移籍市場が閉まるまでは気が抜けない…/原ゆみこのマドリッド

2022.08.31 20:00 Wed
「あれが最後のご奉公になるなんてツイていない」そんな風に私が同情していたのは火曜日、カルロス・ソレルのPSG移籍が決まったというニュースを見つけた時のことでした。いやあ、このバレンシアのカンテラーノ(下部チーム出身の選手)、キャプテンでもある彼はこの夏ずっと、ピーター・リン会長の腹積もりで、売却されるんじゃないかと言われていたんですけどね。折しも前日はアトレティコ戦でグリーズマンのシュートに当たり、軌道を変えたボールがGKママダシビリの意表を突いてゴールに。

そのせいでバレンシアは0-1と負けてしまったんですが、まあ、ガットゥーゾ監督のチームが得点できなかったのは別にソレルのせいだけではありませんからね。フェルネバフチェへの移籍が秒読みとなり、この3試合、全て途中出場しかしていないマキシ・ゴメスとは違い、一応、開幕ジローナ戦ではPKで決勝ゴールを挙げ、3節までに獲得している勝ち点3を置き土産にできましたし、月曜のアトレティコ戦当日に入団が決まったカバーニ(マンチェスター・ユナイテッドとの契約が満了)もすでにメスタジャのパルコ(貴賓席)にお目見え。
この決定力不足解決の切り札が次節、日曜にマドリッドの弟分、ヘタフェを迎える試合に間に合うのかはわかりませんがって、え?ヨソ様のことはともかく、アトレティコだって、この移籍市場残り3日、何があるかわからないのは同じだろうって?うーん、確かにその通りで、日曜にはノッティンガム・フォレストへロディのレンタル移籍がいきなり決定。と思えば、火曜にはその代わりとして、1週間前、恥骨炎の手術をしたばかりで今はまだ、プレーできないレギロン(トッテナムからレンタル)の入団も発表され、ビッツェル(ドルトムントから移籍)とナウエル(同ウディネーゼ)の獲得以来、止まっていたトップチームの人事異動が再開されたんですよ。

何より怖いのは、シメオネ監督までがどのくらい戦力減退を心配しているかと訊かれ、「No te lo puedes imaginar/ノー・テ・ロ・プエデス・イマヒナル(想像できないほどだ)」と答えていた主力選手の電撃移籍で、いえ、カラスコに目をつけたトッテナムには契約破棄金6000万ユーロ(約84億円)以外受け付けない旨、クラブ上層部は伝えたそうなんですけどね。懸念はグリーズマンにもあって、彼はバルサから2年目のレネンタル移籍の身分で在籍しているんですが、もし今季45試合(45分以上出場した試合のみ該当)以上出場したら、アトレティコは4500万ユーロ(約63億円)で買取らないといけないのだとか。

それがイヤで開幕から3試合、グリーズマンの先発がないんじゃないかという憶測もあるんですが、何せ、当人は途中出場2試合で2得点と貴重なゴール源となっていますからね。シメオネ監督も「hay que ponerlo cuando mejor le viene al equipo/アイ・ケ・ポネールロ・クアンドー・メホール・レ・ビエネ・アル・エキポ(チームがより良くなるタイミングで出さないといけない)」と言っていましたが、クラブが移籍金を払いたくなるほどの活躍ができるまで、今は彼の辛抱が続いてくれることを祈るばかりでしょうか。
まあ、アトティコの試合についてはまた後で話すことにして、他のマドリッド勢の先週末の試合をお伝えしていくことにすると、トップバッターを務めたのは弟分のラージョ。土曜にバックスタンドの改装工事が済み、全面オープンとなったエスタディオ・バジェカスにマジョルカを迎えて、ホームデビューとなったんですが、いやあ、満を持して、ファルカオが初先発となったものの、CBルジェーヌが出場停止だったのが響きましたかね。イラオラ監督はボランチのシスにカテナとコンビを組ませたんですが、前半13分、彼が自陣エリア前から出したパスが敵に渡り、ダニ・ロドリゲスのクロスから、ムリキのヘッドで先制点を奪われてしまったから、さあ大変!

先週、何時間も並んでabono(アボノ/年間指定席)のカードをゲットしたファンたちもいきなり冷や水を浴びせられた形ですが、それでも応援をしてくれるスタンドに後押しされて、ラージョの方が積極的に攻めていたんですけどね。ただ、イラオラ監督も「Era difícil encontrar espacios dentro de ese bloque tan bien organizado/エラ・デフィシル・エンコントラール・エスパシオス・デントロ・デ・エセ・ブロケ・タン・ビエン・オルガニサードー(あれほど組織されたブロックの中でスペースを見つけるのは難しい)」と言っていたように、アギーレ監督が敷いた5人DF制のマジョルカは一切、隙を見せず。

後半にはカメージョやベベも入れて前線を増やした甲斐もなく、19分にまたしても守備のミスから、「Al no estar Take Kubo es de los pocos verticales que temenos/アル・ノ・エスタル・タケ・クボ・エス・デ・ロス・ポコス・ベルティカレス・ケ・テネモス(久保建英がいない今、ウチでは縦の動きができる少ない選手)」と、アギーレ監督も褒めていたイ・ガンインに2点目を決められてしまってはねえ。結局、そのままラージョは0-2で負け、リーガでのホーム連続未勝利を11試合に更新してしまったんですが、大丈夫。白星でなくても試合後のブカネーロス(ラージョのウルトラグループ)は選手たちを称えるのを忘れていませんでしたよ。

そして翌日曜、私はヘタフェのビジャレアル戦を見にコリセウム・アルフォンソ・ペレスに向かったんですが、一体、ラ・リーガは何を考えているんでしょう。8月のマドリッドで気温35℃の午後5時30分キックオフなんて、ほとんど自殺行為と言ってもいいんですが、エメリ監督のチームが前節のシビタス・メトロポリターノでの試合同様、前半トロトロしていたのは暑さのせいもあった?それでも攻撃力の高い相手は前半だけでもペドラサ、ジェラール・モレノ、フォイスがシュート、GKダビド・ソリアが弾いてくれたおかげで何とか、ヘタフェは無失点をキープすることに。

前節のエスパニョール戦で2試合のベンチ入り禁止処分を喰らい、サウナ状態のラジオ用ボックスから見守るキケ・サンチェス・フローレス監督にそれ以上、汗をかかすことはなかったんですが、久々に5人DF制から4-4-2に変更したシステムも後半中盤を過ぎると、とても得点を挙げられなさそうな気配を感じたんですかね。相変わらず、ソリアがparadon(パラドン/スーパーセーブ)を連発していたせいもあったか、最後は全員守備状態となり、マタや入団したばかりのラトサ(RMカスティージャからレンタル)らのFWを時間稼ぎ交代で出場させて、やっとのことでスコアレスドローを勝ち取れるかと思いきや…。

ロスタイムにジェラール・モレノが撃ったシュートがアランバリの手に当たり、審判がハンドでペナルティを宣告した時にはコリセウム中の息が止まりましたよ!でも良かったです。主審がVAR(ビデオ審判)からのご注進でモニターを見に走り、ボールはアランバリの手に当たる前に顔に当たっていたとして、なしにしてくれたから、助かったの何のって。そのまま0-0で終了したため、ようやくヘタフェは今季初勝ち点を昨季の8節より早い3節でゲットできたんですが、はあ。こうもゴールが遠いのを目の当たりにすると、初白星はいつになるのか、心配になってしまいますよね。

そして夜10時からはレアル・マドリーがエスパニョール戦をプレーしたんですが、最近のマドリッドはこの時間になると涼しいものの、バル(スペインの喫茶店兼バー)の中が暑かったのはもしや、政府の節電要請に応えて、エアコンの設定温度を28℃にしていたから?RCDEスタジアムのあるバルセロナなど、26℃ともっと涼しかったようですが、そのせいか、プレーのスピード感が昼間のヘタフェ戦とは大違い。前半12分にはチュアメニのスルーパスをビニシウスが決めて、マドリーが先制したんですが、エスパニョールも時間が経つにつれ、昨季の2冠王者との実力格差を忘れていったようで…。

ええ、43分、ホセルの最初のシュートはGKクルトワが弾いたものの、ボールがミリトンに当たって戻ってきたところをホセルがまたシュート。これが決まって同点にされたため、アンチェロッティ監督も後半13分には早めにメンバーをリフレッシュしたんですが…モドリッチとバルベルデに代わって、カマビンガとロドリゴが入った途端、急にボールが凄い勢いで右に行ったり、左に行ったりするようになったから、驚いたの何のって。実際、アンチェロッティ監督も後で「Cuando entra en un partido roto nos ayuda mucha su energía/クアンドー・エントラ・エン・ウン・パルティードー・ロト・ノス・アジュダ・ムーチャ・ス・エネルヒア(試合が開いた展開になった時は彼のエネルギーが大いにウチの助けになる)」と言っていたんですが、そのカマビンガが魅せたのは20分。

前節セルタ戦ではスタメンだったのが、控えに戻されて相当悔しかったか、一気にドリブルで駆け上がって撃った彼のシュートは敵DFに当たってしまったものの、クロースが拾って、ゴール前のベンゼマへ。エースが流し込んでゴールになったんですが、残念ながら、これはオフサイドで認められません。同点のまま、45分が近づいてきたため、エスパニョールを応援していたアトレティコファンのウェイターさんも拳を握って、TV画面を見つめていたんですが…マドリーにはいるんですよ。昨季のCL決勝トーナメントの2ndレグでは必ず、remontada(レモンターダ/逆転劇)のドラマに関わっていた選手が。

それはロドリゴでこの日は43分、エリア内からクロスを送り、それを反対側に飛び込んだベンゼマが押し込んで、土壇場で勝ち越してしまったから、今季も奇跡は続いているとしか言いようがないかと。いえ、ロスタイムに昨季、アトレティコにレンタルで来て、1度も試合でプレーしていないGKルコントがエリアを出てクリアしたボールがセバージョスにより戻り、それをシュートして決まった彼のゴールはオフサイドだったんですけどね。といってもこの時はVARのモニターを見た主審が、ルコントがセバージョスを蹴ったとして、レッドカードを提示。

交代枠のもうなかったエスパニョールのGKがCBカブレラだったのも幸いしたか、ベンゼマが見事な直接FKで3点目を入れてくれたとなれば、今は先発アピールに必死なロドリゴもシャッポを脱ぐしかない?途中、もどかしい場面はあったものの、1-3で勝利したマドリーはこれで開幕3連勝。リーガ20チーム中、同じ成績なのはベティスだけなんですが、勝ち点9で首位に並ぶ両チームが次節、土曜には開場準備が整ったサンティアゴ・ベルナベウで頂上対決っていうのもちょっと珍しい偶然かと。

ちなみにペレグリーニ監督のチームは先週末のオサスナ戦前には何とか、遅れていたホアキン、グアルダードー、ルイス・フェリペ、ルイス・エンリケの選手登録が終了。今週はGKグラウディオ・ブラボもできそうで、後はウィリアム・ホセだけなんですが、午後4時14分のキックオフですし、マドリーのホームデビューはかなり、熱い戦いになるんじゃないでしょうか。

え、それで月曜のアトレティコはメスタジャで今回も苦戦していなかったかって?その通りで、前半は両チームともVAR恩恵を受けていたんですけどね。というのも22分にはムサにエリア外からのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決められたアトレティコだったんですが、その起点のプレーでジョアン・フェリックスがディアカビに引っくり返されるファールを受けていたことが発覚し、バレンシアの先制点は認められず。すると36分には敵ゴールに向かってドリブルしていたモラタがコレイラに倒され、主審は一旦、レッドカードを出したものの、こちらもモニターチェックでイエローカードに減刑され、相手は10人になるのを免れたから。

実際、ほとんどの時間帯でアトレティコは守勢に回り、自陣エリア近くから離れられなかったため、私もかなりフラストレーションが溜まったんですが、今回は後半19分にコンドグビアとデ・パウルから代わったレマル、グリーズマンのフランス人コンビに幸運の女神がついていたようです。それが21分、前者が敵陣で取り戻したボールをエリア前にいた後者に送り、グリーズマンのシュートがソレルに当たってゴールになったプレーですが、だってえ、それ以外、GKママダシビリに手も足も出なかったんですよ。

ええ、GKオブラクも「Hemos tenido ocasiones, pero el portero ha parado todo/エモス・テニードー・オカシオネス、ペロ・エル・ポルテーロ・ア・パラードー・トードー(ウチにはチャンスがあったが、GKが全部止めてしまった)」と言っていたように、前半はモラタやジョアンがセーブされ、1点リードした後もカラスコ、グリーズマン、クーニャが2点目を取らせてもらえなかったとなれば、まさにソレルがあの場所にいたのは天の配剤としか思えないかと。この日も最後まで攻撃的交代をして、コレアと一緒に入ったクーニャがセットプレーで決めたゴールもオフサイドを取られてしまいましたしね。

前節ビジャレアルに0-2に負けた後、プレシーズンマッチ、そして開幕ヘタフェ戦までファンが夢見ていた、今季はゴールに不自由しないアトレティコの幻想も、この0-1というシメオネ監督の定番勝利で一段落したようですが、何にしろ、大事なのはリーガ上位を狙うライバルたちから遅れを取らないこと。次節もレアル・アレナでのレアル・ソシエダ戦ですし、その先はホームでのポルト戦、アウェイのレバークーゼン戦とCLグループリーグ連続週開催にも立ち向かわないといけませんし…とにかく大事な選手がいきなりいなくなるという事態だけは起きないでほしいですよね。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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運も実力のうち…だよね/原ゆみこのマドリッド

「ツキがあり過ぎたツケが来たのかしら」そんな風に私が溜息をついていたのは木曜日、恐怖だったCLアウェイ戦を見事な勝利で乗り切り、アトレティコが2年ぶりのグループリーグ突破をしたのに胸を撫で下ろしていた矢先、バリオスがフェイエノールト戦でヒザの半月板を損傷。金曜に手術を受けることになり、全治1カ月から、最悪の場合、3カ月もありうると知った時のことでした。いやあ、カンテラーノ(アトレティコBの選手)の彼は昨季、まだ19才ながらトップチームに昇格。プレシーズンからシメオネ監督の下で始めた今季は9月にもスペインU21代表から帰って来た後、CL1節ラツィオ戦でゴールを挙げながら、負傷してしまい、11月初めにようやく戻ったんですけどね。 そのせいで10月は代表のお勤めがなく、ここまで元気にプレーできていたんですが、奇しくもこのCL5節も11月の代表戦週間明けからの2試合目。伝え聞くところによると、フェイエノールト戦の後半45分、上田綺世選手からボールを奪おうとして、左ヒザを捻ったようですが、いやあ。8人もの負傷者を抱えるお隣さんと違って、今はアキレス腱断裂のレマルが長期リハビリしているだけのアトレティコですが、バリオスにはコケに何か異常があった時、中盤の底を務められる唯一の選手という特殊な役割がありましたからね。年明けからはコパ・デル・レイ参戦、スペイン・スーパーカップ、そしてCL決勝トーナメントとまた過密日程が続きますし、ここはクラブも冬の移籍市場でボランチの補強を考えた方がいい? まあ、それは先の話として、まずは火曜のフェイノールト戦がどうだったか、お話ししていくことにすると。早い時間の試合でラツィオがセルティックに2-0と勝ち、首位を奪われていたアトレティコは早速、前半12分にはグリーズマンがセンターから放ったロングパスをモラタが追って、GKバイロウとの1対1のチャンスをゲット。とはいえ、最近のお決まりでそのシュートは弾かれてしまい、ええ、ここ6試合、CLアウェイゲームでは白星がない彼らですからね。今回もドローで凌いで、最終節、無敵のメトロポリターノでのラツィオ戦に懸けるしかないのだろうかと弱気になった私だったんですが、この日は最大の味方が相手チームにいたとは! そう、その2分後、グリーズマンの蹴ったCKがクリアされ、エリア外に出たボールをコケがヘッドでジョレンテに送ると、そのクロスはゴール前に落ちたんですが、ビッツェルが触れなかったボールがヘールトライダのお腹に当たって、オウンゴールになったから、ビックリしたの何のって。これでまんまと1点リードしたアトレティコでしたが、前半の残りは再びモラタがヘッドを外したぐらいで、大したこともなく、0-1で折り返すことに。負けると敗退が決まってしまうフェイノールトは後半頭から、パイシャオンに代え、上田選手を投入し、2節の対戦では出場停止でいなかったエースのサンティ・ヒメネスがシュートするスペースを前線に作ろうとしたんですが…。 いやあ、それが、ビッツェルが自陣エリア近くで敵に奪われたボールから、サンティ・ヒメネスのシュートをホセマ・ヒメネスが防いだ後、再開12分にはこの試合、唯一のアトレティコの選手のgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)が生まれたんですよ。ジョレンテと交代で出場したバリオスがエリア内に入れたバスをエルモーソが受けたところ、何と当人は1度もゴールの方角を見ずにvolea(ボレア/ボレーシュート)。それがすっぽりゴールに入ってしまったから、ビックリしたの何のって。いえ、当人は後で「自分の位置がよくわかってなかったけど、sí que la intención es de tirar a portería/シー・ケ・ラ・インテンシオン・エス・デ・ティーラル・ア・ポルテリア(そう、自分の意図はゴールに向けて撃つことだった)」と言っていたんですけどね。 何はともあれ、これでリードが2点となり、ちょっとは余裕が出て来たアトレティコだったんですが、実際、今季のグループリーグアウェイ戦では後半ロスタイムに敵GKにゴールを決められて、ラツィオと引分けたり、2-2まで追いつきながら、デ・パウルの退場でセルティックに逆転できなかったりと、予想外のドンデン返しを見せてくれていますからね。この日も24分にせっかく完璧なカウンターでモリーナが敵エリアに侵入。フリーでラストパスをもらったデ・パウルが外してしまうなんて、勿体ないことをしていたせいもあり、32分にはCKをバイファーが頭で決め、1-2と迫られて、またしても暗雲が立ち込め始めたんですが…。 いやあ、あるんですね、世の中にはこんな運のいい試合も。というのも36分、モリーナが蹴ったFKが3点目のゴールになったと思いきや、え?正確無比なヘッドを放ったのがサンティ・ヒメネスだったなんてあっていい?大事な場面でオウンゴールを贈ってしまうのがアトレティコであれば、全然、驚きには値しないんですが、これでスコアは1-3。おかげで「Sabíamos que necesitábamos una victoria visitante/サビアモス・ケ・ネセシタバモス・ウナ・ビクトリア・ビシタンテ(ボクらはアウェイ勝利が必要なことを知っていた)。これまでのいい流れを維持するためにもね」とヒメネスも言っていたように、とうとう内弁慶から脱皮する勝利を挙げ、来年もCLでプレーする権利を手に入れただけでなく、ラツィオ戦で勝ち点1をゲットすれば、1位突破もできるとなれば、もう最高の結果じゃないですか。 ちなみにこの試合でMVPをもらったのはリケルメで、ええ、当人も最初は本気にしていなかったんですが、実際、リーガの前節マジョルカ戦ではサムエル・リノがいいプレーをしていたため、誰もが彼のリピートを疑っていませんでしたからね。シメオネ監督によると、「リケルメがプレーしなければならなかった。Las características de Roro entendía que le iban mejor al equipo/ラス・カラクテリスティカス・デ・ロロ・エンテンディア・ケ・レ・イバン・メホール・アル・エキポ(チームにはロロの特性の方がいいと思った)」そうで、確かに左のカリレーロ(長い距離をカバーするSB)として、サンティ・ヒメネスより脅威だったミンテとしっかりマッチアップ。11月にスペインA代表に初招集されたのも励みになったか、攻守両面における当人の成長ぶりには目を瞠らんばかりだったかと。 こうなると、モンジュイックでポルトに2-1と逆転勝ちし、こちらは3年越しとなるCL決勝トーナメント進出を勝ち取ったバルサと対戦する日曜午後9時(日本時間翌午前5時)から試合でも、リケルメとリノのどちらがスタメンになるのか気になるところ。何せ、相手の方はまだGKテア・シュテーゲンが背筋痛から復帰できるか不明とはいえ、ポルト戦で決勝点を挙げたジョン・フェリックスもレンタル元への恩返しに燃えているはずですしね。いくらシメオネ監督が「Tiene nuestra confianza. Con más frialdad y tranquilidad volverá a marcar/ティエネ・ヌエストラ・コンフィアンサ。コン・マス・フリアリダッド・イ・トランキリダッド・ボルベラ・ア・マルカル(彼を信頼している。冷静さと落ち着きをもう少し持てば、またゴールは入るはずだ)」と庇っていたとて、スペイン代表戦を含めて、ここ3試合、モラタがまたゴール入らない病にかかってしまったようなのは心配ではありますが、前節、弟分のラージョが引分けて、アトレティコに贈ってくれた3位の座をこの週末も維持できたらいいですよね。 そして翌水曜はレアル・マドリーの番だったんですが、まあ、こちらはすでにグループ突破済みでしたからね。負傷者が大量発生していても、それ程、切迫感はなかったんですが、それが油断に繋がったんでしょうか。サンティアゴ・ベルナベウにナポリを迎えた彼らは10分、クワラツヘリアのクロスをゴール右脇からディ・ロレンツォがゴール前に送り、負傷明けのオシムヘンに代わって、スタメンCFに抜擢されたジョバンニ・シメオネがシュート。GKルーニンが弾いたものの、すでにボールはラインを越えていたため、先制点を奪われてしまったんですが、となれば、わざわざその日の午前中、ナポリの滞在ホテルまでシメオネ監督が長男を励ましに行った甲斐があったというもの? ところがマドリーもさるもので、その1分後、リーガ前節のカディス戦では試合前に腹痛を起こし、ビニシウスが負傷でいない間の貴重な先発の機会を失ったブライムがリベンジとばかりに敵陣でボールを取り戻し、ロドリコにパス。彼がまた、ヌエボ・ミランディージャでのデジャブのような動きでナポリのDFをかわし、あっという間に同点ゴールを決めているんですから、息つく暇もないとはまさにこのことですって。更にマドリーは22分にもアラバが送ったロングパスをベリンガムがヘッドで決め、さくさくと逆転したんですが、2節で対戦したルディ・ガルシア監督から、マッサーリ監督に代わったナポリはそのぐらいでは決して諦めず。 ジョバンニをオシムヘンに代えてスタートした後半2分には再び、マドリーの隙を突いて、アンギサがエリア内左側に切り込むと、いえ、彼がゴール前に送ったパスはセバージョスがクリアしたんですけどね。まさかそのボールが再びアンギサに渡り、今度はそのシュートで同点ゴールを奪われてしまうとは!いえまあ、グループ首位確定には勝ち点1が必要なだけのマドリーでしたから、2-2で引分けても全然、問題はなかったんですが、それではベルナベウに駆けつけたファンが満足しませんって。 そこでアンチェロッティ監督も早々に、せっかくチュアメニ、カマビンガ、モドリッチと中盤に欠場者多発で先発のお鉢が回ってきながら、あまりいいところを見せられなかったセバージョスをCFのホセルに代え、ふくらはぎにこむら返しを起こしたブライムもニコ・パスに代えたんですが、先に喝采を浴びたのは19才のカンテラーノ(RMカスティージャの選手)の方でした。そう、時間は39分とちょっと遅かったんですが、エリア外からのシュートを決め、勝ち越しゴールを挙げてくれたから、スタンドもどんなに沸いたことか。 え、それよりカディス戦でロドリゴのラストパスを誰にもわからない理由でスルー。ゴールを入れる絶好の機会を逃していたホセルがこの日も何度も簡単なシュートを失敗していた方が気にならないかって?いやあ、その通りで、MFの身でありながら、ここまでCL4試合出場で4得点、リーガと合わせてもう15得点も挙げているベリンガムもそれには同情を禁じえなかったんでしょうかね。「チームメートがツイていない時は支えてあげることが大事だから」と、後半ロスタイム4分にはエリア内右側からキラーパスを送り、ホセルがゴール運を取り戻す手伝いをしていたんですが、何かもう、この20才、あまりに人間ができすぎていない? 実際、最後は4-2で勝った後、アンチェロッティ監督も「若いのに真面目でプロ意識がある。勤勉で他の選手たちともよく理解し合っているが、tiene que mejorar su español. Nadie es perfecto/ティエネ・ケ・メホラル・ス・エスパニョール。ナディエ・エス・ペルフェクトー(もっとスペイン語が上手くならないといけない。完璧な者はいないからね)」と、彼の欠点を探すのに困っていたぐらいですが、いやあ、この日のマドリーベンチにはジダン監督の三男、テオが初招集で入っていたせいもあったんですかね。いきなり世間がベリンガムを現役時代のジダンと重ねて見るようになったのは不思議でしたが、今のゴールペースが続く限り、クリスチアーノ・ロナウド(現アル・ナサル)と十分、タメを張れる存在になれるんじゃないでしょうか。 そんなマドリーは今週末、土曜午後6時30分(日本時間翌午前2時30分)に再び、ベルナベウでリーガのグラナダ戦を迎えるんですが、折しも木曜からはGKケパがチーム練習に復帰。またルーニンは控えに戻ることになりますが、どうやら他の選手はハムストリングス筋肉痛のモドリッチも含め、誰も戻ってこないよう。ちなみに現在、降格圏の19位にいる相手は前節にアラベスに負けた後、パコ・ロペス監督を解任して、ウルグアイ人のアレクサンドル・メディーナ監督を招聘。ヨーロッパのチームを率いるのは初めてとなる指揮官ですが、果たして新監督効果が発現するのかどうか。マドリーも首位に戻ったとはいえ、まだジローナと勝ち点は同じですからね。ここはきっちり白星で締めておけるといいのですが。 そしてヨーロッパの大会とは縁がないマドリッドの弟分チームたちのリーガ15節はヘタフェが金曜試合でラス・パルマスとのアウェイ戦に挑み、ラージョは土曜にアスレティックとサン・マメスで対戦。奇しくもどちらも勝ち点19で前者は8位、後者は10位につけているんですが、コンフェレンスリーグ出場圏の7位ベティスとは勝ち点5、その上のEL圏のレアル・ソシエダとアスレティックとは6と、そんなに離れていませんからね。ここは勝って、年内残り試合への励みにしてほしいところですが、懸念となるのは、前者は今季アウェイ未勝利、後者はここ4試合を3分け1敗と白星から遠ざかっていることでしょうか。兄貴分とは逆に来週はコパ2回戦が入るため、ちょっと忙しくなる2チームですが、いい結果を出してくれることを期待しています。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.12.01 20:00 Fri

悪い週末ではなかった…/原ゆみこのマドリッド

「ずっとホームゲームが続けばいいのに」そんな風に私が溜息をついていたのは月曜日、まだリーガ14節の余韻も冷めやらぬうち、すでにアトレティコがロッテルダムに到着している映像を見た時のことでした。いやあ、メトロポリターノでは今年の2月以来、破竹の白星街道を続けている彼らなんですが、アウェイでは話が別。今季リーガで勝ち点を落としたのもベニト・ビジャマリン(ベティス)、メスタジャ(バレンシア)、エスタディオ・デ・グラン・カナリア(ラス・パルマス)の3回の遠征で、これがCLとなると3シーズン越しとなり、今季グループリーグのラツィオ戦、セルティック戦の引分けを含め、6試合白星なしを継続中なんですよ。 この火曜午後9時(日本時間翌午前5時)からの5節フェイノールト戦で勝ち点1を取れば、決勝トーナメント進出が決まると言っても、万が一、先週末のエクシリオール戦でもハットトリックで2-4の勝利に貢献。2節で対戦した時は出場停止でいなかったサンティ・ヒメネスが爆発して、うっかり負けるようなことがあると、最終節、メトロポリターノにラツィオを迎える試合に何が何でも勝たないといけなくなっちゃいますからね。いくらホームでは無敵とはいえ、さすがにそれは怖いため、すでに前節のスポルティング・ブラガ戦でグループ4勝目を挙げて突破が確定。水曜午後9時にサンティアゴ・ベルナベウで開催されるナポリ戦で勝ち点1を取れば、首位通過も決まるレアル・マドリーが羨ましくなったりもするんですが…。 まあ、それはともかく、先に代表戦明けのリーガでマドリッド勢がどうだったか、お話ししていくことにすると。トップバッターとなったのは弟分のラージョで土曜の午後2時という、日差しに溢れたチャビ監督の嫌いな時間にエスタディオ・バジェカスでキックオフとなったんですが、何せ、イラオラ監督(現ボーンマス)時代から、彼らはここ4試合で3勝1分けとバルサをお得意様にしていますからね。生憎、チーム内ピチチ(得点王)のアルバロ・ガルシアが累積警告で出場停止という不都合はあったものの、相手も正GKのテア・シュテーゲンを背筋痛で欠いていたため、スタンドを埋めたファンもかなり楽観的に成り行きを眺めていたところ、いやあ、驚かされました。 というのもまだ、0-0だった前半38分、イシが受けたファールから、ウナイ・ロペスがFKを蹴ったところ、クリアされたボールをまずはトレホがエリア前から撃ち、それがイニゴ・マルティネスに弾かれて、再びウナイ・ロペスの下へ。かなり離れたところから、今度はゴールを狙った彼のシュートが見事、GKイニャキ・ペーニャを破り、ラージョが先制点をゲットしたから。これには昨季、後半ロスタイムにやはりエリア外からの彼のゴールで2-1とラージョに土壇場の敗戦。おかげで当時、率いていたエルチェをクビになってしまったフランシスコ監督も「Ya era hora de que marcara/ジャー・エラ・ホラ・デ・ケ・マルカラ(そろそろゴールを挙げる頃だった)。最後に決めたのが私と対戦した時だったから、それが軽口のネタになっていた」と後で打ち明けていましたが、いやホント、ラージョを前にした時のバルサは人が変わりますよね。 もちろん、スペイン代表戦でガビがヒザの靭帯を断裂し、今季絶望になってしまったというショックなことがあったばかりという事情はわかりますが、GKディミトリエフスキもこんなにヒマな試合は珍しかったかも。1-0のまま、後半に入ると、チャビ監督もフェラン・トーレスをジョアン・フェリックスに、ロメウをギュンドガンにと代表戦での消耗と火曜のCL、突破の懸かったポルトとの決戦を考えて、温存していた選手を投入してきたんですけどね。頼みのレバンドフスキも火を吹かず、ラフィーニャのシュートがゴールポストを叩いた時にはヒヤリとさせられたものの、これは昨今の流れで、最少得点差で勝てるんじゃないかと、スタジアムの誰もが思い始めていた頃のことでした。 まさか38分、バルデのクロスをレバンドフスキの後ろからクリアしようとしたルジューヌがオウンゴールにしてしまうとは!いやあ、その後はバルサがremontada(レモンターダ/逆転劇)を目指して、かなり攻め込んできたため、ムミンとウナイ・ロペスのケガで交代枠を計画通りに使えなかったラージョとしてみれば、先日の兄弟分ダービー、マドリー戦同様、引分けで終わったのは大金星と言っていいんですけどね。相変わらず、チャビ監督などは終盤、ラフィーニャがエスピーノにエリア内で倒されたプレーがスルーされたことに、「Es penalti claro. No es una excusa/エス・ペナルティ・クラーロ。ノー・エス・ウナ・エクスクーサ(あれは明らかにペナルティだ。これは言い訳じゃない)」と、1-1のドローを終わったことに不服を唱えていたとはいえ、1-1は妥当な結果だったかと。 まあ、ここは健闘した弟分を称えることにして、ええ、おかげで同日夜、試合をする兄貴分のアトレィコにいい顔もできましたしね。ちなみに今週のラージョは土曜のアスレティック戦まで試合がなく、そこからミッドウィークのコパ・デル・レイ2回戦を挟んだ3連戦となるんですが、え?もう1つの弟分、ヘタフェも土曜のアルメリア戦でハードスケジュールに入る前の助走をしっかりしていなかったかって?その通りで、現在、工事中のアトーチャ駅にメトロが止まらず、セルカニアス(国鉄近郊路線)との接続が悪かったのと、メトロポリターノ周辺には幹線道路との接続工事で通行止めがあちこちに出現。タクシーを使っても、アトレティコの試合との綱渡り梯子観戦は難しそうだったため、午後6時30分のコリセウムに私は行かなかったんですけどね。 そういう時に限って、ボルダラス監督のチームはいい試合をして、いえ、開始7分にはエンバルバのCKから、チュミが頭で流し、ファーサイドでラマザニに決められて、早々に先制点を奪われてしまったんですけどね。おかげで目が覚めたか、それまでも何度か、シュートを試していたグリーンウッドが34分にエリア外からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めて同点に。45分にもラタサのヘッドが敵に当たって落ちたボールをすかさずマジョラルが撃ち込んで、前半のうちに逆転に成功したんですよ。後半もオスカル・ロドリゲスのシュートがゴールバーに当たるなど、チャンスはあったものの、追加点はなく、2-1のまま、ダントツ最下位のチームに手堅く勝利していましたっけ。 おかげでヘタフェ(8位)もラージョ(10位)と同じ勝ち点19となり、5位以下でリーガ第2陣を構成する7位ベティスと勝ち点5差に。金曜のラス・パルマス戦に勝てば、ヨーロッパの大会出場圏がかなり近づきますが、残念なニュースはカルモナとラタサが負傷交代してしまったことでしょうか。まだ、どのくらいのケガなのかはわからず、軽傷であるのを祈るしかないんですが、今週の弟分チームには余裕があるのが救いですよね。 そして土曜はバジェカスから一旦、家に戻り、薄手セーターもヒートテックに、コートも丈の長いものに代えて、午後9時のマジョルカ戦を見にメトロポリターノに向かった私だったんですが、この試合、前半にも後半にもお祝いがあったんですよ。そう、2006年から09年までアトレティコを率いたアギーレ監督の古巣再訪にスタンドが拍手を贈った後、開始2分にはジョレンテの送ったゴール前へのラストパスにあと一歩、モラタが届かず。7分にもサムエル・リノの折り返しをコレアがvolea(ボレア/ボレーシュート)で天高く撃ち上げてしまったため、早期の先制点奪取は叶わなかったんですが、その直前にこの日、アトレティコで600試合出場を達成したコケがファンの喝采を浴びることに。 それ以外、モラタがヘッドをまたしても外すなど、大したことのなかった前半でしたが、0-0のまま始まった後半早々にも彼はフリーで撃った頭での一撃をGKライコビッチにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまってねえ。ビジャレアル戦、スペイン代表のジョージア戦から、ここ3試合、こんな感じなんで、そろそろゴール運気が停滞期に入ったんじゃないかと少々、心配になってしまったんですが、大丈夫。アトレティコにはフランス代表で2試合皆勤しながら、ローテーションさえ必要のない頼りになる選手がいるんです。 それはもちろんグリーズマンで、守りの堅いマジョルカの牙城を崩すのは一筋縄ではいかないと見たシメオネ監督は18分、コケとコレアを下げて、デ・パウルとリケルメを投入。それまで2列目でプレーしていた彼を前線に上げたところ、それから1分もしませんでした。エルモーソのクロスをエリア内でコペテとの空中戦に勝って、ヘッドを決めてくれたのは!こちらもクラブ単独2位となる通算170得点という記録だったため、場内は一斉に祝福モードに入ったんですが、ええ、1位の故ルイス・アラゴネス監督まで、これであと3本となりましたからね。今季のゴール数も13本と順調に伸びているため、彼がアトレティコの最多得点選手として、歴史に名を残す日はもう秒読みに入った? いえまあ、この日のアトレティコの得点はこのゴールだけで、終盤、なりふり構わず、反撃してきたマジョルカがラリンやアマトのシュートでGKオブラクを脅かすなんてこともあったんですけどね。何とか、そのまま1-0で逃げ切った彼らはこれでとうとう、クラブ記録を更新するホーム18連勝に。同時にバルサを抜いて、3位にも浮上したんですが、ちなみに試合後、グリーズマンを最後まで代えなかったことについて訊かれたシメオネ監督は、「前半はいい試合をしたと言えなかったが、常に違う何かを持っている。だから、代表でプレーしてきた後でもピッチに残した。火曜の試合でも大事な存在になるだろう。El sabe gestionarse/エル・サベ・ヘスティオナールセ(彼は管理することを知っている)」とコメント。 確かにケガしやすいという面では、この試合の後半37分にモラタと交代して、2カ月ぶりとなる復帰を遂げたメンフィス・デパイの一挙手一投足の方がまた、どこか痛めないかと気になったもんですけどね。幸い、その日の彼は残り10数分を無事に切り抜け、翌日のマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションでも問題はなかったよう。恙なく、ロッテルダム遠征に同行できたため、プレーする時は大抵、ゴールを決めてくれるFWですし、フェイエノールト戦ではチームの力になってくれるといいですよね。 そして日曜はまた、午後2時にブタルケに向かい、ここしばらく2部の首位に君臨しているレガネスが序盤に2点を先行されながら、ラバがエリア内で倒されたプレーをペナルティにしてもらえただけでなく、相手にレッドカードが出されるという幸運が味方に。ネユのPKと直後にピッチに入ったダビド・ガルシアのヘッドで前半のうちに追いつき、そのままラシン・フェロルと2-2で引分けるのを見て来た私だったんですが、ここ2試合、ドロー続きでも2位バジャドリーとの勝ち点差は4、3位エスパニョールとの差は5もありますからね。2部は長丁場のため、4年ぶりの1部昇格が実現するかはまだ、何とも言えませんが、少なくともファンにマドリッド1部5チーム体制復活の夢を与えてくれているのは確かだったかと。 一方、午後6時30分からのカディスvsマドリー戦は近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でTV観戦となったんですが、うーん、マルカ(スポーツ紙)のサイトで見たスタメンにはブライムがいたんですけどね。それがいざ、キックオフとなった時にはロドリゴに変わっていて、煙に巻かれた気分になったのは私だけではなかったかと。実はこれ、試合直前にブライムのお腹が痛くなったため、アンチェロッティ監督はブラジル代表から帰還してから1回しかチーム練習をしておらず、ベンチスタートさせるつもりだったロドリゴを使わざるを得なくなったのだとか。 ええ、当人も後で「アップに出る20分前には今日は休めると思っていた。No estaba muy bien, me dolía la rodilla y el diente/ノー・エスタバ・ムイ・ビエン、メ・ドリア・ラ・ロディージャ・イ・エル・ディエンテ(とてもいい感じという訳ではなかった。ヒザと歯が痛かったから)」と言っていたんですけどね。それが蓋を開けてみれば、ロドリゴを代表で全治2カ月半のケガを負ったビニシウスの代わりに左のFWとして先発させたのが大当たりしたんですよ。そう、前半14分にはエリア内にひしめく敵DFをかわして、先制ゴールを挙げると、後半序盤にはホセルに送ったラストパスをオフサイドにいると勘違いした相手にスルーされ、ゴールにできなかったのを反省したか、19分、今度はカウンターから、自身で2点目をゲット。 更に29分には肩の脱臼から復帰したベリンガムにスルーパスを送り、マドリーの3点目、当人にとっては昨季、ドルトムントでの1シーズン42試合で記録したのと並ぶ、今季15試合目で14得点となるゴールをアシストしているとなれば、今回のFIFAウィルス被害は恐れていた程、影響していない?いえまあ、その少し前にはクロアチア代表の2試合でほぼ皆勤。キャプテンとして、ユーロ出場権獲得に全力を尽くしてきたモドリッチがハムストリングに筋肉痛を覚え、ようやくリハビリが終わったセバージョスと交代しないといけないなんてこともあったんですけどね。チュアメニ、カマビンガも負傷離脱中の今、検査の結果次第では、ただでさえ、手薄の中盤がますます人材枯渇に陥る心配がありますが、そのせいもあったんでしょうか。 3点目を取ったすぐ後にはこれ以上の被害を恐れてか、アンチェロッティ監督もベリンガムとロドリゴをルーカス・バスケスとカンテラーノ(RMカスティージャの選手)のゴンサロに代えて、水曜のナポリ戦に備えることに。まあ、相手のカディスも前半途中から、GKレデスマが太もものケガを再発させたりと、とても点を取りにいくどころではありませんでしたしね。もちろんGKルニンもロジェールのシュートを横っ飛びで弾くなど、何回かは見せ場があったんですが、そのまま試合は0-3で終了です。 そのおかげもあって、月曜にはジローナがアスレティックと1-1で引き分けたため、同じ勝ち点ながら、首位も取り戻したマドリーでしたが、追走するお隣さんとバルサもたったの勝ち点差4ですし、実際、1部もリーガはまだまだ先がありますからね。とりあえず、今はサンティアゴ・ベルナベウで今年最後となるCL戦で、負傷禍でも決して屈しないマドリーを披露できたら、ファンも喜んでくれるんじゃないでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.11.28 20:00 Tue

また連戦の日々が始まる…/原ゆみこのマドリッド

「クリスマスのバケーションまであと1カ月の踏ん張りね」そんな風に私が気合を入れ直していたのは金曜日、11月の各国代表戦期間が終わり、いよいよクラブでは今週末から途切れのない週2試合ペースが再開。その脇で街にはクリスマスイルミネーションの電飾が点灯され、セントロ(市内中心部)のお店がブラックフライデーのセールで賑わっている映像をTVで見た時のことでした。いやあ、といってもマドリッド勢の間でも忙しさには幾分、違いがあって、ヘタフェ、ラージョの弟分たちはリーガ5試合と12月第2週のコパ・デル・レイ2回戦の計6試合。兄貴分の方はレアル・マドリーがリーガ5試合とCL2試合の計7試合となるんですが、アトレティコは9月に豪雨警報で順延となった4節セビージャ戦が12月23日に組まれているため、計8試合を年内にこなすことに。 そのマドリッドの両雄が来年1月開催のスペイン・スーパーカップ出場チームであるため、コパ2回戦も免除されているのは実に有難いんですが、実際、セビージャなんて、コパ、CL、更にアトティコとの延期試合で計9試合もプレーしますからね。更にビジャレアルなど、ELグループリーグ3節のマッカビ・ハイファ戦が紛争地帯となったイスラエルを慮って延期。12月6日にラ・セラミカで開催となったため、コパのサモラ(RFEF2部/実質4部)戦を繰り上げる破目に。早くもこの木曜にプレーして、パチェタ監督の後を引き継いだマルセリーノ監督が延長戦1-2勝利で再デビューを飾ったのはともかく、すでに地獄の9連戦に突入しているんですから、まったく恐ろしいじゃないですか。 まあ、よそ様の心配はともかく、気になるマドリッド勢の今週末の予定をお伝えしていくことにすると、リーガ14節の土曜のマドリッドはビッグデーでまず、午後2時(日本時間午後10時)から、ラージョがエスタディオ・バジェカスにバルサを迎えることに。いえまあ、フランシスコ監督も「No tenemos un calendario tan sobrecargado como un equipo europeo/ノー・テネモス・ウン・カレンダリオ・タン・ソブレカルガードー・コモ・ウン・エキポ・エウロペオ(ウチはヨーロッパの大会でプレーするチーム程、過密日程にはなっていない)」と言っている通り、最初の週はミッドウィークがフリーになるラージョですし、各国代表に行っていた選手もGKディミトリエフスキ(北マケドニア)、パテ・シス(セネガル)、ラティウ(ルーマニア)、ベベ(カーボベルデ)ぐらいですからね。 ただ、問題はこの試合、ゴール4本でチーム内ピチチ(得点王)であるアルバロ・ガルシアが累積警告で出場停止となることで、その控えであるベベも金曜朝にマドリッドに到着。ほぼ練習なしでバルサ戦に挑まないといけないんですが、え?大変になっているのは相手の方じゃないかって?そうですね、スペイン代表のユーロ予選最終節、ジョージア戦で右ヒザ前十字靭帯を断裂し、今季絶望となったガビはもとより、GKテア・シュテーゲンも腰痛でドイツ代表から即Uターン。懸命にリハビリを続けていたものの、この試合には間に合わず、第2GKのイニャキ・ペーニャが今季デビューを果たすことになりますが、中盤には9月後半から足首のケガでずっと休んでいたデ・ヨングがとうとう戻って来るという朗報も。 何せ、まだCLグループ突破が確定していないバルサには、火曜に同じ勝ち点で首位を争っているポルト戦も控えていますからね。2シーズン前にはバジェカスで勝って、クーマン監督を解任に追いやったラージョだけにここは付け込みどころかと思いますが、今季、彼らがまだホーム6試合で1勝しか挙げていないのがちょっと辛いところ。そこが改善できて、また毎試合のようにファンが、「Vida de prata/ビダ・デ・ピラータ(海賊人生)」を選手たちの見守る前で合唱できるようになれば、現在10位、コンフェレンスリーグ出場圏の7位と勝ち点3差という立ち位置から、ジャンプアップできるはずですが、とにかく早いところ、RdT(ラウール・デ・トマス)やカメージョがゴールを挙げるようになってくれるといいですよね。 そして土曜の午後6時30分からはコリセウムにヘタフェが最下位アルメリアを迎えるんですが、この代表戦期間中、クラブはスタジアムの向かいに新しいオフィスをオープン。着々と来年春に開始が予定されている大改装工事への準備が始まっているようですが、チームの方はすでにマクシモビッチ(セルビア)、ロサーノ(ホンジュラス)、アルデレテ(パラグアイ)、ジェネ(トーゴ)ら、各国代表に出向していた選手たちもつつがなく帰還したよう。再び長期リハビリに入ってしまったアランバリ、もうチーム練習にも参加しているものの、ヒザの靭帯断裂からの復帰とあって、まだ時間が必要なエネス・ウナルを除き、他は全員、試合に出られる状態というのは心強いかと。 ちなみに代表戦前のボルダラス監督のチームは5試合連続ドローが続いた後、コパ1回戦でタルディエンテ(地方リーグ1部/実質6部)に0-12と大勝。ホームで10人になりながら、カディスに1-0勝利して、ようやく波に乗れるかと思ったんですが、またグラナダと1-1で分けてしまったため、心穏やかにクリスマス休暇を過ごすためにもこのアルメリア戦から、勝ち癖をつけていかないと。ええ、相手はビセンテ・モレノ監督からガイスカ・ガリターノ監督に代わっても4連敗と、未だにリーガで未勝利が続いていますからね。残留ラインの17位マジョルカとは勝ち点6なんですが、おそらく兄貴分が今節はそれ以上、差が開くのを防いでくれると思うので、ヘタフェも同情することなく、ガッツリ白星を掴んでほしいかと。 そう、土曜のトリ、午後9時(日本時間翌午前5時)からマジョルカとメトロポリターノで対戦となるのは現在、クラブ最長ホーム連続勝利記録を17勝まで更新しているアトレティコなんですよ。直近4試合の対戦成績は1勝3敗とちょっと苦手な相手ではあるんですが、今回は各国代表に招集された10人全員が元気で帰って来ましたしね。それが余裕となったか、水曜にはスタジアムで毎年恒例のオフィシャルカースポンサー、ヒョンデ自動車から、選手たちが車を贈呈されるイベント、というか、今回はすでにもらった車を電源にして、招待された10人のファンがピッチに設置したテントで一夜を明かすという、エコ・キャンプのプロモーションになっていましたが、その場にはチームからシメオネ監督以下、コケ、サウール、マルコス・ジョレンテ、サムエル・リノ、アスピリクエタの7人が参加。 皆、この2週間、みっちり練習できた選手たちばかりでしたし、昔のように選手全員1人1人に車を引き渡す長いイベントに寒い中、付き合わないで済んだのには私も助かったんですが、それはもしや、選手たちも同じだった?ちなみに木曜夕方から、シメオネ監督が始めたマハダオンダ(マドリッド近郊)での練習では、マジョルカ戦の仮想先発メンバーがほぼ確定。大西洋を渡る長距離移動をしてきたデ・パウル、モリーナ(アルゼンチン)、ヒメネス(ウルグアイ)は来週火曜、勝てば、CLグループ突破が決まるフェイエノールト戦のために温存しながら、すでにユーロ出場の決まっていたフランスで2試合皆勤してきたグリーズマンは外さず、モラタとコレアの後ろでMFとしてプレーしてもらうようですが、何せ彼がいないと、アトレティコはアトレティコでなくなっちゃいますからね。 当人の体力がクリスマス休暇まで持つことを祈るばかりですが、対するマジョルカはFIFAウィルスの被害に遭い、ムリキがコソボ代表でふくらはぎに全治3~5週のケガをして帰還。イスラエルの紛争のため、延期されていたユーロ予選をリーガ13節の週末にぶつけてこられたため、カディス戦を延期してもらいながら、結局、来週ミッドウィークにはエース抜きでプレーする破目になったとなれば、まったく日付をズラした意味がなかった? おかげでマジョルカ共々、カディスも中3週間空けて、日曜午後6時30分(日本時間翌午前2時30分)からのマドリー戦を迎えることになったんですが、そのせいでわざわざ、先週木曜にはアトレティコ・サンルケーニョ(RFEF1部/実質3部)との親善試合をして、クアメが負傷するという災難も発生。とはいえ、ケガ人の数で言えば、今のマドリーに叶うチームはありませんからね。そう、今回の各国代表戦でカマビンガ(フランス)、ビニシウス(ブラジル)が全治2カ月半となったのも最悪なんですが、その前から、ヒザの靭帯断裂で長期リハビリのGKクルトワ、ミリトンを始め、治ってはまたケガを繰り返し、未だにデビューできていないギュレル、クラシコ(伝統の一戦)で足中骨を骨折したチュアメニ、そしてCLスポルティング・ブラガ戦のアップで負傷したGKケパもまだ復帰せず。 ようやく木曜になって、肩の脱臼でイングランド代表戦をお休みしたベリンガム、10月に4試合出場しただけでまた太ももを痛めたセバージョスがチーム練習にフル参加できたという朗報もあったんですけどね。その一方で、とうとう1人参加となったブラジル代表でメッシ(インテル・マイアミ)と口論するまでに、チームをしょって立つ存在になりながら、アルゼンチンに負けてしまったロドリゴはヒザを打撲して、ここ2日間、ジム調整しているなんてことも。 まあ、マドリーの場合はすでにCLグループ突破が決まっている上、カディスにはここ33年間、ヌエボ・ミランディージャで負けていませんからね。となれば、負傷で7人欠けていても、代わりとなるホセルやブライム、そしてベテランのクロースやモドリッチが頑張ってくれれば、それ程、勝つのに苦労しないはずですが、さて。今回、勝ち点2差のジローナは月曜にアスレティック戦となるため、1日でも首位を奪還しておくと、ミチェル監督のチームへのプレッシャーになるんじゃないでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.11.25 20:00 Sat

ケガせず帰って来てくれればそれでいい…/原ゆみこのマドリッド

「もしやアトレティコは勝ち組?」そんな風に私が思っていたのは火曜日、この11月の各国代表戦での負傷者大量発生のせいで、スポーツマスコミは原因の究明に喧々諤々の議論を開始。基本のところは試合が多すぎるという点で一致しながらも、その責任は大会を増やし過ぎるFIFAやUEFAから、興行優先のプレシーズンマッチを詰め込むクラブ。更には代表戦に決してノーとは言わない選手たちと幾つかに分かれたんですが、いやだって、一番の当事者である選手たちにしてみれば、招集を拒めば罰則がありますし、実際、本音かどうかは別として、「母国のためにプレーできるのは最高の名誉」と言っておかないと、ファンから非国民扱いされかねませんからね。 その流れでAS(スポーツ紙)など、この代表戦期間にケガした選手19人のリストを掲載していたんですが、リーガではレアル・マドリーの試合から2カ月半近く離れることになったカマビンガ(フランス)、ビニシウス(ブラジル)を筆頭に、バルサもガビ(スペイン)、テア・シュテーゲン(ドイツ)が負傷して帰還。他にもレアル・ソシエダ(オジャルサバル、スペイン)、セビージャ(オカンポス、アルゼンチン)、ベティス(マンディ、アルジェリア)と被害に遭ったクラブは複数あるんですが、そこに大量10人も派遣しているアトレティコの各国代表選手の名が見当たらないとなれば、これは絶対、ツイている? いえ、9月の代表戦の後などはスペインU21の試合でケガこそしなかったものの、疲労を溜めて戻って来たバリオスが2試合目で壊れてしまったなんてこともあったため、まだ決して油断はできないんですけどね。今回は全員無事で戻る見込みなのに加え、この2週間のparon(パロン/リーガの停止期間)中にヒザの靭帯断裂による長期リハビリをやっと終えたレイニウドもほぼ準備完了。加えて、ようやくメンフィス・デパイも何度目かわからない筋肉系のケガから回復したため、折しもモラタのゴール運気に翳りが見えてきただけに、何より当人への刺激になるかと。 おかげでこの週末、前節カディス戦を延期してもらい、こちらもユーロ予選で延期されていたイスラエル戦に出場し、エースのムリキ(コソボ)が負傷したマジョルカとの試合にはアキレス腱断裂で当分、帰って来られないレマルを除き、全員が稼働できる予定のアトレティコなんですが、加えて、チームの守護神、オブラクにも朗報が。そう、デンマーク戦に負けて、ユーロ予選グループ突破に黄信号が灯ったスロベニアだったんですが、2試合目のカザフスタン戦に2-1で勝利。とうとう2010年のW杯以来となる国際メジャートーナメント出場が決まったからで、もう来夏は大半のチームメートがまだ代表で働いている間、1人、ビーチでのんびりという引け目を感じなくていい? 残念ながら、サビッチのモンテネグロは敗退してしまいましたけどね。他はもちろん、ジブラルタル戦で14-0という歴史的大勝利をした試合、そして2-2で引き分けたギリシャ戦にもフル出場しながら、アトレティコのためにゴールを取っておくことにしたグリーズマンのフランスもユーロ出場が決まっていますし、デ・パウル、モリーナ(アルゼンチン)、ヒメネス(ウルグアイ)らはまだ2026年W杯南米予選の真っ只中。火曜深夜の試合で何事も起きないことを願うばかりですが、そうそう、モラタとリケルメが参加していたスペイン代表のお話もしておかないと。 先週木曜にキプロスに1-3で勝利した後、金曜にはバジャドリーに直接移動したチームはすでにユーロ行きの切符は持っていたものの、グループ首位突破と本大会組み合わせ抽選で開催国ドイツと一緒の第1ポット入りを懸けて、日曜にホセ・ソリージャ(2部バジャドリーのホーム)でジョージアと対戦。9月にはアウェイで1-7のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)勝利をした相手とはいえ、一応、GKママルダシビリ(バレンシア)やFWクワラツヘリア(ナポリ)など、ヨーロッパのトップリーグでプレーする選手もいる相手とあって、デ・ラ・フエンテ監督はスタメン9人を一気に変更することに。 GKウナイ・シモン(アスレティック)、ロドリ(マンチェスター・シティ)、モラタら、リマソルでお休みをもらったベストメンバーを並べたんですが、その中でデ・ノルマン(レアル・ソシエダ)とガビの2人だけがリピートだったんですよね。ただ、前者はキプロス戦でハーフしかプレーしていなかった上、開始4分にはフェラン・トーレス(バルサ)の蹴ったFKをヘッドでゴールにして、代表初得点をゲット。たとえ、10分にはチャクベタゼ(ワトフォード)のスルーパスを受け、エリア前からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めたクワラツヘリアを止められなかったとしても十分、いい働きをしてくれたと思うんですが、まさか20分過ぎにあんな悲劇が待っていたとは! それはガビが敵陣エリア外右側でロホシビリ(クレモネンセ)に倒され、右ヒザを捻ったのがキッカケで、うーん、前日の記者会見でデ・ラ・フエンテ監督に「Es hiperactivo, no para nunca/エス・イペルアクティボ、ノー・パラ・ヌンカ(彼はハイパーアクティブで絶対に止まらない)。いい選手は決して休まないし、身体的にも非常に恵まれている」と請け合われていたのを当人も信じちゃいましたかね。その時はメディカルスタッフにちょっと見てもらっただけで、すぐピッチに戻ったんですが、直後にボールを胸トラップしようとした際にヒザがまったく言うことを聞かないことが発覚。 それはもう、ひどい痛がりようで、泣く泣くピッチを後にしたんですが、デ・ラ・フエンテ監督は「El golpe no había sido nada. Ha pisado mal y se le ha ido la rodilla/エル・ゴルペ・ノー・アビア・シドー・ナーダ。ア・ピサードー・マル・イ・セ・レ・ア・イドー・ラ・ロディージャ(打撲は何でもなかった。着地が悪くてヒザをやられた)」と言っていたものの、もしや最初に手当てを受けた時にさっさとサンセット(アスレティック)と交代していたら、前十字靭帯断裂が半月板にまで影響を及ぼすことはなかった?いえ、翌日、帰還したバルセロナで検査を受け、全治6~8カ月という診断が出るまでは、ガビがバルサで師事しているチャビ監督も2005年の12月にヒザの靭帯を断裂。それでも翌年6月の2006年W杯に間に合い、16強対決でフランスに負けるまで、4試合に出場できたなんて楽観論もあったんですけどね。 ガビのヒザの負傷はもっと厄介なようで、バルサでは今季の登録を抹消して、緊急措置で代わりの選手を獲るかどうかの話になっているようですが、とりあえず、試合の方に戻らないと。前半の残りはキプロス戦でオジャルサバルが負傷交代した後、選手たちがシュンとなってしまったのと同様、一応、モラタのシュートなどもあったものの、スペインは1-1の状況を打開できず。それでもハーフタイムにデ・ラ・フエンテ監督が、「Les pedí que siguieran en el partido para rendir un homenaje al compañero caído/レス・ペディ・ケ・シギエラン・エン・エル・パルティードー・パラ・レンディル・ウン・ホメナヘ・アル・コンパニェロ・カイドー(倒れたチームメートに勝利を捧げるため、試合を続けてくれと頼んだ)」のが効いたんですかね。 おかげで、後半6分のロドリのヘッドはママルダシビリにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまったものの、10分にはガヤ(バレンシア)のクロスをフェランが頭で叩きつけ、勝ち越し点を挙げてくれたんですよ。いえ、まさか、前半に交代したクラブの同僚のユニを掲げ、全視聴者にガビのケガが重傷であることを告げて、ファンの僅かな希望すら、奪ってしまったのにはビックリさせられましたけどね。そのフェランもデ・ラ・フエンテ監督の気遣いか、20分にはジャマル(バルサ)に交代。モラタのヘッドの精度はリーガ前節のビジャレアル戦並に悪かったんですが、この日の出場でスペイン代表4試合目となり、モロッコ代表への転籍が不可能になった16才にはやっぱり何かあったんですよ。 というのも27分、ジャマルが右から上げたクロスをロホシビリが頭でクリアしようとして、オウンゴールにしてしまったからですが、これでスコアも3-1と安全圏に。そうそう、キプロス戦でオジャルサバルの代わりにピッチに入り、代表デビューを果たしたリケルメ(アトレティコ)も41分にニコ・ウィリアムス(アスレティック)と交代し、2キャップ目を獲得。最初の試合、ベンチ外だったロドリの背番号16を着けていたのが、この日は4で、やはりパウ・トーレス(アストン・ビラ)がベンチ外となって、空いた背番号をもらっていた辺り、ユーロ本大会に行くにはまだまだ一山、超えないといけないかなって感じですが、実際、クラブの練習でヒザの靭帯を断裂したジェレミー・ピノ(ビジャレアル)はともかく、代表戦再開の3月にはもう、アセンシオ(PSG)やダニ・オルモ(ライプツィヒ)も全快しているはずですからね。 そのまま最終戦も勝利で飾り、首位突破して、12月2日の本大会組み合わせ抽選でもフランス、ポルトガル、ベルギー、イングランドらと一緒にポット1に入れることが決まったスペインですが、どうやら招集できる人数も現行の26人か、コロナ禍前の23人に戻るのか、その時に決まるよう。それにより、リケルメクラスの選手がドイツに連れていってもらえるかどうかも左右されてくるはずですが、まあ、この日は試合後もガビの負傷の話題一色でしたからね。とりあえず、グループは敗退したものの、来年3月、ネーションズリーグ上位チーム間で争われるプレーオフに出場。本大会行き最後の望みをそこに託す、ジョージアのサニョル監督の「スペインは全てを持っている。GK、DF、MF、そしてトップには決定力のあるモラタ。ユーロ優勝の有力候補だ」という言葉に、今は夢を膨らませていてもいいかもしれませんね。 そしてまた、マドリッドのクラブに話を戻すと、3連休の後、火曜からバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でセッションを再開したマドリーでは、肩の脱臼でイングランド代表からトンボ帰りしたベリンガムの回復ぶりがかなり顕著に。この様子だと、日曜のカディス戦出場に問題はなさそうですが、未だにGKケパとセバージョスはチーム練習に参加していないよう。何せ、中盤はチュアメニに加え、カマビンガも負傷して手薄になっていますからね。火曜のアルメニア戦でもフル出場、ブドミル(オサスナ)のゴールで1-0として勝ち、何とかグループ2位でクロアチアのユーロ出場を勝ち獲ったモドリッチや、火曜深夜にボリビア戦に挑むバルベルデ(ウルグアイ)らが異常なしで戻ってくれることを、来週水曜にはCLナポリ戦も迎えるアンチェロッティ監督はきっと祈っているはずです。 そして弟分チームにもいい知らせを持ち帰った各国代表戦選手はいて、いえ、ラージョのGKディミトリエフスキのプレーする北マケドニアはグループ敗退、今回はプレーオフにも出られず、ユーロ2020からの連続出場はならなかったんですけどね。ラティウのルーマニアが見事、1位突破したことに加え、同じ右SBバリウのいるアルバニアも初出場を達成。後者はケガが治ったばかりというのもあり、この11月は招集されませんでしたが、こうなると今季は最後まで、ユーロ体験をしたい2人の切磋琢磨が見られるのでは? その最初のスタメン争いバトルの勝者は土曜にエスタディオ・バジェカスにバルサを迎える一戦で明らかになるはずですが、もう1つの弟分、ヘタフェもマクシモビッチがセルビアのユーロ出場権を勝ち取って帰還。トルコもクロアチアと同組で1位突破を果たしているため、こちらは昨季終盤にヒザの靭帯を断裂。だんだん復帰時期が近づいているエネス・ウナルにとって、いい目標ができたはずですが、さて。とりあえず、ヘタフェもラージョ同様、各国代表戦で誰かが負傷したという報は入っていないため、今週後半は土曜にコリセウムで開催されるアルメリア戦の準備がしっかりできるんじゃないでしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.11.22 21:00 Wed

脱落する選手が後を絶たない…/原ゆみこのマドリッド

「これで打ち止めだといいけどね」そんな風に私が同情していたのは土曜日、とうとうレアル・マドリーの負傷者が9人に達したという記事を読んだ時のことでした。いやあ、11月の各国代表戦では一旦、イングランド代表に顔見せで出頭しながら、ベリンガムは即Uターン。ラージョ戦で脱臼した肩のリハビリをバルデベバス(バラハス空港の近く)で完了させて、paron(パロン/リーガの停止期間)明けのカディス戦には間に合う予定という、いいニュースもあったんですけどね。 それが水曜にはフランス代表の練習中にウスマン・デンベレ(PSG)とぶつかったカマビンガがヒザを痛め、翌日にはマドリッドに帰還。詳しく検査した結果、外側靭帯を断裂していることがわかり、全治2~3カ月の重傷だったのもショックだったんですが、翌木曜にはビニシウスがW杯南米予選のコロンビア戦で負傷交代する破目に。こちらも即代表離脱となり、全治2カ月半の左太もも肉離れの治療をすることになったんですが、実はその前から、マドリーではクルトワ、ミリトンの長期リハビリ組に加え、ギュレル、チュアメニ、ケパ、セバージョスがお休み中。 うち一番、復帰が近そうなのはセバージョスとケパですが、怖いのは各国代表戦がまだ続いていることで、ええ、チュアメニ、カマビンガの不在でようやく出番を増やしてもらえそうなモドリッチなど、クロアチアのユーロ出場が確定していないため、火曜のアルメニア戦まで頑張らないといけませんからね。前線もとうとう、来季からの加入が決まっている、17才でA代表初招集されたエンドリック(パルメイラス)は別として、ブラジル代表1人参加になってしまったロドリゴやスペイン代表のホセルなども年内は風邪1つひけないんじゃないかと思いますが、え?FIFAウィルスなら、10人が出向しているお隣さんも他人事ではないだろうって? まあ、そうなんですが、9月と10月の代表戦の狭間に負傷者7人を抱え、地獄の7連戦を息も絶え絶えに乗り切ったアトレティコは今回、まだ被害にあっておらず。いえ、試合中、ウルグアイのウガルテ(PSG)に暴言を吐かれたデ・パウルがメッシ(インテル・マイアミ)に庇われ、tangana(タンガナ/小競り合い)に発展した時、W杯グループリーグ最後のガーナ戦で敗退が決まり、FIFA役員にcodazo(コダソ/肘打ち)を見舞って、4試合の出場停止処分をゲット。それがようやく終わり、丁度、負傷も治ったため、久々にウルグアイ代表に招集されていたヒメネスがその時、まだピッチに入っていなかったことにホッとしたなんてことはあったんですけどね。 その試合に0-2で負けたアルゼンチンが次は火曜に、やはりコロンビアに2-1と負け、カッカしているであろうブラジルと当たるのは、デ・パウルやモリーナの身を案じてちょっと、心配になるものの、その間、居残り組の方はマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場で代表戦明けのマジョルカ戦に備え、6人DF制のラインを崩す練習をしていたとか。ただ、それも火曜にラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設で開かれたクラブ監督懇談会に出席した後、シメオネ監督は母親のバースデーを祝うためにアルゼンチンに帰国。第2監督の指揮の下、木曜までセッションを行い、金土日と3連休にしていたアトレティコでしたが、来週からはメンフィス・デパイもチーム練習に合流できる見込みという朗報も。 だからって、モラタ(スペイン)やグリーズマン(フランス)に何かあっても困るんですが、あれこれ、気を揉んでも始まりませんからね。今はただ、皆、無事に帰ってきて、再びメトロポリターノ開催となるリーガ戦で、クラブ最長記録のホーム17連勝を18に更新してくれることを願うばかりですが、さて。ちなみにこの先、12月のクリスマス休暇までノンストップで続く日程では、マドリーとアトレティコの兄貴分たちは11月28、29日と12月12、13日のミッドウィークにCLグループリーグの最終2節が入り、ヘタフェとラージョの弟分たちは12月5~7日の週中にコパ・デル・レイ2回戦を戦うことに。 水曜の抽選で決まった相手はそれぞれ、アトセネタ(RFEF3部/実質5部)、ジャルカーノ(RFEF2部/実質4部)と、たとえ、前者が雨天延期で火曜に2部のサラゴサを下して上がってきたチームだとしてもまあ、問題はないかと思いますけどね。それこそ、早くも同じカテゴリー対決となってしまった2部の弟分たち、アルコルコン(カルタヘナ戦)、レガネス(ラシン・デ・フェロル戦)の方が大変ですが、要はこの期間、スペイン・スーパーカップに出場せず、32強対決までのコパ免除がないヨーロッパの大会出場組、レアル・ソシエダ、セビージャ、ベティス、ビジャレアルは再び、地獄の7連戦に突入するんですよ。 対照的にマドリーとアトレティコは3連戦x2、ただしアトレティコには12月23日に豪雨警報で延期された4節のセビージャ戦があるため、1試合余分にプレーして、今年を終えることになりますが、まあ、年内は楽できる分、1月の彼らには遥々、サウジアラビアまで行ってプレーしないといけない、スペイン・スーパーカップのハードスケジュールが待っていますからね。実際、ビニシウスなどはその頃にならないと回復しないとあって、とりわけマドリーのファンたちはゾワゾワしていそうですが、果たして現在、伏兵ジローナが勝ち点2差で単独首位を走るリーガの順位はどのくらい動くんでしょうかね。 まあ、そんなことはともかく、現在稼働中のスペイン男子代表の状況もお伝えしていくことにすると、今週は月曜にラス・ロサスで合宿を始めた彼らはその日の夕方に公開練習を行った後、火曜の夜には早くもキプロス島入り。ユーロ2024出場はすでに10月の2連勝で決まっていたため、今回の目標は同じ勝ち点で並ぶスコットランドに差をつけ、グループを首位突破。残り2試合に勝って、本大会での開催国ドイツと一緒の第1ポットに入れる好成績を挙げることだけだったんですが、相手がここまで1勝もできず、敗退決定しているキプロスであるのと共に多分、そのせいもあったんでしょうね。 この試合、デ・ラ・フエンテ監督は大ローテーションを決行して、ええ、まずは25人招集のうち、23人しかベンチには入れないためのスタンド観戦にリーガ前節マドリー戦でヒザを打撲してから、まだ間がなかったガヤ(バレンシア)はともかく、もう1人を中盤の要であるロドリ(マンチェスター・シティ)に。代わりにスビメンディ(レアル・ソシエダ)を起用して、GKウナイ・シモン(アスレティック)もダビド・ラジャ(アーセナル)、CFもモラタではなくホセルと屋台骨を入れ替えていたんですが、全然、大丈夫だったんです。 だってえ、開始5分にはもう、ミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)がエリア内左から送ったパスが、ゴール前にいたホセルはスルーしたものの、ファーサイドにいたジャマル(バルサ)に到達。歯列矯正具を付けている以外、まったく16才には見えない落ち着きで当人はすぐには撃たず、敵GKをかわし、DFもかわして代表2ゴール目を決めているのですから、驚いたの何のって。いや、実際、この年齢のサッカー選手たちは今頃、インドネシアでU17W杯を戦っているはずなんですけどね。その16強対決でスペインと日本が月曜に対戦することになったのはともかく、デ・ラ・フエンテ監督も「彼には他のどんな選手でも難しい状況を解決する才能がある」と絶賛していたジャマルにはただただ、感心するしかなかったかと。 そして22分には再び、スペインは初招集、即スタメンデビューとなったグリマルド(レバークーゼン)が送ったラストパスをオジャルサバル(レアル・ソシエダ)がエリア内左奥からシュート。ボールは敵GKとDFが触れてスピードが落ちたものの、そのままネットに入り、2点目が入ることに。更に28分にはそのオジャルサバルが蹴ったCKをホセルが決めて、あっという間に3点差にしていたんですが、好事魔が多しとはまさにこのことです! そう、先日はCLベンフィカ戦でもゴールを挙げ、チームの決勝トーナメント進出に貢献していたFWが37分、ホセルのパスからシュートした際に左太ももを痛め、続行不可能となってしまったから。これには5人が招集され、スペイン代表の最多勢力になったことを「Es una buenísima señal y seguramente que por vergüenza no ha llevado a tres más/エス・ウナ・ブエニシマ・セニャル・イ・セグラメンテ・ケ・ポル・ベルグエンサ・ノー・ア・ジェバードー・ア・トレス・マス(これはいい印だが、あと3人、呼ばれなかったのは恥ずべきことだ)」と言っていたイマノル監督も少々、考えを改めたのでは? ただ、そのおかげでこちらも今回、初招集。昨夏に準優勝したユーロでU21を卒業して以来、代表戦週間はヒマをしていたリケルメ(アトレティコ)が晴れて23才でのA代表デビューができたんですが、ポンポンと3点を取ったのは、デ・ラ・フエンテ監督が更なるローテーションを実施するキッカケにも。そのまま0-3で折り返したスペインは後半頭から、メリーノ、ル・ノルマン(ソシエダ)をやはり、初招集組のアレイス・ガルシア(ジローナ)とダビド・ガルシア(オサスナ)に代え、結局、デビューできなかったのはGKレミロ(ソシエダ)だけとなりましたが、残念ながら、チームの方も省エネモードに入ってしまってねえ。 それ以上、追加点は入らず、何と30分にはゴギッチのスルーパスから、ピレアスにシュートを決められ、キプロスに1点を返されてしまうことに。実際、プレーの起点でカスタノスがガビ(バルサ)を蹴ったプレーがVAR(ビデオ審判)でファールになっていてくれれば、助かったんですけどね。「ファールはあったし、もし引っくり返っていたら、取ってもらえたと思うが、Gavi es leal y honesto, y no lo ha hecho/ガビ・エス・レアル・イ・オネストー、イ・ノー・ロ・ア・エッチョー(ガビは誠実で正直だから、そうしなかった)」(デ・ラ・フエンテ監督)ため、スコアに挙がってしまいましたが、いやあ。 このガビも19才で本来なら、クラブの同僚、フェルミンやバリオス(アトレティコ)らと一緒にU21代表に行って、金曜にウエスカであったU21ユーロ2025予選のハンガリー戦でプレーしていてもちっともおかしくないと思うと、早熟の才能の宝庫であるバルサが羨ましくなくもなし。ちなみにその試合の方はアトレティコBから2部のミランデスにレンタル修行に出ているカルロス・マルティンと、バルサからジローナに貸し出されているパブロ・トーレスのゴールでスペインが2-0と勝っています。 そして大人の代表の方はそのまま、1-3で終了。同日、スコットランドがジョージアと2-2で引き分けたため、スペインは単独首位となり、あとは日曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からのジョージア戦でも勝って仕上げをすればいいだけに。いえ、キプロスのケツバイア監督など、「ヨーロッパだけでなく、世界最高のチームだ。サイドが使えて、2008年から2012年の黄金期よりもいいものを持っている。ユーロの優勝候補ナンバーワンだ」と、このスペインをベタ褒めしていたんですけどね。実際のところは、本大会が来てみないことにはわからないんですが、チームは翌日、午前中にキプロスでリハビリトレをして、夜には予選最終戦が開催されるバジャドリーに直行。 ここでオジャルサバルは別れて、治療のためにサン・セバスティアンに帰還し、その分の追加招集はないんですが、ちょっと気になったのはホセ・ソリージャでの前日練習の後、記者会見で代表戦の増加による過密日程について訊かれたデ・ラ・フエンテ監督のコメント。曰く、「代表に来るから、選手がケガする訳ではないと思う。Las lesiones son cosas del fútbol/ラス・レシオネス・ソン・コーサス・デル・フトボル(負傷はサッカーに付き物だ)」と言っていたんですが、そりゃまあ、参加国が32から48に拡大された2026年W杯とか、試合数が増えれば、代表監督は活動期間が増えて、嬉しいのかもしれませんけどね。 でも、キャプテンとして記者会見に出たモラタも「No somos robots/ノー・ソモス・ロボッツ(ボクらはロボットじゃないからね)。自分の体があって、筋肉があって、ケアはしているけど、いつケガするかはわからない」と話していたように、ホント、こればっかりは運を天に任せるばかり。とりあえず、金曜には1部首位のレガネスがバジャドリーとセルヒオ・ゴンサレスのゴールで1-1と引分けたばかりのホセ・ソリージャのピッチ状態は悪くないようですが、とにかくジョージア戦では負傷者が出ないことを祈るばかりかと。 ちなみにジョージアのGKママルダシビリ(バレンシア)は直前のマドリー戦で5-1とgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らっていますが、9月のスペインとの対戦ではモラタのハットトリックを含む1-7で大負けした後、メスタジャでアトレティコを3-0とシャットダウン。キプロス戦と違って、今度はデ・ラ・フエンテ監督もベストメンバーを並べるようですし、どういう目が出るのか、ちょっと楽しみではありますね。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2023.11.19 22:45 Sun
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