スーパーダービーはなかった…/原ゆみこのマドリッド

2022.01.15 22:00 Sat
「同じ敗退組なのにこうも明暗が分かれるとは」そんな風に私が愕然としていたのは金曜日、午前中にバラハス空港から、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に着いたアトレティコの選手たちの映像をお昼のニュースで見た時のことでした。いえ、マドリッドでは明け方に気温が急激に下がったせいで、選手たちが屋外駐車場止めておいた車のフロントガラスが霜で真っ白に。各自、自分の手でコシコシ払ってからでないと、運転できなかったなんていうのは別にいいんですけどね。

何というか、1日早く、水曜のスペイン・スーパーカップ準決勝で宿命のライバルに負けたバルサについては、17才のガビを筆頭に、67日ぶりの出場でゴールを挙げた19才のアンス・ファティ、負傷とコロナ感染の逆境ダブルから回復した19才のペドリ、尚且つ、チーム練習を1回もせずに先発デビューした21才のフェラン・トーレス(マンチェスター・シティから移籍)、先週金曜に手の手術をしたばかりながら、保護カバーをして120分の激闘を戦い抜いた22才のアラウホと、何人もの若手がこのスーパーカップ・クラシコ(伝統の一戦、レアル・マドリー戦のこと)で善戦。おかげで世間から、チャビ監督のチームの未来は明るい的な評価をされることに。
実際のところ、リーガでは首位のマドリーと勝ち点差17でCL出場圏外の6位、サウジアラビアから帰国後の初戦、来週木曜のコパ・デル・レイ16強対決の相手も昨季のスペイン・スーパーカップ決勝でトロフィーをさらわれたアスレティックですし、2月にあるEL16強対決のプレーオフではナポリと対戦。そうそう楽観的になれるとも思えないんですけどね。ええ、同じティーンエイジャーで、もう1つの準決勝でアスレティックに勝利をもたらしたニコ・ウィリアムスが、マルセリーノ監督に「Tiene 19 años y no hay que añadirle presión. Vamos a ir paso a paso/ティエネ・ディエシヌエベ・アーニョス・イ・ノー・アイ・ケ・アニャディルレ・プレシオン。バモス・ア・イル・ア・パソ・ア・パソ(19才だから、プレッシャーを増やしちゃいけない。一歩一歩、やっていくつもりだ)」と気遣われているのを見れば、何をか言わんやですって。

世が世なら、天下のバルサの屋台骨を若い子ばかりに背負わせる訳にもいかないはずですが、何せ、アトレティコなど、移籍金1憶2700万ユーロ(約170億円)で3年前に獲得した若手ギャラクティコ、22才のジョアン・フェリックスがまたしても期待に応えられませんでしたからね。今季もう、何度繰り返したかわからないチーム全員のミスも一向に直らないとあって、昨年12月の4連敗の後、年明けの2連勝で一時、収まっていたシメオネ監督批判も再燃してきたんですが、はあ。こちらもお隣さんとは勝ち点差16のリーガ4位、来週水曜のコパ16強対決は去年4月、アスレティックを破って、2019-20シーズンのコパ王者となったレアル・ソシエダとですし、CL16強対決の相手もマンチェスター・ユナイテッドとあって、何だかお先真っ暗な気がしてきたんですが…いや、今は嘆いてないで、スペイン・スーパーカップ準決勝の2試合がどうだったか、お伝えしていかないと。

まずは水曜、リヤドのキング・ファハドスタジアムで昨季リーガ2位のマドリーとコパ優勝のバルサが激突、今季2度目のクラシコとなったんですが、先手を取ったのはアンチェロッティ監督のチームの方。ええ、相手が「Hemos jugado con muchos complejos durante 20 o 25 minutos/エモス・フガードー・コン・ムーチョ・コンプレホス・ドゥランテ・ベインテ・オ・ベインテシンコ・ミヌートス(ウチは20か25分間ぐらい、コンプレックスを沢山抱えてプレーしていた)」(チャビ監督)という前半25分には、センターでベンゼマがブスケツからボールを奪い、最後はフラメンゴから移籍して4年目、21才の今季、いよいよ開花したビニシウスがアラウホを振り切ってシュート。これが見事に先制点となったため、やはり戦前の予想通り、リーガでの差が如実に反映する展開になるのかと思いきや…。
まあ、確かに41分、デンベレのシュートをゴール前でミリトンがクリアしようとして、ルーク・デ・ヨングにボールが当たり、同点ゴールになってしまったのは運が悪かったんですけどね。バルサがフランキー・デ・ヨングと10月のネーションズリーグ・ファイナルフォーのスペイン代表で負傷して以来、プレーしていなかったフェランをペドリとアブデ(20才)に代えた後半27分には再びマドリーが得点。これも一旦はベンゼマが弾かれて、カルバハルが撃ち直したボールもGKテア・シュテーゲンの足で逸らされてしまったものの、そのボールがベンゼマの前に。もちろん、リーガピチチ(得点王)がこんなチャンスを逃す訳はなく、またしてもマドリーがリードを奪ったとなれば、もう勝負はあった?

でもそうは問屋が卸さなかったんですよ。というのもやはり、年少の選手の中でも2020年からスペイン!代表に招集され、メッシ(現PSG)の背番号10を受け継いだアンス・ファティは才能が飛び抜けているんでしょうかね。負傷を繰り返している今季は8試合しか出場していないにも関わらず、4ゴールを挙げているんですが、この日も後半21分にピッチに入ると、38分にはジョルディ・アルバのクロスをヘッド。易々とGKクルトワを破ってしまったから、ビックリしたの何のって。これでスコアは2-2となり、試合は延長戦に入ることに。

でも大丈夫。この日も途中から、「Apretar arriba nos cuesta más/アプレタル・アリバ・ノス・クエスタ・マス(ウチは高い位置でプレスをかけるのに苦労する)」(アンチェロッティ監督)という理由により、自陣で敵を待ち受ける戦法に切り替えたマドリーの必殺カウンターが、延長戦前半8分にとうとう爆発したんですよ。いやもう、モウリーニョ監督下のBBC(ベンゼマ、ベイル、クリスチアーノ・ロナウドの頭文字)時代から、足の速い選手が多いチームは羨ましいと思っていたんですが、この時も5人程、ドドッと白のユニフォームがバルサのゴールに突進する中、敵はたったの3人。右からロドリゴが送ったラストパスを後ろにベンゼマの気配を感じ取ったビニシウスはスルーしたんですが、まさかモドリッチと交代で入っていた、やはり健脚のバルベルデが先んじてシュートしてしまうとは!

この3点目のゴールで、いえ、2-3で負けたチャビ監督は試合後も「Hemos dominado al Madrid, que se ha metido atrás/エモス・ドミナードー・アル・マドリッド・ケ・セ・ア・メティードー・アトラス(ウチがマドリーを支配していたから、彼らは自陣に引きこもっていた)」と言っていましたけどね。アンチェロッティ監督は「Partido igualado/パルティードー・イグアラードー(拮抗した試合)」と反論。「El bloque bajo no es muy estético/エル・ブロケ・バホ・ノー・エス・ムイ・エスティコ(低い位置でプレーするのはあまり美的ではない)が、ウチの前線にある質の高さを楽しまないのはもったいなさすぎる」そうですが、まあ昔から、世界最高のクラブと自称する彼らがボールポゼッションを捨てて、カウンター戦法を取ると、あれこれ世間がうるさいですからね。

その辺はアンチェロッティ監督も気が引けているのかもしれませんが、合わせて38得点14アシストという、ベンゼマとビニシウスのコンビの豊作を見れば、誰も文句はつけられないかと。そこで翌木曜は、スペイン・スーパーカップ決勝ではスーパークラシコに続いて、スーパーダービーを見ることになるのかと、私も気を引き締めて、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に連日出勤したんですが、とんでもない。前日はコロナ感染予防のため、キャパ50%までの観客制限ギリギリの4万人を集めたスタジアムに6000人しか入らなかったのにもめげず、キックオフ直後、アトレティコはレマルからパスを受けたジョアンがアスレティックのエリアに切り込んでシュート。電光石火の先制点と喜んだのも束の間、あっさりオフサイドでノーゴールとなった時から、今になって思えば、ケチがついていたんでしょうか。

そこから15分程は攻めていたアトレティコもいつしか尻つぼみとなり、0-0のままだった後半開始時には臀部の負傷を三度、再発させたマルコス・ジョレンテがロディに交代。更に5分にはコンドグビアもどこかを痛め、デ・パウルに代わることになり、こうなるとスコアレスでの延長戦も覚悟しないといけないと、私も2杯目のカーニャ(グラスビール)をいつ頼むか、思案していたんですけどね。それでも17分にはレマルの蹴ったCKをジョアンがヘッド、ゴールポストに弾かれたボールがGKウナイ・シモンの背中に当たってオウンゴールになってくれたため、ちょっとは気が楽になったんですが、何せ今季のアトレティコはよく逆転されていましたからねえ。とても1点だけでは心もとないというのに、まさか、お家芸の「リードしたら一歩後退」をこの日も忠実に実行してくれるとは!

案の定、アスレティックの猛反撃に遭い、うーん、FKからのイニゴ・マルティネスのヘッドやウィリアムス兄の一撃はGKオブラクが必死にセーブしてくれたんですけどね。32分には苦手中の苦手、CKの守備がお約束のように破綻。ええ、ムニアインの上げたボールに合わせたジェライに潰されるばかりだったコケにそのヘッドを阻むことはできず、同点ゴールを決められてしまったから、さあ大変。おまけにその4分後にも再びCKを与え、今度はイニゴ・マルティネスのヘッドこそ、ダニ・ガルシアに当たって逸れたものの、エリア内に転がったボールをウィリアムス弟にフリーで撃ち込まれているって、もう一体、どうしたらいいのやら。

その後はジョアン、ルイス・スアレス、クーニャのFW3人で同点を目指したアトレティコですが、ゴールは生まれず、それどころか、ロスタイムにはヒメネスが空中キックでイニゴ・マルティネスの頭を直撃して、レッドカードで退場する始末。いやあ、1-2で敗退が決まった後、シメオネ監督も「El equipo no tiene fortaleza defensiva en el juego aéreo/エル・エキポ・ノー・ティエネ・フォルタレサ・デフェンシバ・エン・エル・フエゴ・アエレオ(チームは空中戦での守備力がない)」と認めていましたけどね。もうシーズンも半ば過ぎているというのに今更、「Hay que trabajar la concentración/アイ・ケ・トラバハール・ラ・コンセントラシオン(集中力を鍛えないといけない)」(コケ)なんていう言葉を聞くと、やっぱり彼らは全然、学んでいない?

いや実際、「Es fácil entrenarlo cuando no hay gente, el problema es cuando hay rival/エス・ファシル・エントレナールロ・クアンドー・ノー・アイ・ヘンテ、エル・プロブレマ・エス・クアンドー・アイ・リバル(人がいない時に練習するのは簡単だが、問題は敵がいる時)」とシメオネ監督も嘆いていたんですけどね。チームのリードを守ろうと孤軍奮闘したオブラクなど、もっと踏み込んで、「ゴールを入れた後、ウチは後ろに下がって待つけど、si esperamos a lo que va a pasar es que ocurren cosas como las de hoy/シー・エスペラモス・ア・ロ・ケ・バ・ア・パサール・エス・ケ・オクレン・コーサス・コモ・ラス・デ・オイ(何が起きるか待っていると、今日みたいなことが起きる)」と苦言を呈していましたが、とにかく彼らには暇になるこの週末に今一度、猛省を促したいところです。

一方、ロッカールームで決勝進出をまたしてもビジャリブレのトランペット伴奏で祝ったアスレティックはスペイン・スーパーカップ2連覇のチャンスをゲットしたんですが、奇しくも彼らは12月中にリーガで2回、マドリーと対戦。マルセリーノ監督も「jugamos como nunca y perdimos como siempre/フガモス・コモ・ヌンカ・イ・ペルディモス・コモ・シエンプレ(今までないぐらいにいいプレーをしたが、いつものように負けてしまった)」と話していた通り、サンティアゴ・ベルナベウではベンゼマのゴールで1-0。年内最終戦だったサン・マメスでも7分までにベンゼマに2点を決められ、サンセットが1点返しただけで、1-2で涙を飲んでいるんですよ。

それも後者の日など、マドリーが大量5人もコロナ感染で選手がいなかったとなると、いくら延長戦だったとはいえ、休みが1日多い相手が有利なのは変わらないかと思いますが、金曜になって、カルバハルが検査で陽性になったのはちょっと注意が必要かと。ええ、月曜にリヤド入りした彼らは練習と試合以外、外出していないため、それでもうつったとなれば、チーム内クラスターである可能性もなきにしろあらず。加えて、バルサ戦をふくらはぎ痛で欠場したアラバも回復が難しいとなれば、今年もアスレティックが波乱を起こすかもしれません。

そして最後にマドリッドの弟分チームの予定も見ておくと、この週末は土曜にラージョがコパ16強対決ジローナ戦に挑むことに。しかも会場は昨季の昇格プレーオフ決勝2ndレグでまさにこの相手を下し、1部復帰を決めたモンテリビ。向こうの指揮官がこれまた、ラージョのレジェンドであるミチェル監督となれば、結構、見応えのある試合になりそうな。対照的に2回戦でコパ敗退しているヘタフェは来週木曜のリーガ21節グラナダ戦まで、ゆっくりしていられるんですが、この金曜には残留達成に大きく力を貸してくれそうな選手が2人、ローマからレンタル移籍で到着。マドリー出身のFWボルハ・マジョラルとエルチェ出身のMFゴンサロ・ビジャルなんですが、ネックはチェマがエイバル(2部)に行った後もまだ1つ登録選手枠が足らず、早く空きを作らないといけないことでしょうか。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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「火曜はもっと景気いい試合になるといいけど」そんな風に私が願っていたのは土曜日、お昼のサンティアゴ・ベルナベウでコラソン・クラシックマッチを見た後のことでした。いやあ、レアル・マドリーのOB選手がプレーする、このチャリティマッチが開かれるのも5年ぶり。2020年3月開催予定だったポルト戦がコロナ禍で中止となって以来、スタジアムの全面改装工事が佳境に入り、ずっとやっていなかったんですけどね。チケットも7ユーロ(約1200円)からと格安だったため、新しくなったベルナベウで、かつてのスター選手たちを見る絶好の機会と、観客7万人の大入りとなったんですが、まさかマドリーのゴールを1つも祝えないとは一体、誰が予想した? そう、前半9分には、マドリーからポルトに移り、心臓発作で一命を取り留めた後の2020年に引退。ようやくこのオマージュ試合を迎えることができたGKカシージャスがポルトOBのマレク・チェフに先制点を奪われ、その1点を最後まで返せなかったんですよ。0-1で負けて、過去10回あったコラソン・クラシックマッチ初のマドリー敗戦、しかも初の無得点試合となったのも意外でしたが、39分で交代し、後半27分から、今度はポルトのGKとして出場。そこへまだまだ、現役時代と相違ない体躯をしたバプチスタが狙ってきたりしたため、最悪、カシージャスが1人で2失点するよりは全然、良かった? ラウール、モリエンテス、ジダン、フィーゴ、ロベルト・カルロス、ソラリ、シードルフと往年のギャラクティコメンバーをスタメンに並べ、他にもアルベロア、グラネロ、パボン、最後は現クラブ渉外担当ディレクターのブトラゲーニョ氏までピッチに入って、お家芸の根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)を試みたマドリーでしたけどね。一番気の毒だったのはラウールで、30分までプレーした後、午後6時には指揮官を務めるRMカスティージャの試合があるため、エスタディオ・ディ・ステファノに直行。そちらでもカステジョンに0-2で負けるという、ダブルショックを受けることになりましたが、何はともあれ、懐かしい顔が見られて、ファンが喜んでいたのは良かったんじゃないでしょうか。 そしてこの各国代表戦週間、ベルナベウは火曜午後9時30分(日本時間翌午前5時30分)にも親善試合を迎えるんですが、それがスペインvsブラジルという、とりわけマドリディスタにとっては屈指のカードなんですよ。というのもミリトンこそ、先週のバルデベバス(バラハス空港の近く)での練習中に反対側のヒザの半月板を損傷し、paron(リーガの停止期間)後に復帰の予定が今季絶望に変わってしまったGKクルトワのような不幸がない限り、夏に負ったヒザの靭帯断裂からのリハビリ終了秒読み段階にいるため、ブラジル代表には参加していませんが、ビニシウスとロドリゴは土曜にあったウェンブリーでのイングランドとの親善試合に先発。 同僚のベリンガムと競い合ったばかりか、後半35分にはビニシウスのシュートがGKピックフォード(エバートン)に弾かれたところを押し込み、代表初ゴールをゲット。0-1の勝利をブラジルにもたらしたエンドリッキ(パルメイラス)もやって来ますからね。そう、彼は来季のマドリー入団が決まっている17才のFWで、当人もファンもベルナベウデビューを楽しみにしているんですが、果たして昨年12月にアンチェロッティ監督がマドリーとの契約を2026年まで延長し、完全にブラジル代表監督就任のオプションがなくなった後、拝命を受けたドリバウ・ジュニオール新監督のプランは如何に。 ただ、それを迎え撃つマドリー勢がカルハバルとホセルの2人だけというのは、昨今のスペイン代表におけるリーガの巨頭のプレゼンスの低下をまざまざと示しているんですが、ええ、ご存知の通り、ブライムは父方の祖父の故郷であるモロッコ代表を選び、金曜には1-0と勝ったアンゴラとの親善試合でデビューしちゃいましたからね。ナチョ、ルーカス・バスケス、フラン・ガルシアらにもユーロに行くチャンスはあるとはいえ、その前最後の3月の招集リストにデ・ラ・フエンテ監督は名前を加えなかったため、かなり難しいというのが現実。 となるとマドリー選手をヨーロッパ各国の代表戦で楽しむのはむしろ、土曜に同僚リュディガーの説得もあって、とうとう3年ぶりに復帰したクロースのアシストで開始7秒にビルツ(レバ-クーゼン)が先制点を挙げたドイツ、その対戦相手で最後は0-2で負けてしまったとはいえ、来季入団の可能性の高いエムバペ(PSG)に加え、チュアメニとカマビンガがプレーしたフランス。38才ながら、モドリッチが未だにチームを牽引しているクロアチア、マドリーではあまりプレーを見る機会のないギュレルのいるトルコ辺りの試合になるかと。そうそう、火曜には今季最後までマドリーの正GKを務めるルーニンがユーロ出場権を懸けて、アイスランドと対戦するウクライナのプレーオフ決勝もありましたっけ。 え、それで肝心のスペインの調子はどうなんだって?いやあ、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設での合宿が始まって3日目、水曜にはルビアレス前会長時代、スペイン・スーパーカップの開催地を6年間、サウジアラビアにする契約やコパ・デル・レイ決勝スタジアムを4年間、カルトゥーハにするというアンダルシア州との契約に汚職や横領、マネーロンダリングの疑いがあるとして、協会本部に捜査当局のガサ入れが入るという、異常事態があったにも関わらず、同じ敷地内で普通に練習を続けていたチームは木曜にロンドンに移動。 翌金曜にコロンビアとロンドン・スタジアムで親善試合となったんですが、これがまったく期待外れだったんですよ。いえ、試合前、協会のXで初出のユーロ用第2ユニがロッカールームに吊るされているビデオを見た時は、ネックの後ろについている赤いカーネーションを含め、レモンイエローの色調があまりに可愛くて、明日にでも実物を見にショップに寄ろうと思ってしまったぐらいだったんですけどね。それがいざ、選手たちが着てピッチに出て来てみれば、脇から裾にかけて入っているグレーの部分とパンツまで続く赤いラインのせいで、亜流のウルトラマンみたいに見えてしまったのは残念だったかと。 そんなことはともかく、この日はデ・ラ・フエンテ監督もユーロ前に選手を試すいいチャンスと思ったか、先発に負傷のせいでなかなか、代表に戻って来られなかったオジャルサバル(レアル・ソシエダ)、ジェラール・モレノ(ビジャレアル)、そして久方ぶりとなるサラビア(ウォルバーハンプトン)を並べ、ホセルをトップに置く布陣でスタート。GKもレギュラーのウナイ・シモン(アスレティック)ではなく、先日はCL16強対決ポルト戦2ndレグのPK戦で活躍して、注目を浴びたダビド・ラジャ(アーセナル)がデビューしたんですが、それでも前半のうちは特に守備に問題はなく、上手くコロンビアを抑えていたんですけどね。 ただ、攻撃の方はミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)や、こちらは初招集で即デビューとなったビビアン(アスレティック)のヘッドが外れたり、グリマルド(レバークーゼン)の積極性が光ったりといったことはあったものの、ゴールを奪うには至らず。0-0のまま、後半が始まったところ、いやあ、3分のジェラール・モレノのvolea(ボレア/ボレーシュート)がGKバルガス(アトラス)にparadon(パラドン/スーパーセーブ)されていなければねえ。それみたことか、15分には後半から出場したハメス・ロドリゲス(サン・パウロ)から始まったプレーでルイス・ディアス(リバプール)に左サイドから切り込まれ、ビビアンが及ばなかったせいもあって、ラストパスがファーサイドへ。ペドロ・ポロ(トッテナム)の見守る前、ダビド・ムニョスのジャンピングボレーで叩き込まれては、交代出場していたGKレミロ(レアル・ソシエダ)だって、どうしようもありませんって。 先制されてしまったスペインは同点を目指して、即座にジェラール・モレノとオジャルサバルを下げ、モラタ(アトレティコ)とニコ・ウィリアムス(アスレティック)を投入。それでもラチが明かないとなると、27分にはサラビアから、ジャマル(バルサ)に代え、16才のFWにゴールを託したんですが…ダメでした。ええ、最後の6人目の交代枠など、アタッカーではなく、初招集の17才、CBクバルシ(バルサ)のデビューに使われていましたからね。そのまま、0-1で終わり、昨年のユーロ予選スコットランド戦以来となる2敗目を喫したデ・ラ・フエンテ監督は、「No ha faltado ambición ni ganas de competir/ノー・ア・ファルタードー・アンビシオン・ニ・ガナス・デ・コンペティル(ウチに野心や競う意欲が欠けていたということはない)」と言っていたものの、やっぱり公式戦じゃないというのが影響していたのかも。 そして翌土曜の午後2時にマドリッドに戻って来たチームは夕方から、サッカー協会施設のグラウンドで遅ればせながら、一般公開練習を実施。私も見に行ってみたところ、すでに世間はセマナ・サンタ(イースター週間)の休暇に入っているせいもあって、相変わらずの盛況でしたね。試合翌日ということで、長い時間プレーした選手はrondo(ロンド/輪の中の選手がボールを奪うゲーム)だけで終わり、他もpartidillo(パルティディージョ/ミニゲーム)ぐらいで、大したことをした訳ではないんですが、この公開練習の一番の魅力はセッションが終わった後、選手全員がフェンス際まで来て、ファンサービスしてくれることかと。 それがふと気づくと、モラタとロドリゴ(マンチェスター・シティ)の姿が見えず、いえ、後者は家庭の事情で合宿を離れていたようなんですけどね。前者は胃腸の調子が悪かったそうで、うーん、もしやアトレティコの天敵、黄色のユニを着せられて、当たったなんてことある?まあ、日曜のセッションには普通に参加していたので、ブラジル戦ではしっかりスペインのエースを務めて、古巣の本拠地で郷愁に浸るのも悪くはないかと思いますが、さて。そういえば、まだトップチーム歴の浅いジャマルとクバルシはこれが初ベルナベウ体験で、4月21日にクラシコ(伝統の一戦、マドリーvsバルサ戦のこと)を控えて、いい予行演習ができそうな。一応、この試合、デ・ラ・フエンテ監督は仮想Aチームを並べてくるはずなので、コロンビア戦よりはしゃきっとしたスペインが見られるはずですが、うっかり2連敗となった日にはユーロ悲観論が台頭してきそうですね。 そして最後にちょっとだけ、アトレティコの近況もお話ししておくと、この週末は土日月が休養日で、練習は火曜の夕方までないんですが、足首のネンザを完治させるべく、フランス代表を離脱してきたグリーズマンのリハビリは順調に進んでいるよう。同じく、CL16強対決インテル戦1stレグで太ももを負傷したヒメネスも金曜には部分的にチーム練習に参加して、2人共、今週中には完全に合流できる見込みなのだとか。 何せ、代表戦明けのリーガは4月1日(月)のビジャレアル戦と時間はたっぷりありますからね。その分、鬼門のアウェイ戦、しかも黄色ユニチームとの対戦まで、各国代表から帰って来る選手にも余裕があるのは有難いんですが、よくよくスケジュール帳を見てみると、その次の週末はアスレティックとマジョルカのコパ決勝があるため、リーガはお休みに。要はCL準々決勝ドルトムント戦1stレグまでも中8日あるため、疲れやすい今季のシメオネ監督のチームにとっては願ってもないんじゃないかと思いますが…その後はまた週2試合ペースに戻るため、ジグナル・イドゥナ・パルクで黄色のユニに挑むドルトムント戦2ndレグを含め、やっぱりリーガ4位奪還は厳しい戦いになりそうです。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.03.25 21:00 Mon

ただでさえ、親善試合は力が入らないのに…/原ゆみこのマドリッド

「何か、いつもの代表戦週間と勝手が違うわね」そんな風に違和感を覚えていたのは木曜日、スペイン代表が久々の親善試合でコロンビアと対戦する前日のことでした。いやあ、招集された選手がラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会本部で合宿に入るのは昨年11月以来とあって、いつものように初日の一般公開練習を見に行くのを私も楽しみにしていたんですけどね。それが今回は公式戦でなかったせいか、選手たちは通常より遅い月曜夕方に集合。おまけにその日は6月15日のクロアチア戦を皮切りに、20日にはイタリア戦、24日にはアルバニア戦ともう、グループリーグの予定が決まっているユーロ2024に備え、彼らは夜までCM撮影などに駆り出され、一切練習しなかったんですよ。 翌日から、グラウンドでのセッションが始まったものの、火水木全てが完全非公開だった上、水曜にはサッカー協会本部が警察のガサ入れを受けるという異常事態が発生。その原因となったのは、ルビアレス氏がサッカー協会会長だった2019年、スペイン・スーパーカップをファイナルフォー形式にして、サウジアラビアで開催することを決定。その対価として6年間で2億4000万ユーロ(約400億円)受け取るという契約に汚職、横領、そして中国のビットコイン会社を通じたマネーロンダリングの疑いがあったせいなんですが、いえ、本部のあるビルが蜂の巣をつつくような騒ぎになっていたとて、それを取材するメディアが終日、柵の前に陣取っていたって、選手たちにはまったく影響はなかったんですけどね。 実際、水曜に定例記者会見に登場した、コロンビア戦での先発が見込まれているGKダビド・ラジャ(アーセナル)なども、「何なのかも知らない。Nos hemos levantados, hemos desayunado... y hemos entrenado con normalidad/ノス・エモス・レバンタードス、エモス・デサジュナードー…イ・エモス・エントレナードー・コン・ノルマリダッド(ボクはら起きて、朝ごはんを食べて、普通に練習した)」と言っていたんですが、まあ、そうでしょう。協会本部ビルはグラウンドを挟んだところにあるんですが、選手たちがもっぱら過ごすのは宿泊所やジムなどがある逆サイドの区画。何かイベントでもない限り、本部ビルに立ち入ることはないため、それこそ対岸の火事とはいえ、まったく。 そう、昨夏にスペイン女子がワールドカップに初優勝した時に表彰式でジェニ・エルモーソ(パチューカ)に同意のないキスしたのが大問題となり、その後、FIFAによる停職処分もあって、9月にはとうとう辞任をしたルビアレス前会長だったんですけどね。本当にロクなことをしてこなかったようで、今回の事件では協会の法律顧問など、すでに逮捕者が7人に。もちろん当人にも逮捕状が出ていて、彼が現在、ドミニカ共和国にいるため、身柄拘束できないようですが、せっかく代表選手たちの様子を知ろうとニュースを見ても、どこの局もこの汚職事件一辺倒では、迷惑極まれりですって。 何と言っても今回の代表戦はユーロ大会用招集リストが出る前の最後となるリハーサルですからね。それもこの金曜午後9時30分(日本時間翌午前5時30分)から、ロンドン・スタジアムでキックオフとなるコロンビア戦、そして来週火曜にサンティアゴ・ベルナベウでホセル、カルバハルらがレアル・マドリーの同僚、ビニシウス、ロドリゴ、そしてこの夏の入団が決まっているエンドリック(パルメイラス)らと対決するブラジルとの親善試合のためには26人招集されているものの、ドイツの本大会に行けるのはたったの23人。よって現在、選手たちも代表内でしのぎを削っている状態なんですよ。 一応、今回の新顔を挙げておくと、合宿前日はメトロポリターノで0-3とアトレティコを零封するのに貢献した17才のCBクバルシ(バルサ)、ダビド・ガルシア(オサスナ)が負傷中で抜擢されたCBビビアン(アスレティック)、そして先週末のリーガ戦でガヤ(バレンシア)がケガしたため、急遽、イギリスから呼ばれた、ヘタフェファンには懐かしい左SBククレジャ(チェルシー)の3人。それ以外にも出戻り組として、オジャルサバル(レアル・ソシエダ)、ダニ・オルモ(ライプツィヒ)、ジェラール・モレノ、アレックス・バエナ(ビジャレアル)、サラビア(ウォルバーハンプトン)、パブロ・ポロ(トッテナム)らがいるんですが、それより何より、リーガの2巨頭からはマドリーが前述の2人だけ、バルサもあとは16才のジャマルだけとは、いやはや時代も変わったもの。 いえ、バルサに関しては常連だったガビ、ペドリ、フェラン・トーレスらを負傷で呼べないという事情があるんですけどね。アトレティコも11月に初招集されたリケルメが落ちて、またモラタの1人参加に戻り、一番選手が多いのはレアル・ソシエダで5人、続いてアスレティックの4人。これも以前に比べると、試合で背中のネームを見ないと、誰が誰だかわからない選手が多くなった理由かと思いますが、選ぶのはスペイン北部出身で、現役時代をアスレティックで過ごしたデ・ラ・フエンテ監督ですからねえ。とりあえず、コロンビア戦の翌日、土曜午後7時(日本時間翌午前2時)にはラス・ロサスで公開セッションが予定されているため、興味があるファンはスペイン男子代表のツイッターで練習のライブ配信を見てみるのもいいかもしれませんよ。 え、今週末は試合がないマドリッドのクラブの近況も知りたいって?そうですね、実は火曜にはマドリーファンに大ショックを与えるニュースが入ってきて、それはGKクルトワの再負傷。うーん、昨年の8月、リーガが始まる直前に右ヒザの靭帯を断裂した彼は、このparon(パロン/リーガの停止期間)中にカンテーラ(ユースチーム)と練習試合を2回して、不具合がなければ、31日のアスレティック戦で先発するという噂まであった程、復帰が近づいていたんですけどね。それがバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でのセッション中、左ヒザをケガして、翌日には半月板の手術を受けることに。 全治2カ月ということで、一転、今季絶望になってしまったんですが、とはいえ、GKに関してはクルトワの代理として、チェルシーから緊急レンタル移籍をしてきたケパを押しのけ、万年控えだったルーニンがレギュラーとして定着。特に大きなポカをすることもなく、時にはparadon(パラドン/スーパーセーブ)でリーガの首位を走るマドリーを支えていますからね。当面、問題はないはずですが、ちなみにそのルーニンはこの代表戦週間中、マドリーでただ1人、公式戦をプレー。 そう、ユーロ出場最後の3席を争うウクライナ代表で木曜にプレーオフ準決勝のボスニア・ヘルツェゴビナ戦に挑んだんですが、オウンゴールで1点リードされた後、終盤にヤレムチュク(バレンシア)とドブビク(ジローナ)が立て続けにゴールを挙げ、1-2で逆転勝ちしたんですよ。これで来週火曜にはイスラエルに1-4で勝ったアイスランドと決勝となったため、もしユーロ行きが決まれば、当人のモチベーションもますます高まるんじゃないでしょうか。 そしてクルトワとあまり変わらない時期にやはりヒザの靭帯を断裂し、ずっとリハビリを続けてきたミリトンは無事、4月には現場復帰できそうなんですが、何せ、ルーニン以外は親善試合とはいえ、計14人も各国代表に招集されているマドリーですからね。これまで留守番組だったブライムまで、とうとうモロッコ代表を選択して、出向してしまったため、アンチェロッティ監督も気が気ではないでしょうが、いつもは大西洋横断の長旅をしないといけないビニシウス、ロドリゴ、そしてバルベルデ(ウルグアイ)らがヨーロッパ内の移動に留まってくれるのは慰めになる? 一方、先週末のバルサ戦でも後半からしか出られなかったように、まだ足首のネンザが完治していないグリーズマンがフランス代表を即離脱。水曜にはマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でリハビリトレを始めているアトレティコはというと。いやもう、リーガではアスレティックに抜かれて5位に落ち、更に代表戦後にはCL準々決勝ドルトムント戦1stレグも迫っているとあって、シメオネ監督にしてみれば、もっと沢山の選手にみっちり稽古をつけたいところだったと思いますけどね。レマル、ヒメネス、そして延長、PK戦の死闘となったインテル戦2ndレグで負傷したエルモーソもいないため、火曜からセッションをこなしたトップチームのフィールドプレーヤーはたったの10人という有り様だったよう。 大体がして、GKなんて、オブラク(スロベニア)とモルドバン(ルーマニア)共々、出向してしまったため、カンテラーノ(アトレティコBの選手)しか、いませんからね。これではザル守備改善の練習も中途半端になってしまいそうですが、このところ、体力の低下に悩んでいる選手たちには土日月と3連休できるのは吉かも。唯一、気掛かりなのは、チームの中でも劣化が激しいデ・パウルとモリーナが揃って、アルゼンチン代表のアメリカツアーに行っていることですが、2022年にはワールドカップ優勝を果たした仲間に薫陶されて、シーズン終盤では調子を上げてくれることを祈るしかありませんね。 ちなみに各国代表に行っている選手は弟分チームにもいて、ラージョはディミトリエフスキ(北マケドニア)、ラティウ(ルーマニア)、バリウ(アルバニア)、パテ・シス(セネガル)、ベベ(カーボベルデ)の5人。折しもイニゴ・ペレス監督のチームは先週末、9試合ぶりに白星を挙げ、しかもエスタディオ・バジェカスでベティスを倒して、待望の今季ホーム2勝目をゲットしたばかりだっただけに、ここで試合に間が空くのは痛し痒しだったかもしれないんですけどね。逆に31日に当たる再開後初戦の相手、セルタなどは前節、ベニテス監督からBチームを率いていたヒラルデス監督に代わってセビージャに勝った後、新しい指揮官にチームを把握する時間ができるのは有難い? 何にしろ、17位のセルタと15位のラージョの差は勝ち点2差だけとはいえ、降格圏18位のカディスとは7差に開いたため、少しは落ち着いたはずですが、その一方でヘタフェは代表に出向するのが今回はジェネ(トーゴ)とアルデレテ(パラグアイ)の2人だけ。珍しくセルビア代表に呼ばれなかったマキシモビッチのパナシナイコス来季入団がこの木曜に早くも発表されていたのにはちょっと、驚かされましたが、こちらは10位、あと勝ち点2で残留も達成と、快適な位置にいますからね。そろそろ、ボルダラス監督も自身2度目となるヨーロッパの大会出場を狙う算段を練っている頃かもしれませんが…それにはまず、30日にコリセウムに迎えるセビージャに勝つことが必須でしょうか。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.03.22 20:00 Fri

喜びは長続きしなかった…/原ゆみこのマドリッド

「このまま3週間もCL圏外なのは辛いわね」そんな風に私が溜息をついていたのは月曜日、各国代表戦週間のparon(パロン/リーガの停止期間)が始まった日のことでした。いやあ、リーガ29節最後の試合でアトレティコは黄色のユニを着たバルサにメトロポリターノで完敗し、一足早くアラベスに勝って、追い越されていたアスレティックから4位の座を取り戻すことができず。それでも勝ち点差は1だけですし、まだ残り9試合もあるため、何とかする余地は十分、あるんですが、問題なのは昨季の1月に同じバルサに負けて以来、無敗だったホームの神通力より、黄色のユニの呪いの方が強かったこと。 そう、リーガ再開の30節は大多数のファンの応援を受けられないアウェイでのビジャレアル戦で、すでに今季、アトレティコが負けているラス・パルマスやカディスと同じ黄色のユニで相手がプレーするため、もう初めから勘定に入れていなかったんですけどね。その週はアスレティックもサンティアゴ・ベルナベウでレアル・マドリー戦となるため、差が開く心配はしなくていいですが、その次の週末、4月6日にバルベルデ監督のチームがコパ・デル・レイ決勝をマジョルカと戦う間、アトレティコは10日のCL準々決勝ドルトムント戦1stレグに備えてお休みできることに。 そのメトロポリターノでの試合でも相手が黄色の第1ユニで戦うことに決めたら、かなりヤバそうですが、リーガのホームゲームで対戦するチームでもジローナのアウェイユニが黄色と赤。その他、黄色属性ユニの相手はいないとはいえ、そう、お隣さん同様、彼らだって先日、いきなり濃紺の第4ユニを発売していたように、4月末にメトロポリターノで直接対決となるアスレティック、いえいえ、残留争いが厳しくなってきたら、セルタだって、急遽、黄色のユニを作って、メトロポリターノのピッチに立つことぐらい、してくるのでは? そんなことになったら、今季のCLに優勝して、来季の出場権を得るか、参加チームが32から36チームに増える新フォーマットの来季はスペインの出場枠が5つに増えてくれることを、ファンは真剣に祈らないといけなくなってしまいますが、まあそれはそれ。とりあえず、先週末のマドリッド勢の試合がどうだったか、見ていくことにしましょうか。 29節では、マドリーが先陣を切って、土曜にオサスナ戦に挑んだんですが、この日もベリンガムが出場停止2試合目でプレーできず。それが全然、影響なくて、だってえ、前半4分、今季はラージョから河岸を変えていたカテナから、敵陣エリア前でボールをビニシウスが奪い、早くも先制ゴールを挙げているんですよ。ただ、その時はまだエル・サダルの熱いファンの声援を受ける相手も闘志を失わず、7分にはCKから、カルバハルがヘッドクリアしたボールをファーサイドにいたエランドがブドミルにラストパス。マスクを着けたクロアチア人FWに今季自身14得点目を決められ、同点に追いつかれてしまうことに。 すると18分、エリア内左奥からのバルベルデの折り返しを汚名返上すべく、カルバハルが右足の外側で蹴り入れて、再びマドリーはリードを奪ったんですが、前半はまたしても主審に抗議したビニシウスがイエローカードをもらい、累積警告でアスレティック戦に出場停止となったぐらいで終了。いやあ、実際、ハーフタイムでロッカールームに戻る際、当人も「Todos los partidos me saca tarjeta este árbitro, es increíble/トードス・ロス・パルティードス・メ・サカ・タルヘタ・エステ・アルビトロ、エス・インクレイブレ(この審判は全ての試合でボクにカードを出す。信じられないよ)」と文句を言っていたぐらい、この日のマルティネス・ムヌエラ主審と彼の相性が最悪なのは本当みたいですけどね。 もうすでに彼には3、4回イエローカードをもらっているからですが、昨季など、マドリーOBのセルヒオ・ラモス(現セビージャ)じゃあるまいに、トータル14枚にもなりましたからね。その半数近くが抗議によるものとなれば、いくらアンチェロッティ監督が、「Va a mejorar porque es un chico serio, humilde e inteligente/バ・ア・メホラル・ポルケ・エス・ウン・チコ・セリオ、ウミルデ・エ・インテリヘンテ(マジメで謙虚、賢い子だから改善するだろう)」と庇おうと、更生できるか怪しいものですが、それとビニシウスのサッカーのパフォーマンスは全然無関係。そう、私が次の時間帯の試合を見にコリセウムに向かうため、バル(スペインの喫茶店兼バー)を出ないといけず、見られなかった後半、またしても彼は得点していたんですよ。 いえ、その前には16分、GKルーニンのゴールキックを頭でベルベルデがセンターから流したボールを受け、ドリブルで敵エリア内まで駆け上がり、GKエレーラとの1対1のシュートでブライムが3点目を決めているんですけどね。こうまで立派にベリンガムの代理を務めているところを披露されると、当人がこの3月の代表招集でU21まで勤め上げながら、なかなかお声のかからなかったスペインA代表ではなく、祖母の出身国であるモロッコを選んだのを残念に思うファンも増えそうですが、ビニシウスのゴールが入ったのは20分のこと。今度はセンターからロドリゴ、バルベルデと繋がる速攻カウンターでエリア内左から、エレーラを破っていましたが、これで4点目となれば、すでに勝敗は決したかと。 まあ、オサスナも後半ロスタイムには意地を見せ、アレソのラストパスからイケル・ムニョスが2点目を挙げたため、スコアは2-4で終了したんですけどね。先日のセルタ戦でマドリー初ゴールを挙げ、この日も後半40分からの出場となったギュレルがロングシュートを放ち、ゴールバーに当てるという惜しいシーンもあったようですが、このまま首位固めが順調に行けば、彼の出番もだんだん増えていくのでは?それには何より、これで勝ち点10と離れた2位ジローナとの差を弟分が確定させることが大事だったんですが…。 いやあ、驚かされましたよ。ジローナを迎えたヘタフェは、うーん、半月板損傷のボルハ・マジョラルに加え、グリーンウッドも出場停止で欠いた前節のバレンシア戦でラタサとマタをスタメンで並べながら、1点も取れずに負けてしまったせいですかね。この日のボルダラス監督は2人をベンチに置き、MFのオスカル・ロドリゲスとマクシモビッチが適宜、falso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)を務める陣形を選択。どうやらミチェル監督もこれには混乱させられたよう。 ツィガンコフら、欠場者が多かったジローナ相手にどちらかと言えば、押し気味にゲームを進めていたヘタフェはとうとう、33分、イアリス・モリバが入れたラストパスをジェジュがエリア内から撃ち込み、この1月に加入した若い新戦力2人で先制点を取ってしまったから、ビックリしたの何のって。そのまま1-0で試合は進み、ええ、ようやくマタが入ったのは後半22分だったんですけどね。その日はドブビクが6本もシュートを放ちながら、まったく精度がなかったおかげもあって、最少得点差で4試合ぶりの白星を挙げたとなれば、ヘタフェファンだけでなく、マドリーファンも弟分を見直すことになった? まあ、おかげで10位に上がったとはいえ、ヘタフェはEL出場権6位のレアル・ソシエダと勝ち点8差ありますからね。あまり大きな夢は見ない方が良さそうですが、14人も各国代表に出向するマドリーとは違い、こちらはトルコ代表常連のエネス・ウナルが1月にボーンマスに移籍、スペイン代表の呼び声が高かったマジョアルも今季絶望になってしまったため、今回はジェネ(トーゴ)とアルデレテ(パラグアイ)の2人だけ。今季限りでヘタフェを退団して、母国に近いチームに移籍するとアンヘル・トーレス会長がジローナ戦直前に暴露していたマクシモビッチもセルビアに呼ばれなかったようですし、3月30日に再びコリセウムにセビージャを迎える試合まで、チームがラストスパートに備えて、じっくり調整できるのは有難いかと。 そして翌日曜も弟分のいいニュースは続いて、そう、とうとうラージョが9月以来のホーム勝利を挙げたんですよ。エスタディオ・バジェカスにベティスを迎えた彼らは前半、今年になって1勝しかしていないための焦燥感か、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の実況アナにも「Rayo irreconocible/ラージョ・イレコノシブエレ(ラージョと認識できない)」と言われる程、フラストレーションの溜まるプレーぶりだったんですけどね。辛抱強く応援を続けるスタンドに応え、39分にはルジューヌの直接FKが GKルイ・シウバの手を弾いてゴールに入り、先制点をゲット。 1-0のリードのまま、この日も私はメトロポリターノに向かうため、ハーフタイムにスタジアムを出ないといけなかったため、うーん、後々考えれば、最後まで留まって、後半33分にはカメージョが最初はペッツェッラにブロックされながら、2度目のトライでゴールを決め、2-0で完勝。ファンと一緒に今季2度目の「Vida de pirate/ビダ・デ・ピラタ(海賊人生)」を歌って、勝利を祝う選手たちの姿を見ている方が楽しかったんじゃないかと後悔したものでしたけどね。この節は18位のカディスが金曜にレアル・ソシエダに負けていたため、4まで縮まっていた降格圏との差も7に広がり、順位も15位と1つ上がったラージョだったんですが、残留確定目安の勝ち点40に到達するまでは、次節のセルタ戦を含め、あと4勝ぐらいはしておきたいところでしょうか。 そう、メトロポリターノに余裕を持って到着したかったのは、バルサにレンタル移籍中のジョアン・フェリックスがアトレティコファンにどのように迎えられるかを見たかったのもあったんですが、チャビ監督もちゃっかりしていますよね。スタジアム正面の地面にある100試合以上出場選手のプレートを汚されたり、スタメンアナウンスからpito(ビト/ブーイング)を受けるのをわかっていながら、当人の反骨心を当てにして、スタメンに並べてくるとは。おまけに相手には前日、カンセロが負傷で、試合前のアップ中にはクリステンセンが不調を訴え、先発できなくなったため、17才のフォントが左SBとしてデビュー。そして20才のフェルミンが中盤に入るという、17才で先日、スペインA代表に初招集されたCBクバルシを含め、カンテラーノ(バルサB)が3人も入ったとなれば、水曜にはCL16強対決2ndレグでセリエA独走首位のインテルを逆転敗退に追いやっているアトレティコだけに、何とかなるんじゃないかと思ったんですが…。 もう絶対、黄色のユニの呪いですよお。立ち上がりから、6分にはモラタがアラウホにエリア内でファールを受けながら、オフサイドでペナルティを取ってもらえなかったのは当人の悪癖故で、よくあることなんですが、そのすぐ後、バリオスがエリアすぐ前から撃ったシュートも僅かに外れてしまうことに。27分にもモラタのヘッドが決まらないなど、そのぐらいまではインテル戦の勢いを持続していたシメオネ監督のチームだったものの、30分を過ぎた辺りから、バルサが反撃を開始。ええ、最初はラフィーニャのヘッドから始まり、35分にはギュンドガンのスルーパスをレバンドフスキが折り返し、ゴール左前にいたジョアンが軌道を変えて、先制ゴールを奪われてもらったから、さあ大変! いえまあ、41分には抗議でイエローカードをもらったチャビ監督が、その1分後にはレッドカードで退席させられてしまうというアクシデントもあったんですが、バルサの選手が減った訳ではないですからね。後半は頭から、ネンザが完治していない足首の痛みに耐え、インテル戦で延長戦前半まで頑張ったグリーズマンと殊勲の総合スコア同点ゴールを挙げたメンフィス・デパイを入れ、攻勢に出るはずだったアトレティコなんですが、木金と完全休養して、練習は土曜しかしていないのに選手たちはまだ、CLの死闘からの疲労が抜けていなかったよう。 そう、再開1分にイエローカードをもらい、次節出場停止になったデ・パウルがその1分後、何と自陣エリア前でラフィーニャ目掛けてパスを出すという大ポカを犯してくれたんですよ。それが原因でレバンドフスキに決められしまったとなれば、選手たちが「2点目のゴールのダメージは大きかった。Nos sacó la energía para seguir competiendo/ノス・サコ・ラ・エネルヒア・パラ・セギール・コンペティエンドー(ウチは競い続けるエネルギーを奪われてしまった)」(シメオネ監督)としても仕方ない? 実際、12分にジョレンテのvolea(ボレア/ボレーシュート)とデパイのシュートを連続してGKテア・シュテーゲンに弾かれた後、コケやコレアがピッチに入ってもほとんどチャンスは作れず。それどこから、20分にはレバンドフスキのクロスを小柄なフェルミンにゴール前で悠々、頭で撃ち込まれ、3点目まで取られたとなれば、もうどうしようもありませんって。こうなるとさすがに、いつもは最後の最後まで諦めないアトレティコファンでも終了10分程前には席を立ち、スタンドはかなりスカスカになっていたんですが、いい判断です。少なくとも早帰り組はロスタイム2分、モリーナがビクトル・ルケに自陣エリア前で強烈なタックルを見舞い、最終デフェンダーであったため、一発レッドで退場するところを見ずに済んだんですから(最終結果0-3)。 何せチャビ監督になってから、もうこれでアトレティコはバルサに4連敗ですからね。元々、苦手にしている上、向こうは20才以下の選手を6人も使ってきたのに対して、彼らは半分が30才以上。インテル戦で17.5kmも走ったコケも「El esfuerzo del otro día nos ha pasado factura/エル・エスフエルソ・デル・オトロ・ディア・ノス・ア・パサードー・ファクトゥーラ(先日の努力のツケを払った)」と告白していたように、最近は連戦でムリが効かなくなっているのも心配ですが、その辺はシーズン前にフロントが考えないといけないことですからね。 おかげでバルサがジローナに取って代わり、首位と勝ち点8差の2位になったのはともかく、とりあえず今のアトレティコは各国代表に出向する7人以外、粛々と体力回復に努めるしかないないんですが、そうそう、月曜にフランス代表に行ったグリーズマンは足首完治を目指して、即Uターンとなるよう。他の選手たちも試合は全て親善試合ですしね。アメリカ興行をするアルゼンチン代表のデ・パウルとモリーナを除いて、ヨーロッパ内で移動が済むというのは朗報ですが、とにかく誰もケガをせず、戻って来てほしいものです。 <hr>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.03.19 21:00 Tue

奇跡はホームでしか起きない…/原ゆみこのマドリッド

「ダメだわ、これじゃ秘技メトロポリターノマジックが使えない」そんな風に私が嘆いていたのは金曜日、CL準々決勝抽選でアトレティコとドルトムントの対戦が決定。もちろん、マンチェスター・シティと3年連続で対決するお隣さんや、エムバペを連れたルイス・エンリケ監督がPSGを率いて里帰りするバルサを羨むことはなかったものの、2ndレグをジグナル・イドゥナ・パークでプレーしないといけないことがわかった時のことでした。いやあ、もうあれだけ絶望視されていた16強対決インテル戦2ndレグで奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)を起こし、準々決勝に進出できただけでも今季は儲けものと言えなくはないんですけどね。 おまけに8強に残った中で一番与しやすしと、どのチームも対戦を望んでいたドルトムントを引き当てたのは幸運だったとしても、実際、相手もアトレティコも国内リーグでは首位から遠く離れた4位なんですよ。テルジッチ監督のチームが5位ライプツィヒと勝ち点1で来季のCL出場権を争っているのも、アスレティックに勝ち点2差に迫られている彼らと似たようなものですし、何より怖いのはドルトムントのチームカラーが黄色だということ。そう、アウェイぼろぼろの今季、シメオネ監督のチームはリーガ前節も降格圏のカディスに負けるという醜態をさらしただけでなく、同じ黄色のユニをまとうラス・パルマスにもカナリア諸島遠征でやられているんですよ。 そのせいで私など、今から4月頭のラ・セラミカでのビジャレル戦を心配していたものですが、かてて加えて、ドルトムントのホームスタジアムでは有名な「Gelbe Wand(黄色の壁)」が立ちはだかることに。となると4月10日の1stレグでは、今季たった1分け1敗しかしていないメトロポリターノの神通力を借りて、3-0、いいえ、5-0ぐらいで勝っておかないと、とても突破はできないかと。そうは言っても、同様の夢を見ていたコパ・デル・レイ準決勝1stレグではよりによって、アスレティックに0-1で負け、案の定、サン・マメスでの2ndレグで3-0とぶちのめされていた記憶もまだ新しいですからね。 過去の対戦成績も2勝1分け3敗と微妙なドルトムントですし、直近2018-19シーズンのCLグルプリーグでもやはりアウェイでは4-0とボロ負けして、ホームで2-0の勝利。たとえ、何かの間違いで準決勝に進出できたとしても、PSG vsバルサ戦の勝者と当たるそちらも2ndレグがアウェイとなると…やはり6月1日のウェンブリーでアトレティコが2016年以来の決勝をプレーすることを望むなんて、とても恐れ多くてできやしない? まあ、そんな先のことを話していても仕方ないので、とりあえず、水曜のインテル戦がどうだったか、お伝えしていくことにしましょうか。前日、1stレグで1-1と引分けていたバルサがホームのモンジュイックでナポリを3-1と粉砕した後、サン・シーロでの1-0の敗戦を引っくり返すべく、メトロポリターノにインテルを迎えたアトレティコだったんですが、相手はその後もセリアAで4連勝。とうとう今年になってから、13連勝という破竹の勢いで乗り込んで来るというのに、アトレティコファンもやはり、ほぼ無敵のホームでは強気になれるんでしょうかね。 この日もスタジアム入りを大勢がお出迎えして、赤白のbegala(ベンガラ/発煙筒)の煙の中をチームバスは通り抜けて行ったんですが、そのファンの応援に選手たちが見事に応えてくれるとは!いえ、序盤からサムエル・リノ、モラタ、そしてインテル戦1stレグで負ったネンザから復帰してきたグリーズマンらが撃っていったものの、なかなか総合スコアを同点にするゴールは入らなかったんですけどね。それどころか、前半33分には得意のザル守備が発動。バレッラの折り返しのパスをディマルコに決められて、ミラノから来た3400人のティフォシを大喜びさせていたんですが、いやもう、この時は私も目の前が真っ暗になったと言わなかったら、ウソになるかと。 その3分後、「アスレティック戦にも出ようとしたけど、ダメだった。でも今日の試合はチームにもボクにも重要だったから、aunque aún me duele al hacer algunos gestos/アウンケ・アウン・メ・ドゥエレ・アル・アセール・アルグーノス・ヘストス(まだ何がしかの動きをする時、痛むとしても)、ムリしないといけなかったんだ」というグリーズマンがやってくれたんです!そう、コケがエリア内に入れたパスをパヴァールがクリアしようとしたボールが彼の元に落ちて来たところ、体をクルリと回してシュート。それがゴールとなり、再び総合スコアが1-2の1点差になったとなれば、また初心に戻って、同点を目指せば良かったんですが…。 それから全然、ゴールが入らなくてねえ。前半を1-1のままで終わった後、やはりグリーズマン、モラタ、ジョレンテらが後半も決められず、ようやく26分にはデ・パウル、リノをコレア、リケルメに代えてみても大勢は変わりません。時折、カウンターをかけてくるインテルにもトゥラムにフリーで撃たれて、幸い大きく枠を外れてくれるというドッキリシーンがあったため、34分にモラタ、モリーナがメンフィス・デパイ、バリオスに代わった辺りでは、ええ、彼らは土壇場に根性のレモンターダ体質が炸裂するお隣さんとは違いますからね。私もほとんど諦めていたんですが、いえいえ、とんでもない。 何と40分にはシュートをポストに当てていたデパイがその2分後、コケのラストパスから総合スコア2-2に追いつくゴールを挙げてしまったから、もう場内は蜂の巣をつついたような騒ぎに。でもねえ、これだと延長戦になるだけで、何せ昨今は体力不足著しいアトレティコですからね。とにかくあと1点取って、正規の時間内に勝って終わらせてもらいたかったんですが、後半ロスタイム、せっかくグリーズマンが絶妙のパスをリケルメに送りながら、当人がシュートを撃ち上げてしまってはどうしようもありませんって。 ほぼその時点で延長戦入りが確定し、私も30分帰りが遅れるだけでなく、惨めな気分でメトロに乗ることを覚悟したんですが、いやあ、意外でした。この日のアトレティコは疲れを見せず、いえ、延長戦前半にはジョレンテがアスピリクエタに、後半頭からは3週間のブランクもあって、とうとう走れなくなってしまったグリーズマンもサウールに交代しましたけどね。ただ、幾つかチャンスはあったものの、やっぱりゴールは入らず、とうとう最後はPK戦上等のプレーをしていたインテルの思うつぼになってしまうことに。 実際、試合中のPKもほぼ半分は失敗しているアトレティコですからね。PK戦でも2016年CL決勝やスペイン・スーパーカップなどでマドリーに負けている黒歴史ばかり記憶に残っているため、その時は私の思いも延長戦で負けるより、PK戦で負ける方がずっと悲惨という方向にシフトしていたんですが、それがこの日はシメオネ監督の企みがまんまと当たったんですよ。そう、「Aguantamos los cambios porque sabíamos que estaba la posiblidad del alargue/アグアンタモス・ロス・カンビオス・ポルケ・サビアモス・ケ・エスタバ・ラ・ポシビリダッド・デル・アラルゲ(試合が長引く可能性があることを知っていたから、選手交代を遅らせた)」(シメオネ監督)おかげで延長戦を耐え抜いただけでなく、PK戦のキッカーには途中出場の選手を指名。 まあ、その中でもサウールはGKゾマーに止められてしまいましたが、デパイ、リケルメ、コレアがしっかり成功する脇で、あとはGKオブラクの独壇場に。いやあ、これまでPK戦ではほとんど止められず、批判されていた彼でしたが、この日は相当、相手を研究していたんでしょうね。インテルの第2キッカーのアレクシス・サンチェスと第3キッカーのクラーセンを続けて弾き、最後は第5キッカーのラウタロが大きく撃ち上げてしまうって、え?これってもしや、奇跡じゃない(PK戦3-2)? とはいっても、「La afición no falla, nosotros podemos fallar, pero ellos nunca fallan/ラ・アフィシオン・ノー・ファジャ、ノソトロス・ポデモス・ファジャール、ペロ・エジョス・ヌンカ・ファジャン(ファンはしくじらない。ボクらはしくじることもあるけど、彼らは決してしくじらない)」(オブラク)とか、「全力は尽くすけど、結果を見れば、ボクらがホームで違うチームなのは明らか。Es gracias a la afición/エス・グラシアス・ア・ラ・アフィシオン(それはファンのおかげだ)」(グリーズマン)とか聞かされると、スタジアムで多数派の応援がないとアトレティコは勝てないのかと、頭が痛くなってしまいますけどね。 果てては、「全員がこの態度、プレーの激しさ、集中力でプレーしている時、ウチはアウェイでのチームとは違う」(コケ)なんて言われた日には、外に出ると何でそれができないのか、突っ込みたくもなりますが、まあ、それはそれ。「El equipo lo ha logrado desde el que nadie creía/エル・エキポ・ロ・ア・ログラードー・デスデ・エル・ケ・ナディエ・クレイア(チームは誰も信じていなかったところから、突破を達成した)」(シメオネ監督)というのは事実ですからね。今は褒めておくことにしますが、日曜午後9時(日本時間翌午前5時)にはもう、リーガのバルサ戦がありながら、延長戦疲れで木金練習休みっていうのはいくら、またメトロポリターノ開催だからって、ホームに頼りすぎじゃないでしょうか。 そして他のマドリッド勢の週末の予定についても触れておくと、先陣を切るのは土曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)から、エル・サダルでのオサスナ戦に挑むマドリーなんですが、まあ、こちらはすでに先週にはCL準々決勝進出を決め、ミッドウィークフリーだった今週は余裕でしたからね。リーガも2位ジローナと勝ち点7差の首位とあって、丁度、マンチェスター・シティとの対戦が決まった直後にアンチェロッティ監督の記者会見があったのもタイミングの妙。おかげで2年前はサンティアゴ・ベルナベウでの準決勝2ndレグで奇跡のレモンターダをして、Decimocuarta(デシモクアルタ/14回目のCL優勝のこと)に繋げながら、昨季の準決勝では2ndレグがエティハドだったせいもあったか、0-4の大敗を喫し、結果的に相手がCL初優勝を遂げるという、因縁のシティ戦に関しての質問の方が多くなることに。 まあ、それも仕方なくて、何せオサスナはもう11年もマドリーに勝っていないばかりか、今回はルベン・ペーニャ、ダビド・ガルシア、キケ・バラハ、アイマール・オロスと主力に負傷者が大量発生。となれば、出場停止処分2試合目となるベリンガムがいなくても不足はないかと思いますが、おまけに今節、3位と4位は星の潰し合いをしてくれますからね。あとは同じ土曜にコリセウムにジローナを迎える弟分のヘタフェが頑張ってくれれば、マドリーにとって、最高の形で来週のインターナショナルウィークのparon(パロン/リーガの停止期間)を迎えられることになる? ただ、前節もバレンシアに1-0で惜敗してしまったボルダラス監督のチームが比較的、得意のホームとはいえ、今は首位奪還を諦め、CL出場圏に留まることに専念しているジローナを押しとどめることができるかどうかは微妙。ええ、エースのボルハ・マジョラルがヒザの半月板負傷で今季絶望になってしまい、ゴールを頻繁に挙げてくれる選手がいないのがやはり、堪えているようですからね。この試合ではグリーンウッドが出場停止から戻って来るのは朗報ですが、マタとラタサには更なる精進を期待するばかり。なるたけ早くあと5つに迫っている勝ち点40に達して、ファンを安心させてあげられるといいのですが。 一方、前線に負傷者がいる訳ではないのに、今季は慢性的にゴール不足に苦しんでいるもう1つの弟分、ラージョは日曜にベティスとエスタディオ・バジェカスでホームゲームなんですが、こちらは前節もアラベスに負けて、とうとう白星なしが9試合に。降格圏とも勝ち点4差になってしまいましたし、イニゴ・ペレス監督も就任から4試合が経ちながら、未だに勝てていないというのも心配なんですが、こればっかりはねえ。 幸い相手のベティスも先週、ビジャレアルに負けて順位を7位に落とすなど、それ程、調子がいい訳ではない上、今回はサバリー、ベジェリン、マルク・ロカを負傷で、チミ・アビラも出場停止で欠いているため、ラージョにも勝機はなくないんですけどね。要注意なのは1カ月半、ケガのリハビリをしていたイスコがついに戻ってくること。1試合1得点がやっとこの現状ではとにかく、絶対に失点を許さず、何とかRdT(ラウール・デ・トマス)やアルバロ・ガルシアが当たってくれることを祈るばかりですが…残り6試合、果たしてバジェカスのファンが「Vida de pirata(ビダ・デ・ピラータ/海賊人生)」を歌って、今季2度目のホーム勝利を祝うことはできる日は来てくれるんでしょうか。 <HR>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.03.16 22:00 Sat

過ちから学ばないチームもある…/原ゆみこのマドリッド

「やっぱり勝たなきゃダメなのよ」そんな風に私が絶望していたのは月曜日、4位アトレティコと5位アスレティックの差がたった勝ち点2しかない順位表を眺めていた時のことでした。いやあ、先週末は久々にミッドウィークフリーの1週間を過ごしながら、シメオネ監督のチームはアウェイ弱者の真骨頂を披露。9月から白星がない18位のカディスにヌエボ・ミランディージャでコロッと負けた後、コケが「Tenemos que ver qué nos está pasando fuera de casa/テネモス・ケ・ベル・ケ・ノス・エスタ・パサンドー・フエラ・デ・カサ(アウェイでボクらに何が起きているのか、見てみないといけない)」などと言っているのを聞いた日には、あまりに今更ながらで、開いた口が塞がらなかったんですけどね。 そう、彼らは1月からアウェイゲームで1勝2分け3敗とボロボロで、直近では最下位のアルメリアとも2-2と引分け。ずっと週2試合ペースで忙しかったとはいえ、少なくとも先週中には十分、勝てない理由を分析して、軌道修正する時間はあったはずですが、同じ降格圏組でも勝ち点10多いカディスには負けてしまう程の重症だったとは、これ如何に。それとももしや、残り5試合のアウェイ戦で1勝もできずとも、ええ、アスレティックもここ4試合、2分け2敗とアウェイを苦手にしていましたからね。 彼らとは神風の吹くメトロポリターノで直接対決もある上、レアル・マドリー、ヘタフェ、ラージョら、マドリッド勢らのホームでの援護射撃も当てにできると思ったか、アウェイで頑張らなくても4位にはなれるはずと、ノホホンとしていたのが致命的。日曜にはアスレティックがグラン・カナリア島でラス・パルマスに0-2と勝ったから、いよいよ虎の子のCL出場圏末席の座がピンチになってしまったんですが、ホント、愚かですよね。バルベルデ監督のチームには今季唯一のホーム黒星をコパ・デル・レイ準決勝1stレグで喰らっているのを忘れているなんて。 その後、サン・マメスの2ndレグでもアウェイ弱者ぶりをあますところなく発揮して、コパ決勝の切符を奪われてしまっただけでなく、ここ11年間、皆勤しているCL出場権も取られてしまったら、最悪中の最悪ですが、え?もしや、アトレティコの選手たちはこの水曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのCL16強対決インテル戦2ndレグで頭がいっぱいだったんじゃないかって?うーん、確かにその試合では1-0で負けた1stレグをremontada(レモンターダ/逆転突破)しないといけず、それもメトロポリターノのファンの力を借りれば、可能かもしれないと、浮足立っていたところはあったかもしれませんけどね。 だからといって、土曜のカディス戦の惨状の言い訳になるはずもないんですが、ちなみにどんな試合だったかお話ししておくと。前日からチーム練習に復帰したグリーズマンをお留守番にして、シメオネ監督はモラタとメンフィス・デパイの2トップをリピート。それが2人共、まだ何もしていない前半24分には得意の敵の動きを注意深く見守るだけの守備が顕現し、ソブリーノが左から上げたクロスをファンミがヘッドでゴールに叩き込むのにパウリスタもエルモーソもまったく干渉しないんですから、一体、どうしたらいいものやら。 幸い40分に敵のパスがエリア内にいたパウリスタの腕に当たった時にはハンドをお目こぼししてもらえたんですけどね。サムエル・リノのシュートも昨今あるあるで、GKレデスマに弾かれてしまったため、1-0で折り返したアトレティコは後半頭から、一気に選手3人を交代。ええ、デ・パウル、サウール、デパイをリケルメ、コレア、モリーナにしてみたんですが、降格の危機に瀕している相手のアグレッシブなプレーに対抗するどころではなく、19分には再び、ファンミにゴールを奪われてしまうことに。そう、今度は自陣からハビ・エルナンデスが蹴ったロングボールをパウリスタがクリアできず、他のDFたちもヘルプに来ていなかったため、まんまとシュートされてしまうんですから、もうこの世も末ですって! いやあ、今季もヒメネスが負傷でいないことが多く、サビッチ、エルモーソも怪しいプレーが多いため、1月にバレンシアから移籍したCBの株が最近急上昇。それが、単にその相対評価のおかげだっただけなのがわかったのもガッカリでしたが、アトレティコは唯一と言ってもいい絶好機にもジョレンテのヘッドがレデスマにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまいましたからね。前節のベティス戦では8試合ぶりにゴールを挙げたものの、やはりゴール日照りから完全脱却はしていなかったか、モラタも不発だったんですが、シメオネ監督も2点目を取られた時点でギブアップ。あとはフェアマーレンとカンテラーノ(アトレティコBの選手)のエル・ジェバリを入れて、リノとコケの体力温存をしていたんですが、ホントにもう。 そのまま、2-0で負けた後、シメオネ監督はいつも通り、「Siento que el equipo está dando todo/シエントー・ケ・エル・エキポ・エスタ・ダンドー・トードー(チームは全力を尽くしているように感じる)。私がホームでのパフォーマンスを発揮できる方法を見つけられていない」と全てを自己責任にしていましたけどね。アウェイで悲惨なプレーしかできない理由を問われ、「No es tiempo de hablar de LaLiga/ノー・エス・ティエンポー・デ・アブラル・デ・ラ・リーガ(今はリーガについて話す時じゃない)」(ビッツェル)と差し迫ったインテル戦を口実に、選手たちが現実直視を避けているようでは、この先も近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でアトレティコの試合を見るたび、私は溜息をつくことにならない? まあ、それでも万が一、CLで逆転突破できれば、ええ、水曜にはグリーズマンと風邪でカディス戦を休んだバリオスも戻って来られるようですしね。今週末日曜のバルサ戦もホームですし、相手も火曜にはナポリとの2ndレグがあって、CL準々決勝進出が叶うか、叶わないかで、士気が変わってくる可能性も。そこで勝てれば、アトレティコもリーガ4位の座を守る戦いが少しは楽になるかと思いますが…とにかく全てがメトロポリターノマジックにおんぶに抱っこというのは不安すぎますよね。 え、先週末、リーガで辛い思いをしたのはアトレティコだけじゃないだろうって?その通りで、土曜には彼らの前の時間帯に弟分のヘタフェがメスタジャに乗り込んだんですが、前半40分にウーゴ・ドゥーロに見事なvaselina(バセリーナ/ループシュート)で古巣恩返しゴールを決められ、その1点を返せずに敗戦。ただ、前節のマドリー戦でディアカビがヒザの脱臼という重傷を負い、CB不足に相手が陥っていたせいもあったか、後半にはマタ、ラタサ、オスカル・ロドリゲスのシュートがGKママルダシビリの八面六臂の活躍で防がれ、得点できなかったという経緯も。とりあえず、ボルハ・マジョラルが半月板損傷で今季絶望となったせいでの攻撃力減退をあまり感じさせなかったのは良かったかと。 一応、ヘタフェは12位で降格圏まで勝ち点15差と余裕がありますし、こちらもやや内弁慶の気があるため、土曜にジローナをコリセウムに迎える試合で挽回できたらいいんですけどね。といっても相手はオサスナに勝って、プチ不調を脱出。1度はバルサに越された2位に返り咲き、CL出場権ゲットに邁進中とあって、バレンシア戦で出場停止だったグリーンウッドが戻るといっても、ちょっと難しいかもしれませんが、さて。ミチェル監督のチームもシーズン前半のように無敵ではないため、互角の勝負ができたら、ファンも喜んでくれるんじゃないでしょうか。 そして日曜組だったラージョもアウェイゲームでアラベスに1-0と負けたんですが、いえ、確かに前半44分のゴロサベルのgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)には成す術がなかったんですけどね。彼らの得点力不足は今更、嘆いても仕方ないとはいえ、この日はせっかく後半、RdT(ラウール・デ・トマス)のゴールが決まってもオフサイドで認められず。ロスタイムにはイシの至近距離ヘッドをGKシベラに弾かれ、ファルカオが撃ったこぼれ球もゴールバーを直撃と、勝ち点1すら持ち帰れなかったのがもう、残念どころの話じゃなくなってきちゃったんですよ。 そう、情けない兄貴分がカディスに負けていたため、同じ16位のままでもとうとう、ラージョと降格圏18位の差が勝ち点4になってしまったからで、このままだと、最終節までもつれ込む残留争いに巻き込まれる恐れがなきにしろあらず。何せ、彼らの場合は今季ホームで1勝しか挙げておらず、この日曜にエスタディオ・バジェカスにベティスを迎える試合もあまり楽観的になれませんからね。フランシスコ監督を引き継いだイニゴ・ペレス監督も4試合で2分け2敗と、まったく悪い流れを変えられていませんし、私もかなり心配になってきているんですが…ここは、選手たちが奮起してくれることを祈るしかありません。 そんな中、マドリッド勢3チームが続々と負けた後、唯一、先週末白星を挙げたのがレアル・マドリーだったんですが、まあ、日曜はサンティアゴ・ベルナベウでのセルタ戦でしたからね。ここ4試合で1勝3引き分けとちょっと停滞気味で、直近のCLライプツィヒ戦2ndレグでは準々決勝進出を決めたものの、要求の高いマドリーファンからpito(ピト/ブーイング)を受けたなんてこともあったものの、逆にそれが選手たちに喝を入れてくれたんでしょうか。ベリンガムの2試合出場停止に加え、ローテーションでスタメンにブライム、モドリッチ、ルーカス・バスケスを入れたアンチェロッティ監督のチームはこの日は序盤から、積極的に出ていくことに。 そのおかげもあって、前半21分にはモドリッチの蹴ったCKをリュディガーがヘッド。これはGKグァイタに弾かれてしまったものの、ビニシウスが2度撃ちで先制ゴールを挙げたとなれば、ええ、相手は降格圏と勝ち点2差しかない17位のチームですからね。スタンドもgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を期待したんですが、その後はなかなか追加点が入りません。1-0のまま、後半が始まったのにジレたか、ビニシウスなど、9分にはミンゲサにユニフォームを引っ張られてドリブルを止められたのがよっぽど悔しかったんですかね。ライプツィヒ戦のオルバンに続いて、相手を突き倒し、この日もイエローカードをもらっていたんですが、まったく。 いやまあ、この試合の前に「あれ程、付け狙われる選手は見たことがない。Creo que todo el mundo tiene que cambiar la actitud contra Vini/クレオ・ケ・トードー・エル・ムンド・ティエネ・ケ・カンビアール・ラ・アクティトゥッド・コントラ・ビニ(皆がビニシウスに対する態度を改めないといけないと思う)」とアンチェロッティ監督に庇われたせいで、当人も自分のやることは何でも正当化できると自信をつけちゃったのかもしれませんけどね。何かもう、最近の彼はいきなりキレることが多すぎて、そのうち大事を起こすんじゃないかと不安になりますが、大丈夫。 時間はかかったものの、ロドリゴがホセルに代わった後の34分、またしてもモドリッチのCKから、リュディガーがヘッドして、いえ、これもゴールバーに弾かれてしまったんですけどね。今度はグァイタの背中に当たり、オウンゴールでマドリーは2点目をゲット。更に43分にはビニシウスのクロスをグァイタが逃し、後ろにいたカルロス・ロドリゲスが自軍ゴールに蹴り込んで、3点目となったとなれば、ゴール祝いを楽しみにベルナベウにやって来るファンも満足しますって。 おまけにロスタイム4分には、ようやく3点差となって出番がもらえたセバージョスとギュレルが発奮。クロースが素早く出したFKを前者がエリア内に送り、後者がグァイタをかわして撃ったボールがゴールに入り、今季加入した18才のトルコ人MFのマドリー初得点となるんですから、嬉しいじゃないですか。ええ、シーズン前半の彼は負傷に祟られ、治った後も選手層の厚さになかなか、試合で自身のプレーを披露する機会がありませんでしたからね。まだ若いですし、今季は修行の年と割り切って、精進に努めていた甲斐があったかと。 結局、ほとんどチャンスもなかったセルタはそのまま4-0で負け、ベニテス監督もより厳しくなった残留争いを続けることになったんですが、マドリーの方は2位ジローナ、3位バルサとの差をそれぞれ、勝ち点7、8と保って、再びミッドウィークフリーの1週間を楽しめることに。バルサやアトレティコがCL準々決勝に勝ち上がるかどうか、高みで見物しながら、土曜のオサスナ戦までじっくり調整していればいいんですが、来週はドイツ代表復帰を決めたクロースを含め、大量の選手が世界各地に出向するインターナショナルウィークに入りますからね。スペインとモロッコの間で迷っていたブライムも後者を選び、即招集となるようですし、アンチェロッティ監督の当面の懸念は代表戦で負傷者が出ないかといったところになりましょうか。 <HR>【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。 2024.03.12 20:00 Tue
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