ようやく今季のチームが確定した…/原ゆみこのマドリッド

2022.09.03 20:35 Sat
©Atlético de Madrid
「何もなく終わってホントに良かった」そんな風に私がホッとしていたのは金曜日、移籍市場最終日明けになって、チェック漏れの退団選手がアトレティコから出ていなかったのを確認できた時のことでした。というのも2年前にはトマスのアーセナル電撃移籍、昨年はバルサからグリーズマンのレンタルが決まった後、クローズ刻限直前にサウールがチェルシーにレンタルで行くことが決まるというサプライズを味あわされていたからですが、幸い今年はロディがノッティンガム・フォレストへレンタル移籍したのも先週土曜と、まだ余裕のあるうち。

数日後には、「Se lo pedí por favor y fue muy rápido, en 48 horas/セ・ロ・ペディ・ポル・ファボル・イ・フエ・ムイ・ラピドー、クアレンタイオチョ・オラス(お願いだからって頼んだら、とても早く決まって、48時間しかかからなかった)」という、代理の左SB、レギロンがトッテナムからレンタルで来てくれることになりましたしね。実はこの彼、お隣さんのカンテラ(ユース組織)育ちで、2018-19シーズンにはレアル・マドリーのトップチームでも22試合に出場。そのせいで一部のアトレティコファンからは反発の声も上がっていたんですが、その後、セビージャに1年、トッテナムで2年プレーと結構、時間が経っていますし、チームにはモラタやマルコス・ジョレンテら、同じRMカスティージャ出身仲間やスペイン代表でコケとも繋がっていたおかげでしょうか。

入団が決まった後にはレギロンの彼女にまで、アトレティコ選手の彼女や奥さんたちからメッセージが届いて驚いたそうですが、とはいえ、当人がチームの戦力になれるのは先週受けた恥骨炎の手術のリハビリが終わった後。要はW杯でのブラジル代表招集を懸けてプレミアリーグへ河岸を変えたロディも開幕から3試合、まったく出場機会がなかったのを鑑みて、何せ、左のカリレーロ(長い距離をカバーするSB)にはロンドンで思ったような成果が出せず、今季は不満を言わずにシメオネ監督の指示するポジションでプレーすることにしたサウールとカラスコがいますからね。
補強選手が1カ月程、出られなくでも問題はないという判断だったんでしょうが、これが万が一、アトレティコがそれ以外、受け付けないと撥ねつけた契約破棄金額の6000万ユーロ(約84億円)をトッテナムがポンと払い、移籍最終日にカラスコをかすめ取られていたら、計算が大きく狂った可能性もあったかと。その一方で昨夏、バルサとレンタルを決めた時点で契約の2シーズン中、45分以上出場した試合がプレーできる試合数の50%を越えた時には4000万ユーロ(約56億円)の強制買取オプションがついているグリーズマンに関しては、かなりの部分が当人の気持ち次第。

ええ、最終日だった木曜に丁度、レアル・ソシエダ戦前の記者会見をしたシメオネ監督も「Me conocen desde hace diez años, soy hombre de club y lo seré/メ・コノセン・デスデ・アセ・ディエス・アーニョス、ソイ・オンブレ・デ・クルブ・イ・ロ・セレ(私のことは10年前から知っているはず。自分はクラブの人間でこれからもそうだ)」と言っていたように、昨季は37試合中、30試合で45分以上プレーしたグリーズマンは81%の出場率。今季は開幕から3試合、全て途中出場で75%に下がったというデータを見れば、移籍金を払いたくないクラブの指令を指揮官は忠実に守っているということになりますが、となれば、グリーズマンがもっとプレーするために移籍しようとしても理解はできる?
でも大丈夫。「jugar bien 30 minutos es más importante que 60 mal/フガール・ビエン・トレインタ・ミヌートス・エス・マス・インポルタンテ・ケ・セセンタ・マル(60分、悪いプレーをするより、30分のいいプレーの方がより大事だ)」(シメオネ監督)という説明に納得したかどうかはわかりませんが、今季の彼は後半15分以降にピッチに入った初戦のヘタフェ戦、そして前節バレンシア戦で得点。とりわけ0-1勝利の後者ではチームの救世主となった形ですが、こうやって手柄を増やしていけば、いえ、クラブもバルサとの減額交渉に成功するかもしれませんしね。そのうち大事な試合が来れば、乞われて先発に戻る日もきっと来ると当人が信じてくれたのが、残留の鍵だったかと。

まあ、この土曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からのレアル・ソシエダ戦ではまだムリでしょうけどね。ちなみに同じ2勝1敗の勝ち点6で並ぶ相手は市場最後の2日間でセルロート(昨季に続いてライプツィヒからレンタル)とサディク(アルメリアから移籍)と先日、7000万ユーロ(約98億円)の高額移籍金でニューキャッスルに売却したイサクの代わりとなるFWを2人も補強。久保建英選手(マドリーから移籍)もすでに初ゴールを挙げていますし、決して油断のできないチームですが、向こうは来週木曜にクリスチアーノ・ロナウドの残留するマンチェスター・ユナイテッドとのELグループリーグ初戦でオールド・トラフォード訪問というのは気が散る理由になるかも。

もちろん、アトレティコも来週水曜にはCLグループリーグ初戦でポルトをシビタス・メトロポリターノに迎えるんですが、先程出たサン・セバスティアン(レアル・ソシエダのホームタウン)遠征用招集リストではここ2日、マハダオンダ(マドリッド近郊)でのグラウンド練習をお休みしたレマル、金曜に違和感を訴えたクーニャがお留守番。他にビジャレアル戦で全治4週間のケガをしたサビッチ、その試合でレッドカードをもらい、出場停止の2試合目となるナウエルが欠けていますが、何より望まれるのは前節バレンシア戦でグリーズマンのシュートがカルロス・ソレル(翌日PSGに移籍)に当たってゴールになったようなツキがあること…ではなくて、ここ2試合不発のモラタがまたゴール勘を取り戻してくれることでしょうか。

え、そのバレンシアと日曜に対戦する弟分のヘタフェは市場最終日までバタバタ、動いていなかったかって?そうですね、今週はようやく今季初勝ち点をゲットした前節ビジャレアル戦でデビュー済みのラタサ(RMカスティージャからレンタル)のプレゼンがあったんですが、それもスコアレスドローだったせいか、水曜にはFWムニル(セビージャから移籍)が入団。こちらは即戦力ですので、メスタジャでは早速、ゴール日照りが続くチームの貴重なヘルプとなってくれるはずですが、続いて木曜には初夏にオリベイラがナポリに移ってから、ずっと懸案だった左SBも獲得できることに。

オリンピック・マルセイユからレンタルで来る28才のアマビはあまり有名な選手ではありませんが、日曜の試合ではケガで休んでいたレギュラー右SBのダミアンも戻れるようですしね。同じくゴール不足に悩むバレンシアは待望の大砲、カバーニ(マンチェスター・ユナイテッドとの契約を満了)が入団したものの、こちらは夏の間、自主トレしかしていなかったため、あと2週間程、準備にかかるのだとか。すでに水曜にはマキシ・ゴメスがトラブソンスポルに移籍を決め、ローマからレンタルでパトリック・クライファールトの息子、やはりFWのジャスティン・クライファールトは入ったものの、夏中、交渉していたブライアン・ヒルはトッテナムが解放してくれませんでしたしね。

せっかくカタールからハイメ・ロドリゲス(アル・ラーヤン)が「Si quieren a alguien que le ponga pases a Cavani, aquí estoy yo/シーキエレン・ア・アルギエン・ケ・レ・ポンガ・パセス・ア・カバーニ、アキー・エストイ・ジョ(カバーニにパスを出す誰かが欲しいなら、ここにボクがいる)」とツィッターでオファーをくれたのにも応じませんでしたし、どこもアタッカーを増やすのは大変だなと思わせる例ですが、今のところ、ヘタフェにとっても最少得点で済む相手の方が勝つ目は高そうな。せっかくの古巣来訪というのに、2試合目のベンチ入り禁止処分のせいでメスタジャのピッチで指揮できないキケ・サンチェス・フローレス監督もきっと、そういう展開を望んでいるんじゃないでしょうか。

ちなみに目標のFWが獲れなかったチームはまだ他にもあって、それは弟分仲間のラージョ。いやもう、9月1日の24時が来るまで、ゴール・プレイ(スポーツ専門オープン放送局)のレポーターがラ・リーガ本部に張り付いて、逐一、状況を報告していたんですが、ほとんど決まりかけていたRDT(ラウール・デ・トマス)のエスパニョールからの帰還は数秒遅れで書類の登録が間に合わなかったって、いやいや。もうFAXでやっていた時代じゃないんですから、そんな話、あっていい?

結局、午前3時過ぎにラージョのオフィスを出たところをマイクに直撃されたプレサ会長によると,「El fichaje de RDT no se ha producido porque no se ha cerrado/エル・フィチャヘ・デ・デ・RDT・ノー・セ・ア・プロドゥシードー・ポルケ・ノー・セ・ア・セラードー(RDTを獲得ができなかったのは契約をまとめられなかったせい)」だそうですが、もうこうなると最後の望みは現在、市場が閉まっても登録できる失業中のジエゴ・コスタ(昨年までアトレティコ・ミネイロ)だけ?どちらもラージョOBとはいえ、片や昨季17得点を挙げ、イアゴ・アスパス(セルタ)と一緒にサラ賞(スペイン選手の得点王)を獲った27才、他方はアトレティコでファルカオと黄金コンビを組んだ歴史はあるものの、もう33才ともなると、かなり期待値に差はありそうな。

ただ、最後はチャバリア(サラゴサから移籍)、アブドゥル・ムミン(同ビクトリア・ギマラエス)とDFの補強で終わったラージョですが、開幕から2試合、ファルカオに代わって先発CFを務めたアトレティコのカンテラーノ、カメージョスも前線の貴重な戦力。その上、「ボクの子供時代のアイドルだったから、超リスペクトしてて、最初はちょっと怖い気もしたんだけど、謙虚な人でいつも笑顔なんだ。まだアドバイスはもらっていないけど、ピッチでどんな動きをしてフィニッシュするかみるだけで、es hacer un máster de delantero centro/エス・アセール・ウン・マステル・デ・デランテーロ・セントロ(CFのマスターコースをやっているようなもんだよ)」と大先輩からどんどん、知識を吸収しているようですからね。

昨季、2部のミランデスで挙げた15ゴールを越える働きができれば、アトレティコのトップチーム定着の目も出てくるはずですが、そんなラージョは今週末、日曜にエル・サダルでのオサスナ戦。アラサーテ監督のチームも最終日にバルサから、FWアブデのレンタルに成功していますが、その前から2勝1敗とまずまずなスタート。ここはイラオラ監督も気合を入れて、前節のマジョルカ戦でエスタディオ・バジェカスから持っていかれた勝ち点3をお土産に帰って来てほしいものです。

え、それで結局、何にもなかったのがマドリーなんだろうって?そうですね、11月のW杯にスペイン代表として参加したいアセンシオなど、真剣に移籍先を探していたそうですが、条件が折り合うクラブが見つからず、最終日を待たずに残留を決定。バルベルデ、ロドリゴと先発の座を争うことにしたんですが、アンチェロッティ監督にしてみれば、彼は昨季チーム3番目の得点源。いてもらって困ることはまったくないんですが、オドリオソラとマリアーノも残ったのは計算外だったかも。

いやあ、前者は古巣のレアル・ソシエダとの交渉が進んでいたんですが、年棒の高さがネックとなって、話がまとまらず。後者はここ数年の夏同様、出場しなくても高給が保証されている、契約最後のシーズンをマドリーで満喫することにしたようですが、まあ、いいんですよ。8000万ユーロ(約112億円)のチュアメニ(モナコ)の移籍金はカセミロ(マンチェスター・ユナイテッドに移籍)と数々のカンテラーノのレンタルや売却で十分、元が取れていますし、チームもリーガ開幕から3連勝と絶好調。おまけにこの土曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)、満を持してのホーム開幕戦はすでに火曜から45~145ユーロ(約6300~2万円)のチケットが完売しているとなれば、問題なんてありませんって。

といってもまだ、サンティアゴ・ベルナベウの全面改装工事は終わった訳ではなく、昨季同様、マッチデーだけ何とか観客を入れて試合ができる状態になるだけなんですが、嬉しいのは使用可能な席が増えて、7万人近くに収容力が上がったこと。アンチェロッティ監督も「Ahora empieza la temporada porque empezamos a jugar cada tres días/アオラ・エンピエサ・ラ・テンポラーダ・ポルケ・エンペサモス・ア・フガール・カーダ・トレス・ディアス(今こそシーズンの始まりだ。3日おきに試合があるからね)」と言っていたようにこの4節、ベティス戦の後もホーム開催のマジョルカ戦、来週火曜にアウェイでのセルティック戦を挟み、その次はホームのライプツイヒ戦とCLグループリーグもあって、スタジアムもいよいよ稼ぎ時ですからね。

更に最初のビジターがマドリー同様、開幕3連勝しているペジェグリーニ監督のチームとなれば、シーズン最初の首位決戦を見逃したくないファンが大勢いるのは当然だったかと。ちなみにオドリオソラとバジェホが軽いケガで欠場となるマドリーに対して、ベティスは先日、2026年まで契約を延長したウィリアム・カルバーリョが打撲、ペッツェラが出場停止でプレーできず。経営陣の資金供与と選手たちの減棒により、サラリーキャップ制のせいで最後まで保留されていたクラウディオ・ブラボとウィリアム・ホセは選手登録が済んでいます。

何より、現在4得点でバルサのレバンドフスキと並んでピチチ(得点王)レースのトップに立つ、エースのボルハ・イグレシアスが当たっている上、ここ5シーズン、ベティスはサンティアゴ・ベルナベウで負けておらず。おそらく拮抗した展開になると思いますが…「よりコントロールしたい時はいいパスが出せるクロース、もっとエネルギーが必要な時はチュアメニとカマビンガ」と、前日記者会見で話していたアンチェロッティ監督のスタメン選択もローテーション重視を公言している今季だけに気になりますよね。

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