人の不幸を願わなくてもいい身分になりたい…/原ゆみこのマドリッド

2022.02.22 21:00 Tue
「最下位に負けたツケが後々、出ないといいのだけど」そんな風に私が将来を憂いていたのは月曜日、せっかく4位に上がりながら、アトレティコの天下が1日だけで終わり、再びバルサと同じ勝ち点での5位に戻ってしまったリーガの順位表を眺めていた時のことでした。いやあ、マドリッドの両雄のゴールをたっぷり見られた土曜は、かなり上機嫌でベッドに入ったものだったんですけどね。アトレティコとCL出場権を懸けて、「La Liga de 14 partidos/ラ・リーガ・デ・カトルセ・パルティードス(14試合のリーガ)」を戦う5チーム中、土曜にグラナダに勝ったビジャレアルを除いて、他は皆、日曜試合。
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時間が経つにつれ、バルサはバレンシアに1-4、ベティスはマジョルカに2-1、潰し合いのバスクダービーではアスレティックが4-0の大勝と、取りこぼしたのはレアル・ソシエダのみという結果に。しかもバルサには消化試合が1つ少ないというアドバンテージがあるため、ええ、先日のカンプ・ノウで4-2とやられた後、もう直接対決はありませんからね。しかも相手は冬の移籍市場で分厚く補強、オバメヤング(アーセナルを退団して加入)、フェラン・トーレス(マンチェスター・シティから移籍)、アダマ・トラオレ(同ウォルバーハンプトン)らが早速、活躍しているんですよお。となれば、バルサには準々決勝進出まで一手間多いEL決勝トーナメントがあって、今週木曜も勝利が必須の16強対決プレーオフのナポリ戦2ndレグ。3位のベティスも1stレグは2-3の僅差で勝ったものの、同じく木曜のELゼニト戦2ndレグに加え、翌週もミッドウィークにラージョとコパ・デル・レイ準決勝2ndレグがあるのだけが頼りに。しばらくはアトレティコよりハードスケジュールになるため、疲労蓄積で躓いてくれることを祈るしかないって…これはちょっと情けないかも。
まあ、そんなことはともかく、週末のマドリッド勢の試合を見ていくことにすると、一足先の金曜に弟分のラージョがアウェイでエルチェに2-1の逆転負けを喰らい、リーガ4連敗となった後、残り3チームは土曜にプレー。まずは午後4時15分にエル・サダルでアトレティコがオサスナ戦のキックオフを迎えたんですが、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で遅めのランチに頼んだハンバーガーが運ばれてくる前に先制ゴールが入ったから、ビックリしたの何のって。だってえ、水曜のワンダ・メトロポリターノでは前半、本当に何もしなかった彼らなんですよ。それがスタートから積極的に攻めていき、3分にはCKをゲット。カラスコがゴール前に上げたところ、GKエレーラが両手でパンチしたボールが折よく、ジョアン・フェリックスの目の前に落ちることに。

それを彼がしっかり撃ち込んでくれたんですが、運も良かったですよね。ええ、丁度、ボールをクリアに行ったエレーラの後ろにルイス・スアレスがくっついていたため、「esa jugada siempre se pita falta hoy no entiendo que no se pite/エサ・フガダ・シエンプレ・セ・ピタ・ファルタ・オイ・ノー・エンティエンドー・ケ・ノー・セ・ピテ(あのプレーはいつもならファールになるはずなのに、どうして今日はそうじゃないのかわからない)」とはアラサーテ監督の言葉。何にせよ、1点リードしたアトレティコはこれで心おきなく、恒例の「un paso atras/ウン・パソ・アトラス(一歩下がる)」態勢に入ることができたんですが…いや、違うでしょ!
昨季までとは違い、今季は24試合で34失点もしている彼らなんですよ。実際、30分過ぎ頃から、オサスナがどんどん攻めてくるようになって、ブドミルのヘッドがゴールバーに当たったり、ナチョ・ビダルのシュートをGKオブラクが弾かないといけなかったりとヒヤリとさせられるシーンも。何とか0-1でハーフタイムに入ったものの、これは同点ゴールを奪われるのも時間の問題かと私も頭を抱えていたんですが、その状況で後半頭から、ヒメネスをフェリペに代えるって、もしやまた、ウルグアイ人CBがケガでもした?

まあ、その交代は後で用心のためと判明したんですが、とにかく最近のフェリペはやらかしが多いですからね。後半も変わらず、敵に攻められていたため、序盤はまったく生きた心地がしなかったんですが、14分、今季のアトレティコではPK並みの脅威と言われている敵のCKから一転、2点目が入ったんです!いやあ、なかなかクリアできず、最後にジョアンが蹴り上げた時には、私もいつものボールを自陣エリアから遠ざけることだけが目的のアクションだと思ったんですけどね。

それが驚いたことにセットプレー時、常に全員がエリア内で守っているはずのアトレティコなのに何故か、この日は受け手がいたんですよ。それはスアレスで、ジョアンのパスに敵陣で追いつくと、うーん、それでもまだゴールまではかなりありましたからね。往年のフェルナンド・トーレスやジエゴ・コスタ並みの爆走ができないのは当人も重々、わかっていたか、38.5メートルの距離から、ゴール目掛けて撃ってしまうとはやはり、只者ではありませんって。ええ、ゴールから少し離れて立っていたエレーラの頭上をボールが越え、2点目が入った時には私も呆気に取られるしかありませんでしたっけ。

それからは少々、余裕ができて、いえ、今季はバレンシアや弟分のヘタフェにまで、2点差を引っくり返されるという、情けない姿をさらしている彼らですから、決して油断はできなかったんですけどね。とりあえず、スアレスをコンドグビアに代え、FWをジョアン1人にしたシメオネ監督でしたが、残り9分にはコレアを投入。すると、レバンテ戦でもヒメネスのファールさえなければ、chilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)による土壇場での同点ゴールが認められ、再び英雄になっていたはずの彼がこの日もハッスル。44分にカウンターからコケのパスをもらい、見事に3点目を決めてくれるんですから、波に乗っているFW程、怖いものはありません。

これで0-3と11月末のカディス戦以来となるアウェイ勝利を挙げ、しかもアウェイでは今季初めての完封試合ができたアトレティコだったんですけどね。「直前の敗戦は痛かったが、ほんの数日しかなかったのに選手たちはいいリアクションを示してくれた。Se vio hambre de ganar/セ・ビオ・アンブレ・デ・ガナール(勝利へのハングリー精神が見られた)」(シメオネ監督)理由が前日、ヒル・マリン筆頭株主がマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場を訪れて、檄を飛ばしたおかげなのか、単にここ8シーズン連勝というエル・サダルのゲンの良さのおかげだったのか、私もチームの昨日今日の急変ぶりには戸惑うばかり。

だってえ、ボールポゼッションも38%とかなり低めでしたし、オサスナの14本に対して、アトレティコはたった5本しか、シュートを撃っていないんですよ。それにも関わらず、枠内シュートはどちらも4本だったという効率の良さは賞賛に値する?加えて、後半になるまで、敵がファールでプレーを止めることを忘れていたため、ジョアンもそれまで、2回の訪問で4ゴールというエル・サダルとの相性の良さを再確認できましたしね。

丁度、この試合でアトレティコでの100試合出場を達成した当人も記念プレートをもらえるのに、「Cuando la reciba la pondré en el salón para verla todos los días/クアンドー・ラ・レシーベ・ラ・ポンドレ・エン・エル・サロン・パラ・ベルラ・トードス・ロス・ディアス(受け取ったら、家のサロンに飾って毎日、眺めるよ)」と喜んでいましたし、この勢いを水曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのCL16強対決マンチェスター・ユナイテッド戦1stレグにも繋げることができれば…。

え、ようやく2度目のリハビリが終わり、この試合で足慣らしをするはずだったグリーズマンは出なかったけど、いきなりCLの大舞台を迎えて大丈夫なのかって?うーん、私が見学に行った月曜の練習のマスコミ公開15分の後、また敷地の外から覆い越しに伺っていたところ、どうやらシメオネ監督はリーガ11ゴールと絶好調のコレアとジョアンの2トップを試していたよう。ちなみにこのセッションにはジムごもりとなったコケの姿が見えず、レマルと控えGKルコントがコロナ感染者との濃厚接触でまだ隔離中。グループリーグ最終節ポルト戦で退場したカラスコも3試合の出場停止となるため、今のところ、スタメンがはっきりわからないんですけどね。

対して日曜にリーズに2-4と勝利したマンチェスター・ユナイテッドも現在4位と、アトレティコと似たような状況ですし、何よりお隣さんにいた時代、38試合で25得点という天敵だったクリスチアーノ・ロナウドが今季はまだ9ゴールしか挙げていないというのはちょっと、ファンも気が楽になるかも。昨季の16強対決ではそこここでコロナ規制があったため、ブタペストでチェルシー戦1stレグのホームゲームを戦わないといけなかったアトレティコも今度は熱いワンダのファンの後押しがありますからね。とはいえ、0-1で負けたレバンテ戦のような悪い例もありますし、今はピッチに立つ選手たちが眠ったままスタートしないことを祈るばかりでしょうか。

そして続く時間帯では弟分のヘタフェがアウェイでカディス戦に挑み、うーん、前半6分にペナルティをゲット。前節のアトレティコ戦でも2本目のPKをエネス・ウナルに蹴らせてくれるように頼んで断られ、「Me dijo que el siguiente lo tiraba yo/メ・ディホ・ケ・エル・シギエンテ・ロ・テシラバ・ジョ(次はボクが蹴る番と言われた)」マジョラルが先制点を挙げた時には、この日はいけるかと思ったんですけどね。残念ながら、前半ロスタイムにネグレドに同点弾を撃ち込まれ、最後は1-1の引分けに終わることに。カディスは今季ホーム勝利、ヘタフェはアウェイ勝利がない唯一のチームというのを聞くと、まあ、ありがちな結末ですが、キケ・サンチェス・フローレス監督のチームにはこの週末、得意のコリセウム・アルフォンソ・ペレスでのアラベス戦で降格圏との勝ち点差6、15位という成績を改善してもらいましょうか。

え、もしかして、そのアラベスが土曜最後の時間帯にレアル・マドリーがサンティアゴ・ベルナベウに迎えた相手だったんじゃないかって?その通りで冷たい風の中、私も足を運んだんですが、お隣さんにもアトレティコと同じ悩みがあったよう。ええ、「Tenemos una debilidad en las primeras partes/テネモス・ウナ・デビリダッド・エン・ラス・プリメーラス・パルテス(ウチは前半に弱みがある)」とアンチェロッティ監督も言っていたんですが、火曜のCL16強対決PSG戦1stレグから、クロースをバルベルデに代えただけのベストメンバーを並べながら、前半一番のチャンスがアラベスのジェイソンがフリーで撃ったシュートが枠を外れたぐらいとなれば、ハーフタイムに入る時にpito(ピト/ブーイング)が聞こえてきたのも仕方なかったかと。

ただ、後半15分、アセンシオが一際高くピーピーやられたのには理由があって、だってえ、自陣エリア前からのバックパスをピッチに入ったばかりのペレ・ポンスに奪われ、GKクルトワが慌てて追ったものの、シュートを撃たれてしまったんですよ。幸いゴール脇のネットに当たってくれたため、逆に言えば、「自分たちのチャンスに決めなければ、en un campo así es muy difícil aguantar el 0-0/エン・ウン・カンポ・アシー・エス・ムイ・ディフィシル・アグアンタル・エル・セロ・セロ(こういうスタジアムで0-0で耐えるのは難しい)」というメンディバル監督の嘆きももっともなんですけどね。

とはいえ、そこは鉄のメンタルを持つアセンシオ。何と3分後にはエリア外から放った弾丸シュートでgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めて、スタンドにブーイングは止めて応援するようにという、ジェスチャーメッセージ付きで祝っているとなれば、もう誰も文句は言えないかと。ちなみにこの流れ、どうも先日のグラナダ戦にも似ていて、そのまま彼の1点だけで終わるのかと思いきや、とんでもない。35分にはマドリーの完璧な連携プレーが発動し、エリア内右側でベンゼマのパスをアセンシオがtaconazo(タコナソ/ヒールキック)で返すと、ゴール前のビニシウスにラストパスが通り、マドリーは2点目をゲット。もうこうなるとブーイングしていたファンも拍手で称えるしかありませんが、最後の仕上げは46分のことでした。

ええ、ロドリゴがエリア内でルジェーヌに足を踏まれてペナルティが宣告されると、そのPKをベンゼマがしっかり決め、3トップ揃い踏みの3-0で勝利。いやあ、このところ、ビジャレアルとのスコアレスドローを除いて、勝っても負けても1-0のスコアばかりのマドリーでしたけどね。ようやく彼ららしいgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)が見られたのには、ホッとしたファンも多かったのでは?日曜にエスパニョール戦で1-1とセビージャが引分けたため、2位との差も勝ち点6に広がりましたしね。今週末にはエスタディオ・バジェカスでラージョとの兄弟分ダービー、その次はレアル・ソシエダとのホームゲームがある彼らですが、目下、チームの最優先ターゲットは3月9日のPSG戦2ndレグでのremontada(レモンターダ)。となると、それまでのリーガ2試合は大一番で出場停止となるカセミロとメンディの代役を探す、いい機会になるかもしれませんね。


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