巻き返しできるかもしれない…/原ゆみこのマドリッド

2022.03.01 19:00 Tue
「もしかして本当に息切れした?」そんな風に私が我が目を疑っていたのは月曜日、アンダルシアダービーでセビージャに2-1と負けたベティスとアトレティコの勝ち点差がたった1しかないのに気づいた時のことでした。いやあ、先週木曜のEL16強対決プレーオフ2ndレグでゼニト相手にスコアレスドローだったのを見た辺りから、リーガで1チームだけ、コパ・デル・レイとヨーロッパの大会を掛け持ちしているペレグリーニ監督のチームはかなり、連戦疲れが溜っているんじゃないかと思ったんですけどね。折しも今週は木曜にコパ準決勝2ndレグでラージョ、そして土曜にはリーガでアトレティコが、どちらもベニト・ビジャマリンに乗り込むとなれば、これこそ千載一隅のチャンスと言っていい?
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おまけに相手にはその先も更に2週間、EL16強対決フランクフルト戦がミッドウィークにあるとなれば、いえ、日曜にやはり、水曜のコパ準決勝バレンシア戦2ndレグに備え、メンバーをローテーションしてきたアスレティックに4-0と大勝。バレンシア戦、ELナポリ戦から続けてここ3試合、4点を挙げているバルサのチャビ監督などは、同じ勝ち点で5位につけるアトレティコなどには目もくれず、3位のベティスはもちろん、その上、勝ち点9差の2位セビージャ、同15差の首位レアル・マドリーに追いつくつもり満々なんですけどね。2月の頭に4-2とそのバルサに捻られ、延期されていたレバンテ戦でも0-1と負けて、自業自得でCL出場圏外となったアトレティコとなれば、今は謙虚にベティスの上に立つことだけを考えるしかありませんって。まあ、その辺はともかく、マドリッド勢が集中してプレーした先週末の土曜の試合がどうだったか、お話ししていかないと。それがもう、ラ・リーガに文句を言いたくなるような時間割で、午後4時15分キックオフのヘタフェvsアラベスを皮切りに、午後6時30分ラージョvsマドリー、午後9時アトレティコvsセルタと続いたため、私も初体験の3試合梯子をやってみたんですけどね。悔いが残るとすれば、エスタディオ・バジェカスのキックオフに間に合わせるには、マドリッド南の近郊都市にあるコリセウム・アルフォンソ・ペレスを前半終了後に出ないといけなかったことでしょうか。
いえ、ヘタフェが押し気味で始まりながら、その試合、丁度、前節はサンティアゴ・ベルナベウで兄貴分に3-0と負けていたアラベスが今回こそ、マドリッド遠征で成果を持ち帰ろうと発奮。前半27分のルジェーヌのゴールはVAR(ビデオ審判)でオフサイドとされたんですが、32分には何と、エドガルの前で高く足を上げたクエンカが一発レッド退場させられる破目に。どうもこの判定、後々の試合の例からすると、厳しすぎる気がするんですが、そこへ45分、ドゥアルテのクロスから、エスカランテのヘッドで先制点を奪われてしまったから、さあ大変!

後半も丸々、1人少ない訳ですから、とても期待は持てないとある意味、納得して、スタジアムを後にした私ですが、とんでもない。ええ、道中、ずっとオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の中継で追っていたところ、何と10分にはCKから、エネス・ウナルがヘッドで同点弾を決めてしまうんですから、ビックリしたの何のって。ただ、その喜びも束の間で、1分後にはエドガルが勝ち越しゴールという報に肩を落とすことになったんですが、いやあ、もう最近のウナルは止まりませんね。27分、今度は左サイドから、「Era un centro pero me ha salido perfectamente/エラ・ウン・セントロ・ペロ・メ・ア・サリードー・ペルフェクタメンテ(クロスだったんだけど、完璧にはまった)」と当人も言っていたように、まさか弓なりのボールがGKパチェコの頭上を越えて、ゴールに入ってしまうとは。
これで2-2の同点としたヘタフェはそのまま引分けて、何とか勝ち点1を獲得したんですが、いやホント、その時のコリセウムの盛り上がり様が見られなかったのは残念至極。ホームでの連勝は4で止まってしまったヘタフェは15位、降格圏との差も勝ち点6と変わらなかったものの、今週土曜には2ポイント差で1つ上のエスパニョールとの試合がありますからね。13ゴールでピチチ(リーガの得点王)レース2位のビニシウスと並ぶ、ウナルとRdT(ラウール・デ・トマス)のゴール対決も楽しみですし、何より人数的不利になりながら、アラベスに追いつけたというのは選手たちの大きな自信になるんじゃないでしょうか。

そしてバジェカスではブカネーロス(過激なファンのグループ)もその日はちゃんと位置について、マドリー戦が始まったんですが、やはりスタンドが一体となって応援してくれると、弟分も頑張れますよね。「Hemos planteado el partido en un bloque más bajo de lo habitual/エモス・プランテアードー・エル・パルティードー・エン・ウン・ブロケ・マス・バホ・デ・ロ・アビトゥアル(ウチはいつもより低目に選手を配置する試合を計画した)」(イラオラ監督)というラージョに対して、逆にCL16強対決PSG戦1stレグの反省から、昨年中は上手くいっていた引いた陣形から、高目にプレスをかける戦法に切り替えたマドリーもそれにはなかなかチャンスが作れず。

前半39分にはエリア内での密集陣から、カセミロのシュートが入ったなんてこともあったんですが、それもVARでオフサイドを取られたため、見せ場はGKルカ・ジダンがアセンシオのシュートを、後半序盤には負けじとGKクルトワがCKからマリオ・スアレスが放った強烈ヘッドを弾くといった場面ぐらいだったんですけどね。問題のプレーが起こったのはそのすぐ後の後半12分で、カセミロがオスカル・バレンティンの足首を蹴りながら、審判はイエローカードしか提示しなかったんですよ。それで即座に彼をバルベルデに代えたのはアンチェロッティ監督の都合ですが、バレンティンの方は負傷して交代となれば、後でイラオラ監督がヘタフェのクエンカを例に挙げて、カードの色に関する基準に疑問を呈していたのも仕方なかったかと。

そんなマドリーのジャッジ運と34分には再び、今度はトレホとアルバロ・ガルシアのシュートを連続paradon(パラドン/スーパーセーブ)して、クルトワが存在感を示したせいもあり、終盤までスコアは動かなかったんですが、いやあ、才能ある選手たちが違いを示すのにはほんのワンプレーで十分なんですね。それは38分、この日もピッチに近い席に座っていたため、私自身はラージョのエリア近辺に人がワチャワチャしているなと思っている間にゴールが決まり、ベンゼマが片手を高く上げて、こっちに近づいて来たため、誰が決めたのかわかったという情けなさ。後で映像を見ると、完璧な連携プレーで、ベンゼマのスルーパスでエリア内右奥まで行ったビニシウスが折り返し、そのボールをベンゼマがシュートして、今季リーガ得点ランキング1位を独走する19本目を挙げたというオチでしたっけ。

結局、このゴールでマドリーは0-1と勝って、一時的に2位との差を勝ち点9に広げたんですが、まあ、それが翌日、セビージャのダービー勝利でまた6に戻ったとて、些事にすぎませんからね。アンチェロッティ監督も「いい練習をして、プレーの強度を改善するのに1週間あるのはいい」と言っていたように、今週の彼らにはミッドウィークの試合がないため、土曜のレアル・ソシエダ戦まで、じっくり調整できますし、更には来週水曜のPSG戦2ndレグでのremontada(レモンターダ/逆転劇)を目指して、出場停止となるカセミロ、メンディの代役を選定する時間もたっぷりあるかと。

一方、今年になって、リーガで白星なしの記録を7試合に伸ばしてしまったラージョは後半途中に入ったファルカオに1本もラストパスが届かないなど、ゴール日照りの真っ只中にあるんですが、この木曜午後9時からのベティス戦は初の決勝進出のビッグチャンスですからね。1stレグで1-2と負けているため、とにかく得点して、勝たないといけないとはいえ、兄貴分相手にあそこまで粘った根性があれば、決して諦める必要はない?実際、コパ決勝は4月23日とかなり先で、ここで名乗りを挙げておけば、その前にあと勝ち点9程の1部残留確定にもじっくり取り組めますしね。次々とコパから脱落して、今は楽しているマドリッドの兄弟分たちに大きな顔をするにはもってこいのチャンスじゃないでしょうか。

え、それでロスタイム6分まであったダービーを最後まで見た後、私はワンダ・メトロポリターノでのセルタ戦キックオフに間に合ったのかって?いやあ、以前の経験から、すぐにタクシーが捕まるだろうという目論見が大きく外れ、スタジアム近辺で空車が見つからなかったのが大誤算。仕方なく、RENFE(スペイン国営鉄道)の基幹駅であるアトーチャまでメトロで戻り、そこから車で15分の道のりを移動することに。

スタンドに出た時にはすでに前半30分ぐらい経過していたんですが、大丈夫。こちらも夜のサッカー番組で議論の的となった、イアゴ・アスパスを足首から出血するまで蹴りながら、イエローカードに留まったヒメネスのファールなどは見逃したものの、いいんです。だって、記者席にモニターのないワンダではどちらにしろ、映像がネットのどこかに上がってくるまで、詳細はわからないんですから。それよりラッキーだったのは折しも35分、コンドグビアが中盤から出したロングパスをロディがエリア内左で受け、前を塞ぐウーゴ・マジョをかわして撃ったシュートがゴールに入るシーンを見られたことで、いやあ、これって、先週はCLマンチェスター・ユナイテッド戦があったため、ローテーションするだろうと予想されながら、同じスタメンを並べたシメオネ監督が冴えていたってこと?

おまけにユナイテッド戦でもジョアン・フェリックスの先制ゴールをアシストしていた彼は後半15分にも再び、「Hablé con él en el descanso me estaba diciendo que quería jugar a la espalda de Hugo/アブレ・コン・エル・エン・エル・デスカンソ・メ・エスタバ・ディシエンドー・ケ・ケリア・フガール・ア・ラ・エスパルダ・デ・ウーゴ(ハーフタイムに彼と話したら、ウーゴの背後を狙ってプレーしたいと言っていた)」(ロディ)というコンドグビアから、ロングパスをもらい、今度はワンタッチで撃ち込んで、自身とアトレティコの2点目をゲットとは、やってくれるじゃないですか。

何せ、今季はサウールがチェルシーにレンタル移籍しながら、カラスコが左のカリレーロ(長い距離をカバーするSB)として台頭。更に冬の市場ではレイニウド(リールから移籍)も加入と、今季はプレー時間にあまり恵まれなかったブラジル人SBですからね。「Da igual que juegue o no, nunca bajé los brazos・ダ・イグアル・ケ・フエゲ・オ・ノー、ヌンカ・バヘ・ロス・ブラソス(試合でプレーしてもしなくても同じさ。ボクは決して諦めたりはしなかった)」という当人の努力が実ったとなれば、こんなに喜ばしいことはないかと。先日は無事にコロナワクチン2回目接種も済ませましたし、この調子を維持できれば、3月の代表戦ではまた、チッチ監督に呼んでもらえるのでは?

ただ、この2点リードもダメダメモードのアトレティコでは心もとなかったんですが、実はレバンテ戦に負けた後、オサスナ戦前にマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場を訪れたヒル・マリン筆頭株主の檄があってから、彼らは大変身。ええ、「el equipo tiene un espíritu diferente/エル・エキポ・ティエネ・ウン・エスピリトウ・デフィフェレンテ(チームは異なるスピリットを持っている)」とシメオネ監督も褒めていたんですが、CKやクロスをエリア内に何本も落とされようと、この日は3人目のCBに徴用されたレイニウドの働きもあって、最後まで守備が崩れません。おかげでボールをより長く持ち、チャンスも作っていたセルタの反撃も実らず、そのまま2-0で勝利できた上、リーガでは今季初の2試合連続無失点を達成って、いや、何でできるなら、これまでやらなかった?

その辺は顔馴染みのクアトロ(スペインの民放)のレポーターなども不思議がっていましたけどね。まあ大方、CL出場権を逃したら、給料大幅カットみたいな話があったんじゃないかと疑っている私ではありますが、尻に火がつかない限り、力が振り絞れないのもエリート揃いのお隣さんと違い、庶民的なアトレティコらしいと言えば、その通り。とにかく泣いても笑ってもリーガはあと12試合となれば、終盤、太ももを痛め、交代枠を使い切った後だったため、最後までプレーしなければならなかったサビッチが累積警告による出場停止兼負傷欠場となるものの、日曜のベティス戦でもこの流れを保って、何とか、順位を引っくり返せるといいんですが…。

そして翌日曜はブタルケにレガネスvsジローナ戦を見に行った私だったんですが、いやあ、油断していましたね。シーズンスタートが悪かったため、今季はもっぱら2部残留が叶えば御の字と言われていた彼らなんですが、相変わらず降格圏に沈んでいる、ご近所仲間のフエンラブラダやアルコルコンとは違い、いつの間にやら、6位まで勝ち点6差に迫っていたとは!その位置にいるのがまさにジローナで、試合の方は前半26分にストゥアニが落としたボールをアルナウが撃ち込んで、相手に先制されたものの、42分にはこの冬、ヘタフェから出戻りしたニヨムのクロスを同じく、ラージョから河岸を変えたカスミがゴールにして同点に。

結局、そのまま1-1の引分けで終わってしまいましたが、まさかナフティ監督の記者会見で、3位から6位が出られる昇格プレーオフについての質問が出るとは、まったくもって油断がならない。問題はレガネスがまだ14位と、間に沢山、チームがあることですが、昨季は準決勝でラージョに負けて涙を飲んでいるだけに、その日は後半16分から途中出場した柴崎岳選手もきっと、リベンジに燃えているはずかと。そうそう、スタジアムからの帰りがけ、また丁度、柴崎選手の車が出て来るところだったんですが、コロナ禍発生以来、初めて観戦に来た日本人ファンと遭遇。イギリス留学中なのを利用してのスペイン訪問で、水曜には久保建英選手の試合を見にマジョルカ島に行くと言っていましたが、はあ。早く日本とも昔のように行き来が自由になって、リーガ観戦に来られるようになるといいですよね。


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