrá muy pocos más felices que yo/アオラ・ミスモ・アブラ・ムイ・ポコス・マス・フェリセス・ケ・ジョ(まさに今、自分より幸福な人はほとんどいないだろう)」と舞い上がっていたため、隙ができてくれないかと祈るばかりなんですが、こればっかりはねえ。8試合目で勝ち点を初めて獲得した昨季よりはまだマシとはいえ、あまりノロノロしていると、また監督交代の話も出てきかねませんし、敵の過密日程を利用して、何とかヘタフェも今季初勝利を挙げられるといいのですが。
まあ、その辺はあとでまたお話ししますが、今週のハイライトと言えば、W杯が11月に開催するせいで、慌ただしく、9月初旬から始まったCLグループリーグの開幕戦で、まずは火曜にマドリーがグラスゴーでセルティック戦に挑むことに。昨季はリーガとCLの二冠、今季もリーガ4連勝と好調な滑り出しを見せているアンチェロッティ監督のチームとあって、早い時間からのgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)が期待されたため、シビタス・メトロポリターノにお隣さんの試合前日記者会見を見に行っていた私も何とか、キックオフ時間までに近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に滑り込もうと急いだんですが…。
うーん、開始から活発に攻めていたのはセルティック・パークに駆けつけた6万人のサポーターに後押しされたホームチームの方で、アバダのシュート2本やマクグレゴールのゴールバー直撃などでGKクルトワを脅かしていたんですが、決定力が欠けていたのが幸い。だってえ、下手にリードされていた日には前半30分、今季のマドリー、唯一の弱み、たった1人しかいない、信頼できる真正CFが交代を要請したんですよ。そう、ベンゼマが右ヒザをケガしてしまったんですが、代わりに入ったのがfalso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)のアザールだったとなれば、最悪の事態を予想したファンも多かったかと。
もちろん、それだけで終わる彼らではなく、その4分後にはアザールからボールをもらったモドリッチがエリア内で敵DFを2人かわして、この金曜に迎える37才のバースデー前祝いゴールを挙げ、才能ある選手には年齢なんて関係ないことを証明。2点差にされたセルティックは27分になって、今季のチーム得点王、スコットランドリーグですでに6得点している古橋亨梧選手を入れたんですが、時すでに遅しです。勢いに乗ったマドリーは止まらず、32分にはクロースのパスをカルバハルが落とし、何とアザールまでゴールを決めているとなれば、エース抜きの試合をこれから幾つこなさないといけないか、わからなかったアンチェロッティ監督も少しは安心できたかと(最終スコア0-3)。
まあ、実際、マドリッドに戻って検査を受けたベンゼマは特に重傷ではなかったものの、どうやら復帰は9月の各国代表戦後になりそうだとか。ミリタオはそれよりちょっと早くて、来週末のマドリーダービーが目標のようですが、要はどちらも来週水曜のCLグループリーグ2節、サンティアゴ・ベルナベウでのライプツィヒ戦には間に合わない見込み。とはいえ、相手は初戦でシャフタールに1-4と大敗と、ロシアの軍事侵攻により、自慢だったブラジル人選手たちも離散、練習も試合もままならないはずのウクライナのチームに負けたせいか、テデスコ監督が早くも解任され、マルコ・ローズ新監督が赴任したばかりですからね。
スペイン代表常連FWのダニ・オルモも負傷中とあって、Decimoquinta(デシモキンタ/15回目のCL優勝のこと)達成に幸先いいスタートを切ったマドリーですから、あまり心配することはないかと思いますが、それより差し迫っているのは日曜午後2時(日本時間午後9時)からのマジョルカ戦。この時間だと、正面スタンドに直射日光が差し込んでくることはないものの、今週末のスペインは再び夏日に戻るようなんですよね。アギーレ監督のチームも2節前にはエスタディオ・バジェカスで弟分のラージョを0-2で破っていて、現在11位といい感じですし、まだシーズン序盤とあって、1試合で大きく順位が動くだけに、バルサと勝ち点2差で単独首位にいるマドリーもまだまだ気を引き締めていかないといけません。
そして翌水曜はアトレティコの番で、先週末のレアル・ソシエダ戦でレイニウドに激突され、太ももの打撲で交代していたGKオブラクが何とか間に合って、ポルト戦のスタメンに入れたのは頼もしかったんですけどね。メトロポリターノに駆けつけたファンも今季最初のCLとあって、張り切って応援していたんですが、これがまた、シメオネ監督も「No jugamos un buen partido no hubo ocasiones para ninguno/ノー・フガモス・ウン・ブエン・パルティードー・ノー・ウボ・オカシオネス・パラ・ニングーノ(ウチはいい試合ができなくて、どちらにもチャンスがなかった)」と認めていたぐらい、前半は何もない展開。
ハーフタイムには覇気に欠けていたカラスコ、自陣エリア脇でのクリアボールをジェレミー・ピノに贈り、先制点のアシストをした今季ホームデビューのビジャレアル戦に匹敵するようなミスを犯しかねなかったナウエルを後半頭から、レマルとデ・パウルに代えてみても、いえ、5分にはコケのシュートが珍しく入ったんですけどね。ラストパスを出したデ・パウルがオフサイドを取られ、スコアには上がらなかったため、16分には定番、レアンタル期間の2シーズンで出場率が50%を越えないよう調整中のグリーズマンが出動。更にはスタンドからpito(ピト/ブーイング)が飛ぶ危険を承知で、シメオネ監督はモラタをCBのエルモーソに、ジョアン・フェリックスをコレアにとメンバーをリフレッシュしていったんですが…。
その後、ポルトのオタビオが負傷し、担架で運び出されるまでかなり時間がかかったり、36分にはタレミが2枚目のイエローカードをもらって退場。0-0のまま、45分が過ぎた時はまた、昨季のCLグループリーグ初戦のようにスコアレスドローで終わるのを私も覚悟していたんですが、まさかロスタイムに大波乱が待っていようとは!ええ、9分と長い時間が電光掲示板に表示されてから、たったの1分、シメオネ監督が「ジョアンをコレアに代えたのは内側から攻めるため。ジョアンはサイドでプレーしていたから、コレアには中へ行くように指示した」というのが功を奏したか、右側から中心に向けてドリブルした彼がエルモーソに繋ぎ、そのシュートが敵DFに当たって、ゴールになってしまったから、ビックリしたの何のって。
いやあ、普通だったら、もうこれで勝ったようなもんですが、そうすんなりはいかないのがいかにもアトレティコですよねえ。0-2で負けたビジャレアル戦終了後に野次られて、諍いになっていた応援団席のファンと一緒にゴールを祝ったばかりのエルモーソが51分、今度はクリアしようとしたボールを腕に当てて、PKを献上しているって、まったく何をしているんだか。ウリベの蹴ったPKはオブラクの手が触れたものの、ネットに収まり、1-1に追いつかれてしまったんですが、まあ、そのおかげですかね。後でコンセイソン監督も「ロスタイムのロスタイムはもう終わっていたのに何でプレー続行したのかわからない」と文句を言っていたんですが、まさに9分を2分オーバーした56分に奇跡が起こったんですよ!
最後のプレーとなるCKをレマルが蹴ったところ、これがビッツェルの頭を経て、ファーサイドにいたグリーズマンの前へ。マドリーファンにはお馴染みのペペがクリアしようと脚を高く上げてきたのにも怯まず、ヘッドで合わせたボールが土壇場の勝ち越し点になってくれるなんて、一体、誰に予想できたでしょう。その直後に試合終了の笛が鳴ったため、選手たちもスタンドのファンとゴチャ混ぜになって喜んでいましたが、CL初戦からこんな勝ち方するなんて、まったく心臓に悪い。
ヒメネスなど、「Hemos ganado porque nunca dejamos de creer, lo intentamos hasta el final/エモス・ガナードー・ポルケ・ヌンカ・デハモス・デ・クレエル、ロ・インタモスモ・アスタ・エル・フィナル(信じるのを止めず、最後まで諦めなかったから、ボクらは勝った)」と言っていましたが、それこそ根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)が売りのお隣りさんじゃあるまいし。これじゃ、試合後の会見でコンセイソン監督が「ポルトはマドリー、バルサに次ぐCL試合数を誇るのに誰もその重みを尊重してくれない」と、八つ当たりのように怒っていたのも仕方なかったかも(最終結果2-1)。
え、それにしたって、殊勲のゴールを挙げたグリーズマンが今季、毎試合控えで、30分程度しかプレーしないのはあまりにもったいないんじゃないかって?その通りではありますが、どうやら経営陣には強制買取オプションの移籍金4000万ユーロ(約58億円)をバルサには絶対払わないという、固い意志があるみたいでねえ。確かに「Podemos ver la realidad/ポデモス・ベル・ラ・レアリダッド(現実を見ればいい)。彼は30分間プレーして凄くよくやっているが、60分プレーしたらどうかはわからない」というシメオネ監督の言葉ももっともなんですが、もしや先発していれば、ファンも途方もなく退屈な90分間を辛抱して過ごす必要がなかった可能性もなきにしろあらず。
ただ救いは、当人も「Claro que quiero más, pero voy a dar todo en los minutos que tenga/クラーロ・ケ・キエロ・マス、ペロ・ボイ・ア・ダール・トードー・エン・ロス・ミヌートス・ケ・テンガ(もっとプレーしたいのは当たり前だけど、出場できる時間に全力を尽くすよ)。自分はクラブの人間だと感じるし、プレーしたいチームはここだけだからね」と納得しているようなところなんですけどね。何はともあれ、このポルト戦の勝利のおかげもあって、アトレレティコは翌木曜、メトロポリターノのプレスルームでアマゾン・プライムビデオのドキュメンタリー、昨季の闘いを描いた”Otra forma de entender la vida:siento lo que somos/オトラ・フォルマ・デ・エンテンデール・ラ・ビダ:シエントー・ロ・ケ・ソモス(もう1つの人生の理解の仕方:自分たちが何者であるかを感じる)”のプレミア試写会を気分良く開催。
再びホームでプレーする土曜午後9時(日本時間翌午前4時)キックオフのセルタ戦まであまり時間がないというに、ちょっと呑気なんですが、その次は火曜に初戦でクラブ・ブルージュに1-0で負けたレバークーゼンとのCL2節も迫っていますしね。金曜のマハダオンダ(マドリッド郊外)での練習では、ジョアンやコケ、マルコス・ジョレンテらが控えに回るスタメンを準備しているようでしたが、ヒメネスが背筋痛で欠席、速攻で打撲を治したオブラクもチーム練習に加わっていないというのは、相手のエース、イアゴ・アスパスが4試合で5得点と当たっているだけにちょっと怖いですよね。
そしてミッドウィークはゆるりと過ごした弟分チームたちの予定も見ていくと、ラージョは土曜の午後2時から、ホームにバレンシアを迎えることに。こちらも心配なのは暑さなんですが、もっと間が悪いのは前節、弟分仲間のヘタフェがメスタジャで5-1と大敗して、ガトゥーソ監督のチームに自信をつけてしまったことでしょうか。カバーニはまだ体調が整わないようですが、昨季の最終節で受けた出場停止4試合が明けたガヤも戻って来ますしね。ここマジョルカ、オサスナ戦と2連敗しているラージョだけに、水曜は両チームのOBということでメトロポリターノのパルコ(貴賓席)で観戦していたファルカオを筆頭にとにかく、撃ち負けないでほしいかと。
え、どこよりゴールが不足しているのは日曜午後6時30分と、こちらもまた暑そうなコリセウム・アルフォンソ・ペレスでレアル・ソシエダと対戦するヘタフェの方じゃないかって?いやあ、今週火曜にはFWムニル(セビージャから移籍)の入団プレゼンもあったキケ・サンチェス・フローレス監督のチームなんですが、この4試合で、まだ2得点しかできていませんからね。それ以上に失点が11もあるというのが、ここまでたったの勝ち点1で19位に沈んでいる原因なんですが、折しも相手は木曜のELグループリーグ初戦、オールド・トラフォードでマンチェスター・ユナイテッドにブライス・メンデスの挙げたPKゴールで0-1と勝利。
イマノル監督からして、「Ahora mismo habrá muy pocos más felices que yo/アオラ・ミスモ・アブラ・ムイ・ポコス・マス・フェリセス・ケ・ジョ(まさに今、自分より幸福な人はほとんどいないだろう)」と舞い上がっていたため、隙ができてくれないかと祈るばかりなんですが、こればっかりはねえ。8試合目で勝ち点を初めて獲得した昨季よりはまだマシとはいえ、あまりノロノロしていると、また監督交代の話も出てきかねませんし、敵の過密日程を利用して、何とかヘタフェも今季初勝利を挙げられるといいのですが。
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