4日連続リーガ戦の後はもうCL…/原ゆみこのマドリッド

2022.03.15 20:00 Tue
「彼は3年前のあの試合、いなかったからなあ」そんな風に私が思い起こしていたのは月曜日、CL16強対決マンチェスター・ユナイテッド戦2ndレグ前の記者会見コメントを読んだ時のことでした。というのも今季は調子が悪いと聞いていたクリスチアーノ・ロナウドが折しも土曜のトッテナム戦でハットトリック。否応もなしに3年前の同ラウンド、ユベントス戦の悪夢が蘇ってきたんですが、その頃、マルコス・ジョレンテはアトレティコ加入前で、まだお隣さんにいましたからね。当時、ワンダ・メトロポリターノでの1stレグで2-0と先勝したコケ、オブラク、ヒメネス、サビッチ、コレア、レマル、グリーズマンらも「el equipo tiene que tener actitud y agresividad alta/エル・エキポ・ティエネ・ケ・テネール・アクティトゥッド・イ・アグレシビダッド・アルタ(チームはやる気と高度な攻撃性を持たないといけない)」(ジョレンテ)という心構えで、トリノへ向かったはずだったから。
PR
その結果はご存知の通り、ロナウド1人に3ゴールを決められ、総合スコア3-と逆転されての赤っ恥敗退。この火曜午後9時(日本時間翌午前5時)からの試合もアトレティコは負傷禍真っ只中で、いえ、月曜のマハダオンダ(マドリッド近郊)でのチーム練習ができなかったヒメネス、コンドグビア、半分だけ参加したエルモーソも遠征メンバー入り。シメオネ監督は「Los que están, lo están en condiciones/ロス・ケ・エスタン、ロ・エスタン・エン・コンディシオネス(来たメンバーはプレーするコンディションにある)」と言っていたんですけどね。本当に彼らがオールド・トラフォードのピッチに立ち、1stレグが1-1の引分けだったため、まったくイーブンの状態からスタートする2ndレグで、「El equipo debe jugar con una presión intensa/エル・エキポ・デベ・フガール・コン・ウナ・プレシオン・インテンサ(チームは激しいプレスをかけてプレーしないといけない)」というシメオネ監督のゲームプランを遂行できるのかは疑問。相手はコロナ陽性だったブルーノ・フェルナンデスとショーも回復しているため、また呑気にエリア内にクロスが落ちて来るのを眺めていてはそれこそ、ロナウドのヘッドの餌食になるばかりですし、大体がして、カラスコは出場停止、クーニャ、レマルもリハビリ中、コレアもまだ足の甲が腫れているというアトレティコが点を取るには相当、運に恵まれないといけない気がするんですが…。
まあ、CLのことはともかく、まずは先週末のマドリッド勢の試合を見ていくことにすると、いえ、氷雨の降り注ぐワンダ・メトロポリターノで初陣を切ったアトレティコの出足は決して悪くはなかったんですよ。キックオフ直後から、カディスがエリア内に放り込んでくるロングスローインを2度程、クリアした後の3分、バックパスをもらったGKレデスマにジョアン・フェリックスが近寄って行ったところ、うーん、先日のPSG戦のベンゼマ程、密着されていた訳ではないんですけどね。何をどうしたか、ゴールキックをジョアンに向けて蹴ってしまい、そのプレゼントを有難く受け取った彼が相手をかわしてシュート。オサスナ戦、CLマンチェスター・ユナイテッド1stレグ、ベティス戦に続き、敵がファールで自分を潰しに来る前の先手必勝弾を決めてくれるんですから、ホント、最近のアトレティコの試合はキックオフから、ちゃんと見ないといけません。

ただ、早すぎる時間の得点というのも彼らの場合、問題があって、要はお約束の、リードしたら「un paso atras/ウン・パソ・アトラス(一歩引く)」が早く始まるだけだったりするんですが、この日は慣れない金曜日だったからか、雨で芝やボールが滑るせいか、そこから急激にプレーが劣化。ほとんど攻撃しているのがカディスばかりになったばかりか、39分など、レイニウドがアルカラスに強烈タックルを見舞い、レッドカードを提示されてしまう始末で、幸い、この時はVAR(ビデオ審判)からの連絡で主審がモニターを見て、カードの色をイエローに代えてくれたおかげで命拾いしたんですけどね。ハーフタイム入り直前、とうとう今季最大の弱点が発現することに。
ええ、それは敵のクロスからの空中戦守備で、45分にエスピーノが左サイドから上げたボールをレイニウドとヒメネスの間でネグレドがヘッド。後でサビッチなど、「Es tema de concentración/エス・テーマ・デ・コンセントラシオン(集中力の問題だ)」と耳タコになった言い訳を繰り返していたんですが、もしや、シメオネ監督が改善したと言っていた彼らのスピリットもたったの4試合で元に戻ってしまった?それでも何とか、ロスタイムを1-1のままで終えて、後半頭からは負傷から復帰して、その日が初試合。まったく存在感のなかったキャプテンのコケをロディに代え、左にいたカラスコを右のカリレーロ(長い距離をカバーするSB)にすると、マルコス・ジョレンテを前に出して、勝ち越し点を狙いにいったんですが…。

「fallábamos en los pases de la salida/ファジャバマオス・エン・ロス・パセス・デ・ラ・サリーダ(ボール出しのパスに失敗していた)」(デ・パウル)という状態はまったく変わらなかったため、シメオネ監督は15分にもカラスコ、グリーズマンを下げ、ルイス・スアレスとコレアを投入。すると23分、ようやくプレーが繋がり、ジョレンテが右からエリア内に入れたボールをスアレスがコレアに送り、そのシュートはGKに弾かれたものの、落ちて来たボールに突っ込んだデ・パウルが決めて、2点目が入ったんですよ!

これもベティス戦で受けた打撲により、「足の甲が腫れているのにプレーしたんだ。No sé cómo hizo para poder ponerse la bota/ノー・セ・コモ・イソ・パラ・ポデール・ポネールセ・ラ・ボタ(どうやってサッカーシューズを履いたのかもわからないよ)」(デ・パウル)というコレアが2019年12月からのリーガ戦皆勤を続けてくれたおかげですが、いや、それって、まったく火曜のCLマンチェスター・ユナイテッド戦2ndレグへの影響を考えてなくない?

その懸念は29分にGKオブラクが飛び出してパンチングした後、ルイス・エルナンデスに撃たれたシュートをゴールライン上でヘッドクリアしてくれたヒメネスがふくらはぎを痛め、37分にフェリペと交代。更にロディも接触プレーで打撲と、試合が終わりに近づくにつれ、どんどん広がっていったんですけどね。42分にはジョアンと交代で入っていたカンテラーノ(アトレティコBの選手)がアレックスをタックルで倒し、レッドカードで退場。シメオネ監督が必死にスタンドを鼓舞して盛り上げたファンの応援のおかげで何とか、残り時間を乗り切ることができましたが、はあ(最終結果2-1)。

「Lo más importante ha sido el resultado/ロ・マス・インポルタンテ・ア・シードー・エル・レスルタードー(一番大事だったのは結果だ)」というシメオネ監督の言葉がまさに、降格圏の18位にいるカディスに辛勝したこの試合の惨状を物語っているかと。それでも日曜にアスレティックに勝利したベティスにも抜かされず、再び4得点基調に戻って、オサスナに大勝したバルサとも同じ勝ち点の4位をキープできたのは何よりですが、やはり今、気になるのは、アトレティコがマンチェスター戦でオサスナ、セルタ、ベティスに3連勝した時のいいプレーを取り戻せるのかということでしょうか。

そして翌土曜は残留戦線がもっと厳しかった昨季のように、スタジアム入りするチームバスを大勢のサポーターに迎えられ、勇気をもらった弟分のヘタフェの番だったんですが、やはり5年間、指揮官を務め、チームを2部から1部に再昇格させた英雄、2シーズン前にはヨーロッパリーグにも連れて行ってくれたボルダラス監督の人気は未だに衰えず。バレンシアのラインアップ紹介で彼の名が告げられた時には、コリセウム・アルフォンソ・ペレス中から拍手が沸いたものでしたが、まさか、ウーゴ・ドゥーロが貧乏クジを引くことになるとは!

いやあ、この22才のFWは少年時代から、13年もヘタフェのカンテラ(下部組織)にいたんですけどね。RMカスティージャ(昨季は2部B)へのレンタルを終えて、帰って来た今季の開幕時、ミチェル前監督からプレー時間をもらえなかったため、1部デビューをさせてくれた恩師のボルダラス監督を追って、バレンシアにレンタル移籍。それだけで、「Hugo Duro es un traidor!/ウーゴ・ドゥーロ・エス・ウン・トライドール(ウーゴ・ドゥーロは裏切り者)」とヘタフェファンに歌われてしまうのもちょっとどうかと。

ちなみに試合の方はさすが、ボルダラス監督の元教え子と現教え子の対決だけあって、ファール数がヘタフェは18回、バレンシアは21回、イエローカードもそれぞれ6枚、5枚と、また気がつくと誰かがピッチで倒れているという展開だったんですが、どちらもゴールが入らなくてねえ。後半25分にはGKママルダシビリのクリアがボルハ・マジョラルに当たり、ボールがゴールに入ったため、一時は場内も歓喜に満ちたんですが、VAR(ビデオ審判)のご注進により、彼が顔を庇おうとして上げた腕でボールを弾いていたことが発覚。得点にはならず、結局、スコアレスドローで終わってしまいましたっけ。

うーん、これで5試合白星なしになってしまったヘタフェだったため、降格圏まで勝ち点4になったとはいえ、次は今季未勝利のアウェイでアスレティック戦ですし、まだまだ1部残留達成への戦いは続くんですけどね。ビックリしたのは試合後の記者会見後、ボルダラス監督が顔馴染みのヘタフェ番記者たちに囲まれ、いやあ、珍しくバレンシア(スペイン南部)の地元マスコミが1人も来ていなかったせいもあったんでしょうかね。

「大きいクラブだから、イロイロあって、何人も大事な選手を売却されたせいで大変なんだ」と愚痴っていたことですが、まあねえ。彼らもこの日の引き分けで、ますますヨーロッパの大会の出場権がもらえる7位以上に入る目標が遠ざかってしまったとはいえ、大丈夫。すでに来季のスペイン・スーパーカップ出場権を獲得したのに加え、コパ・デル・レイ決勝でベティスを下して優勝すれば、ヨーロッパリーグにも行けるんですから、やっぱりヘタフェよりは恵まれていますって。

そしてラージョは翌日曜にエスタディオ・バジェカスにセビージャを迎えたんですが、先週木曜のEL16強対決ウェストハム戦1stレグ(1-0勝利)や8人もの負傷欠場者により、相手がかなり弱体化していたにも関わらず、こちらも1-1の引分けで終わってしまうことに。いえ、前半28分にCKから、ラファ・ミールが決めたゴールはマジョラル同様、腕に当たっていたとVAR通達で無効にされ、0-0のまま、再開した後半1分には、コパ準決勝ベティス戦2ndレグで見事なFKゴールを挙げていたベベがアウグスティンソンをかわしてシュート。これがGKボノの手を弾いて、先制した彼らだったんですけどね。

後半18分にはラファ・ミールがコメサニャを倒しながら、ファールを取られず、テカティートに繋いだところ、ゴール右前へのラストパスがデラネイに届き、GKディミトリエフスキもそのシュートを弾くことはできず。幸い、33分にカテナがラファ・ミールをエリア内で倒したとして、ペナルティを主審に宣告されたプレーは、これもVARでの見直しで直前のファールが見つかり、お咎めなしとなったため、ようやく連敗を6で止めることができたんですが、何ともじれったい。

いくらアルバロ・ガルシアとイシのレギュラー両翼を出場停止で、ファルカオもリハビリ中で欠いていたとはいえ、もう3月も半ばになるのに今年になって、まだリーガで1勝もしていないのはさすがにファンも辛いですからね。しかも今週土曜にバジェカスを訪れるのは兄貴分のアトレティコとなると、昨年中は楽勝に思えた余裕を持って1部残留確定という目標もだんだん、危うくなってきましたが、とにかく今は、地道に勝ち点1ずつでも積み上げていくしかありません。

え、それで2位のセビージャがアウェイ5試合連続白星なしとなった後、月曜にマジョルカ戦に挑んだマドリーはどうだったのかって?いやあ、それが序盤は久保建英選手が来季は同僚になるかもしれないカセミロやロドリゴ、バルベルデらに引っくり返されていて、少々、心配になったんですが、前半の間はどちらも得点には至らず、0-0でハーフタイムに入ることに。すると後半は首位チームが本領を発揮。10分には敵陣エリア前でバルベルデがババからボールを奪い、ベンゼマからラストパスをもらったビニシウスが先制点を挙げると、32分にはゴール前にベンゼマのパスを受けようと駆け込んだビニシウスがオリバンに突き飛ばされて、ペナルティをゲットしてくれます。

そのPKで2点目を入れたベンゼマが最後は37分、CKから始まったプレーでマルセロが上げたクロスに頭を合わせて3点目と、0-3の完勝だったんですが、最悪だったのは負傷者が3人も出てしまったことだったかと。ええ、ライージョに強烈なタックルをされたロドリゴは自分の足で歩けず、スタッフに持ち上げられて、ピッチから去っていきましたし、メンディも太ももに痛みを覚えて、マルセロと交代。何よりショックだったのは絶好調のベンゼマがヘッドした後、その着地でふくらはぎを痛め、もう交代枠も残っていなかったため、チームを10人にして、引っ込んだことでしょうか。

だってえ、この日曜にはクラシコ(伝統の一戦、バルサ戦のこと)が控えているんですよ。イエローカードが4枚累積していたミリトンは風邪でお留守番、危ういファールはあったものの、カセミロも出場停止を逃れたとはいえ、肝心のエースの容態が水曜以降の検査を待ってみないとわからないとなれば、心配じゃないですか。ただ、そうは言っても2位との差を勝ち点10に広げたマドリーは3位とのバルサ(そして4位のアトレティコ)とは15ポイント差。たとえ、サンティアゴ・ベルナベウでの対戦で負けてもリーガ優勝への道は揺るぎそうにありませんが、宿命のライバルをベストメンバーで迎えられないのはちょっと、残念ですよね。


PR

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly