他のチームが眩しく見える…/原ゆみこのマドリッド

2022.02.09 22:00 Wed
©Atlético de Madrid
「ちょっと気が早いわよね」そんな風に私がうんざりしていたのは火曜日、週明けからのレアル・マドリー関連の話題がやけにパリからのものに偏っているのに気がついた時のことでした。いやあ、確かに先週木曜にアスレティックに準々決勝で負けた彼らにはもうコパ・デル・レイの試合はなし。今週のミッドウィークはヒマになるため、いよいよ来週火曜に迫ったCL決勝トーナメント、16強対決1stレグのPSG戦に目が行ってしまうのはわかるんですけどね。
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とはいえ、今からネイマール、セルヒオ・ラモスは回復が間に合うのかとか、週末に1-5で大勝したリール戦でディ・マリアがケガしたようだとか、先発GKはケイロル・ナバスかドンナルンマかとか、いよいよメッシも調子を上げてきたようだとか言われても、向こうも金曜にはリーグ1のレンヌ戦があるため、選手たちの状態はそれを見てからでないとわからないところも。「先のことについてはまだ心が決まっていない。もう移籍の交渉をしてもいいんだけど、ライバルとそういう話をするつもりはないし、今はマドリーに勝つことだけに集中している」と言っていたエムバペだって、もし来るとしても今季が終わってからですからね。同様にマドリーにも土曜にはリーガのビジャレアル戦があって、まあ確かに先週末のリーガで2位のセビージャとの勝ち点差が6に開き、とりあえず、何があっても首位の座は安泰。かてて加えて、3位ベティスとは13差、4位バルサとは15差、5位のアトレティコなんて17差ともなれば、後続を気にする必要もないんですが、はあ。長らくスペインの2強として君臨していたバルサがアトレティコに勝った後、「ya estamos en Champions y no nos para nadie/ジャー・エスタモス・エン・チャンピオンズ・イ・ノー・ノス・パラ・ナディエ(もうウチはCL出場圏にいて、誰にも止められない)」と、カンプ・ノウのロッカールームで大はしゃぎしているのも如何なものかと思えど、それにもまして、昨季のリーガ王者の没落ぶりには溜息しか出ない私だったりするんですが…。
ちなみにその日曜の試合がどうだったかというと、前日の記者会見ではシメオネ監督とチャビ監督のサッカー哲学の違いによる、当てこすり合戦があって加熱したりしていたんですが、序盤から相手にボールを支配されながら、意外にも先制点を決めたのはアトレティコの方。ええ、前半8分にはコケのスルーパスを受けたルイス・スアレスがエリア内のカラスコに送り、そのシュートがゴールになったんですけどね。近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に集っていたアトレティコファンのオジさんたちがまだ狂喜乱舞しているうちに早速、今季はもうお約束となっている守備ミスで失点しているんですから、たまったもんじゃありませんって。

ええ、10分には出戻りのダニ・アウベスが上げたクロスに反対サイドのSB、ジョルディ・アルバがvolea(ボレア/ボレーシュート)で合わせ、そのgolazo/ゴラソ(スーパーゴール)であっという前に同点にされてしまったんですが、どうしてアルバの周りに誰もいなかったのかは永遠の謎。おまけに守備崩壊は21分にも起こり、いえ、アダマ・トラオレ(ウォルバーハンプトンからレンタル移籍)にコケが後ろからぶつかられ、倒れてボールを失ったのは体格的に仕方ないところもあるんですけどね。エルモーソも筋骨隆々のFWにまったく太刀打ちできず、エリア内奥からクロスを上げられてしまうことに。
ゴール前に落ちて来たそのボールに頭で向かったのはガビとフェラン・トーレスだったんですが、うーん、どうしてその場にベルサイコしかいない?その中で見事にヘッドが命中、勝ち越しゴールを決めたのが、身長173センチと一番小さいガビとなれば、もうGKオブラクも気持ちをどこに向けていいかわからなかったでしょうが、こんなの序の口です。ハーフタイムまであと少しに迫った43分、今度はアウベスが蹴ったFKをピケがヘッド。ボールはゴールバーに弾かれてエリアに戻ったんですが、フェランは失敗したものの、こちらもフリーだったアラウホが撃ち込んで、前半だけで3点も取られているんですから、開いた口が塞がらないとはまさにこのことだったかと。

これにはさすがにシメオネ監督もマズいと思ったか、後半頭からはベルサイコをヴァス(バレンシアから移籍)に代えてみたんですけどね。その効果も何も、5分にはエリア内右奥まで侵入したガビが折り返し、フェラン、ペドリを通り過ぎたボールがアウベスの前に。彼のシュートで4点目が入った時にはもう、私の頭の中も真っ白になっていたんですが、その後、エルモーソ、レマル、ジョアン・フェリックスがレイニウド(リールから移籍)、コレア、クーニャに代わったおかげでしょうか。14分にはCKから、ヒメネス、ルイス・スアレスの連続ヘッドで、アトレティコは何とか1点を返すことに成功。おまけに23分にはアウベスがカラスコのふくらはぎを蹴って、VAR(ビデオ審判)チェックで一発退場となったため、前節のバレンシア戦のような奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)が起きてくれたらと、藁にもすがる気分で見ていたんですが…。

はい、わかっています。奇跡は滅多に起きないから、奇跡なんですよね。敵が10人になったにも関わらず、アトレティコはそれから1本もシュートを撃てず、それどころか、ロスタイムにはヴァスがフェランのタックルを受けてダウン。その時にはもう、コケの代わりにエルモーソが入り、5人の交代枠を使い切っていたため、シメオネ監督自ら、ヴァスを引き起こして、再びピッチに送り込んでいましたが、そんなことしたって、4-2という結果が変わる訳もなし。結局、枠内シュート5本のうち、4本を決めたバルサがシュート数10本(枠内4本)のアトレティコを下し、4位の座を奪われてしまうことに。

まあ、勝ち点差はたったの2ですし、残り試合はまだたっぷりありますから、それはまあ、いいんですが、どうにも情けないのは中南米W杯予選のせいで2週間近くも練習する時間があったのに、今季の最大課題である守備の改善がまったくできていなかったこと。いえ、私も毎日、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に行っている訳ではないので、確かなところはわからないんですけどね。

グラウンドの覆いの外から様子を伺っていたセッションでは攻撃練習しかしていなかったのはたまたまだと思いたかったんですが、シメオネ監督が「Debemos mejorar, viene una semana para insistir en este tipo de acciones/デベモス・メホラル、ビエネ・ウナ・セマーナ・パラ・インシスティル・エン・エステ・ティポ・デ・アクシオネス(改善しないといけない。こういう種類のプレーを集中してやるための1週間がある)」と言っていたところを見ると、本当に守備の特訓まで手が回っていなかった?

もうこうなると、いえ、チャビ監督など、「Él si no le disparan ni progresan está satisfecho/エル・シー・ノー・レ・ディスパラン・ニ・プログレサン・エスタ・サティスフェッチョ(シュートしなくても前進しなくても彼は満足だろう)。でも自分はチームがボールを持っていないと辛くなる」と言っていましたけどね。今の惨状では、相手に主導権を渡すのを厭わず、ガッツリ守って勝つというシメオネ監督のサッカーが根本から成り立たなくなるのでは?かといって、スアレスは何とかゴールを挙げて、古巣に恩返しできたものの、昨季並みの量産はとても期待できず、ジョアンもまた途中交代と実力開花の兆しが見えないようでは、ノーガードの撃ち合いをしても勝てませんからねえ。

それこそ金曜には好調エネス・ウナルの2ゴールもあって、レバンテに3-0と快勝。成長著しいヘタフェをこの目で見ているため、今週末のワンダ・メトロポリターノでの兄弟分ダービーが心配でたまらないんですが、バルサ戦の翌日にはヴァスの右ヒザのケガがかなり重傷で、全治6~8週間という最悪のニュースも。結果、そろそろ戻って来られそうなマルコス・ジョレンテが再び、右SBにされてしまいそうなのも戦力的に痛いですしね。来週水曜には延期されていた21節のレバンテ戦、土曜にもオサスナ戦、23日のCLマンチェスター・ユナイテッド戦1stレグと、2月後半は試合が詰まっているのも大変なんですが、今はとにかく、シメオネ監督が狂いまくりの守備の歯車をかみ合わせる方法を見つけてくれることを祈るばかりです。

そして日曜の夜はサンティアゴ・ベルナベウに向かった私だったんですが、グラナダ戦のスタメン発表直前になって、マドリーはカセミロとルーカス・バスケスが急性胃腸炎でベンチ外になるという逆境が。ええ、この日もまだベンゼマが治っていませんでしたし、ビニシウスも累積警告で出場停止とあって、前線の人選に興味が持たれたんですが、蓋を開けてみれば、普段は右サイドのポジションを争っているアセンシオとロドリゴの併用、そしてイスコがfalso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)という運びに。ただ、それが悪かったというより、実際,序盤にプエルタスのシュートをGKクルトワが脚で弾いた後はほとんど、マドリーが攻めていたんですけどね。

想定外だったのは、敵のGKマキシミリアーノにparadon(パラドン/スーパーセーブ)を連発されたことで、ええ、前半はアセンシオもイスコも弾かれてしまったため、0-0で折り返します。すると、やはり先日のアスレティック戦では選手交代が遅れ、終盤にベレンゲルに取られた1点を返せずに敗退と、延長戦頼みの姿勢が仇となったのをアンチェロッティ監督も反省したんでしょうか。後半頭からカマビンガをバルベルデに代えると、20分にはもうイスコとロドリゴを見限り、ヨビッチとアザールを投入。といっても29分に待望の先制点が入ったのは、後で監督も「hemos ganado con su mayor calidad, que es el disparo/エモス・ガナードー・コン・ス・マジョール・カリダッド、ケ・エス・エル・ディスパーロ(ウチは彼の最高の資質、シュートで勝った)」と言っていたように、アセンシオがエリア外から、見事な一発を決めてくれたからなんですけどね。

そう、後で当人も「Intento colocar bien el balón, que salga potente y si puede ser haga un extraño para que despiste al portero/インテントー・コロカル・ビエン・エル・バロン、ケ・サルガ・ポテンテ・イ・シー・プエデ・セル・アガ・ウン・エクストラーニョ・パラ・ケ・デスピステ・アル・ポルテーロ(いい位置にボールを置いて、強烈なシュートを撃とうとした。できれば、変な動きをして、GKを惑わすことができるようにね)」と話していたように、これにはマキシミリアーノも「蹴った時、ボールの軌道が読めなかった」とお手上げ状態だったんですよ。結局、この1点がモノを言って、1-0で勝ったマドリーだったんですが、彼らも今週はバルデベバス(バラハス空港の近く)でじっくり練習週。ビジャレアル戦までにはベンゼマ、メンディらも回復できそうな気がしますが、プレーするかどうかはやはり、来週のPSG戦との兼ね合いを見て決めるんでしょうね。

え、そのビジャレアルに0-2と日曜に負けているベティスと弟分ラージョは水曜午後午後9時から、40年ぶり2回目となる栄えあるコパ・デル・レイ準決勝1stレグをエスタディオ・バジェカスで戦うんじゃないかって?その通りで、いやまあ、彼らも土曜のセルタ戦では0-2の黒星だったんですけどね。要は別の大会ですから、あまり気にすることはないんですが、一応、クラブも先週の準々決勝マジョルカ戦の時、ブカネーロス(過激なファンのグループ)が30分過ぎまで入れなかったせいで、スタンドの雰囲気がねじれ、チームの応援が疎かになってしまうという轍を踏みたくはなかったんでしょう。今回はリーガのabonado(アボナード/年間指定席購入者)を無料で入れて、キックオフから敵にプレッシャーを懸ける作戦に出ていますが、うーん、多分、これ、ブカネロースもタダなのでは?

メンバーの方ではセルタ戦でケガをしたウナイ・ロペスが欠場、ここ数試合、負傷でいなかった左SBのフラン・ガルシアが復帰できるかは微妙なんですが、累積警告で出場停止と言われていたバリエンテとコメサニャは準決勝でイエローカードがチャラになるため、プレーすることができます。何せ、今季のリーガではベニト・ビジャマリンで3-2、1月のホームゲームでも1-1の引分けとまだベティスには勝っていないラージョですからね。おまけに相手はビジャレアルに負けるまで、アラベス、エスパニョール、そしてコパ準々決勝相手のレアル・ソシエダからも4得点と最近、ゴールを沢山入れているんですよ。

となると、今季からUEFAの大会同様、コパでも2試合制でのアウェイゴールルールはなくなったのもあり、1stレグでラージョが5-0とかのgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)でもしない限り、決勝の舞台に立つチームは3月3日の2ndレグで決まることになりそうですが、相手は司令塔のカナレスが家庭の事情で参加できないようですし、とにかく先勝するに越したことはないかと。ちなみにもう1つの準決勝は木曜日、アスレティックがまたサン・マメスにバレンシアを迎えることになりますが、ラージョ以外、皆、コパ優勝経験者というのはあまり気にしないようにしましょうね。


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