一息つける週末がやって来た…/原ゆみこのマドリッド

2022.04.23 21:00 Sat
©Atlético de Madrid
「今週末のリーガ優勝決定はなくなったんだ」そんな風に私がホッとしていたのは金曜日、首位レアル・マドリーと2位バルサとの勝ち点差が15で残り5試合となった今、もう現実から目を背けてはいられないことに気がついた時のことでした。いやあ、Vデーカウントダウンの話題はミッドウィーク開催の33節前からあって、この日曜に決まるかもしれないというシナリオはあったんですけどね。ただ、バルサが木曜のレアル・ソシエダ戦を落とすというのが、その大前提だったため、彼らがレアル・アレナでオバメヤングのゴ-ルによる0-1の勝利を挙げたことで予定が先送りに。

そこで次のチャンスはいつだろうと調べてみたところ、何せ、今週末は延期されていた21節のバルサvsラージョ戦が日曜夜9時からあるだけですからね。大抵なら、チャビ監督のチーム楽勝の予想を立てるところですが、折しもマドリッドの弟分チームは木曜にお隣のエスパニョールに0-1で勝利。苦節13試合を経て、前半終了間際にセルジ・グラルディオラが挙げたゴールでとうとう今年になって、初の白星を掴み、降格圏と勝ち点7差をつけたんですよ。

残留確定まであと一歩となれば、丁度、シーズン前半戦のエスタディオ・バジェカスでは1-0の勝利を導くゴールを決め、クーマン監督に引導を渡したファルカオもRCDEスタジアムではベンチ入りできるまで回復していましたしね。波乱は十分期待できる?ええ、ここでバルサがラージョに負けると、マドリーは次節30日(土)のホームゲーム、サンティアゴ・ベルナベウでのエスパニョール戦で引分けても優勝決定、バルサが引分けた時は勝利でVに到達。
となると、下手にマドリーがエスパニョールに負けて、バルサがラージョ、マジョルカに連勝、その次の5月8日のマドリーダービーで優勝が決まり、ワンダ・メトロポリターノでアンチェロッティ監督の胴上げを見せつけられるより、まだキックオフ前にpasillo de campeones(パシージョ・デ・カンペオネス/勝者の花道)を作って、お出迎えする方がマシに思えますが、はあ。元々、可能性は薄かったとはいえ、自業自得で奇跡のremontada(レモンターダ/逆転優勝)への道が断たれたアトレティコにはふさわしい結末なのかもしれません。

そう、水曜のグラナダ戦でまた、彼らは躓いてしまったんですよ。まだ日の光が残るワンダに前日、カランカ新監督が赴任したばかりの相手を迎えるにあたって、ジョアン・フェリックスとレマルは前節エスパニョール戦で共にハムストリングを負傷して今季絶望。試合当日までイエローカードの取り消しを願い出ていたコンドグビアとフェリペにもお許しは出ずと、確かに戦力ダウンしていたアトレティコではあるんですけどね。急遽、カンテラーノ(アトレティコBの選手)のハビ・セラーノが先発デビューした試合の前半は、グリーズマンがエリア内で敵に足をぶつけられて倒れていたなんてことはあったんですが、VAR(ビデオ審判)介入すらなく、0-0のままで終了。
ルイス・スアレスを投入し、コレア、グリーズマンとの3人FW体制で得点を目指した後半も、いえ、シュートこそ計22本と多かったんですけどね。枠内は1本だけと精度が悪く、惜しかったと言えるのは43分、クーニャがゴール前から撃って、ポストに当たった時ぐらい。最後はシメオネ監督の三男、アトレティコBがRFEF3部(実質5部)から、最短ルートでRFEF2部(同4部、昨季までの2部Bが今季は2つに分かれた)にスピード昇格するのに大貢献したFWジュリアーノまでデビューしたんですが、同じくロスタイム5分だったエスパニョール戦の二匹目のドジョウは現れませんでしたっけ。

ええ、降格圏の18位にいながら、練習が1回しかできず、選手たちの心理的な面の改善に焦点を当てたというカランカ監督の指導によるのか、最初から最後まで時間稼ぎに徹したグラナダから1点も取れず、スコアレスドローに終わってしまったんですよ!うーん、シメオネ監督は「ウチはマジョルカ戦、マンチェスター・シティ戦、10人で戦ったエスパニョール戦と多大な労力を費やした後、たった3日でまたプレーした。No es una excusa, pero es una realidad/ノー・エス・ウナ・エクスクーサ、ペロ・エス・ウナ・レアリダッド(言い訳ではなく、それが現実だ)」と言っていましたが、過密日程は今シーズンになって、始まった訳ではありませんからね。

「Nos faltó fluidez, brillantez, claridad y eso se logra cuando estás fresco/ノス・ファルトー・フルイデス、ブリジャンテス、クラリダッド・イ・エソ・セ・ログラ・クアンドー・エスタス・フレスコ(ウチはプレーにスムースさ、輝き、明快さが欠けていて、そういうのは選手たちがフレッシュな時にしかできない)」(シメオネ監督)そうですが、いやあ。折しも次節アスレティック戦までは10日近く間が空くため、金曜から月曜午後まで、休養日したアトレティコですが、来季のCL出場権がもらえる4位以上キープはともかく、コケなどが言っていた「2位になって、スペイン・スーパーカップ出場を目指す」までのモチベーションが保てるのかどうか。

というのも今週月曜には、2019年にバルサのピケとサッカー協会のルビアレス会長がスペイン・スーパーカップを4チーム制、1月開催にして、サウジアラビアにスポンサーになってもらう改変計画の会話が公に。それもピケが経営するコスモス社に仲介料として、6年契約で2400万ユーロ(約34億円)、1年当たり、400万ユーロ(5億7000万円)、サウジアラビアが払うというのは合法な取引で、別にいいんですけどね。ピケ自身がその会話の中で、「マドリーには参加報奨金として、800万ユーロ(約11億円)払うと言えば、サルジアラビアまで行ってくれるはず。マドリーとバルサにそれぞれ800万ユーロ、残り2チームには200もしくは100万(約1憶4000万円)ユーロでいい」と、報奨金の不公平配分まで提案。

その通りにここ3大会、支給されているんでが、2020年、最初にサルジアラビアで開催した時、バレンシアが不満を訴えていた件もグダグダのままなら、その初回と今年、2回参加しながら、スペインの両雄どころか、ピケの会社のコミッションより、報奨金が少なかったアトレティコが文句を言わなかったのは何故?更に問題はこのサウジアラビアとの契約にはバルサ、マドリーが不参加の場合、サッカー協会が受け取る金額が500万ユーロ(約7億円)ずつ減るという条項があるということ。

つまり、シメオネ監督も「聞いた限りでは、バルサとマドリーが参加する方が都合がいいというのを理解するのは難しくない」と言っていた通りで、何せ、サッカー協会は審判団の親玉でもありますからね。こうなると、2強寄りのジャッジがあるたび、世間から疑惑の視線が向けられるのは避けられないんですが、まあそれはそれ。一応、昨季はアトレティコもリーガ優勝できましたし、翻って今季、レバンテ、マジョルカなど、残留争い渦中の下位チームから、勝ち点を19も取りこぼしているとなれば、バルサを抜かして、2位になれなくてもまったくもって、自己責任に他ならないんですが…。

まあ、この件に関しては月曜のカディス戦にバルサが負けた後、ピケが真夜中にTwitchで記者会見ライブを始めたり、翌日にはラス・ロサス(マドリッド近郊)の協会本部でルビアレス会長が釈明会見。更にはピケが昨年夏の東京オリンピックのスペイン代表オーバーエイジ枠に入るのに口利きしてくれとか、自身が2019年に買い取ったアンドラ(RFEF1部)を楽な2部Bのグループに入れてくれとか、ルビアレス会長におねだりしている会話のスクープが続いているんですが、こういう私的なスマホでのやり取りが簡単に他人の手に入る(これは違法)というのもちょっと、怖い感じはしますよね。

え、水曜には他にもプレーしたマドリッド勢がいたんだろうって?その通りで、弟分のヘタフェは丁度、アトレティコから1時間遅れでセルタ戦のキックオフとなったんですが、私がまだワンダのスタンドにいたグラナダ戦の後半、バライドスでは前半23分にオスカルのスルーパスから、マジョラルが先制点を挙げたという朗報が。プレスルームに下りた時にはすでに、後半6分に再び、今度はエネス・ウナルのアシストから、マジョラルがdoblete(ドブレテ/1試合2得点のこと)を達成していたんですが、残念だったのはカランカ監督が話している最中、ウナルの決めた3点目がオフサイドで認められなかったこと。

そのまま、いきなり霧が晴れたように0-2で快勝、今季アウェイ戦初白星でこちらも見事、降格圏との差を勝ち点5に増やし、ラージョ同様、残留確定秒読みに入ったんですが、次の試合は5月2日(月)にコリセウム・アルフォンソ・ペレスでベティス戦と、かなり先になりますからね。相手はこの土曜午後10時(日本時間翌午前5時)から、カルトゥーハでコパ・デル・レイ決勝をバレンシアと戦うとはいえ、そちらで勝っても負けても回復の時間は十分。コパ優勝でEL出場権が取れても、アトレティコと勝ち点差4の5位にいるだけに当然、CL出場権を狙ってくるものと思われるため、ここは切にヘタフェの援護射撃を期待したいかと。

一方、水曜最後の時間帯、午後9時30分から始まったオサスナvsマドリー戦は丁度、前半をメトロの中で過ごしたため、私が中継を見られたのは近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に辿り着いた後半からだったんですが、ほぼ残留が確定しているオサスナだけにプレッシャーがないのが幸いしたんでしょうか。開始12分にはセバージョスのクロスをベンゼマが繋ぎ、アラバが1度はGKセルヒオ・エレーラに弾かれながら、戻って来たボールを脚に当てて先制点をゲット。それにもショックを受けず、その1分後にはチミ・アビラがゴール前に入れたパスをミリトンの後ろにいたブドミルが方向を変え、即座にスコアを同点にしているのですから、大したもんじゃないですか。

それでも前半終了直前にはカマビンガのクロスから、セバージョスが放ったシュートをエレーラが弾いたところ、後ろから駆けつけたアセンシオが押し込んで、1-2とマドリーがリードして後半が始まったんですけどね。早くも5分にはこの日、ビニシウスの代わりに左サイドに入ったロドリゴがエリア内でチミ・アビラのハンドを誘発し、PKが与えられたため、もうこれで勝負あったかと思ったんですが、いえいえ。4月上旬のセルタ戦で3本PKを蹴り、うち2回目を止められていたベンゼマをよく研究していたエレーラが止めてしまったから、ビックリしたの何のって。

それだけじゃないんです。懲りないのはお互い様と言いますか、オサスナはその5分後にもナチョ・ビダルがエリア内でロドリゴを倒し、再びPKを献上。この時もベンゼマがキッカーを務めたんですが、「Tenía claro que ese es su lado de seguridad/テニア・クラーロ・ケ・エセ・エス・ス・ラドー・デ・セグリダッド(彼が確かだと思える側はわかっていた)。セルタ戦でも失敗した後、そっち側に蹴っていたからね」というエレーラが再び右側に飛んで、連続セーブしてしまったんですよ。いやあ、こういうのを見ると、2年前、マドリーとの対戦でPKハットトリックを決めたバレンシアのカルロス・ソレルなど、滅多にないケースなんだとわかりますが、でも大丈夫。

この時点でもリードはしていたマドリーですし、後半ロスタイムには前掛かりになった相手の隙を利用して、交代出場したビニシウスがカウンターで複数回独走。最初こそ、自分で撃って外していましたが、次はしっかり、ルーカス・バスケスにパスを出し、彼が挙げたゴールで1-3の快勝となれば、何せ、この日は来週火曜のCL準決勝マンチェスター・シティ戦1stレグを見据え、アンチェロッティ監督は結構、ローテーションしていましたからね。それでもアセンシオ、セバージョス、カマビンガといった若い選手たちが立派に穴を埋めてくれるんですから、まったく選手層の厚いチームは羨ましい。

PK失敗でその日はゴールのなかったベンゼマも、「Si había otro penalti lo tiraba él y el próximo lo tirará él/シー・アビア・オトロ・ペナルティ・ロ・ティラバ・エル・イ・エル・ピロキシモ・ロ・ティララ・エル(もう1つPKがあったら、彼が蹴っていただろうし、次のPKも彼が蹴る)」とアンチェロッティ監督の信頼は揺るいでないようですしね。唯一、懸念があるとすれば、太ももに筋肉痛を起こし、ハーフタイムにカルバハルと交代したアラバがシティ戦までに治るかどうかぐらいですが、どうやら見通しは明るいよう。

お隣さんとは違って、まだミッドウィーク試合が続くため、金曜もセッションのあったバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場ではすでにリハビリ終了間近のメンディの姿も見られたそうですしね。もし今、マドリーに悩みがあるとすれば、リーガ優勝がシティ戦の狭間に決まる方がいいか、CL決勝進出を決めてからの方がいいか。何せ、前回2020年はコロナ感染予防規制のため、ジダン監督が胴上げされたエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャ)は無観客、シベレス広場での祝勝行事など、望むべくもありませんでしたからね。

CL決勝は5月28日と離れていますし、シティを破ってもリバプールvsビジャレアル戦の勝者に勝てるという保証はないだけに、まずはどこかでリーガ優勝を祝っておきたいところでしょうが、さて。オサスナ戦当日にまたしても詳細不明の痛みで遠征メンバーを外れたベイルはともかく、マルセロやイスコら、今季末での退団がほぼ決まっているベテラン選手たちはきっと、ファンと最後の思い出を作りたいと願っているんじゃないでしょうか。

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