同じひどい試合をしても全然、境遇が違う…/原ゆみこのマドリッド

2022.02.19 21:30 Sat
©Atlético de Madrid
「ホント、最悪のミッドウィークだったわね」そんな風に私が愚痴っていたのは金曜日、週末のリーガ戦がもう、すぐそこに迫っているのに気がついた時のことでした。いやあ、CL16強対決1stレグ第1陣が始まった今週はレアル・マドリーがPSGと対戦、後発組のアトレティコは空いた週中にスペイン・スーパーカップ参加により、延期されていたレバンテ戦をプレーしたんですけどね。これがまた、足並みを揃えたように双方共、パッとしない試合をして、最少得点差で負けたため、どちらのファンも喜べなかったんですが、よりショックが大きかったのは後者の方だったかと。
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だってえ、CL決勝トーナメントは2試合制なため、マドリーにはまだ3月9日、サンティアゴ・ベルナベウでの2ndレグがありますし、スコアだけ見れば、0-1なんて、完全にremontable(レモンタブレ/逆転可能)の範疇ですからね。おまけにリーガでは首位となれば、気を取り直して、この3週間、精進に励めばいいだけですが、対照的に完全にドツボにはまってしまった感があるのがお隣りさんなんですよ。ええ、この敗戦で4位のバルサと勝ち点数で並んでいるという状況は変わらないものの、CL出場圏外の5位に留まったまま、アトレティコはライバルより、試合を1つ多く消化。それだけでなく、最下位のレバンテからすら、ホームのワンダ・メトロポリターノで1点も取れないとなれば、来週水曜のマンチェスター・ユナイテッド戦なんて、何をかいわんやですって。まあ、嘆いていても仕方ないので、まずはマドリーの試合から、お伝えしていくことにすると。パルク・デ・プランスでは1月23日のエルチェ戦で負傷したベンゼマもようやく先発復帰し、その後の3試合でアセンシオの1得点だけという、ゴール日照りは解消されるはずだったんですけどね。もしかしたら、相手の実力を見誤った?そう、アンチェロッティ監督は中盤まで引いて、カウンターを狙う戦法を選んだんですが、これがまんまと「cortamos el circuito del Madrid con una buena presión/コルタモス・エル・シルクイトー・デル・マドリッド・コン・ウナ・ブエナ・プレシオン(よくプレスをかけて、マドリーのボールの流れを切った)」(ポチェッティーノ監督)というPSGの餌食に。
とにかく前半なんて、30分過ぎぐらいまで、ボールをほとんど敵に独占されていた程で、その3度もパスが続かない状態には、どこぞのチームの病気がうつったんじゃないかと、私も呆気に取られるばかり。そんな中、1人、ゴール前で果敢に立ち向かったのはGKクルトワでした。後半3分にはエムバペのシュートを防ぎ、この日、2度目のparadon(パラドン/スーパーセーブ)を披露したかと思いきや、まさかその後、エムバペのスピードに耐え切れず、カルバハルが相手をエリア内で倒したペナルティから、メッシが蹴ったPKをも弾いてしまうんですから、凄まじい。

ええ、私が観戦していたバル(スペインの喫茶店兼バー)にいたマドリーファンたちもこれには歓声を上げていましたが、何度もリーガで対戦したことのある当人曰く、「Sabía que Messi había fallado tres a la derecha/サビア・ケ・メッシ・アビア・ファッジャードー・トレス・ア・ラ・デレッチャ(メッシが右側に蹴って失敗していたのは知っていた)」のだそう。実際、ポチェッティーノ監督もエムバペをキッカーにしていればと悔やんでいたかもしれませんが、大丈夫。
何せ、「素早い攻守の切り替えができて、12月までのウチはboloque bajo/ブロケ・バホ(低い位置取り)が上手くいっていた。Cuando ganas el balón hay que se más vertical/クアンドー・ガナス・エル・バロン・アイ・ケ・セ・マス・ベルテイカ(ボールを奪い返したら、もっと縦に行かないといけない)」とアンチェロッティ監督も後で反省していたように、アセンシオ、カルバハルをロドリゴ、ルーカス・バスケスに、ビニシウス、マドリッチをアザール、バルベルデに、最後はベンゼマをベイルに代えてもまったく攻撃が繋がらないマドリーでしたからね。そのままスコアレスドローで終われば、2ndレグに勝負を持ち越せると私もホッとしかけたところ…。

ロスタイム3分、ディ・マリアに代わって出場していたネイマールがtaconao(タコナソ/ヒールキック)で送ったパスをエムバペが受け、うーん、やはり「敵はペナルティを犯していたせいで、ボクを止めるべきかわからなくて、後退して行った」(エムバペ)という事情も影響したんでしょうね。ミリトンとルーカス・バスケスの間をするりと抜けた彼がゴール左前から必殺のシュート。こればっかりはクルトワにも止められず、土壇場でPSGに1点が入ったんですが、まったく運命とは皮肉なものです。というのもエムバペは数年前から、ペレス会長の新世代ギャラクティコ候補ナンバーワンで、すでに今季終了後のマドリー入りが決まっているかのように、スペインでは扱われていますからね。

「jugamos con once más 50.000/フガモス・コン・オンセ・マス・シンクエンタ・ミル(11人プラス5万人でプレーする)」(アンチェロッティ監督)サンティアゴ・ベルナベウで、「この敗戦でtampoco cambia mucho, hay que ganar igualmente/タンポコ・カンビア・ムーチョ、アイ・ケ・ガナール・イグアルメンテ(大して状況は変わらない。同じく勝たないといけないんだから)」(クルトワ)というマドリーが逆転突破できればいいとはいえ、万が一、このエムバペのゴールでCL16強敗退なんてことになれば、ファンも決して心穏やかではいられない?ちなみに当人は試合後のTVインタビューに流暢なスペイン語で答え、「先のことはまだ決めていない」とは言っていたものの、スペイン移住に準備万端なところを見せていましたが、果たしてどうなるんでしょうか。

まあ、累積警告でカセミロとメンディが出られない2ndレグでマドリーのリベンジが見られるのかはまた、日にちが近くなってから、話せばいいとして、今週末の彼らは土曜午後9時(日本時間翌午前5時)から、ホームでのアラベス戦。さすがにパリでは復帰したてということで、もちろん、ラストパスがまったく来なかったせいもありますが、チームの枠内シュートが1本もないという不名誉な記録に貢献してしまったベンゼマも調子が上がっているはずですし、とにかくこの試合、マドリーはケガなどで欠場する選手が1人もいませんからね。降格圏の18位ながら、前節はバレンシアに2-1で勝利して、相手のアラベスも士気が上がっているため、決して油断はできませんが、そろそろまた、ゴールに不自由しないチームに戻ってくれるんじゃないでしょうか。

え、それで翌水曜、ワンダ・メトロポリターノに私が見に行ったアトレティコはどこがどう、ダメダメだったのかって?いやもう、当日の朝、PCR検査が陰性になったヒメネスがスタメンに入ったと知った時には、フェリペは出場停止、エルモーソも前日にコロナ感染が発覚していたため、ちょっと気が楽になったんですが、そこからして、間違っていたんですかね。前節のヘタフェ戦こそ、例外だったものの、今季は定番となった、眠ったまま前半を過ごす意欲満々でピッチに立った彼らは21分、ヒメネスが自陣でヘッドしてクリアしようとしたボールがデ・フルートスに渡るという不幸に遭遇。この時はGKオブラクが1対1のシュートを防ぎ、いやあ、昨日今日の話で妬ましかったからか、試合前、クルトワのアトレティコ100試合以上出場選手記念プレートにはまた、空き缶などのゴミが積み上がっていたなんてこともあったんですけどね。

今季こそ、23試合33失点の汚名を着せられているとはいえ、オブラクだって、5年連続サモラ(リーガで一番失点率の低いGKに与えられる賞)なんだということを思い出させてくれたんですが、まさか早くも50失点。2月の頭には弟分のヘタフェにも3-0とgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)されていたレバンテ相手にまったく攻めていかないなんて、一体、選手たちは何を考えている?結局、前半はロスタイムにフリーで撃ったレマルのシュートが天高く外れたぐらいと、0-0のまま、後半に入ったんですが、早くも9分にはデ・フルートスのパスから、メレロに先制点を決められてしまったから、さあ大変!

いやあ、3分後、コンドグビアのエリア外からのシュートがドゥアルテの手に当たったのがペナルティとされた時はラッキーと思ったんですが、ここでVAR(ビデオ審判)が介入。直前にマルコス・ジョレンテのオフサイドがあったことが発覚しては、せっかくPKを蹴る用意をしていたコレアもボールを手放すしかありません。それから間もなく、シメオネ監督はすでに次節出場停止となるイエローカードをもらいながら、2枚目をもゲットする勢いだったデ・パウル、今季はほとんどチームの役に立つプレーができていないコケ、そして折しもドゥアルテに潰されて右ヒザを痛めたクーニャの3人を一気にルイス・スアレス、ジョアン・フェリックス、ベルサイコに交代。

その甲斐もほとんどなく、いよいよ終盤となって、アトレティコはここ2試合、バレンシア戦、ヘタフェ戦の奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)モードに入ったんですが、3度も続く奇跡なんて、ありっこないですよね。いえ、ロスタイム6分にベルサイコのスローインをサビッチがヘッド、落ちてくるボールをコレアがchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)でネットに突き刺した時には危うく、私も信じかけたんですけどね。この日は間が悪くもヒメネスがファールを取られ、スコアボードには上がらず。最後のFKに参加したオブラクのヘッドもGKにキャッチされ、昨季も2試合続けて勝てず、優勝への道のりを危うくされたレバンテに今季2勝目をプレゼントしているとなれば、並外れて辛抱強いアトレティコファンからだって、pito(ピト/ブーイング)が出てしいまいますって(最終結果0-1)。

まあ、その発端は終盤、同点ゴールを目指す中、ヒメネスが前ではなく、横にパスを送ったことで、それで聞こえてきたブーイングに当人がスタンドを批判するような仕草を見せたせいで余計、ピーピーうるさくなったんですけどね。後で彼の奥さんもインスタに「Seis días en la cama y el séptimo día de la cama directamente al Wanda/セイス・ディアス・エン・ラ・カーマ・イ・エル・セプティモ・ディア・デ・ラ・カーマ・デレクタメンテ・アル・ワンダ(6日間、ベッドにいて、7日目にはベッドからワンダへ)。ケガする可能性だってあったのに」と投稿していたように、チームのために体を張った当人を責めることはできないとはいえ、よく考えたら、1回も練習しないで試合に出るのはかなりの蛮勇ではなかったかと。

何はともあれ、「De esta manera no vamos a entrar en Champions/デ・エスタ・マネラ・ノー・バモス・ア・エントラール・エン・チャンピオンズ(こんな有り様ではCL圏に入ることはできない)」(オブラク)というのは真実ですし、そのためには「es momento de sentarnos, hablar, cada uno mirarse el ombligo/エス・オメントー・デ・センタールノス、アブラル、カーダ・ウノ・ミラルエ・エル・オンブリゴ(今は座って話し合って、各自、我が身を振り返らないといけない)」(ジョレンテ)んですが、もうファンも選手たちの反省の弁は聞き飽きていますからね。それこそ、土曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からのオサスナ戦で結果を出すしかないんですが、果たして金曜にはマハダオンダ(マドリッド郊外)の練習場に駆けつけて、「残り14試合でCL出場権を勝ち取るように」と檄を飛ばしたヒル・マリン筆頭株主の言葉もどれ程、彼らの心に届いているのやら。

唯一の朗報はグリーズマンがようやく復帰したことで、代わってクーニャが2か月間のリハビリとなったのは痛いものの、コロナ隔離だったカラスコとエルモーソも陰性になりましたし、フェリペも処分明けと戦力は増えているんですけどね。最下位に負けるようではとても、9位のオサスナに勝てるなんて、私も保証はできず。少なくともエル・サダルでは2連勝しているのと、2年前にはコロナ禍による中断前に6位でありながら、残り11試合で根性を見せて、3位に入ったのがいい前例になってくれるといいんですが。

そして同じ土曜には兄貴分たちの試合にはさまれるようにして、弟分のヘタフェもアウェイでカディスと戦うんですが、良かったですね。ワンダで負傷交代したエネス・ウナルは回復、欠場していたサンドロも元気になったため、当日まで微妙なのはアレニャとオリベイラだけに。まあ、アトレティコとのダービーでは終盤に勝ち越し点を奪われたとはいえ、彼らだって、3点は挙げているんですから、今季まだのアウェイ初勝利も不可能ではないかと。19位の相手に対して、ヘタフェは降格圏まで勝ち点5と最近はちょっと余裕がありますし、あと5勝に迫った残留確定ゾーンに早いところ、辿り着いてくれたら、きっとファンも安心できるんじゃないでしょうか。

一方、金曜試合となったもう1つの弟分、ラージョはマルティネス・バレロを訪れたんですが、どうにもアウェイ苦手病が克服できずに、後半にはせっかくフラン・ガルシアのゴールで先制しながら、カリージョとポンセに決められて、2-1でエルチェに逆転負けしてしまうことに。これでリーガ4連敗ですし、今年になってから、白星がないのも継続とだんだん、私も心配になってきたんですが、もう今週ミッドウィークのマドリッド勢はツキがないと思うしかないかと。いよいよ次節はマドリーをエスタディオ・バジェカスに迎える兄弟分ダービーですし、その後は1stレグを1-2で負けたベティスとのコパ・デル・レイ準々決勝2ndレグに挑まないとならないため、イラオラ監督も大変ですが、ここは何とか踏ん張ってほしいものです。


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