CL前に盛り上がってくれたのは嬉しい…/原ゆみこのマドリッド

2022.03.08 19:00 Tue
「兄貴分2チーム共、平日開催なんて珍しいわね」そんな風に私が訝しがっていたのは月曜日、リーガ次節の時間割をチェックしていた時のことでした。いやあ、レアル・マドリーやアトレティコの試合は人気カードのため、大抵は土日のどちらかに設定。割と喰うのはマイナーなマドリッドの弟分2チームやセルタ、エスパニョール、アスレティックといったところが多かったんですが、ふと気づくと、今週からはCL16強対決2ndレグも始まることに。
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となると、金曜にカディス戦を戦うアトレティコは来週火曜のマンチェスター・ユナイテッド戦まで中3日と、土曜にトッテナム戦がある相手より、間が空くことになりますし、今週水曜にPSG戦で全精力を使い果たした後、次のマジョルカ戦が来週月曜となれば、レアル・マドリーも体力回復の時間が十分取れますからね。もしや、ラ・リーガが貴重なCL生き残り組である彼らに気を遣ってくれた?何にせよ、私としてもそちらの方が好都合で、いくら頑張れば梯子観戦も可能とはいえ、2節前のように全てのマドリッド勢の試合が同じ日に集中開催されるより、1日1試合の方が疲れなくて済むんですが…。まあ、そんなことはともかく、先週末のマドリッド勢の試合を見ていくことにすると、今回は兄貴分と弟分でくっきり明暗が分かれることに。ええ、土曜にアウェイでエスパニョール戦に挑んだヘタフェは前半17分にCKから、2年前まで仲間だったカブレラに古巣への恩返しヘッドで先制され、更に26分にはゴール前でクリアしたボールがカバコに当たって、オウンゴールで2点目を献上。「Si regalas 45 minutos es difícil esperar algo positivo/シー・レガラス・クアレテンタシンコ・ミヌートス・エス・ディフィシル・エスペラール・アルゴ・ポシティボ(45分間を敵に贈ってしまったら、ポジティブなことを期待するのは難しい)」とマクシモビッチも反省していたんですが、後半も点差を縮めることはできず、そのまま、2-0で負けてしまいましたっけ。
いやあ、今季アウェイゲーム14試合で1つも白星がないというのもかなり問題ですが、とにかくヘタフェはここ4試合で2分け2敗と残留確定への道も足踏み状態に。何せ、翌日には弟分仲間のラージョも援護射撃に失敗してしまいましたからね。いえ、彼らの場合は先週の木曜、敗退の決まったコパ・デル・レイ準決勝ベティス戦2ndレグで力を使い果たしていたせいもあるんですが、ヘタフェとは真逆で今季、まだホームで未勝利だったカディスとヌエバ・ミランディージャで対戦しながら、後半にCKからアルカラスに決められると、続いてうっかり飛び出したGKルカ・ジダンのミスを突かれ、イドリッシに2点目を奪われて、こちらも2-0で敗戦する始末。おかげで降格圏18位のカディスとヘタフェの勝ち点差が3になってしまうことに。

ラージョ自身は勝ち点7のクッションがあるため、まだ余裕があるんですが、とにかく今年に入って、リーガ8試合で未勝利、しかも7連敗中という最悪な流れを早いところ変えないと後々、苦労しますからね。とりあえず、どちらも今週末はホームゲームで、ヘタフェは土曜に昨季まで5年間、コリセウム・アルフォンソ・ペレスで指揮を執った後、ステップアップしたバレンシアで自身初のコパ決勝進出を勝ち取り、乗りに乗っているボルダラス監督のチームを迎え、ラージョは日曜にエスタディオ・バジェカスでここ4試合、リーガのアウェイ戦でドローが続き、首位との勝ち点差が8になってしまったセビージャと顔を合わせるため、サポーターの応援を背に、また勝ち癖を取り戻してほしいものです。
そして土曜の夜にはマドリーがサンティアゴ・ベルナベウでレアル・ソシエダ戦をプレーしたんですが、キックオフ前にはバックスタンドに「Todos con Ucrania/トードス・コン・ウクライナ(皆がウクライナと共に)」の文字が入った大きな幕、ピッチにもウクライナの巨大国旗が置かれ、そこはやはりチームに同国出身のGKルニンがいるせいもあったんでしょうかね。リーガの試合ではプレミアリーグ程、大々的に戦争反対のマニフェストをピッチで見ることはないんですが、この日は両チームのメンバー全員が標語入りTシャツを着て写真を撮り、ウクライナへの連帯を示すことに。

試合の方では前半早々、10分にはカルバハルがダビド・シルバをエリア内で倒してペナルティを献上。オジャルサバルが決めたPKゴールでレアル・ソシエダにリードを許してしまったんですが、もしやこれって、PSG戦2ndレグで、1-0で負けた1stレグからのremontada(レモンターダ/逆転突破)を目指すマドリーにとって、最高のシナリオだった?いえ、パリでもエムバペ相手に苦戦していたカルバハルが未だに昨季、かなりの期間を失った負傷前のレベルに達していないのは心配ではあるんですけどね。そこから着々と牙を研いでいった彼らはとうとう、40分に反撃を開始したんですよ。

突破口を切ったのはその日、ハムストリングの負傷でお休みしていたクロース、風邪による発熱で欠場したバルベルデに代わって、中盤の一角を占めることになったカマビンガで、エリア外27メートルから、弾丸シュートを決めてしまったから、ビックリしたの何のって。その1分後にはベンゼマもゴールを入れたながら、オフサイドで認められなかったのはともかく、43分にはモドリッチが17才年下の後輩に負けじと、こちらもエリア外からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)挙げてくれるんですから、まったく才能のある選手が多いチームは羨ましいじゃないですか。

おかげでリードされていた間は静かだったスタンドのファンもようやく盛り上がることができたんですが、「No podíamos apretarles porque nos iban a masacrar/ノー・ポディアモス・アプレタールレス・ポルケ・ノス・イバン・ア・マサクラル(ボコボコにされてしまうので、ウチは相手を締め上げることができなかった)」(イマノル監督)というレアル・ソシエダが消極的だったのもあって、マドリーは後半も得点を増やすことに成功。ええ、ビニシウスがエルストンドに倒されたファールがVAR(ビデオ審判)でエリア内だったと発覚し、24分には2度目のゴールもオフサイドに阻まれていたベンゼマがPKで3点目を入れてくれます。その直後にロドリゴと代わったアセンシオも34分、カセミロの自陣からのロングパスを受けたカルバハルのアシストで4点目をゲットとなれば、CL16強逆転突破に向けて、これ程、完璧なリハーサルはない(最終結果4-1)?

いやあ、試合後はアンチェロッティ監督も「El plan era presionar arriba a la Real/エル・プラン・エラ・プレシオナル・ア・ラ・レアル(レアル・ソシエダに高い位置でプレスをかけるプランだった)。フィジカル的に消耗するが、そういうプレーをすれば、水曜の試合でもっと勝利のオプションが増える」と言っていたんですけどね。このgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)にはファンも期待を大きく膨らまして帰って行ったんですが、この日はfondo sur/フォンド・スール(ゴール裏南側)に陣取る応援団の呼び声に応えて、珍しいことに一旦、ロッカールームに戻った選手たちがまたピッチに出て挨拶するなんてことも。

それだけ彼らもPSG戦でのサポートを必要していたってことでしょうが、まあ、リーガではゴールが入るまで静かなスタンドもCLでは豹変しますからね。6万人に収容人数が拡張される水曜午後9時(日本時間翌午前5時)からの試合では、キックオフ前から賑やかなベルナベウが見られるかと思いますが、やはり気になるのはカセミロとメンディの出場停止。鋭意リハビリ中のクロースも間に合うか微妙ですし、モドリッチ、ベルベルデ、カマビンガの中盤であのエムバペを迎えるのはちょっと、怖かったりするんですが…。

何と月曜にはその彼が練習でグイエに足を踏まれ、早退するというアクシデントが発生したんですよ。どうやら骨折はしていないようですが、マドリッド遠征に参加するかどうかは火曜の再検査後に決めるそうで、いえ、今もふくらはぎの負傷でプレーできないセルヒオ・ラモスはアドバイザーとして同行するみたいなんですけどね。ちなみに昨季までのマドリーのキャプテンはPSGに行ってから、どうにもベイル症候群に陥ってしまったようで、ほとんど試合に出てないんですが、遅ればせながら、先日は私もモンクロア(マドリッド郊外のマハダオンダやラス・ロサス行きのバスが出るターミナル駅)内にできた彼のジムを訪問。

オープン時は当人も現れて、取材陣で大賑わいだったのとは違い、それこそ駅の中に表示も、入り口に看板すらないという状態で見つけるのが大変だったんですが、もしやラモスが普通にプレーできるまで、宣伝を自粛してたりする?月額80ユーロ(約1万円)の会費というのが高いのか安いのか、ジムとはとんと縁のない私にはわかりかねますが、フィジカルトレーニング用の機器やボクシングのサウンドバッグが並ぶ、豪華な内装の施設全てが地下で、窓がないのはちょっとイヤかも。何にしても会員数を増やすには、当人がピッチで元気にプレーする姿を見せるのが一番でしょうね。

そして翌日曜はアトレティコが最後の時間帯にプレーするのをいいことに、またブタルケにレガネスの試合を見に行ったんですが、前節は6位のジローナと引分けた彼らながら、降格圏すれすれにいるミランデス相手にはしっかり実力を発揮。ええ、前半24分にはCKから、セルヒオ・ガルシア、ニヨムとヘッドを繋いで先制すると、36分にも敵のハンドからゲットしたPKをアルナイスがゴールに。後半はカメージョやリケルメといった、アトレティコBから出向中の選手が前線を務める相手の反撃に遭ったものの、GKダニ・ヒメネスのparadon(パラドン/スーパーセーブ)のおかげなどもあって、2-0で逃げ切ることができましたっけ。

何せ、マドリッド2部の弟分の中、唯一、降格圏から脱出できたのは彼らだけですからね。まだ13位なので、多くのライバルを抜かさないといけないとはいえ、昇格プレーオフの順位にあと勝ち点6ともなれば、昨季のように6月まで1部復帰の夢を見たいファンが熱心に応援するのも当然だったかと。残念ながら、このところ柴崎岳選手は1月に出戻ったレシオにレギュラーを奪われ、ずっと途中出場なんですけどね。チームの調子がいいため、その辺はナフティ監督もなかなか変えがたいかと思いますが、どんな形でもチームの勝利に貢献していれば、また先発のチャンスは巡ってくるんじゃないでしょうか。

え、それで私はベティスvsアトレティコ戦のキックオフに間に合ったのかって?いやあ、大急ぎで戻って来たんですが、メトロ最寄り駅のエスカレーターを昇っている間にゲームがスタート。外に出てみれば、開始75秒でジョアン・フェリックスが先制ゴールを挙げているんですから、ホントに油断がならないっちゃありません。実際、彼はオサスナ戦でも3分、CLマンチェスター・ユナイテッド戦1stレグでも7分と、敵がファール攻勢に出る前を利用して、序盤に得点を挙げていますからね。スタメンに定着した最近はますます、キックオフから目を離せないと猛省したものですが、ようやくいつもの近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に着いたのは前半8分頃になってから。

それからの展開はアクシデント続きで、いえ、負傷禍に悩むペジェグリーニ監督が急造左SBに起用したグアルダードが11分で交代したのは、筋肉系の故障だったんですけどね。コパ決勝進出で意気上がっていたせいか、相手がとにかく猪突猛進で、21分には空中戦でフェキルにぶつかられたベルサイコが、27分にも敵のセットプレーから、カウンターに飛び出したコレアがルイバルに吹っ飛ばされ、どちらも負傷交代になってしまったから、さあ大変!

そう、その日はリハビリで留守番の選手が多く、ベンチにトップチームの選手が5人しかいないアトレティコでしたし、来週にはCLマンチェスター・ユナイテッド戦2ndレグもありますからね。2人が受けたファールにイエロカードすら、出ないのにはカンカンだった私ですが、やはりいきなり出動となったカラスコやグリーズマン、右SBにポジションを下げたマルコス・ジョレンテら、選手たちにも戸惑いがあったか、前半終盤にはベティスの猛攻を受けてしまうことに。カルバーリョのシュート弾くなど、それでもGKオブラクが踏ん張ってくれていたものの、ロスタイム5分、エレーラが自陣エリア前でボールを奪われ、グアルダードと交代で入っていたテジョに同点ゴールを決められてしまうとは、困ったもんじゃないですか。

でも大丈夫。ベニト・ビジャマリンのロッカールームで「En el descanso hablamos de lo que teníamos que hacer/エン・エル・デスカンソ・アブラモス・デ・ロ・ケ・テニアモス・ケ・アセル(ハーフタイムにしなければならないことを話し合った)」(ジョアン・フェリックス)というアトレティコは後半頭から、ロディをレマルに交代。序盤は再びテジョに撃たれるピンチもあったものの、16分にはサイドを駆け上がったジョレンテがゴール前に昨季を彷彿させるラストパスを出すと、これをジョアンがタイミング良く流し込んで、決してキックオフ直後だけの男ではないことを証明してくれたんですよ!

ただ今季のアトレティコは終盤、呆気なく2点リードを引っくり返されたりしていたため、それでも安心はできなかったんですが、ワンダ・メトロポリターノで最下位のレバンテに0-1と負けた後、マハダオンダの練習場を訪れて、ヒル・マリン筆頭株主が飛ばした檄は有効だったことがこの日も明らかに。ええ、ジョアンやグリーズマンがGKクラウディオ・ブラボに1対1を弾かれてもめげず、35分、オブラクのゴールキックから、デ・パウルが繋ぎ、ドリブルで上がったグリーズマンが折り返し。最後はレマルが決めて、1-3で勝ってしまうとは、これぞ、まさに昨季リーガ王者の風格?

うーん、惜しむらくはこれだけ、魂の入ったプレーがシーズンの今頃になって、ようやくできるようになったことですけどね。「Ya es otro Atlético, tenemos que seguir así/ジャー・エス・オトロ・アトレティコ、テネモス・ケ・セギール・アシ(もうこれは別のアトレティコ。こういう風に続けないといけない)。CL出場圏に入るにはこの方法しかないんだ」とオブラクも認めていた通り、バルサがエルチェ戦で勝ったため、その下なのは変わらずとも、ベティスを抜いて4位に上がれたのは大きな収穫だったかと。ベルサイコは全治2週間、打撲のコレアはマンチェスター・ユナイテッド戦での復帰が目標とまた、金曜のカディス戦は負傷欠場が多そうですが、この気概を忘れなければ、きっといい結果が出せるんじゃないでしょうか。


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