とりあえず、コパは一区切りついた…/原ゆみこのマドリッド

2022.02.12 22:00 Sat
「荒れたのは準決勝だからなのか、そういう流儀のチーム相手だからなのか」そんな風に私が首を捻っていたのは金曜日、コパ・デル・レイもこの段階まで来るともう、2カードのみ。どちらもテレシンコ(スペインの民放)のオープン放送となって、自宅でTV観戦できるため、前夜はアスレティックvsバレンシアの準決勝1stレグを何となく見ていたんですけどね。tangana(タンガナ/小競り合い)などもあって、ヤケに選手たちがエキサイトしているなとは思ったものの、翌日になって記録を見てみれば、退場者こそ、ハーフタイム中に抗議でレッドカードを受けたマキシ・ゴメスだけながら、ファール数がアスレティック13回、バレンシア22回とやたら多かったから。
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試合の方は前半27分にムニアインのCKから、ラウール・ガルシアのヘッドでアスレティックが先制。後半21分には、ブライアン・ヒル(トッテナムからレンタル)のシュートがGKアギレサバラに弾かれた後、こぼれ球を最近、絶好調のウーゴ・ドゥーロが押し込んで、バレンシアが同点に。それとは別にダニ・ガルシアがカルロス・ソレルの足を蹴りながら、2枚目のイエローカードが出なかったり、ロスタイム入り直前にはドゥーロがビビアンにエリア内で倒されたプレーがペナルティとして認められないなど、物議を醸すジャッジもあったりしたんですが、うーん、先週の準々決勝で堂々、レアル・マドリーを倒したアスレティックはここまで粗暴なチームではなかったような。それで思い出したのが、ボルダラス監督がマドリッドの弟分を率いていた時代、コリセウム・アルフォンソ・ペレスではしょっちゅう、そこかしこで選手が倒れていたことで、あの頃はヘタフェのファール数が抜きん出ていたせいで、逆に敵が勢い込み、ラフプレー満載の展開になるんだろうと、ちょっと同情していた私だったんですけどね。チームは違えど、同じ光景がリピートしているとなれば、これって、やっぱりボルダラス監督のせい?うーん、試合後はマルセリーノ監督も「Hubo 44 minutos de juego/ウゴ・クアレンタイクアトロ・ミヌートス・デ・フエゴ(実質プレー時間はたったの44分間だった)。1部チーム同士のコパ準決勝というより、地方リーグの試合みたいな場面もあったし」と愚痴っていましたしね。
結果は1-1とまったくのイーブンですし、この調子では3月の2ndレグも今度はメスタジャのファンの応援を嵩にきて、物凄いことになりそうですが、それより大事なのはマドリッド勢唯一の生き残り、ラージョが決勝に辿り着けるかどうか。ええ、1日前の水曜には準々決勝マジョルカ戦の時と同様、bengala(ベンガラ/発煙筒)を盛大に焚きながら、エスタディオ・バジェカスに到着したものの、なかなか入場させてもらえなかったブカネーロス(過激なファンのグループ)もキックオフ前から、定位置のfondo sur/ファンド・スール(ゴール裏南側スタンド)でスタンバイ。

最終的にバックスタンドの片隅に固まって座ることになった約500人のベティスファン以外、ラージョへの応援一色で試合はキックオフしたんですか、どういう訳か、私もこの日はピッチにかなり近い、ホームチームのベンチ裏に座ることに。プレス用ボックスや2階スタンドとは違う、いつも以上の熱気をモロに感じていたんですが、いやもう、この距離だと選手たちがガンガン、体をぶつけ合っているのも肉眼ではっきり。心底、サッカーはdeporte de contacto/デポルテ・デ・コンタクトー(接触のあるスポーツ)だと感じるばかりだったんですが…。
クラブにとって、40年ぶりのコパ・デル・レイ準決勝とあって、張り切って声援するファンのおかげもあったか、開始早々から、相手を攻めたてたのが功を奏したんですかね。早くも5分にはバリウが右サイドから上げたクロスをアルバロ・ガルシアがヘッドで押し込んで、ラージョは1点を先制。場内も狂喜乱舞していたんですが、敵もさるものです。この日は「Presa vete ya!/プレサ・ベテ・ジャー(プレサ会長、もう出て行け)」のカンティコも13分に1回だけど、決してファンがよそ見していた訳ではないんですが、時間が経つにつれ、ベティスがラージョ陣内にいる時間が増加。とうとう26分にはボルハ・イグレシアスが個人技でアルバロとバレンティンをすり抜け、エリア前からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めてしまうのですから、やはりリーガ3位というのはダテではない?

1-1で折り返した後半、先に交代のカードを切ったのはイラオラ監督で、17分にはセルジ・グアルディオラに代わり、スタンドの期待を一身に背負ってファルカオが登場。でもねえ、ベティスは得点できる選手がFWだけじゃないんですよ。1-1で引き分けた1月のリーガ戦でゴールを決めているカナレスこそ、その日、コロナ陽性で来ていなかったんですが、何と23分にはボランチのカルバーリョがカテナにcaño(カーニョ/股抜き)を喰らわせてエリア内に入り、勝ち越しゴールを奪われてしまったから、さあ大変!

残りの時間、懸命に同点に追いつこうと頑張ったラージョでしたが、いえ、終盤にはエヌテカのシュートをGKルイ・シウバにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されるなど、惜しいチャンスもあったんですけどね。結局、そのまま1-2で負けてしまい、3月3日の2ndレグには、「El partido lo afrontaremos como uno nuevo en el que nos acaban de marcar al empezar y tenemos que remontar/エル・パルティードー・ロ・アフロンタレモス・コモ・ウノ・ヌエボ・エン・エル・ケ・ノス・アカバン・デ・マルカル・アル・エンペサール・イ・テネモス・ケ・レモンタール(開始早々失点して、逆転しないといけない、新たな試合として挑まなければ)」(イラオラ監督)という破目に。

いやまあ、昨年6月の昇格プレーオフ決勝ではそれこそ、バジェカスでの1stレグを同じスコアで落とし、モンテリビでの2ndレグでジローナに0-2と勝って、1部に復帰してきた彼らですからね。今季から、アウェイゴールルールがなくなったのも朗報で、ベニト・ビジャマリンで90分までに0-1とすれば、延長戦に入れますし、0-2なら、逆転で決勝進出の夢が叶うんですが、相手がやや格上なのは辛いところ。ただ、この先の3週間、ベティスにはEL16強対決プレーオフ、2試合制のゼニト戦があって、リーガ戦と合わせると計5試合、しかも直前がサンチェス・ピスファンでのアンダルシアダービーなんですよ。

ええ、セビージャとは1月半ばのコパ16強対決でも顔を合わせ、ベニト・ビジャマリンのスタンドから飛んできたプラスティック製の旗竿がジョルダンの頭を直撃。大したケガではなかったものの、そこで試合は中断となり、翌日、無観客で残りを開催することに。自チームに被害者が出ながら、敗退することになったロペテギ監督のチームには大きな遺恨がありますし、宿敵との対戦にペジェグリーニ監督を始め、ベティスの選手たちもかなりのエネルギーを費やすことが想像されるとなれば、ここら辺りにラージョにも勝機が見えてくる?

対照的にその間、リーガ3試合しかない彼らはもう、この土曜には再びバジェカスでのオサスナ戦、そしてエルチェ戦、直前には兄貴分のレアル・マドリーを迎えるホームゲームという、週1試合ペースが復活。リーガの方はここ2連敗と少々、お留守になってしまったとはいえ、丁度、今、勝ち点31での9位とあって、3連勝すれば、一気に1部残留も決まりますからね。ちなみに木曜の練習では、折しも36才のバースデーを迎えたファルカオがトレホ、イシ、ベベらに小麦粉と卵まみれにされるというお祝いの被害に。最近、なかなかゴールが入らない彼ですが、自分をラージョに誘ってくれたマリオ・スアレスと共にコパ準決勝2ndレグで逆転突破して、2013年にアトレティコで掲げているトロフィーを再びゲットしようと燃えているのはきっと、間違いないはずですよ。

そしてすでにコパ敗退済み、ミッドウィークには試合のなかった他のマドリッド勢も今週末は土曜試合で、まずはマドリーが午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からビジャレアル戦。来週火曜にはCL16強対決PSG戦1stレグが控えているせいもありますが、鋭意リハビリ中のベンゼマ、メンディはまだ参加しません。コパのアスレティック戦とは違い、今回はマルセロも出られるため、左SBは大丈夫なんですが、やはり気になるのは、チーム一のゴール供給源なしでまた戦わないといけないことで、いえ、アンチェロッテイ監督によると、少なくともパリでの大一番に向けては、「Las sensaciones de todos son posiitivas/ラス・センサシオネス・デ・トードス・ソン・ポシティーバス(皆の感触はポジティブ)」だそうですけどね。

ビニシウスも出場停止でいなかった先週末のグラナダ戦ではアセンシオのエリア外からのシュートが決まり、何とか1-0で勝てたとはいえ、ウナイ・エメリ監督のチームは5位のアトレティコとたった勝ち点1差の6位ですからね。たとえ、今季は負傷禍に悩まされているジェラール・モレノがこの試合もお休みすることになったとはいえ、相手にはダンジュマ、ジェレミー・ピノ、そしてアフリカ・ネイションズカップから戻って来たディアと他にもいいFWがいますし、この冬の市場ではトッテナムからデ・チェルソも加入。同じCL16強対決1stレグを待つ身とはいえ、彼らがユベントスを迎えるのは再来週となれば、ためらいなく最強メンバーを投入してきそうですが、はてさて結果はいかように。

まあ、それでもカルバハルとルーカス・バスケスの2人が急性胃腸炎から回復しましたし、2位のセビージャが金曜にエルチェを2-0で倒したとはいえ、まだ勝ち点差は3あるため、あまりマドリーの心配はしなくていいんですけどね。それより憂鬱なのは土曜の午後9時(日本時間翌午前5時)から、ワンダ・メトロポリターノでキックオフとなるタフェとの兄弟分ダービーで、というのも前節のバルサ戦でもアトレティコには守備ミスが大量発生、4-2で負けて、CL出場圏の4位を奪われてしまっただけでも大変なのに、今週も彼らには更なる不運が襲い掛かったから。ええ、カンプ・ノウでヴァス(バレンシアから移籍)が右ヒザを負傷し、全治6~8週間になってしまったのはとうにわかっていたんですが、木曜にはもう何度目だか、わからないヒメネスのコロナ陽性も発覚。

おかげで今季の大ザル守備陣の中ではまだマシと言われていたヒメネス&サビッチのCBコンビが組めず、もう最近ではボールが行くたびにドキドキするフェリペかエルモーソがプレーしないといけないのも怖いんですが、せっかくケガが治って戻って来たマルコス・ジョレンテも早速、右SBでの起用になるみたいですからね。せめてもの慰めは、デ・パウルの代わりにコンドグビアが中盤に入るため、少しは防波堤になってくれそうなことですが、果たして、試合がなかったこの1週間、シメオネ監督が選手たちに守備の特訓をしてくれたかどうか。

何せ、キケ・サンチェス・フローレス監督率いる弟分は最近、かなり調子を上げてきて、まだ15位ではあるものの、18位の降格圏と7位のコンフェレンスリーグ出場圏まで、どちらも勝ち点7差。とりわけ、トルコ人FWのエネス・ウナルの成長が大きく、前節のレバンテ戦でも2発と波に乗っていますからね。ただ今季、彼らは未だにアウェイで5分け6敗と白星がなく、かてて加えて、ワンダではもちろん、ここ何年も兄貴分に勝っていないというのが、アトレティコファンの唯一の救い?割り当てられた500枚のチケットを完売にしたヘタフェ・サポーターも応援に駆けつけますし、先週末の試合で負傷したオリベイラ、アレニャ、そしてサンドロが欠場というのはちょっと痛いものの、何か今は私もヘタフェの方がしっかりしたチームに見えてしまうんですよね。

そして金曜夜には2部27節の先陣を切ったマドリッド郊外の弟分、レガネスがサラゴサを迎える試合をブタルケに見に行った私だったんですが、同じ勝ち点で並ぶ直接ライバルとの対決の前半は大入りのサポーターの後押しを受けながら、あまりチャンスが作れず、0-0で終わることに。それが何と、レシオの位置を下げて、それまで敵のマークにより、いいパスが前に出せなかったハビ・エルナンデスを助けるため、ハーフにナフティ監督がニヨムとランデロビッチの代わりに柴崎岳選手とパレンシアを入れたのが大当たり。後半5分にはルーベン・パルドのパスから、シセが先制点を挙げると、30分には自陣から、柴崎選手が出したボールに抜け出したアルナイスが2点目をゲットしてくれたから、これはもう大船に乗った気になっていい?

いえ、実際には残り2分にアソンに1点を返され、なかなかロスタイム終了の笛を吹いてくれない審判にpito(ピト/ブーイング)が飛んでいたんですけどね。でも大丈夫、2-1で勝利して、順位も14位に上がり、これでようやく、降格圏と昇格プレーオフ圏への距離がどちらも勝ち点8となることに。とはいえ、記者会見でもナフティ監督が、「これで2部残留に見通しがかなりついたんじゃないか」と訊かれていたように、シーズン前半に躓いたせいで、まだまだ弟分仲間ラージョに昇格プレーオフ準決勝で負けた昨季のリベンジを今まだ、目標にはできないのがちょっと寂しいですが…2部は長いんですから、あくまで志は高く持って戦わないといけませんよね。


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