とても勝てる気がしない…/原ゆみこのマドリッド

2022.09.17 20:00 Sat
©Atlético de Madrid
「怒涛の2週間の締めくくりはダービーか」そんな風に私が溜息をついていたのは金曜日、お昼にはルイス・エンリケ監督のスペイン代表招集リストの発表もあって、来週はW杯前最後のparon(パロン/リーガの停止期間)に入ることに気づいた時のことでした。いやあ、8月中は週末にリーガ戦があるだけのゆとり日程だったのが、9月に入った途端に激変。11月のW杯だけでなく、ヨーロッパ勢代表はネーションリーグのグループリーグ残り2節も済ませないといけないため、UEFAが各大会のグループリーグを前代未聞の2週連続ミッドウィーク開催とし、その参加チームは週2試合ペースを余儀なくされたんですけどね。
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おかげで私も休む暇がなかったんですが、とにかくレアル・マドリーは開幕から破竹の8連勝とずっと勝っていますからね。お隣さんのファンのように悔しい思いをすることがなかっただけでなく、どうやら今季のアンチェロッティ監督は頼りのエースが負傷で欠けても勝つ方法を見つけたよう。ええ、先週火曜のCLセルティック戦でベンゼマが前半途中交代しながら、その試合だけでなく、次のマジョルカ戦も今週のライプツイヒ戦も白星続きとなれば、たとえ、日曜午後9時(日本時間翌午前4時)のシビタス・メトロポリターノのピッチに彼が立っていなくたって、どこにアトレティコが勝てる要素があるというのでしょう。何せ現在、7位の彼らは首位と勝ち点差が5。負ければ8差となって、開幕1カ月で早くもリーガ優勝を諦めないといけない身分になってしまうのも悔しいんですが、とりあえず、先にマドリッドの両雄のCL2節の様子をお伝えしていくことにすると。1節とは順序を変えて、火曜にはアトレティコがバイ・アレーナでレバークーゼンと対戦したんですが、これがまた、先週のポルト戦同様、開始からずっとスコアが動かず。といっても前半半ばにはナウエルのクロスをタプソバがゴール前で腕に当てながら、主審からもVAR(ビデオ審判)からもお咎めなしという、アンラッキー案件はあったんですけどね。
それこそポルト戦の後半ロスタイム、エルモーソが同じようなハンドを犯し、PKで同点にされていたアトレティコだけにジャッジへの不公平感が募る原因となったんですが、大体がして、タデスコの後ろにいたエルモーソがゴールすぐ前からのシュートを撃ち上げていなければ、不満の声も出なかった?おまけにコケなど、「Parecía que el partido lo teníamos controlado porque no pasaba nada/パレシア・ケ・エル・パルティードー・ロ・テニアモス・コントロラードー・ポルケ・ノー・パサバ・ナーダ(何も起きなかったから、試合はコントロールできているように見えた)」と試合後、いかに0-0で安心しきっていたか、チームの野心のなさを垣間見せる発言をしていたんですが、え?後半3分など、シックのシュートがボールバーに当たった後、フロゼクにもポスト直撃されて、本当にヤバかったんじゃないかと。

そうこうするうち、定例の後半15分過ぎとなり、ピッチには時短勤務のグリーズマンとカラスコが入ったんですが、この時、ヒメネスとサビッチが負傷でいない今、唯一、信頼できるDFであるレイニウドを下げてしまったのはシメオネ監督のミスだったかも。おまけにまだ0-0だった28分には判で押したように、モラタとジョアン・フェリックスをクーニャとコレアに代えてしまいましたしね。いくら、敵のセアオネ監督が「ジョアンがいなくなって気が楽になったが、それもコレアが入るのを見るまでだった」と言ってくれたとしても、せっかく相性のいいグリーズマンとジョアンが連携できる時間がたった10分程しかないのでは…。
逆に交代策が成功したのがレバークーゼンで、後半37分になって、途中出場のフリムポングがエリアに突撃し、そのラストパスをアンドリッチに決められてしまったから、さあ大変!慌てて反撃に出たアトレティコでしたが、そのせいで守備が疎かになっては本末転倒です。ええ、42分には再びフリムポングのパスから、ディアビイに止めの2点目を奪われているとなれば、オブラクがベンチに入らず、GKをゲルビッチが務めていたのとは関係なく、もうどうしようもありませんって(最終結果2-0)。

え、その日は同じスペイン勢のバルサがバイエルンとアリアンツ・アレナでプレー。いつものバル(スペインの喫茶店兼バー)もメインのTVでは大物対決のそちらを優先していたため、私はグループ客用の個室で観戦させてもらったんですが、3分間で負けてしまったアトレティコの情けない試合を他に見ている人がいなかったのは幸いじゃなかったかって?いやまあ、チャビ監督のチームもアトレティコ出身のリュカ・エルナンデスとザネのゴールで2-0と負けていたせいで、南米系の店員が「もうスペインのクラブは昔のように強くない」と落としていたのは別にいいんですけどね。

たとえ、その日はポルトに0-4と大勝。意表を突いて、グループ首位に立ったクラブ・ブルージュとの連戦が10月に待っているとはいえ、4年前のカラバフの悲劇(グループ最弱のアゼルバイジャンのチームから1勝もできず、3位でELに回って優勝した)のリピートさえ、避けられれば、レバークーゼンと並んで勝ち点3のアトレティコにはまだまだ、突破の可能性がありますしね。加えて、実はその日の午後、私はサンティアゴ・ベルナベウにライプツイヒの記者会見に行っていたんですが、最近多いパターンで練習は移動前に済ませ、チームはピッチを散歩するだけのスタジアム訪問。全面改装工事が続く剥き出しの梁や、天高くそびえるクレーンなどを感嘆して眺めている選手たちを目撃していたから。

実際、ダニ・オルモが負傷中の今のライプツィヒにはあまり知っている選手もおらず、いえ、すでに今年は2度目のベルナベウということで、ベルナー(チェルシーから移籍、準々決勝2ndレグで逆転突破の3点目を挙げながら、土壇場で再逆転された)などは1人、ベンチでスマホをいじっていたりしたんですけどね。マルコ・ローゼ新監督もまだ2試合目ですし、とても快進撃を続けるマドリーの敵にはならないだろうという印象を受けたからですが、いやいや。水曜の夜、再び工事を中断して観客を迎え入れた試合の前半は、そのベルナーやヌクンクが何度もGKクルトワを脅かす展開に。とはいえ、先制点を奪うには至らず、両者無得点のまま、後半に入ったんですが、こちらもお隣さん同様、スコアが動いたのは残り10分を切ってからでした。

ええ、「守備的に相手を見張るのがとても大事だった。だから中盤から押し上げることはあまりしなかったが、cuando han bajado la energía hemos empujado más/クアンドー・アン・バハードー・ラ・エネルヒア・エモス・エンプジャードー・マス(相手のエネルギーが落ちた時にもっと押して行った)」(アンチェロッティ監督)のが功を奏したんです。それは35分、ビニシウスが右側から送ったパスをこの日もfalso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)で入っていたロドリゴはスルー。エリア内左でボールを受け取ったバルベルデが敵DFをかわしてシュートすると、ネットに突き刺さってくれたから、昨季の決勝トーナメントから続く、終盤の奇跡を期待していたスタンドのファンもどんなに盛り上がったことか。

いやあ、バルベルデは先週末のマジョルカ戦でも前半終了間際に反撃の口火を切る同点ゴールを挙げていて、アンチェロッティ監督も「あのシュート力で、昨季は1ゴールしか挙げていないことの方が私には不思議に思えた。だから、彼にはもし今季10得点以下だったら、tengo que romper mi carné e irme al retiro/テンゴ・ケ・ロンペル・ミ・カルネ・エ・イルメ・アル・レティーロ(自分は監督ライセンスを破って、引退するしかない)と言ったんだ」と茶化していた程だったんですけどね。こんなにメキメキ成長する若手が出て来るなんて、ホントにマドリーは恵まれている。

おまけに後半ロスタイムには、マジョルカ戦で出番がなかったことに腹を立て、ビブスを投げ捨てたり、ペットボトルを蹴ったりする態度が気に喰わなかったファンから、pito(ピト/ブーイング)を浴びながら、後半19分にカマビンガと交代でピッチに入ったアセンシオが名誉挽回。クロースの蹴ったFKをワンタッチでゴールに撃ち込み、止めの2点目を決めてくれたとなれば、何も心配することなど、ありませんって(最終結果2-0)。

これでCLでも2連勝したマドリーは勝ち点6でグループ首位となり、その日、セルティックと1-1で引き分けたシャフタールとの10月の2連戦も余裕で迎えられるんですが、まあ、ツキもありましたよね。というのも前半にはヌクンクのシュートを避けようとして、チュアメニがクルトワに激突。まさにレアル・ソシエダ戦でレイニウドにぶつかられ、太ももを打撲しながら、次のCLポルト戦こそ、根性で出場して、チームを勝利に導いたものの、続くセルタ戦、レバークーゼン戦には出られなかったオブラクと同じアクシデントですが、どうやらマドリーの守護神は2日程で痛みが引いたよう。

よってまた、クルトワは昨季CL決勝前の間の悪いコメントにより、一度はメトロポリターノ前に置かれた100試合以上出場選手の記念プレートを怒ったアトレティコファンが強制撤去。今は無事に復元されていますが、今回もブーイングの的になるだろう、ダービーのピッチに立つことは確実ですが、オブラクの方は未だわからず。ええ、金曜など、チームのセッションはなかったにも関わらず、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に出勤し、GKコーチやフィシオらと働いていたようですが、あまり楽観的な意見は聞かれないんですよ。

それ以外にもアトレティコはサビッチ、レギロン(トッテナムから移籍)に加え、ヒメネス、レマルの出場もかなり難しいようですしね。お隣さんもベンゼマとルーカス・バスケスがいないとはいえ、ビニシウス、ロドリゴ、バルベルデらにゴールを期待できますし、対してスタートはヘタフェ戦で2発と悪くなかったものの、4節レアル・ソシエダ戦の後は3試合ノーゴール。とうとうシメオネ監督も先発CFをモラタから、クーニャに代えることにした攻撃陣では…やっぱり、代表戦期間中にでもバルサと話し合って、グリーズマンの強制買取オプションの移籍金を4000万ユーロ(約58億円)から値下げしてもらい、フル出場できるようにするのが一番の解決策かもしれませんね。

そして今週もじっくり調整できた弟分たちも週末のリーガ戦を迎えるんですが、土曜に先陣を切るのはサン・マメスを訪れるラージョ。折しも前節はホームのエスタディオ・バジェカスで12試合ぶりの勝利を掴み、気分が上がっているところですが、奇しくも相手のアスレティックを率いるバルベルデ監督は若き日のイラオラ監督を同チームでデビューさせた恩師なんですよ。今回はプレーではなく、指導力で恩返しするチャンスですが、9位のラージョもここで勝利すれば、6位の相手と勝ち点で並びますからね。

この9月の代表戦期間にはファルカオ(コロンビア)を始め、ディミトリエフスキ(マケドニア)、バリウ(アルバニア)、ベベ(カーボベルデ)、カメージョス、モロ(スペインU21)と複数の選手が各国代表に出向するため、何かあった時に備えて、勝ち点を貯めておきたいところですが、残念ながら、火曜にエスパニョールからの移籍が決まったRdT(ラウール・デ・トマス)は市場クローズ後の入団となるため、来年1月まで戦力になれず。そのせいで6月のスペイン代表に呼ばれ、可能性のあったW杯行きも逃してしまうのは何ですが、そういえば、金曜のルイス・エンリケ監督のリストでは20才のニコ・ウィリアムスが初招集されたなんてことも。

アスレティックで一緒にプレーする8才上の兄、イニャキ・ウィリアムスがU21などではスペイン代表でプレーしながら、ガーナ代表を選択し、この9月にデビューする予定なだけにちょっと、リベンジ感が漂わなくもないんですが、まあ、それはそれ。とりあえず今はクラブの試合が優先です。一方、前節のレアル・ソシエダ戦で今季初白星を挙げ、一息ついたもう1つの弟分、ヘタフェは日曜にエル・サダルでオサスナ戦なんですが、これも勝手な話で2日前にキックオフが午後6時30分から、午後2時に変更されることに。

どうやらベティスvsジローナ戦が開催されるセビージャ(スペイン南部)に気温30℃以上の予報が出ているため、パンプローナ(スペイン北部、牛追い祭りのサンフェルミンで有名なオサスナのホームタウン)なら、その時間でも大丈夫だろうとチェンジされたようですが、選手たちにだって体調管理っていうものがありますからね。幸いコリセウム・アルフォンソ・ペレスで途中交代したアルゴビアとアンジレリも回復したようですし、アランバリも出場停止処分が終わったので、何とか、キケ・サンチェス・フローレス監督のチームには連勝して、18位の降格圏を脱出してもらいたいものですが…ここまで4勝1敗でCL出場圏内の4位という高みにいるオサスナはきっと、手ごわい相手なんでしょうね。


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