ミッドウィークから忙しくなるチームもあるけど…/原ゆみこのマドリッド

2022.02.02 19:00 Wed
「次の試合まで、5日も待たないといけないからなあ」そんな風に私が首を振っていたのは火曜日、マハダオンダ(マドリッド近郊)のアトレティコ練習場裏で公開セッション15分の後、覆い越しにグラウンドを伺っていた時のことでした。いやあ、身長が足りなくて、自分の目では確認できなかったものの、常連の番記者たちは軽く180cm越え。目隠しが2枚から1枚になる高い部分から中が見えるようで、「今日のフォーメーションは4-4-2、DFはヴァス、サビッチ、エルモーソ、ロディ。時々、左SBはレイニウドに交代している」と教えてくれたんですけどね。ラジオ・マルカ(スポーツ専門放送局)のお兄さんなど、その場でマイク片手にレポートしていたのにも驚かされましたが、コパ・デル・レイ16強対決でレアル・ソシエダに敗退したアトレティコは日曜のバルサ戦まで、ファンの前でプレーしないんですよ。

いえ、金曜から合流している右SB要員のヴァス(バレンシアから250万ユーロ/約3億3000万円で移籍)や先週土曜まで昨季のリーグ1王者リールのキャンプでサン・ペドロ・デ・ピナタル(スペイン南東部、地中海沿いの町)に滞在。週末はリスボンで待機していながら、冬の市場の閉じる1月31日の午後11時まで発表されなかったため、丁度、その月曜の夕方に開かれたマドリッド・プレス・スポーツ賞の表彰式にラ・リーガ王者アトレティコの代表として、トロフィーを受け取りに行ったコケなどには、「No sé si al final va a fichar o no, si es oficial/ノー・セ・シ・アル・フィナル・バ・ア・フィチャール・オ・ノー、シー・エス・オフィシアル(結局、獲るのかどうか、公式にはわからないんだよ)。本当のとこ、彼のことはよく知らないし」なんて言われていたレイニウド(350万ユーロ/約4億6000万円で移籍)の顔を見られたのは良かったんですけどね。

実際、W杯予選の中南米代表に招集されている選手たちも、チリ戦で累積警告となるイエローカードをもらったデ・パウル(アルゼンチン)以外、戻っていませんし、すでに本大会出場が決まっている彼の同僚コレアやクーニャ(ブラジル)らはともかく、ルイス・スアレス、ヒメネスのウルグアイ組にはまだ仕事が残っていますからね。ええ、木曜のパラグアイ戦にスアレスのゴールで0-1と勝ち、ようやく大陸間プレーオフに行ける5位まで上がったものの、後続とは僅差とあって、火曜のベネズエラ戦でも手が抜けないんですが、2人は代表の主力でもあるため、かなり酷使されて帰って来る可能性も。
要はいくら、シメオネ監督が精力的にGKオブラクからボールを出し、ダニ・アウベス、フェラン・トーレス(マンチェスター・シティから移籍)、アダマ・トラオレ(ウォルバーハンプトンからレンタル)だけでは飽き足らず、移籍最終日の24時まで粘って、オバメヤング(アーセナルとの契約を解消)まで獲得と、前線を十二分に補強したバルサに扮したカンテラーノ(アトレティコBの選手)たちが激しいプレスをかけてくる中、DFから攻撃を繋げていくプレーを指導していたとて、メンバーは変わるかもしれませんしね。この日は負傷のリハビリ中のマルコス・ジョレンテとコンドグビアも隣りのグラウンドでボールを使った基礎トレーニングを始めていたため、日曜にはもう復帰できるかもしれないとはいえ、はあ。

意外だったのは、シメオネ監督がparon(パロン/リーガの停止期間)直前のバレンシア戦でも前半2失点を招いたダメダメ守備改善の特訓ではなく、後半3点を挙げて、逆転勝利した攻撃力の強化に1時間以上も割いていたことで、これって、もしやバルサとの撃ち合いを選んだ?どうやら試合のない週は彼も時間があったのか、月曜夜には先月26日にアマゾンのプライム・ビデオで公開された、リーガ優勝した昨季のドキュメンタリー、「Simeone: vivir partido a partido/ Simeone. Living Match by Match」の番宣も兼ねて、El Hormiguero(エル・オルミゲーロ/スペイン民放のバラエティ番組)に出演。
そこでは「Yo digo que los entrenadores gestionamos emociones/ジョ・ディゴ・ケ・ロス・エントレナドーレス・ヘスティオナモス・エモシオネス(自分は、監督は感情をコントロールする者と言っている)。アトレティコやバルサ、レアル・マドリー、セビージャなど、ビッグクラブにいる選手は確実にいい選手でいいプレーをするが、感情を操るのは難しいんだ。そのため、締めつける日もあれば、15まで、20まで、100までも数えて我慢しないといけない日もある」と語っていましたが、まあねえ。

今季、すでに首位のお隣さんと勝ち点差14も離れ、リーガ連覇どころか、4位までのCL出場圏入りが目標になってしまった原因である、あれだけの守備ミスを前にして、シメオネ監督が毎回、口を酸っぱくして注意していなかった訳もなし。その効果もようよう見えないとなると、得意なことの方を伸ばそうという気になるのもわからなくないではありませんが、このバルサ戦が果たして今季の転機になってくれるんでしょうか。

ちないに先週末はリーガ1部の試合がなかったため、日曜にはブタルケで弟分レガネスとマドリッド南部の2部仲間、アルコルコンのダービーを見てきた私だったんですが、こちらは前半がどうにも不活発で双方共にスコアレス。ようやく後半20分、ランデロビッチのシュートがファン・カルロスの手にエリア内で当たり、ファン・ムニョスのPKでナフティ監督のチームが1-0の辛勝をしたんですが、いやあ、ずっと最下位で降格最短ルートを爆進しているアルコルコンには同情を禁じないんですけどね。レガネスも前節はブルゴスに4-0と叩きのめされたばかりだったに加え、ボランチでレギュラーを務めている柴崎岳選手も日本代表出向中というハンデがあっただけに、降格圏と勝ち点差5離れた17位に留まれたのはラッキーだったかと。

この冬の市場では2年半前にお隣さんのヘタフェに移籍したニヨムも古巣の応援に駆けつけ、1部の弟分ラージョからも今季は出番が減っていたものの、昨季の1部昇格に大きく貢献したカスミを融通してもらえましたからね。ここから弾みをつければ、勝ち点10上の昇格プレーオフ圏に届くかもしれないとチラと思ったりしたものですが、こればっかりはねえ。次節は日曜のテネリフェ戦と、中国、サウジアラビアとの2試合で出番のなかった柴崎選手がスペインに来て、初めて所属したチームとの対戦ですし、お隣さん仲間のフエンラブラダも降格圏の20位という不遇の今、来季もマドリッドに2部のチームを残すため、せめてレガネスには気合を入れて、シーズン後半に臨んでもらいたいところです。

え、それで柴崎選手同様、日本代表に招集されていた久保建英選手は水曜のコパ準々決勝ラージョ戦に間に合うのかって?うーん、これはルイス・ガルシア監督も「長旅の後だが、状態次第。Él me ha dicho que tiene muchas ganas y está preparado/エル・メ・ア・ディッチョー・ケ・ティエネ・ムーチャス・ガナス・イ・エスタ・プレパラードー(彼は私に意欲満々で準備はできていると言っていた)」と前日記者会見で話していたんですが、試合は午後8時(日本時間翌午前4時)にエスタディオ・バジェカスでキックオフ。久保選手もサウジアラビア戦には出場していないものの、バラハス空港に着いて、ホテルで少し休憩しただけでスタジアム入りとなると、結構、辛いものがありそうですが、その辺は20才の若さで何とかなる?

逆にエースの帰還がどうやっても間に合わないのがイラオラ監督のチームで、ええ、ファルカオにはヨーロッパの火曜深夜、アルゼンチンと大事な一戦がありましたからね。先週はペルーに0-1で負け、コロンビアがW杯出場圏外の6位に落ちてしまったせいもあり、今はラージョの健闘を頭の隅で祈るぐらいしかできないはずですが、実はこの弟分、現在8位と目標の1部残留達成まであと少しとなっているせいか、冬の市場ではもっぱら選手放出に専念していたんですよね。ええ、レガネスに行ったカスミに加え、サビン・メリーノ(2部のアモレビエタ)ら計5人も出ながら、補強は最終日にアラベスからFWシラを獲っただけなんですが、何はなくてもホームでは滅法強いのが今季の彼ら。マジョルカ相手にもリーガ前半戦ではファルカオを出さずに3-1と快勝しているため、割と強気で挑めるんじゃないでしょうか。

そして翌木曜午後9時30分(日本時間翌午前5時30分)にコパ準々決勝に挑むのがマドリーなんですが、こちらは今季4度目のアスレティック戦。ええ、12月にリーガの延期分と先取り分の2試合、1月にもサウジアラビアで行われたスペイン・スーパーカップ決勝で顔を合わせ、その全てに勝利しているんですが、月曜に再開されたバルデベバス(バラハス空港の近く)での練習で問題が発生することに。というのもメンディが太ももをケガしてしまい、この試合だけでなく、2週間後のCL16強対決PSG戦1stレグも危うくなってしまったんですが、特に今回、ダブルで痛いのはコパ16強対決エルチェ戦で退場となったマルセロに3試合の出場停止処分が科されているから。

もちろん、アンチェロッティ監督にはマルチDFのナチョやアラバ、カンテラーノ(RMカスティージャの選手)のミゲール・グティエレスといった左SBの選択肢は幾つかあるんですが、こうも対戦が続くと、向こうもマドリーの弱点を発見して、何度目かの正直になるかもしれませんからね。会場もサン・マメスですし、大体がして、リーガ中断直前のエルチェ戦でケガをしたベンゼマが、まあそれこそ、PSG戦が迫っているせいもありますが、火曜になってもチーム練習に合流せず。ビルバオ(スペイン北部、アスレティックのホームタウン)遠征には帯同しないかもしれないとなれば、不安も増しますって。

何せ、スペイン・スーパーカップ中に負傷したアセンシオ、彼の地でコロナに感染したカルバハルこそ、復帰できるとはいえ、こちらも南米代表参加組が複数いますからね。ミリトンだけはエクアドル戦で累積警告となったため、早帰りを許されて、月曜からマドリーの練習に出ているとはいえ、残りのブラジル勢、ビニシウス、カセミロ、ロドリゴは火曜のパラグアイ戦が終わってすぐ、プライベートジェットで帰還。そこにお隣さんのクーニャも乗せてもらえるのかは知りませんが、到着は水曜午後4時頃とのことで、午後6時からのセッションをこなして、翌朝はビルバオに移動と、かなりの強行軍になるのは間違いないかと。

ウルグアイ代表のバルベルデもベネズエラ戦の後、こちらはラ・リーガが手配したチャーター便らしいので、おそらくスアレス、ヒメネス、そしてヘタフェのレギュラー3人組、ダミアン、アランバリ、オリベイラも一緒に水曜に到着ということになりますが、え?それなら、金曜にリーガのレバンテ戦が組まれているキケ・サンチェス・フローレス監督も助かったんじゃないかって?いやあ、そうでもなくて、だったら何で中2日、3日空く土日開催にしてくれないんだという文句は出ていたんですが、一応、ベネズエラ戦で先発となったのはオリベイラだけですからね。

一応、この冬の市場ではマドリッド勢最多のボルハ・マジョラル、ゴンサロ・ビジャル(ローマからレンタル)、オスカル(同セビージャ)、オカイ(セルタから移籍)、ガストン・アルバレス(同ボストン・リバー)と5人も補強しているヘタフェですし、他の選手たちは2週間近く、じっくり練習だけに専念できたとなれば、大丈夫なんじゃないかと思いますが、さて。最近はまだ16位でも降格圏との差は勝ち点4と広がっていますし、この試合ではコリセウム・アルフォンソ・ペレスのファンの声援も期待できるため、相手を最下位チームと侮らなければ、また一歩、前進できるんじゃないでしょうか。

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