いよいよ最後の山場が始まる…/原ゆみこのマドリッド

2022.04.01 19:00 Fri
©︎RFEF
「しばらくは代表戦ともお別れね」そんな風に私が寂しく思っていたのは木曜日、2022年W杯グループリーグ抽選がもう金曜にはドーハで行われると知った時のことでした。いやあ、昨年中に本大会出場を決めていたスペイン代表は今回、お気楽な親善2試合をプレーしただけなんですけどね。それでも世間が盛り上がっているのはやはり、このアルバニア戦、アイスランド戦で連勝。しかも土壇場にダニ・オルモ(ライプツィヒ)のゴールで2-1とRCDEスタジアムで辛勝した後、13年ぶりに訪れたリアソル(RFEF1部/実質3部のデポルティーボのホーム)での試合ではgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を披露して、決定力不足の懸念を払拭してくれたせいだったかと。

ええ、ルイス・エンリケ監督も「no tenemos un delantero de 30 goles/ノー・テネモス・ウン・デランテーロ・デ・トレインタ・ゴーレス(ウチにはシーズン30得点するFWはいない)が、他の方法でゴールを奪えるから必要ない」と言っていましたからね。実際、2012年以来、国際メジャータイトルから遠ざかっているスペインとはいえ、昨年夏のユーロ2020では準決勝まで進み、PK戦でオルモとモラタ(ユベントス)が失敗して敗退。その秋にはミラノでのネーションズリーグ・ファイナルフォー準決勝でイタリアにリベンジを果たしたものの、決勝でフランスに負け、惜しくも準優勝という進歩を見せているため、次のW杯ではいよいよ優勝かなんて、淡い夢を抱いたりもするんですが、何にせよ、遥か先の11月の話となれば、今から取らぬ狸の皮算用をしても仕方ない?
とりあえず、先にそのアイスランド戦がどんな試合だったのか、お伝えしていくことにすると、先週土曜のアルバニア戦から、リピートしたスタメンはモラタだけ。RdT(ラウール・デ・トマス、エスパニョール)がラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設での練習中に肩を負傷、離脱しなければ、おそらくCFもローテーションしていたかと思いますが、それが大当たりだったんですよ。そう、最初の試合では代表キャプテンとしてデビューしながら、クラブでもほとんど経験がなかったか、「El árbitro me enseñó la moneda y la quería coger/エル・アルビトロ・メ・エンセニョ・ラ・モネダ・イ・ラ・ケリア・コヘール(審判がコインを見せたから、取ろうと手を出しちゃった)」と、キックオフ前のコイントスでやらかしてしまったことを告白していた当人ですが、この日はジョルディ・アルバ(バルサ)がスタメンで入ったから大丈夫。

序盤はコケやマルコス・ジョレンテのアトレティココンビやカルロス・ロレス(バレンシア)、オルモらにシュート機会を譲っていた彼でしたが、いよいよ前半36分にはチャンスが巡ってくることに。昨年6月、ユーロ前の調整試合だったブタルケでのリトアニア戦でルイス・エンリケ監督のチームがブスケツ(バルサ)の陽性でコロナ隔離となったため、U21代表のメンバーがA代表を名乗ってプレーした時に仮デビューを果たしていたギジャモン(バレンシア)が、カンテラーノ(Bチーム出身の選手)の先輩に向けてスルーパス。ソレルはボールに触れず、エリア内で受けたモラタが敵DFをかわしてシュートを決め、先制点を挙げてくれたとなれば、やっぱり今のスペインのエースは彼で決まり?

続いて38分にはゴールに向かって突進したオルモがビャルナルソン(アダナ・デイルスポル)に倒されてもらったPKもモラタが決め、いやまあ、この時はスペシャリストのジェラール・モレノ(ビジャレアル)もオジャルサバル(レアル・ソシエダ)も招集されていなかったため、昨季のレアル・マドリー戦でPKハットトリックという偉業を達成しているソレルの方が、キッカーとして信頼できるんじゃないかと思った私でしたけどね。これでリードを2点に広げ、ハーフタイムに入ったスペインは後半になっても手を緩めません。
ええ、再開1分にはもう、ソレルのスルーパスをジョルディ・アルバが左サイドから上げ、その日、前線の右でプレーしていたジェレミー・ピノ(ビジャレアル)が、「Entre con todo, no se ni con que remate pero entro(エントレ・コン・トードー、ノー・セ・ニ・コン・ケ・レマテ・ペロ・エントロ(全力で突っ込んで、どこでシュートしたのかわからないけど入った))」という、ヘッドもどきで3点目をゲット。いやあ、19才の彼もペドリ(19才)、ガビ(17才)のバルサ勢に続く、代表のティーンエイジャー選手なんですけどね。最近のスペインは若手の台頭が著しいのも見ていて、楽しいかと。

そして13分にはモラタ、アルバ、オルモがフェラン・トーレス(バルサ)、マルコス・アロンソ(チェルシー)、サラビア(スポルティングCP)に交代、チームをリフレッシュしたところ、ベテランも負けていませんね。次は左SBの座を33才のアルバ、今回は負傷でいない26才のガヤ(バレンシア)と争っている31才のマルコス・アロンソがピッチに入ってすぐ上げたクロスを29才、身長174センチのサラビアがヘッドで決めて4点目。まあ、長身揃いのアイスランドDF陣もダメダメ状態時のアトレティコ化していると言いますか、かなり情けないんですが、このコンビは27分にもリピートします。今度はマルコス・アロンソのゴール前へのキラーパスをサラビアが押し込んで、はい、これでmanita(マニータ/5得点のこと)完成です(最終スコア5-0)。

もうこうなると、フェランもオルモもアルバニア戦でゴールを挙げていますし、モラタもセルヒオ・ラモス(PSG)とアルフレド・ディ・ステファノ(マドリーのレジェンド)を越えて、代表歴代7位の通算27得点としましたしね。ルイス・エンリケ監督もW杯用のFWメンバー候補が多すぎて、選ぶのに四苦八苦するのは確かかと。ただ、やはり今回の大会は夏ではなく、冬まで待たないといけないだけに、選手たちも今季の残りと来季序盤で好パフォーマンスを挙げることが、カタールに行くためには必須。その点、プレー時間を増やすため、PSGからレンタル移籍でポルトガルのクラブに移り、しっかりレギュラーになっているサラビアなど、賢くやっていると思いますが、彼がRMカスティージャから、弟分のヘタフェに修行に来た10年前を記憶している私にしてみれば、まったく光陰矢の如しですよ。

スペインのW杯優勝からも12年経つだけにそろそろまた、代表フィーバーで国内が沸いてくれたら嬉しいんですが、「El factor suerte es importante, como vimos en Sudáfrica/エル・ファクトール・スエルテ・エス・インポルタンテ、コモ・ビモス・エン・スダアフリカ(南アフリカで見たように、ツキのあるなしが大事)」というルイス・ガルシア監督の言葉も真実ですからね。ビッグな大会を制するにはやはり運も必要なんですが、まずは6月前半と9月のネーションズリーグ、ポルトガル、チェコ、スイスとの対戦で足慣らしをして、少なくとも万全の態勢で本大会に乗り込めるといいのですが。

え、それでもう、週末にはリーガの試合が戻って来るんだろうって?その通りでこの30節、マドリッド勢の初陣を切るのはヘタフェ。土曜の午後2時(日本時間午後9時)、コリセウム・アルフォンソ・ペレスにマジョルカを迎えるんですが、どうやらダミアンと一緒にウルグアイ代表に行っていたオリベイラの体調が微妙なよう。前節のアスレティック戦で退場したクエンカとヤンクトも出場停止ですしね。その上、このparon(パロン/リーガの停止期間)中にはマタが肩を負傷、手術して今季絶望というショックなニュースもありましたが、残り9試合となれば、もう嘆いているヒマはないかと。

何せ、ここ6試合白星のない15位の彼らにとって、勝ち点差3で18位のマジョルカは残留争いの直接ライバルですからね。相手はルイス・ガルシア監督が解任され、新たに招聘されたアギーレ監督のデビュー戦となるんですが、この時期になっての指揮官交代には、日本代表でW杯出場権を勝ち取って、意気揚々と帰って来た久保建英選手もちょっと戸惑ったりする?今季、いまだにアウェイ勝利のないヘタフェだけに、マジョルカ、ビジャレルベティス、ラージョと残っているホーム4試合には全勝するぐらいの気構えでいってほしいものです。

そして土曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からの時間帯には兄貴分、レアル・マドリーがセルタとのアウェイ戦となるんですが、代表戦週間があったおかげで、クラシコ(伝統の一戦)でバルサに0-4の大敗を喰らったことをほとんど、世間から忘れられてしまったのはラッキーだったかと。おまけにリハビリ中でフランス代表の親善試合を免除されたベンゼマとメンディもじっくり回復の時間が取れ、木曜にはチーム練習に合流できましたしね。ただ、彼らには来週水曜にチェルシーとのCL準々決勝1stレグが控えているため、リーガは2位のセビージャと勝ち点差9とまだ余裕ですし、2人がビゴ(スペイン北西部、セルタのホームタウン)遠征に参加するかはまだわかりません。

その他、急性胃腸炎を患っていたクロースは全快。南米代表組のビニシウスは累積警告で月曜に早帰り、カセミロ、ミリトン、ロドリゴらのブラジル勢同僚と、お隣さんのルイス・スアレス、ヒメネスと共にウルグアイ代表のW杯出場権獲得に尽力してきたバルベルデも無事、戻ったんですが、セルビア代表に行っていたヨビッチは足首を負傷、そしてお留守番組でもイスコが背筋痛でお休みの予定だとか。うーん、チームの最高年棒コンビはアザールが火曜に足首の補助プレートを除去する手術を受け、全治6週間になっちゃいましたからね。

W杯ヨーロッパ予選プレーオフ準決勝オーストリア戦で2ゴールと活躍、ウェールズを紛争中で6月まで延期となっているスコットランドvsウクライナ戦の勝者と決勝を戦うところまで導いたベイルも火曜の親善試合チェコ戦で、またどこかの痛みで10分程しかプレーせず。バルデベバス(バラハス空港の近く)での木曜の練習には出ていたため、回復しているようにも見えますが、彼の場合はまったく先が読めませんからね。それ以上に気になるのはアンチェロッティ監督がPCR検査陽性となり、ここ数日、自宅隔離していることですが、もうコロナに関しては陽性でも仕事に出てOKとなったスペイン。バライドスのベンチにマスク姿のイタリア人指揮官の姿があっても全然、構わないようですよ。

一方、土曜午後9時(日本時間翌午前4時)から、ワンダ・メトロポリターノにアラベスを迎えるアトレティコは代表戦週間前からのリハビリ組、ヴァス、クーニャも鼻の気道を治すミニ手術をしたカラスコも今週はマハダオンダ(マドリッド近郊)でのセッションに参加。欠場は前節ラージョ戦でレッドカードをもらって、2試合の処分を課されたコレア、累積警告となったコケだけかと思われたんですけどね。メキシコ代表から、やはり累積警告で早帰り、マドリッドでチームメートたちがエル・サルバドルに勝って、W杯出場権を勝ち取るのを応援していたエレーラが水曜にハムストリングを痛め、10日間離脱に。

来週火曜のCL準々決勝マンチェスター・シティ戦1stレグにも出られなくなってしまったのは残念ですが、リーガの相手はここ5試合白星のない降格圏19位のチームですからね。それに遅れを取るようでは、グアルディオラ監督率いるプレミアリーグ首位のチームを前に何ができる?その脇で朗報と言っていいのか、ポルトガル代表でトルコ戦、北マケドニア戦を勝ち抜き、何とか、グリーズマン(フランス)、コレア(アルゼンチン)、スアレス(ウルグアイ)、クーニャ(ブラジル)ら、同僚FWたちとW杯出場で肩を並べることができたジョアン・フェリックスは22分しか、プレーをせずにポルトから帰還。

おかげでケガもなく、疲労も溜まっていないのはアトレティコファンにとって、有難いんですが、当人は代表でのステータスがCL16強対決で敗退させたマンチェスター・ユナイテッドのクリスチアーノ・ロナウドはともかく、ブルーノ・フェルナンデスやこれから対決するベルナルド・シウバより低いのはちょっと不満かも。何はともあれ、ここ5連勝でようやく5位のベティスと勝ち点差4をつけたアトレティコですから、残り9試合でもしっかりゴールやアシストでチームに貢献。来季のCL出場権獲得に成功すれば、6月のネーションズリーグの頃には彼も代表でスタメン入りができるんじゃないでしょうか。

そして今回、1チームだけ日曜開催となったのはラージョでグラナダとのアウェイゲームなんですが、今年になって、リーガで急に勝てなくなった彼らはとうとう、白星なしが10試合まで積み重なりましたからね。せっかく北マケドニアでW杯プレーオフ決勝まで行ったGKディミトリエフスキも最後の壁が越えられず、負傷中のファルカオもマドリッドでコロンビアの予選敗退を嘆くことになったんですが、とにかくここは気持ちを切り替えて、早いところ、1部残留を確定してほしいもの。

グラナダも16位、降格圏とは勝ち点差2という、残留争い真っ只中のチームですしね。相変わらず、ゴール日照りは引きずっているイラオラ監督のチームではあるものの、新たにカーボベルデ国籍を取得して、代表デビューしたベベなど、親善2試合で2得点挙げてきたそうですし、今度こそ、流れを変える勝利を掴んでくれるんじゃないかと期待しています。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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