代表選手もいい加減、バケーション入りしたいかも…/原ゆみこのマドリッド

2022.06.13 17:35 Mon
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「億超えって、結構、外れがあるからなあ」そんな風に私が疑心暗鬼になっていたのは土曜日、レアル・マドリーがモナコに払うチュアメニの移籍金が目標達成オプションも含めると、1憶ユーロ(約142億円)近くなるとマルカ(スポーツ紙)で知った時のことでした。いやあ、カセミロの後継となりうる22才のMFを彼らが獲得しようとしていることはかなり以前から話題になっていたため、入団決定のニュースには全然、驚かなかったんですけどね。PSGと競り合いになり、そこまで値段が上がったにも関わらず、やはりプレゼンはバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習施設で来週火曜に実施というのもまあ、置いといて。

それこそエムバペ(PSG)が入団していたら、現在、改装中のサンティアゴ・ベルナベウが夏季集中工事フェーズ入りしたのを中断してもファンをスタンドに入れて、メガプレゼンとなったんじゃないかと想像していますが、問題はこれまでマドリーが大台を超えたのは2013年のベイル(トッテナムから移籍)、2019年のアザール(同チェルシー)のみ。とはいえ、元を取るどころか、有り余るほどのお釣りがあったのはほぼ1憶(9800万ユーロ/約140億円)で2009年に入団したクリスチアーノ・ロナウド(マンチェスター・ユナイテッドから移籍)だけなんですよ。
うーん、アザールは来季での復活を先日、シベレス広場でのCL優勝イベントの際、ファンに誓っていただけでなく、ネーションズリーグのベルギー代表戦でもだんだん、いい感じになってきているため、まだ期待できなくもないんですけどね。この3シーズンはケガもあって、大したことができなかった度ではお隣さんの1憶2800万ユーロ(約182億円)、ジョアン・フェリックスといい勝負と言っていい?それでもジョアンはまだ22才と若いですし、31才のアザールより、ゴールを挙げているんですが、バルサもネイマールのPSG移籍で手にした2億2000万ユーロ(約320億円)の投資で大失敗。

ええ、1憶4500万ユーロ(約210億円)のデンベレ(ドルトムントから移籍)もケガが多く、結局、契約延長をせずにこの夏、フリーで移籍しようとしていますし、1憶6000万ユーロ(約230億円)のコウチーニョ(同リバプール)もレンタルを繰り返した挙句、5月には2000万ユーロ(約29億円)の買取オプションを行使したアストン・ヴィラに完全移籍しちゃいましたからね。そんな中、マドリーのもう1人の1憶プレーヤーが意外なところでいきなり主役になっていたから、ビックリしたの何のって。

いやあ、今週は久々のお出かけをして、コリセウム・アルフォンソ・ペレスでヘタフェの新シーズン用ユニフォームのプレゼンを見に行ってきた私だったんですけどね。ユースの選手たちがモデルを務めた2022-23モデルはデザインにはあまり変化がなく、色も青、赤、そして黄緑と定番で落ち着いていたんですが、何せ、コロナ禍のせいで、そんなイベントがあるのも2年ぶりでしたからね。コリセウムのVIPルームがマスコミや招待客で賑わっていたのが新鮮だったのはともかく、まさかアンヘル・トーレス会長から、「丁度、45分前にガレス・ベイルの代理人と話しをしたよ。Nos lo han ofrecido/ノス・ロ・アン・オフレシードー(ウチに移籍をオファーしてきた)」という、サプライズ発言を聞くことになろうとは!
いやだって、先日はファンへの手紙で9年間、在籍したマドリーにお別れした当人は昨季、ほとんどクラブでの試合には出なかったものの、日曜には予選プレーオフでウクライナを1-0で下し、W杯出場の大願を成就。その前後にあったネーションズリーグのポーランドオランダ戦でプレーしていないのは体調のせいなのか、気分が乗らないせいなのかもわからないんですが、要は数年前、「Wales. Golf. Madrid. In that order(ウェールズ、ゴルフ、マドリー。この順番)」という旗を掲げていたぐらい、大事なウェールズ代表戦でもその程度の参加率となれば、ヘタフェに来たって、その優先順位は変わらないのでは?

実際、しばらく前にはアトレティコにもオファーが届いたそうで、おそらくお気に入りのゴルフ場もあるマドリッドから、ベイルが離れたくないということでしょうが、兄貴分は1200万ユーロ(約17億円)とも言われる高額年棒を嫌って、早々に辞退。ま、これはヘタフェにしろ、ファルカオが来季も続投するという朗報が届いたばかりのラージョも同様で、選手本人がかなりの減収を覚悟しないと、ムリかと思いますが、大体がして、ヘタフェには昨季、アトレティコからビトロをレンタル、チームの質を上げてくれると期待されながら、結局、シーズン通してケガに悩まされ、ほとんどプレーできなかったという悪しき前例がありますからね。

ただ、金曜にウェールズ代表での記者会見ではベイル自身が、「ヘタフェに行かないのは確かだ」とオファーを否定。更に「どこに行くにしてもウィンウィンの関係になるよ。だって、ボクはW杯前には試合に出るからね」なんて言っているようではそれこそ、12月に大会が終わった後はどうする気なのかという疑問も出て来るため、最後は来ないことになって、ホッとしているファンも少なくないんじゃないでしょうか。

それ以外でも、「Yo es una costumbre que tengo, visito al Madrid y al Atleti por si pesco algo/ジョ・エス・ウナ・コストゥンブレ・ケ・テンゴ、ビシト・レアル・マドリッド・イ・アル・アトレティ・ポル・シー・ペスコ・アルゴ(何か掘り出し物があるかもしれないから、習慣的にマドリーとアトレティコを訪問している)」というトーレス会長は先週もバルデババスのオフィスに赴き、マリアーノやヨビッチ、もしくはRMカスティージャの有望選手レンタル移籍の可能性を探っていたようですが、まだそっちの方は海のものとも山のものとも。何にせよ、7月4日のプレシーズン開始までに新シーズンの陣容が整うことはないようです。

その一方で、同じ水曜にはクロアチア代表参加中のモドリッチがマドリッドに電撃帰還。バルデベバスで契約の1年延長書類にサインして、金曜にネーションズリーグ初白星が懸かったデンマーク戦(0-1で勝利)を控えるチームにとんぼ帰りしたなんてことがあったんですが、もしやこれって、来週月曜のフランス戦が終わったら即、バケーションに入れるようにというクラブの気遣いだった?内々のセレモニーで、ファンはビデオでその様子を見ることとなったんですが、何にしろ、来季も彼がマドリーにいてくれるのは嬉しいですよね。

そして翌木曜にはやはり、まだ未勝利だったスペインもネーションズリーグ3節のスイス戦にジュネーブで挑んだんですが、ルイス・エンリケ監督は今回も8人のメンバーをローテーション。チェコ戦を経て、ほぼ最初のポルトガル戦のスタメンリピートで、違いはカルロス・ソレル(バレンシア)の代わりにマルコス・ジョレンテ(アトレティコ)が入っただけだったんですが、これが前半13分、見事に当たってくれたんです!

そう、フェラン・トーレス(バルサ)が敵エリア右前で奪い返したボールが、今回はアスピリクエタ(チェルシー)とカルバハル(マドリー)のおかげで右SBからお役御免に。21-22シーズンのアトレティコ、リーガ優勝に大貢献した時のMF業に専念できるようになったマルコス・ジョレンテが繋ぎ、そのラストパスをサラビア(PSGからレンタルで昨季はスポルティングCPでプレー)がゴールに押し込んでくれたとなれば、意気も上がるってもんじゃないですか。

幸いVAR(ビデオ審判)もオフサイドがなかったことを確認してくれたため、スペインは早い時間に先制点を挙げることに成功したんですが、うーん、それにしたって、何でもっと景気よくゴールが入らないんですかね。別にスイスはチェコのように5人DF体制で自陣に固まっていた訳でもなく、それなりにスペースはあった感じでしたが、後半になって、サラビアがダニ・オルモ(ライプツィヒ)に代わり、モラタ(アトレティコからレンタルで2年間、ユベントスでプレー)とガビ(バルサ)から、アセンシオ(マドリー)とコケ(アトレティコ)になってもスペインのシュート数が大して増えることもなかったかと。

折しもこの試合の当日にはもう1人のCF、RdT(ラウール・デ・トマス/エスパニョール)が喉の痛みを訴えて代表を離脱。今のところ、コロナ陽性は出ていないようですが、それで23人のベンチ入り枠に入れたアンス・ファテ(バルサ)はどうやら今回、戦力としてより、慣らし招集されたみたいですからね。おかげで攻撃カードの尽きたスペインは最後まで、その1点を守り切るしかなくなってしまったんですが…いや、ホント、紙一重でしたよ。

というのも残り4分になって、GKゾマー(メンヘングラッドバッハ)の長いロングキックをクリアしようとGKウナイ・シモン(アスレティック)がエリアを出て突進。セフォロビッチ(ベンフィカ)にボールを奪われ、エンボロ(メンヘングラッドバッハ)にガラ空きのゴールに撃たれた時にはとても生きた心地はしなかったかと。おまけにそのシュートが外れた後、1分もしないうちに今度はディエゴ・ジョレンテ(リーズ)がトラップミス。これもセフェロビッチがスペインDF陣に当ててくれたため、事なきを得たんですが、こんな状況を目の当たりにしても、「No me pone nervioso nunca/ノー・メ・ポネ・ネルビオーソ・ヌンカ(決して自分を神経質にさせることはない)」と言ってしまえるルイス・エンリケ監督はかなりの強心臓の持ち主かと。

そんな危ないシーンはあったものの、スイスでの代表戦では17試合で13勝4分けというゲンの良さも味方してくれたんでしょうね。そのままスペインは0-1で勝利。並行してプレーしていたポルトガルもチェコを2-0と破っていたため、彼らが勝ち点差2の首位となり、スペインは2位でネーションズリーグ6月分、最後となるチェコ戦を迎えることになったんですが、もう今更ですからねえ。リーガ終了直後にバケーション入りした選手たちは練習しなくなって久しいこともあったか、この試合のため、RdT離脱を補う追加招集はしないのだとか。

そして金曜にジュネーブから、マラガにチームが移動するのに合わせ、私も海水浴を兼ねて、現地に行くことに。いやあ、まさか安いから選んだ早朝6時45分発の便のおかげで、通常の夕方ではなく、ラ・ロサレダ(2部マラガのホーム)での前日スタジアム練習が午前10時30分からになっても間に合ってしまうとは。とはいえ、やはりもう4試合目ともなると、毎回、スペイン代表オフィシャルページで最初の20分間、ライブ配信されているのとまったく同じ光景、軽いランニングのアップ、ピッチ中央で全員参加の巨大ロンド(中に入った選手がボールを奪うゲーム)、ビブスを配ってpartidillo(パルティディージョ/ミニゲーム)が始まって少ししたところで終了というのを見るのもちょっと、マンネリ感がなきにしろあらず。

おそらく、金曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)からのチェコ戦ではルイス・エンリケ監督のローテーション計画から察するに、先週日曜にプラハで2-2と引分けたメンバーが中心になりそうですしね。ただ、その日はイニゴ・マルティネス(アスレティック)が前日、練習中に足を踏まれ、「tiene el dedo bastante hinchado/ティエネ・エル・デドー・バスタンテ・インチャードー(かなり指が腫れている)」(ルイス・エンリケ監督)せいで不在だったため、エリック・ガルシア(バルサ)とCBコンビを組むのはパウ・トーレス(ビジャレアル)か、ディエゴ・ジョレンテになるかもしれません。

ちなみにここまで3試合、連続先発をしているのはウナイ・シモン、サラビア、ガビ(バルサ)の3人だけ。中でも8月にようやく成人年齢を迎えるMFについては、ルイス・エンリケ監督も「Yo creo que Gavi podría jugar 16 partidos seguidos/ジョ・クレオ・ケ・ガビ・ポドリア・フガール・ディエシセイス・パルティードス・セギードス(ガビは16試合連続出場だってできると思う)」と、17才の若さをいいことに使いまくっているんですけどね。クラブの先輩、前年度は代表でもユーロ、東京五輪と皆勤したせいで昨季は負傷が続き、このネーションズリーグには招集されていないペドリの二の舞は避けてほしいところかと。

逆に楽しみなのは初戦のポルトガル戦では会場のベニト・ビジャマリン(ベティスのホーム)のスタンドに結構、空席があったのとは違い、このチェコ戦は3万枚のチケットが15分で完売。地元のサッカーファンが2018年にマラガが2部降格して以来、1部チームの選手を見る機会がないのもあるんでしょうが、一応、パスやセルカニアス(国鉄近郊路線)など、公共交通機関の中だけはまだマスク着用が義務。もうそれ以外はコロナ禍なんて存在しなかったのように大勢のバケーション客で街が溢れかえっているだけに、その辺からの需要もあったんじゃないでしょうかね。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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