まだ市場はあんまり動かない…/原ゆみこのマドリッド

2022.06.21 21:00 Tue
Getty Images
「ここまで遅くなるなんて気の毒に」そんな風に私が同情していたのは月曜日、とっくに各国代表戦も終わり、SNSには選手たちが世界各地でバケーションを満喫している写真が溢れる中、ようやく前夜、昇格プレーオフ決勝2ndレグでアルメリア、バジャドリーに続いて、新シーズンを1部で戦うチームが決まったのを知った時のことでした。いやあ、昨年などは準決勝でラージョとレガネスの弟分ダービーがあり、前者が決勝で嬉しい1部復帰を遂げたため、プレーオフも結構、真剣に見ていたんですけどね。

今年はまったくマドリッド勢がおらず、試合も近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に行かないと見られなかったため、全然、盛り上がる理由もなかったんですが、強いて言うなら、ラージョのレジェンドでもあるミチェル監督が率いるジローナが、3度目の正直で昇格を決められたのは良かったかと。ええ、2019年に2部落ちした彼らは最初の年にエルチェ、去年はラージョ相手に一番悔しいプレーオフ決勝で敗戦。今回は1週間前にモンテリビでの1stレグを0-0で終え、敵地エリオロドに乗り込むことになったんですが、相手のテネリフェはリーガ5位と6位のジローナの上で終わっていたため、引分けのままだと延長戦もなく、そのまま向こうの勝利になってしまうという不利な条件が。

加えて夏のバケーションシーズンが始まったスペインではすでにカナリア諸島行きのフライトが高騰。よって応援に行けたファンも300人程度と心もとなかったんですが、大丈夫。前半42分にはエース、ストゥアーニのPKで先制すると、後半14分には同点に追いつかれながらも23分にホセ・レオンのオウンゴール、そして35分にはアルナウが止めの3点を挙げ、1-3で勝ってしまうのですから、見事なもんじゃないですが。
もちろん、2009-10シーズンに降格して、まあその前後も合わせると、かなり2部生活が長いとはいえ、せっかく用意した祝勝イベント用の舞台装置も解体しないといけなかったテネリフェも残念でしたけどね。ちなみに彼らが前回、プレーオフ決勝まで残ったのは2016-17シーズンで、この時の相手はボルダラス監督率いるヘタフェ。その年の1月にスペインに来た柴崎岳選手もテネリフェの一員として出ていたんですが、そこでの活躍が認められたか、翌シーズンはヘタフェに入団することに。

ただ、コリセウム・アルフォンソ・ペレスには2年しかおらず、その後はデポルティーボ(当時は2部)、2020年からはお隣さんのレガネスに移り、1部昇格を目指して戦っていたんですが、何せ昨季はプレーオフ進出にかすりもしない12位で終わってしまいましたからね。シーズン当初の不調を乗り越え、何とか残留は果たしたナフティ監督も去り、次は降格したばかりのレバンテの指揮官となることが決まったのはともかく、現在、レガネスはアメリカの投資ファンドへの経営権売却が秒読み状態。まだ1年、契約が残っている柴崎選手に影響があるのかは不明ですが、少なくとも新ユニフォームのビデオでモデルを務めているのは安心材料になりますでしょうか。
まあ、そんなことはともかく、8月第2週の週末に開幕する新シーズンに1部でプレーする20チームが出揃ったところで、今週木曜にはいよいよ対戦カード日程の抽選会が開催。まだスペインからの日本入国には飛行機搭乗前にPCR検査の陰性証明が必要なんですが、コロナ最盛期に比べると、だんだん海外旅行も行きやすくなってきましたしね。しばらくリーガ観戦をご無沙汰していたファンもここはお楽しみカードをチェックして、予定を立ててもいいかと。スペイン国内やヨーロッパ内の移動にはもう何の制限もないため、1週間早く開幕するプレミアリーグなどと梯子というのもありかもしれませんね。

え、それで肝心のマドリッドの1部チームのニュースはないのかって?いやあ、普通のW杯開催年なら、今頃は私もスペイン代表の試合に一喜一憂しているはずだったものの、今年のカタール大会に限っては11月までお楽しみはお預け。どのクラブも今はフロント以外、休業状態なんですが、そんな中で唯一、動きがあったのはレアル・マドリーでしょうか。ええ、先週は月曜にチュアメニ(モナコから移籍)の入団プレゼンがあっただけでなく、水曜にはペレス会長がチリンギート(TVのサッカー番組)に出演。サッカーを扱うメディアは数ある中、あまり格の高い番組ではなかったため、賛否両論あったものの、ここ何年もファンがいつ来るのか、指折り数えていながら、結局、PSG残留となったエムパペについて聞けたのは興味深かったかと。

曰く、「Este Mbappé no es mi Mbappé/エステ・エムバペ・ノー・エス・ミ・エムバペ(あのエムバペは私のエムバペではない)」そうで、「フランス代表として、チームメートと一緒に広告イベントに参加するのを断った時から、驚いていたが、PSGはチームだけでなく、クラブ経営のリーダーの地位まで彼に提供している。Ningún jugador en la historia del Real Madrid ha estado nunca por encima de los demás/ニングン・フガドール・エン・ラ・イストリア・デル・レアル・マドリッド・ア・エスタードー・ヌンカ・ポル・エンシーマ・デ・ロス・デマス(レアル・マドリーの歴史において、どんな選手も他の者の上にいたことはない)。私たちはクラブを危うくするような例外を設けるつもりはない」とのこと。

まあ、実際、昨季44ゴールのベンゼマに続き、ビニシウスも22ゴールと大成長。リーガとCLのdoblete(ドブレテ/2冠優勝)を達成したとなれば、マドリーの得点力にはまったく不安はありませんからね。おまけに後者など、バケーション先のマイアミで日曜にはロベルト・カルロスとロナウジーニョのお友だちチームが対戦したチャリティマッチにも参加。12-10でロベカル側が勝ったのはともかく、そこでも2ゴールを挙げているとは、もしや21才の若い彼にはオフシーズンなど必要ない?

そのビニシウスとも近々、契約を2025、26年頃まで延長する予定で、当人のお給料も3倍増ぐらいになるそうですが、いやあ、それだけではつまらないのは記事のネタが必要なマスコミ。ええ、早速、エムバペの新契約が切れる3年後にリベンジ獲得とか、この夏、マンチェスター・シティに持って行かれたハーランド(ドルトムンドから移籍)も2024年には契約解除条項があって、移籍可能だとか、うーん、最近はロシアのウクライナ侵攻のせいで、鉄鋼材など輸入物資が滞り、本当なら、今年の12月には終わっていたはずのサンティアゴ・ベルナベウの全面改装工事の完成も来年夏まで延びるようですしね。

となれば、スーパーメガプレゼンをするにもそのくらいまで待った方がいいというのもわかりますが、日曜の夜など、バスケットのリーグ王者を決めるマドリーのプレーオフを観戦に行ったペレス会長がファンにエムバペの件を持ち出され、「Pobre hombre, estara ya arrepentido/ポブレ・オンブレ、エスタラ・ジャー・アレペンティードー(可哀そうな男、もう後悔しているだろう)」と答えていたのはもしや、本音が漏れてしまった?

そんな具合で、バスケでもバルサを下して通算36回目の優勝を果たした後の月曜、この夏、2人目となる加入選手、CBリュディガーの入団プレゼンもバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習施設であったんですが、プレスルームでの記者会見では、チェルシーとの契約を満了して移籍金なしで入ったこの彼もバルサからのオファーを断っていたなんて告白も。先のチュアメニは8が好きながら、クロースが着けているため、背番号18を選んだのと同様、カルバハルの着けている2が好きだという当人は2が二つ並んだ22番をもらっています。

ちなみにこのリュディガー、4月にはサンティアゴ・ベルナベウでCL準々決勝2ndレグの対戦を経験しているんですが、当時はまだ、マドリー入団は決まっていなかったとのこと。その試合でチェルシーが総合スコアで同点に追いつくゴールも挙げたせいもあったんでしょうか、その後、アンチェロティ監督から勧誘の電話があって、移籍を決意したそうですが、すでにアラバとミリトンでマドリーの守備ラインの固さは保証されていますからね。新シーズンはアラバを左SBに回したり、3CB制の採用もあるんじゃないかと噂されていますが、まあその辺は7月8日のプレシーズン開始を待ってみないことには何とも。

一方、これでとりあえず、夏の補強は一旦、打ち止め、しばらく放出組の方に専念することになったお隣さんと対照的なのがアトレティコで、いえ、コーチングスタッフにかつて、サラゴサやセルタでプレーした元MFのグスタボ・ロペス氏が加わったなんてことはあったんですけどね。肝心な選手の補強はまだ1人もなく、いいとこ、7月10日から始まるロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)での地獄のキャンプ参加が保証されている新顔はモラタ(ユベントスに2年間レンタル移籍)とサウール(昨季はチェルシーにレンタル)ぐらいになりそうな。

いえ、ここ数日、ドルトムントとの契約が終わったアクセル・ビッツェルが退団したエレーラの代わりに入るんじゃないかとは言われているんですけどね。もう33才になるボランチですし、夢を掻き立てられているファンは少数派かと。それでも一応、プレシーズンマッチの予定だけは埋まったようで、7月27日にはブルゴス・デ・オスナでヌマンシア(RFEF1部/実質3部)戦、30日にはオスロでマンチェスター・ユナイテッド戦、8月4日にカランサ杯(カディス主催の夏の親善大会)、7日にテル・アビブでユベントス戦の4試合となっていますが、何せ、去年の夏は1年遅れのユーロ2020やコパ・アメリカ2020が開催されたせいで、プレシーズン練習になかなか選手が揃わず。

おかげでリーガ開幕前の親善試合はカンテラーノ(アトレティコBの選手)の独壇場となっていたんですが、今年は全員、キャンプ初日から参加できますからね。それもあって、プレシーズンマッチの数が少ないのかもしれませんが、どちらにしろ、マドリッドで彼らの勇姿を見るのは公式戦まで待つことになりそうです。

その横で先週はマンチェスター・ユナイテッドのホームプレゼン試合で7月31日にオールド・トラフォード初訪問することが決まったラージョは、19日にはオーストリアでセリエAのサレルニターナとの対戦も決定。4日にプレシーズンを開始するヘタフェもカンポアモール(アリカンテにあるゴルフリゾート)でのキャンプでイングランド2部のプレストンと最初の手合わせをすることになりましたが、弟分チームたちも獲得希望の選手名は幾人か挙がっているものの、まったく動きがなくてねえ。降格したアラベスから、GKパチェコがヘタフェに来るなんて話は結構、実現性が高そうですが、おそらく6月中はまだ、入団プレゼンイベントもないんじゃないでしょうか。

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