CLが新しいフェーズに入った…/原ゆみこのマドリッド

2022.03.18 20:00 Fri
©Atlético de Madrid
「どこなら勝てるっていう保証はないけど」そんな風に私が取らぬ狸の皮算用をしていたのは木曜日、驚いたことに前日、トリノでユベントス戦2ndレグをプレーしたビジャレアルまでが終盤に3得点挙げて、総合スコア1-4でCL16強対決を突破。スペイン勢3チームが揃って、金曜の準々決勝組み合わせ抽選に参加することになった時のことでした。いやあ、もうこの段階になると、グループリーグで同組だったチームでも、同じ国のチームでもまったく制限なく、当たっていいことになりますからね。
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そこでこの先のCLの日程を調べてみたところ、準々決勝は4月4、5日と12、13日に開催なんですが、準決勝は4月26、27日と5月3、4日。丁度、5月8日の週末にはリーガのレアル・マドリーvsアトレティコ戦があるため、もし準決勝で両者が顔を合わせれば、久々のダービー祭りが見られることになる?といってもアトレティコがCLダービーを望んでいるかどうかはまた別の話で、ええ、実際、私の覚えている限りでは2014年、2016年の決勝を筆頭に2015年は準々決勝、2017年には準決勝でご近所対決となりながら、1度もマドリーを打ち負かした試しがなし。こうなると、ザルツブルクに総合スコア7-1の大勝をしたバイエルン、同5-0でスポルティングCPを倒したマンチェスター・シティ共々、お隣さんも絶対避けたい相手のはずですし、インテルを同2-1で破ったリバプールにはグループリーグで2連敗、リールを同1-4で退けたチェルシーには昨季の16強対決で痛い目に遭っていますからね。勝ち抜けが期待できるのはいいとこ、アヤックスを僅差で破ったベンフィカか、エメリ監督がシメオネ監督に1度も勝ったことのないビジャレアルぐらいかと。
まあ、その辺はまた、対戦相手が決まってから話すことにして、今は火曜にマンチェスター・ユナイテッド戦2ndレグをプレーしたアトレティコがどうだったのかをお伝えしていくことにすると。1stレグを1-1で終え、まったくのイーブンでスタートしたこの試合、序盤からボールを持っていたのは相手の方だったんですが、前半12分には最初のドッキリがやって来ることに。ワンダ・メトロポリターノでもユナイテッドの同点ゴールを挙げていたエランガのシュートがGKオブラクを強襲したんですが、「por suerte la cara estaba ahí, no tengo miedo del balón y la he parado/ポル・スエルテ・ラ・カラ・エスタバ・アイー、ノー・テンゴ・ミエードー・デル・バロン・イ・ラ・エ・パラードー(幸い顔がそこにあって、自分はボールを恐れてないからね。止めることができた)」という当人が殊勲の顔面ブロック。

身体を張って、敵に先制されるのを防いでくれましたが、何せ25分ぐらいまではパスが3度と繋がらず、チャンスと言えば、デ・パウルのミドルシュートがGKデ・ヘアに弾かれたぐらい。おかげで最初は5-3-2のツートップだったグリーズマンが中盤右サイドに回り、4-5-1に陣形を変えて、必死に守っていたアトレティコでしたからね。それが丁度30分ぐらいだったでしょうか。ベンチ前で指揮していたシメオネ監督が、「Vamos a jugar/バモス・ア・フガール(プレーしよう)」とピッチの選手たちに声をかけたのがキッカケになったか、33分、いきなりコケのスルーパスがマルコス・ジョレンテに通り、彼がゴール前に送ったボールをジョアン・フェリックスが決めてしまったから、ビックリしたの何のって。
ただ、残念なことにジョレンテがオフサイドを取られたため、このゴールはスコアボードに挙がらなかったんですが、大丈夫。次は41分、デ・パウルから受けたボールをジョアンがtaconazo(タコナソ/ヒールキック)でエリア内右側にいたグリーズマンに送り、彼が利き足でない右で上げたクロスをゴール左前でフリーだったロディが頭で決めてくれたんですよ!いやあ、1stレグのジョアンの先制ゴールもアシストしたロディについては、後でシメオネ監督も「レイニウドも入って、彼はチャンスを待たないといけなかったが、カラスコが出場停止になった。Cuando trabajas y no bajas los brazos, siempre hay una opción/クアンドー・トラバハス・イ・ノー・バハス・ロス・ブラソス、シエンプレ・アイ・ウナ・オプシオン(諦めずに練習をしていれば、常にオプションは現れる)」と言っていたんですけどね。

何より、3CB制が多用される昨今、レイニウドのようにCBができる訳でもなく、カリレーロ(長い距離をカバーするSB)でプレーするのも得意でなかった当人ながら、「Tengo que agradecer al Cholo por esta nueva función/テンゴ・ケ・アグラデセール・アル・チョロ・ポル・エスタ・ヌエバ・フンシオン(この新しい役割をくれたチョロに感謝しないと)。難しいけど、カラスコと一緒に学んでいるんだ」(ロディ)と努力を続けていたのは褒めてあげるべきかと。このゴールで先制したアトレティコはハーフタイム間際のブルーノ・フェルナンデスのシュートもオブラクが弾き、1点リードして、後半に入ったところ…。

それが、ゲーム再開から22分には早くもエランガ、ブルーノ・フェルナンデス、マックトミーをラッシュフォード、ポグバ、マティッチに一気に交代、30分にもフレッジに代えてカバーニを投入したユナイテッドを零封しちゃったんですよ。いえ、31分にはバランのヘッド、そしてクリスチアーノ・ロナウドのchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)をオブラクの連続paradon(パラドン/スーパーセーブ)で凌ぐなんてこともあったんですけどね。35分にはコケを負傷から戻って、1度もチーム練習をしていないコンドグビアに、44分にはジョアンをフェリペにと守備を強化した甲斐もあって、0-1のまま、終了の笛を聞くことに。

え、このアトレティコの勝利にはユナイテッドのラングニック監督など、「後半は相手の選手が倒れずに2分、プレーが続いたことがあったかどうか、わからない。それなのにロスタイムが4分だけなんて、ほとんどジョークだ」と文句を言っていなかったかって?まあ、リーガ前節のヘタフェvsバレンシア戦を見ている私としてはアトレティコのやる時間稼ぎなど、気にもならないぐらいだったんですが、リバプールのクロップ監督やバルサのチャビ監督など、シメオネ監督のサッカースタイルにケチをつける同僚は時々、出てきますからね。

大体がして、シメオネ監督自身、「Hemos sido un equipo competitivo, no teniendo vergüenza de jugar replegado/エモス・シードー・ウン・エキポ・コンペティティーボ、ノー・テニエンドー・ベルグエンサ・デ・フガール・レプレガードー(ウチは引いてプレーすることを恥ずかしく思わない、競えるチームだった)」と最初から、相手にボールを持たして、カウンター狙いだったことを認めていますしね。それでも「ボクらはゴールを奪われないために守備的な仕事を沢山した。Se vio un Atleti muy fuerte, un equipo muy sólido/セ・ビオ・ウン・アトレティ・ムイ・フエルテ、ウン・エキポ・ムイ・ソリド(とても強いアトレティを、とても堅固なチームを見せられた)」(グリーズマン)と選手たちが満足しているんですから、外野があれこれ言うことではないのでは?

おかげでとうとう、2019年の16強対決ユベントス戦を含め、5度のCL決勝トーナメント対戦で負けていたロナウドにも勝つことができたんですが、そうそう、試合後のコメントでミソをつけていたユナイテッドの選手が1人だけいて、それはGKデ・ヘア。オールド・トラフォードまで応援に駆けつけた3000人余りのアトレティコファンが、ピッチに挨拶に出て来た選手たちと盛大に祝っていたことについて、「もし立場が逆だったら、ウチのファンのように応援してくれたかどうか」と皮肉るとはいかに。うーん、最近はマンチェスターを故郷のように感じているという彼だけに、ユナイテッドサポーターを立てようとしたんでしょうけど、もう忘れてしまいましたかあ?

当人がゴールを守っていた2013年コパ・デル・レイ決勝でセビージャに負けた後、アトレティコファンはずっとカンプ・ノウのスタンドでカンティコを歌い続け、優勝チームでない彼らが場内一周して感謝の意を表すという、滅多にお目にかかれない光景があったことを。あまり古巣に失礼なことを言うと、お隣さんのGKクルトワのようにワンダ前の記念プレートが危険になると、ちょっと私も心配になったんですが、デ・ヘアのアトレティコでの出場試合数は84。100試合に達していないため、プレートがないのは幸いだったかもしれません。

そんなこんなでCL生き残りを果たし、水曜早朝にマドリッドに着いたアトレティコはもう木曜からマハダオンダ(マドリッド近郊)での練習を再開。何せ、リーガでも来季CL出場権をもらえる4位以上を確定させないといけませんからね。今週末は土曜の午後9時(日本時間翌午前5時)から、エスタディオ・バジェカスでラージョと兄弟分ダービーが控えているんですが、いいニュースはユナイテッド戦に強行出場したヒメネス、コンドグビア、そして途中で交代を頼みながら、最後はマッチMVPに選ばれていたコケも皆、元気にセッションに参加していたことかと。

まあ、それ以外はヴァス、クーニャ、ベルサイコ、レマルがまだリハビリ中なのは変わらず。CL準々決勝1stレグまで出場停止の続くカラスコは前節カディス戦でも累積警告となり、この試合にも出られませんし、更にラージョがスタジアムの改築工事を理由にアトレティコファン用のチケットを用意してくれなかったりするんですけどね。大事なのは最下位のレバンテに負けた後、選手一堂、改心してから、リーガ4連勝中の勢いを保てるのかどうか。一方、13位のラージョは今回も2022年初勝利を目指すことになりますが、1-1で引き分けたセビージャ戦で揃って出場停止だったアルバロ・ガルシアとイシが復帰するのが頼みの綱でしょうか。

ちなみに今節は一足先の金曜にもう1つの弟分、ヘタフェがサン・マメスでアスレティックと対戦するんですが、こちらの目標も変わらず、今季アウェイ戦初勝利。まあ17年前、キケ・サンチェス・フローレス監督が1部の指揮官としてデビューした、初昇格ホヤホヤだったヘタフェもホーム以外でなかなか勝てず、サン・マメスで念願のアウェイ1勝目を手に入れたなんて前例もありますからね。現在、降格圏と勝ち点差4の15位の彼らとしては、残り10試合、とにかく気合を入れて挑んでほしいところです。

え、それで日曜午後9時からは待望のシーズン後半クラシコ(伝統の一戦、マドリーvsバルサ戦のこと)があるんだろうって?そうなんですが、まだ前節のマジョルカ戦でふくらはぎを痛めて交代したベンゼマが出られるのかどうか、わからなくてねえ。太ももをケガしたメンディは欠場確定、逆にスタッフに抱え上げられてロッカールームに戻り、一番心配されたロドリゴはただの打撲で、木曜にはもう普通に練習していたんですが、今季32得点を挙げているエースについては、金曜の検査を待たないといけないそう。

といっても現在、首位マドリーと3位バルサの勝ち差は15もあるため、たとえ負けても大勢に影響はないんですけどね。それでも木曜にはセビージャがウェストハムに延長戦で2-0と負け、総合スコア2-1で逆転敗退、同じ街のお隣さん、ベティスもフランクフルトと延長戦で1-1と引分け、総合スコア3-2でEL16強対決で姿を消したの尻目に、1stレグがスコアレスドローだったバルサだけはガラタサライに1-2と勝って、唯一のスペイン勢として、準々決勝に進出。もちろん、イスタンブールまで遠征したのとベストメンバーを並べないといけなかったせいで、選手たちに疲れはあるはずですが、士気の方は十分、上がっているかと。

それだけに、ここで永遠のライバルに勝利すれば、かなりリーガ優勝が近づくマドリーも用心が必要かと思いますが、あ、日本でTV観戦するファンがチャンネルを合わせた時、混乱しないように言っておくと、このサンティアゴ・ベルナベウで大一番、マドリーは満を持してお披露目となる黒の第4ユニでプレーする予定。こちらは何年か前、龍の絵の入ったユニをデザインして、話題となった日本人デザイナーブランド、Yohji Yamamotoとの再コラボ作品で、クラブ創設120周年を記念しての企画なんですが、純白ユニに慣れているファンはちょっと落ち着かないかも。まあ、何を着ようとマドリー選手たちの才能は変わらないですし、お隣さんがバルサと同じ勝ち点でCL圏入りを争っている今は、私もホームチームの勝利一押ししかないんですよね。


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