まだ諦めるには早い…/原ゆみこのマドリッド

2022.04.09 21:00 Sat
「だからって、リーガも疎かにできないわよね」そんな風に私が気を引き締めていたのは金曜日、マドリッド勢のCL追っかけイギリス旅行から帰って来てみれば、もう翌日にはシメオネ監督とアンチェロッティ監督が週末の試合前記者会見で話しているのに気がついた時のことでした。いやあ、CL準々決勝1stレグの結果は悲喜こもごもだったんですけどね。スペインからの生き残り組3チーム中、どこより立派と称えられていたのは、意外なことにラ・セラミカで天下のバイエルンに1-0と先勝したビジャレアル。

とはいえ、来週火曜のアリアンツ・アレナで逆襲を受けない保証はまったくありませんし、何しろ彼らは現在、リーガでは7位。EL出場圏6位と勝ち点差が6もあって、今節は1差で8位のアスレティックとUEFA第3の大会、コンフェレンスリーグ出場権を争うことになるんですけどね。こうなると、来季もヨーロッパ遠征をするにはCL優勝が一番の早道と、ウナイ・エメリ監督も思い詰めているかもしれませんが、それって、かなり難易度が高いですからね。

その一方でリーガ首位を独走するレアル・マドリーは2位、3位、4位に見事、同じ勝ち点で揃い踏みしたバルサ、アトレティコ、セビージャと勝ち点差12で余裕なんですが、この第2陣と5位ベティスの差は勝ち点4と、それ程開いてはおらず。よって、スペイン3チーム中、唯一、来週の2ncレグでremontada(レモンターダ/逆転劇)が必要となったアトレティコにしてもまったく、リーガで主力温存ローテーションなんて贅沢はできないんですが…。
まあ、その辺はまた後から話すことにして、先にCL準々決勝1stレグがどうだったか、お伝えしていくと。アトレティコがマンチェスター・シティに挑んだ火曜の夕方には、早めにエティハッド・スタジアムへ向かうバスに乗った私だったんですが、前日に両チームの練習を見に行った時とは大違い。ええ、昼間にはマンチェスターの繁華街の至るところで目撃されていた、2700人余りのアトレティコファンたちは健脚なんですよ。徒歩だと40分ぐらいかかる行程を歌いながら、集団移動をしていたため、エスコートの警察車両が前を塞いで大渋滞が発生。

15分ぐらいだったはずが、その倍以上の時間がかかったため、かなり焦ったんですが、実はアトレティコファンは4週間前、CL16強対決マンチェスター・ユナイテッド戦2ndレグでも来襲。時間のあった午後には有名な”Theater of Dream”を外からでもいいから、一目見ておこうと、私もオールド・トラフォードを訪ねたところ、トラム移動で、こちらの方が遠い感じでしたが、まさか、その時も彼らは歩いて行った?うーん、コロナ禍により、リーガやCLが中断された2020年3月のリバプール戦でもアンフィールドまで1時間ぐらい、延々と行進していたそうですからね。さもありなんですが、ただ、同じ街が続くと、公共交通機関を使っている一般市民から不評を招く恐れもあるかと。
そしてキックオフ前のスタンドでは一際、大きな声でカンティコを響かせていたアトレティコファンたちでしたが、ホームサポーターたちの”Blue Moon”の大合唱の前には成す術なし。というか、序盤からシティにボールを独占されていたシメオネ監督のチームが、「5-3-2で来ると予測したんだが、その後、5-5-0になった。En la prehistoria, hoy y en cien mil años es muy difícil atacar un 5-5-0, es que no hay espacios/エン・ラ・プレイストリア、オイ・イ・エン・シエン・ミル・アーニョス・エス・ムイ・ディフィシル・アタカル・ウン・シンコ・シンコ・セロ、エス・ケ・ノー・アイ・エスパシオス(先史時代から、今日も10万年前も5-5-0の相手を攻撃するのは難しい。スペースがないからね)」(グアルディオラ監督)という状態で、守備オンリーに徹していたとなれば、一体、どうやって盛り上がったらいい?

もちろん、これは「Queríamos un partido cerrado y salir al contragolpe/ケリアモス・ウン・パルティードー・セラードー・イ・サリール・アル・コントラゴルペ(ウチは閉じた試合をして、カウンター攻撃をしたかった)」というシメオネ監督のプラン通りだったんですが、同時に「Cuando defiendes tan bajo no es fácil salir al contragolpe/クアンドー・デフィエンデス・タン・バホ・ノー・エス・ファシル・サリール・アル・コントラゴルペ(あれだけ低い位置で守っていると、カウンターに出るのも簡単ではない)」(サビッチ)というのも事実。何とか、前半は0-0で乗り切ったものの、後半5分、グリーズマンからマルコス・ジョレンテに繋がったカウンターもオフサイドではねえ。その後はますます敵の勢いが強まったせいか、15分にはもう、コケ、グリーズマン、ジョレテンテをデ・パウル、クーニャ、コレアに代えていたアトレティコだったんですが…。

即座に効果を現したのは23分、ギュンドガン、マフレス、スターリングをグリーリッシュ、フォーデン、ガブリエウ・ジェススにしたシティの3人交代の方でした。ええ、その2分後にはフォーデンからデ・ブライネにスルーパスが通り、そのシュートにGKオブラクが破られてしまったから、さあ大変!アトレティコのベンチにはまだルイス・スアレスもいたんですが、シメオネ監督も1-0での負けならいいと思ったんですかね。最後はジョアン・フェリックスをレマルに代えただけで、1本もシュートがないまま、終わってしまいましたっけ。

え、記者会見でシメオネ監督は「波状攻撃のシステムを評価するなら、también hay que valorar un sistema defensivo fuerte y sin vergüenza/タンビエン・アイ・ケ・バロラル・ウン・システマ・デフェンシーボ・フエルテ・イ・シン・ベルグエンサ(強力で恥じることのない守備システムも評価すべきだ)」と言っていたけど、アウェイゴールルールがなくなっても1stレグは0-0上等という、彼の考え方はまったく変わってないんじゃないかって?そうですね、同じ戦略で挑み、16強対決チェルシー戦1stレグで0-1と負けた昨季はコロナ流行による入国規制により、アトレティコはホームゲームをブカレストでプレー。不公平にも2ndレグの方はスタンフォード・ブリッジで行われたため、2-0で後の王者の前に敗退してしまったんですけどね。

オブラクも「Jugamos en casa con un resultado vivo y creo en el equipo y que todo es posible/フガモス・エン・カサ・コン・ウン・レスルタードー・ビボ・イ・クレオ・エン・エル・エキポ・イ・ケ・トードー・エス・ポシーブレ(まだ生きている結果で次はホームで戦える。ボクはチームを信じているし、全てが可能だ)」と言っていたように、今季はワンダ・メトロポリターノがオープンして以来、初めてCL決勝トーナメントの2ndレグが開催。それだけに来週水曜の試合にまだ期待が持てなくはないんですが、はあ。せっかくマンチェスターまで行った私としては、ジョアンやグリーズマンが敵陣にほとんど足を踏み入れない展開はちょっと残念だったかと。

そして翌日、電車で3時間程かけてロンドンに移動したところ、スタジアムのプレスルームに着いて、顔馴染みのマドリー番記者たちから、その日の朝、ようやくPCR検査陰性となって、ペレス会長と共にアンチェロッティ監督がチームに合流したと知らされることに。いやあ、前日はクルトワしか現れず、試合前に監督もしくは監督代理の会見がない異常事態だったんですけどね。これが先週末のセルタ戦のように試合前も試合後もコーチ陣が誰も出ないとなると、マドリーが非常識極まりないチーム扱いされてしまいそうで、私も心配だったんですが、大丈夫。

大雨の中、始まった試合ではエティハッドと同様、やはりスタンド最前列に座っていたサウールやマルコス・アロンソが濡れないよう、フードを被ってベンチ観戦しているのが見えたんですが、アンチェロッティ監督は帽子とコートで防水。もちろん2009年から2シーズン、指揮を執った勝手知ったるチェルシーのホームですから、悪天候も織り込み済みだったんでしょうが、予想が外れたのはクルトワでした。ええ、前日は1人会見で、「ここではリーグとカップ戦に2回ずつ、優勝しているから、ブーイングはされないと思う」と言っていたものの、いやもう、彼へのpito(ピト/ブーイング)の凄いこと。

ワンダ・メトロポリターノとは違い、スタンフォード・ブリッジには周囲に記念ネームプレートのようなものがないため、それ以上の害はなかったんですが、それにしたって、ベンゼマのいるマドリーは強いですよね。ええ、前半21分にはビニシウスのクロスをヘッドで撃ち込んで先制ゴールを挙げると、その3分後、今度はモドリッチかのボールを再び頭で叩き込み、あっという間に2点差にしてしまうんですから、先日、0-4と惨敗したクラシコ(伝統の一戦、バルサ戦のこと)にケガで出られなかったのは、返すがえすも悔やまれるかと。

その後、40分にはジョルジーニョのクロスから、ハヴァーツに決められ、1-2でハーフタイムに入ったんですが、止めを刺したのもベンゼマでした。ええ、後半開始早々の1分、マドリーの左SBメンディが自陣から放ったロングパスをチェルシーのGKメンディがエリアから出て来てクリアしようとしたところ、リュディガーの前でベンゼマがボールを奪ってしまったから、ビックリしたの何のって!当然、ゴールはガラ空きで、そこへ3点目が決まったんですが、え、これって、16強対決PSGの2ndレグで逆転勝ち抜けを決めたハットトリックに続いての連続ハット?

もうこうなると、PSG戦の逆回しフィルムじゃありませんが、来週火曜、サンティアゴ・ベルナベウでの2ndレグでは0-1で負けても準決勝進出が叶うということで、いやまあ、19分には前半も一時、ケガが心配されたミリトンがとうとう、ナチョに代わらざるを得なくなったなんてこともあったんですけどね。どうやら先週末のブレントフォード戦に1-4と負けた辺りから、オーナーのアラモビッチ氏がロシアのウクライナ侵攻により、資産凍結されていることの影響がじんわり出てきたのか、お馴染みの5人DF体制を4人に減らし、ツィエクやコバチッチ、最後はルカクまで投入しながら、最後までチェルシーは希望を繋ぐ、2点目が取れませんでしたっけ。

結局、1-3で負けて、トゥーヘル監督など、「準々決勝は終わったと考えるのがリアリストだ。この結果から、逆転したチームが幾つある?」と嘆いていた程でしたが、それにしても終盤、久々にベイルがピッチに出て来たのにはちょっと意表を突かれたかと。といっても、イリギスのファンへの顔見せ程度で、ほとんど活躍する時間はありませんでしたけどね。むしろ、大当たりはこの日、アセンシオやロドリゴでなく、3トップの右にpajarito(パハリート/小鳥)転じて、最近、愛称がhalcon(アルコン/鷹)に進化したバルベルデを先発させたことの方だったかと。

ただ、試合後の記者会見ではコロナの症状はほとんどなかったと言いながら、やはり冷たい雨は堪えたが、何となく、そのアンチェロッティ監督にいつもの覇気がなかったのは気になったんですけどね。「Con esta intensidad se puede competir con cualqiera/コン・エスタ・インテンシダッド・セ・プエデ・コンペティル・コン・クアルキエラ(このプレーの強度なら、どんな相手とでも競える)」(アンチェロッティ監督)というのには私も同感。この調子なら、昨季は準決勝で総合スコア1-3と負けたチェルシーとはいえ、2ndレグには累積警告でミリトンが出られなくても多分、平気じゃないでしょうか。

そしてもう土曜の午後9時(日本時間翌午前4時)には兄弟分ダービーが迫っているマドリーですが、こちらではミリトンに加え、メンディも疲労で休養する予定。懸念は年明けにコリセウム・アルフォンソ・ペレスでのヘタフェ戦に挑んだ際、早い時間のエネス・ウナルのゴールによる1点を返せず、1-0で負けるという黒歴史があることですが、弟分も中盤の要、アランバリが出場停止ですからね。RMカスティージャ出身で現在、ローマから、また貸しレンタル中のボルハ・マジョラルなど、丁度、前節のマジョルカ戦で勝利のゴールを挙げていることもあり、古巣への復帰をアピールする気満々とはいえ、ここまで今季15試合、アウェイ未勝利の彼らがベルナベウで初白星を挙げるのはやっぱり、敷居が高いかもしれませんね。

そうそう、同じ土曜には午後4時15分(日本時間午後11時15分)から、お隣さんもアウェイでマジョルカ戦なんですが、こちらの注目はシメオネ、アギーレのアトレティコ新旧監督対決。後者がいた2006-09シーズンはまだ、タイトルなどとは縁のないチームだったんですが、何せ今季のマジョルカには昨年の12月、ワンダで先制しながら、ルッソと久保建英選手のゴールで1-2の逆転負けを喰らっていますからね。そのルッソはヘタフェ戦での退場で出場停止、今はチームも降格圏の18位にいるとはいえ、その敗戦から、シメオネ監督時代初のリーガ4連敗をしているため、決して油断はできないかと。まだヒメネスとエレーラはリハビリ中、サビッチも当日までプレーできるかどうかわからないというのもちょっと不安ではあります。

ちなみにもう1つの弟分、ラージョは今回、月曜試合でバレンシア戦となるんですが、実は前節、2点リードを追いつかれて引分けたグラナダ戦ではコメサニャだけでなく、イラオラ監督も退場になっていたんですよ。よって、エスタディオ・バジェカスでは第2監督が指揮を執ることになりますが、もう、こちらはいつになったら、2022年初白星を挙げてくれるのやら。さすがに私も毎回、同じことを言うのに疲れているんですが、残留確定まではあと勝ち点7程で、何せ、今や弟分仲間のヘタフェも勝ち点差1の14位と、13位の彼らのすぐ側まで迫っていますからね。少なくとも先週末はセルジ・グラルディオラも点を入れて、ゴール日照りからの脱出はできたようなので、そろそろバジェカスのファンを安心させられる白星をゲットできたらいいのですが。

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