他が好調なだけに尚更、不憫に思える…/原ゆみこのマドリッド

2022.01.22 22:30 Sat
©Atlético de Madrid
「これならもう、どうやって見るかの心配はしなくていいわね」そんな風に私が頷いていたのは金曜日、コパ・デル・レイ準々決勝の組み合わせが決まった時のことでした。いやあ、今季も昨季同様、コパのTV中継はメディアセットによるオープンチャンネル放送が毎ラウンド2試合、残りはDAZNによるインターネット配信だったんですけどね。先週の土曜、マドリッドの弟分ラージョの16強対決ミランデス(2部)戦が見たいと思い、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)を訪れたところ、後者はバルのTVで見られないことが判明して、ショックを受けることに。

よくよく考えてみると、昨季はアトレティコとヘタフェが2回戦で敗退、レアル・マドリーも32強対決で敗退。ラージョこそ、16強対決まで進んだものの、当時、2部だった彼らはバルサをホームに迎え、0-2で負けるのを私もスタジアムで見れたため、特に観戦方法に困ることもなく、家のTVで映る試合だけを何となく流していたんですけどね。この水曜のレアル・ソシエダvsアトレティコ戦だけは仕方なく、DAZNを1カ月だけ契約して見ることにしたんですが、何なんですかね。その試合は無事、観戦できたものの、自分のアカウントが日本のDAZNに登録されていたせいで、翌日のエルチェvsマドリー戦前にログインができず。
DAZNスペインに文句を言って、何とか、9.99ユーロ(約1300円)の視聴料は返してもらえたため、別にいいんですが、新たにアカウントを作らないと利用できないと言われ、面倒臭がっている間に木曜日が終わってしまうことに。翌日には準々決勝の抽選があり、アスレティックvsマドリーはオープン放送、ラージョはマジョルカとのホームゲーム、準決勝、決勝はもう全部、普通に家のTVで見られるとなれば、わざわざお金を払う必要もないんですが、果たしてマドリッド勢がそこまで生き残ることができるのかどうか。

というのも準々決勝の日付が丁度、中南米で開催されるW杯予選2試合とかぶっていて、いえ、エスタディオ・バジェカスで今季、圧倒的な強さを誇る弟分の方は2月2日のマジョルカ戦、コロンビア代表のファルカオが欠けるぐらいで済むんですけどね。3日にプレーするマドリーなど、ビニシウス、ロドリゴ、カセミロ、ミリトン(ブラジル)、バルベルデ(ウルグアイ)を戻って来られず、基本的にバスク地方出身選手からなるアスレティックは全然、影響を受けないって、ちょっと不公平ではない?

もちろん、先日はサウジアラビアでのスペイン・スーパーカップ決勝でも0-2で彼らを下したスーパー王者は12月のリーガ戦でも2勝と、アスレティックをお得意様にしている感もなくはないんですけどね。ただ、相手は木曜の16強対決で雨の中、サン・マメスのサポーターの応援を得て、これまで何度もコパ決勝で痛い目に遭わされてきたバルサを3-2で撃破。それも後半41分にイニゴ・マルティネスのゴールで一旦は勝利を掴みながら、ロスタイムにペドリに決められて、まさかの延長戦へ。最後はムニアインのPKゴールでとうとう、リベンジを果たしたとなれば、準々決勝もビルバオ(スペイン北部、アスレティックのホームタウン)での開催ですし、マドリーも決して油断はできないかと。
まあ、その辺はまた、準々決勝が近づいたら話すことにして、今週ミッドウィークの試合がどうだったか、お伝えしていくことにすると。いやあ、先にコパ16強対決をプレーしたのはアトレティコだったんですが、これがレアル・アレナにチームバスが着く前から大騒ぎでねえ。周辺に集結したレアル・ソシエダの過激なサポーターたちが石などを投げつけてきたため、バックミラーや窓が割られ、シメオネ監督など、席を立って猛抗議。選手たちもかなり怖かったんじゃないかと思いますが、だからって、あんな情けない試合をされても困っちゃいますよ。

そう、スペイン・スーパーカップ準決勝アスレティック戦で退場したヒメネス、リハビリ終了間際のサビッチを欠いた守備陣がまたしてもすかすかで、いえ、エルストンド、ヤヌザイ、オジャルサバルらの序盤のシュートは枠を外れてくれたため、難を逃れることができたんですけどね。この日もルイス・スアレスをベンチに置いて、ジョアン・フェリックスとコレアでスタートした攻撃陣も前半15分、カラスコがゴール右前からシュートを撃ったものの、ポストに当たってしまい、先制点はならず。そうこうするうち、33分にはサルドゥアが右サイドから上げたクロスをヤヌザイにヘッドで決められ、それもフェリペ、ベルサイコ、コレアが当人を囲んでいながら、クリアできなかったとなれば、もう手の施しようがない?

1-0とリードされて始まった後半は心を入れ替えてくれるかと期待したものの、2分もしないうち、今度はフェリペが自陣エリア前でオジャルサバルにボールを奪われている始末。パスを受けたセルロートのシュートで2点目を奪われた瞬間には正直、辛抱強いGKオブラクもこの冬の市場で移籍希望を出すんじゃないかという恐れが頭をよぎったぐらいでしたけどね。とはいえ、責任は反撃のため、10分にコレア、コケ、ロディに代わって入ったスアレス、クーニャ、レマルにもあって、とにかく点が取れないんですから、救えませんって。

この時点でベンチに残っていたのは控えGKルコント以外、カンテラーノ(アトレティコB)のヘルプ組5人だけとなり、最後に投入されたカルロス・マルティンとセラーノは一生懸命プレーしていたんですが、やはりRFEF3部(実質5部)の選手に奇跡は望めず。そのまま2-0で負け、スペイン・スーパーカップに続き、今季2つ目のタイトル獲得のチャンスをフイにしてしまうことに。うーん、それでもシメオネ監督は「Las oportunidades están, tenemos la Liga y la Champions/ラス・オポルトゥニダーデス・エスタン、テネモス・ラ・リーガ・イ・ラ・チャンピオンズ(チャンスはある。ウチにはまだリーガとCLがあるんだから)」と言っていましたけどね。

現在、首位と勝ち点差16のリーガはCL出場権のもらえる4位で終われれば恩の字と言ったところですし、CLだって、16強対決の相手は天下のマンチェスター・ユナイテッド。あまり楽しいシーズン残りが待っている気はしませんが、まずは土曜午後9時(日本時間翌午前5時)、ワンダ・メトロポリターノでプレーするリーガのバレンシア戦で彼らがやる気を見せることが大事かと。ええ、今季はどんなにスタンドのファンが応援で盛り上げようと、なかなか勝てないアトレティコだけに、いくらシメオネ監督から、「Pido a la gente que esté con el equipo/ピド・ア・ラ・ヘンテ・ケ・エステ・コン・エル・エキポ(人々にはチームと共にいてくれることを頼む)」と言われても、それこそ選手たちの行動が伴ってくれないことにはねえ。

一応、この試合ではヒメネス、そしてとうとうサビッチも復帰となりますが、グリーズマン、マルコス・ジョレンテ、コンドグビアはまだリハビリ中。相手のバレンシアも同じ水曜にはリーガ戦でセビージャと1-1で引分け、現在9位と一向に目標のヨーロッパの大会出場圏に届かないばかりか、ヴァスはまさにアトレテォコから、トリッピアー(ニューキャッスルに移籍)の後継としてのオファーを受け、クラブと交渉中だったり、体重1キロオーバーでベンチ外にされたマキシ・ゴメスも移籍希望だったりと、イロイロあるようですけどね。アトレティコ・バレアレス(RFEF1部/実質3部)とのコパ16強対決を突破した彼らには、まだベティスとの準々決勝があるのは羨ましい限りです。

そして木曜はコリセウム・アルフォンソ・ペレスにグラナダを迎えるヘタフェのリーガ戦を見に行った私でしたが、まさか知らないうちに弟分がこんなにも眩しく成長していたとは!そう、前半9分にサンドロのゴールで奪った先制点は12分、古巣への帰還となったホルヘ・モリーナから、コロンビア人FWのルイス・スアレスにラストパスを送られて、イーブンにされてしまったんですが、後半のヘタフェは流れるようなプレーで相手を圧倒。再開早々の2分にはウナルが2度撃ちして勝ち越し点を奪うと、17分には何と、GKマキシミリアーノがオリベイラのシュートを弾いたところ、フリーだったマクシモビッシの前へ。とりわけミチェル監督下で白星が1つもなかったシーズン当初、何度シュートしても決まらなかったMFに今季初得点が生まれたとなれば、こんなに嬉しいことはない?

ただ、33分にはGKダビド・ソリアがゴールキックをスアレスに当て、1点を返されてしまったヘタフェだったんですけどね。でも、大丈夫、選手登録の間に合ったボルハ・マジョラル(ローマからレンタル移籍)がデビューするなり、4点目を挙げてくれたとなれば、たとえ、日曜のレアル・ソシエダ戦でサンドロとウナルが出場停止でも、ゴールが不足することはないかと。そのまま4-2で勝利した彼らは16位に上昇、降格圏とも勝ち点4差と余裕ができたんですが、それにつけても適確な補強ができているのは、どこぞの兄貴分チームにも見習ってもらいたいところ。もちろん、それはヘタフェと同時刻、マルティネス・バレロでコパ16強対決のエルチェ戦をプレーしていたマドリーではなくって…。

いえ、ハラハラはさせられたんですよ。というのもコリセウムのスタンドでオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の2元中継を聞きながら、いつgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)の報が始まるかと身構えていた私ですが、驚いたことに目の前の試合が終わり、ホルヘ・モリーナがヘタフェファンに拍手で送られてピッチを去った後にも得点知らせは届かず。0-0のまま延長戦に入り、プレスルームで監督記者会見を待っている間、「Gooool!」の絶叫でこれはと思いきや、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設のグラウンドでやっていた女子スペイン・スーパーカップ準決勝レバンテ戦でアトレティコが挙げたゴールだったりと、このままではPK戦入りも覚悟しないといけなかったんですが、まさか延長戦前半12分、マルセロがモレンテへのファールでレッド退場させられてしまうとは!

おまけにそのFKでベルドゥが蹴ったボールがマドリーの壁で跳ね返り、再度、彼がシュートしたところ、セバージョスに当たって、GKルニンを破ってしまったから、さあ大変!うーん、この日はベンゼマがお留守番、先発したヨビッチも後半34分にはイスコに代わり、CFなしで戦っていた彼らでしたからね。おまけに1人少ないのではとても追いつけるようには思えませんでしたが、その絶対的不利状態がマドリーのDNAに刻み込まれた、根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)を発動させることになるんですから、ビックリしたの何のって。

ええ、延長戦ハーフタイムが終わって後半3分、せっかく最後の切り札として、アザールと共にピッチに入りながら、敵の得点に協力してしまったセバージョスが放ったシュートをエリア内でイスコがtaconazo(タコナソ/ヒールキック)。これが同点ゴールとなったばかりでなく、10分には飛び出してきた敵GKをかわし、アザールが勝ち越し点を挙げてくれたんですよ。これには試合前、「el entrenador, que soy yo, tiene que elegir a los mejores para cada partido/エル・エントレナドール、ケ・ソイ・ジョ、ティエネ・ケ・エレヒル・ア・ロス・メホーレス・パラ・カーダ・パルティードー(監督は、それは私だが、毎試合、一番いい選手たちを選ばないといけない)」と、このところアザールに出番がないのは、いかにも彼の力が劣るからと言わんばかりだったアンチェロッティ監督も考えを改めることになったよう。

1-2でエルチェに逆転勝利、準々決勝の切符を手に入れた後には、「イスコとアザールで試合に勝ったのには意味がある。Puede que debieran jugar más/プエデ・ケ・デビエラン・フガール・マス(もっとプレーさせるべきだったのかもしれない)」と反省していましたが、それではようやく背筋痛が癒えて、ベンチに入りながら、出番のなかったベイルの立場がない?何にしろ、この日曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からのリーガ、今度はサンティアゴ・ベルナベウでエルチェとまみえる試合ではベンゼマも戻りますし、コパを体調不良で欠場したGKクルトワも治りましたからね。

延長戦の疲労も、せっかく虎の子の1点を奪いながら、体力的限界もあって、残り時間、ボールをキープできなかったエルチェの方が高そうですし、このミッドウィークに同じ試合数となって、勝ち点4差に詰めてきた2位セビージャとの距離を更に縮められることはなさそうですが、さて。気になるのは残り3分まで延長戦をプレーしたビニシウスの回復具合ぐらいとなりますが、コパの方では退場したマルセロに3試合の出場停止処分という悪いニュースも。いえまあ、リーガの左SBはメンディが務めますし、この週末の後、リーガはヨーロッパ各国の代表戦はないものの、南米勢に配慮してのparon(パロン/停止期間)入り。

同じ日曜、スペイン・スーパーカップ、コパと連戦続きでヘトヘトのアスレティックをホームに迎えるラージョも含め、来週末、1部のチームには試合がないため、大半の選手たちが2月のコパ準々決勝までゆっくりできるのはこの過密日程すぎるシーズン、とても有難いんじゃないでしょうか。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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