今週のCLはマドリッドが舞台…/原ゆみこのマドリッド

2022.04.12 19:00 Tue
©Atlético de Madrid
「まるで図ったようにバケーションの時期に重なっているものね」そんな風に私が頷いていたのは月曜日、火水と連日開催されるCL準々決勝2ndレグに合わせ、チェルシーとマンチェスター・シティのファン4000人がマドリッドに到来すると聞いた時のことでした。いえ、今年はもう、2月の16強対決1stレグの時にも大勢のイギリス人サポーターたちがマンチェスター・ユナイテッドの応援に来て、ワンダ・メトロポリターノに向かうメトロの駅で気勢を上げていたものですけどね。

折しも今回は試合日程がまさにSemana Santa/セマナ・サンタ(イースターウィーク)のど真ん中。ヨーロッパでは旅行シーズンに当たるため、マドリッド観光を兼ねてCL観戦という予定を立てたファンも少なくないかと思いますが、ちょっと心配なのは、プレミアリーグ上位争い常連チーム同士のサポーター間でいざこざが起きないかどうか。

いえ、2019年のCL決勝でリバプールとトッテナムがワンダで対戦した際にはそれこそ、物凄い数のイギリス人が市内に溢れかえりながら、特に問題はなかったんですけどね。ただ、今季のヨーロッパの大会では悪い前例があって、3月初旬にはセビージャ(スペイン南部の街)でベティスがフランクフルトと、セビージャがウェスト・ハムとEL16強対決1stレグを連日開催。ドイツ人、イギリス人、そしてセビージャのウルトラ(過激なファンの集団)も混ざって、街頭で大乱闘が繰り広げられたなんてことも。
今はマドリッドの街も夜な夜なプロセシオン(キリストやマリアの像が乗った神輿を担いでのパレード)で賑わっているため、とにかく暴力騒ぎだけはないことを祈っていますが…やはり一番大事なのは試合の結果。マドリッドの両雄がどちらも準決勝に勝ち上がり、2017年準決勝以来となるCLマドリーダービーが実現してくれることでしょうか。

え、そのイギリス勢との対戦前、両チームの週末のリーガ戦はどんなだったのかって?いやあ、先にプレーしたのはアトレティコの方で、土曜の昼間にマジョルカ戦だったんですけどね。ワンダで最下位だったレバンテに負けた後、心を入れ替えて、リーガでは6連勝中だっただけに、エティハッド・スタジアムとは違った姿を見せてくれるはずと信じていたものの、やはり5-5-0なんて、突極の守備的陣形でプレーした後遺症が出たんでしょうか。ビジット・マジョルカでも腰が引けてしまったか、前半は枠内シュートが1本もなし。逆に7連敗を引き起こした安易な失点を減らすため、守備陣を強化、5人DF体制で挑んできたアギーレ監督のチームにカウンターのチャンスを何度か作られてしまうことに。
幸い前半は0-0で終わり、グリーズマン、コケをクーニャ、レマルに代えて始まった後半10分にはようやく、ジョアン・フェリックスに代わって、スタメン入りしたルイス・スアレスのヘッドでGKセルヒオ・リコの手を煩わせることができたんですけどね。まさか23分、エリア内ギリギリでマッフェオからボールを奪おうと後ろから詰めたレイニウドが相手の足を踏んでしまい、ペナルティを取られてしまうとは!このPKをムリキが決め、リードされたアトレティコは遅ればせながら、反撃を開始したんですが、もしや最近、夜9時キックオフの試合が多かったせい?

「con el campo seco, con sol, con todo, es complicado/コン・エル・カンポ・セコ、コンソル、コン・トードー、エス・コンプリカードー(乾いたピッチ、日差し、とにかく何もかもが難しかった)」と、即座にマジョルカ勢がこぞって時間稼ぎに徹したせいで、柵の上から手を伸ばして、ゴールキックのボールをrecogepelota(レコヘペロータ/ボールボーイ)から奪い取らないといけなかったGKオブラクも言っていたんですけどね。結局、「nosotros no pudimos romper su defensa ordenada y correcta/ノソトロス・ノー・プディモス・ロンペル・ス・デフェンサ・オルデナーダ・イ・コレクタ(ウチは相手の組織的で正しい守備を破ることができなかった)」(シメオネ監督)彼らはそのまま、1-0で負けてしまいましたっけ。

え、前節では弟分のヘタフェに1-0と屈したチームに勝てなかったのもショックだけど、この日の勝利で17位に上がったマジョルカには昨年12月のワンダでも久保建英選手の勝ち越しゴールで逆転負け。その当人は、「タケは今週ずっとスタメンとして練習していたが、no me gustó nada, estaba frio y apatico/ノー・メ・グスト・ナーダ、エスタバ・フリオ・イ・アパティコ(全然、気に入らなかった。冷めていて、やる気もなかった)。だから、イ・ガンインを先発させた」(アギーレ監督)という理由で、この試合でも後半途中に出場。シュートは撃っていたものの、得点はできなかったんですが、それよりアトレティコがレバンテ、アラベス、グラナダといった降格を争っているチームから、取りこぼした勝ち点が今季もう17にもなるという方が居たたまれなくないかって?

その通りなんですが、何よりマズいのは金曜先行開催試合でセビージャがグラナダに4-2と勝利、日曜にはバルサもPK3本も献上しながら、レバンテに2-3と土壇場で勝って、両者に勝ち点3差つけられてしまったことはともかく、そのマジョルカ戦直前にはベティスがカディスに1-2と逆転勝ち。5位と4位アトレティコとの差がたったの1ポイントに縮まって、またCL出場圏維持が微妙になってきたことなんですが、もしやこれって、もう1度、ヒル・マリン筆頭株主がマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に行って、激を飛ばした方がいい?

まあ、それでもリーガの方はあと7試合ありますから、根性で4位にしがみつくことは可能かと思いますが、頭が痛いのはやはり、水曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのマンチェスター・シティ戦2ndレグ。ようやく3試合出場停止だったカラスコが戻って来られるとはいえ、負傷のリハビリ中のエレーラとヒメネスが間に合うかは微妙のようですしね。

大体がして、お隣さんより、イギリスでの試合から中日が1日多かったにも関わらず、「Seguro que ha pasado factura el de la ida. Hemos estado un poco cansado, pesados.../セグロ・ケ・ア・パサードー・ファクトゥーラ・エル・デ・ラ・イダ。エモス・エスタードー・ウン・ポコ・カンサードー、ペサードー(1stレグのツケを払ったのは確かだ。ボクらはちょっと疲れていたし、足も重かったし…)」(オブラク)と言っているようではねえ。いくら日曜にリバプールとプレミアリーグ頂上決戦に挑み、2-2の死闘の末に首位を死守したシティとはいえ、土曜試合だったアトレティコの方が体力的に有利で、1-0での負けをワンダでremontada(レモンターダ/逆転突破)できるなんて保証はどこにもないですし、一体、何を考えているのか、死に物狂いでシュート練習に励むべき月曜だって、シメオネ監督は休養日にしてしまったとなれば…。

そして土曜の夜はサンティアゴ・ベルナベウに向かった私だったんですが、うーん、もしやヘタフェとの兄弟分ダービー前にCL準々決勝の相手、チェルシーがサザンプトンに0-6と大勝という報が入ってきたせいですかね。一応、先週水曜の1stレグでは1-3で勝利しているものの、アンチェロッティ監督はモドリッチ、クロース、カルバハル、そして太もも筋肉痛のメンディを温存。代わりにカマビンガ、ロドリゴ、ルーカス・バスケス、マルセロを入れることにしたんですが、全然、大丈夫だったんですよ。

開始4分にPSG戦2ndレグから、CL2試合連続ハットトリックのベンゼマが決めたシュートはオフサイドで認められなかったものの、ヘタフェをずっと自陣に釘付けにしていた彼らは38分、とうとうGKダビド・ソリアを破ることに成功。ええ、ビニシウスが上げたクロスにベンゼマの頭はあと数センチ届かなかったものの、ボールを落ちてくるところをカセミロが低い位置でヘッドして、先制点をゲットしているのですから、これではキケ・サンチェス・フローレス監督自慢の鉄壁の5人DF制もカタなしですって。

前半はせいぜい、ボルハ・マジョラルがカウンターから敵エリア内まで入り込みながら、アラバにボールを奪われてしまったぐらいしか、チャンスもなかったヘタフェは後半23分にも失点。今度はロドリゴとのワンツーから、最後はルーカス・バスケスが決めたんですが、いやあ。2点目が入った後、キケ監督がベンチに籠ってしまい、ピッチ際で指示を出すこともなかったという辺り、如実に現在の彼らの状況を物語っている?

だってえ、降格圏から脱出しようと必死でプレーしていたマジョルカと比べると、ヘタフェは18位のカディスと勝ち点差が4。あと2勝もすれば、残留が確定できるとなれば、何せ、今季はまだアウェイ未勝利というのもありますからね。しかも兄貴分は首位を独走中となれば、ムリに勝ちに行かずとも今週末、火曜のCL準々決勝バイエルン戦2ndレグの後、土曜にヘロヘロになってコリセウム・アルフォンソ・ペレスを訪れるビジャレアルを万全の態勢で迎え撃つ方がずっと効率がいいと考えたとしても、決して責められないかと。

それでもジェネがイエローカードをもらい、累積警告で出場停止になるという弊害はあったんですけどね。結局、最後はエネス・ウナルのシュートもゴールポストに阻まれ、2-0のまま、マドリーが勝利。「ちょっと心配していた試合だったが、チームはいいリアクションを見せてくれた。Los que juegan menos están listos para ayudar/ロス・ケ・フエガン・メノス・エスタン・リストス・パラ・アジュダル(あまりプレーしていない選手たちも手助けする準備ができている)」というアンチェロッティ監督にしてみれば、カセミロが次節のセビージャ戦に出場停止になってしまったとはいえ、十分、満足いく結果だったのでは?

29分にはベンゼマに代えて、ベイルが実に2年ぶりとなるベルナベウでの再デビューも果たしましたしね。ピッチに入った時や、それからしばらくはかなりのpito(ピト/ブーイング)も聞こえたんですが、スタンフォード・ブリッジでクルトワが受けた程ではありませんでしたし、当人がシュートを撃った後はチラホラ拍手も起きるように。ベンゼマが負傷の折り、ベイルが試合当日、詳細不明の痛みでベンチから外れたため、falso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)にモドリッチを起用したのが大失敗。0-4というgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喫したクラシコ(伝統の一戦、バルサ戦のこと)からも時間が経ち、すでに記憶の彼方になっていたのも幸いだったかと。

そしてもう翌日曜からは火曜午後9時からのチェルシー戦2ndレグへ向けた練習をスタートしたマドリーだったんですが、月曜にはメンディも合流。出場停止となるミリトンの代わりにナチョが入る以外、先週、スタンフォード・ブリッジで1-3と完勝した時のチームをリピートできることになったのは朗報ですが、何よりなのは、「Tenemos dependencia de Benzema, es así, no lo vamos a negar/テネモス・デペンデンシア・デ・ベンゼマ、エス・アシー、ノー・ロ・バモス・ア・ネガール(ウチはベンゼマに依存しているが、そういうものだ。否定はしない)」とアンチェロッティ監督も言っていたように、エースの出場にまったく不安がないことでしょうか。

実際、1stレグの結果が結果だけに、チェルシーのトゥーヘル監督も「こんな大会だし、相手やアウェイーゲームということもあって、あまり逆転の可能性はないが、突破を目指す価値はある」とあまり強気には出られないようでしたしね。昨季の準決勝では圧倒的なフィジカルの強さを見せつけて、マドリーを足蹴にした現王者だったんですが、どうやら今季はプレミアリーグが交代枠を3人に戻したのに比べ、ラ・リーガは5人制を維持。それが体力面での差としてじわじわ出てきているらしいんですが、一応、用心のためか、カセミロなどは「トゥーヘル監督が何を言おうと信用できない。Necesitamos a la afición/ネセシタモス・ア・ラ・アフィシオン(ボクらにはファンが必要だ)」とサポーターの後押しも要請。

まあ、PSG戦2ndレグのような雰囲気があれば、チームもプレーしやすいということでしょうが、3年前などはアヤックスに1stレグアウェイで1-2と勝ちながら、ベルナベウで1-4の大敗をして、16強対決で敗退したという黒歴史も彼らにはありますからねえ。もちろん、コバチッチが「逆転突破の例は沢山あって、ボクもボルフスブルクに2-0で負けた後、3-0で突破したのを覚えている」なんて言っているのは、それこそ当人がマドリー在籍時代のことなので、あまり気にしなくていいかと。それでもルカクがケガで来られないのは、ベルギー代表同僚のクルトワもホッとしているかもしれませんね。

そして月曜にはもう1つの弟分、ラージョがリーガ31節のトリを飾ったんですが、いや、本当に残留への道は一歩ずつという感じですかね。バレンシアをエスタディオ・バジェカスに迎えた彼らはやはり、今年になって、リーガで1勝もしていないという重荷からか、シーズン前半戦とは打って変わって、ラストパスまでなかなか至らず、ようやく通ってもシュートが入らずという繰り返し。前半にはGKママルダシビリにイシのシュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)されたなんてこともあったんですが、同様にバレンシアも7位のコンフェレンスリーグ(今季から始まったUEFAの第3の大会)出場権に届けば御の字というぐらいの調子とあって、ハーフタイムを0-0のまま迎えることに。

ところが後半12分、グエデスの左からのパスがカルロス・ソレルに繋がり、そのシュートがカテナに当たって、GKディミトリエフスキを破ってしまったから、さあ大変!途端にバレンシアの選手たちがピッチに倒れているシーンが増えたのにはビックリしましたが、とうとうラージョが意地を見せてくれたのは38分のことでした。ええ、イシのスルーパスを前節、グラナダ戦でもゴールを挙げていたセルジ・グラルディオラが決めて、何とか1-1の引分けに持ち込めたんですが、本当にじれったい。

そりゃあ、残り7試合、あと4回ぐらいドローすれば、来季も1部の弟分という身分は維持できそうですが、「Una victoria nos permitiría dejar el objetivo muy cerca o casi conseguido/ウナ・ビクトリア・ノス・プエウミティリア・デハール・エル・オブヘティーボ・ムイ・セルカ・オ・カシー・コンセギードー(あと1勝すれば、ウチは目標のすぐ近くに、もしくはほとんど達成できるだろう)」とイラオラ監督も言っていましたからね。土曜の最下位アラベスとの試合では何としても2022年初白星を手に入れて、エスパニョール、バルサと続くアウェイ3連戦の後、バジェカスに戻って来る5月1日のレアル・ソシエダ戦ではファンと残留決定を祝えるといいですよね。

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