リーガの時間割は親切じゃなかった…/原ゆみこのマドリッド

2022.01.05 21:00 Wed
©Atlético de Madrid
「今季はコパ狙うチームが多いかも」そんな風に私が予感していたのは火曜日、リーガ年明け最初の節が終わった途端、コパ・デル・レイ32強対決が始まっているのに気づいた時のことでした。いやあ、マドリッド勢4チームがダブルダービーで相まみえた2日には、10月半ばから無敗の快進撃をしていたレアル・マドリーが負けるという波乱があったものの、それでも4位のお隣さんとの差は勝ち点14、5位バルサとも15ありますからね。2位のセビージャこそ、消化試合が1つ少ない状態で5差となったため、僅かに首位奪取のチャンスが出てきたとはいえ、13差の3位ベティス以下はEL出場権が欲しい8位ビジャレアル、10位アスレティック辺りまで、コパ優勝が一番のヨーロッパへの早道と考えているかもしれなかったから。

まあ、コパについてはまた後から話すことにして、先に先週末のリーガがどうだったか、お伝えしていくことにすると。その日は最初にコリセウム・アルフォンソ・ペレスに行った私だったんですが、コロナ感染者数増加に伴い、直前にスタジアムの入場者数がキャパの75%以下に制限された分はどうやら、マドリーファンのチケットを払い戻しただけで十分だった?その区画以外、スタンドはほぼ満員となる盛況ぶりで、どちらも他と比べると、コロナ陽性者の欠場が少ないチーム同士の対戦だったんですけどね。意外だったのは、アンチェロッティ監督がまだ自宅隔離中のビニシウスの代わりにアザールをスタメンで使わず、昨年最後のアスレティック戦を陽性でプレーできなかったアセンシオとロドリゴをベンゼマのヘルプに置いたことだったでしょうか。

でも、その「コロナのせいで、2人は90分、持たないことがわかっていたから、tenía a Hazard para la segunda parte/テニア・ア・アザール・パラ・ラ・セグンダ・パルテ(後半にアザールをとっておいた)」(アンチェロッティ監督)という作戦の良し悪しがわかる前だったんですよね。開始9分には、敵エリア近くでサンドロがクロースにボールを取られたかと思いきや、それをもらったミリトンがエネス・ウナルにかっさらわれ、そのシュートでヘタフェに先制点が入ったから、ビックリしたの何のって。とはいえ、すぐ後にはモドリッチやクロースにゴールを脅かされていたため、1点だけでは全然、足りないんじゃないかと、まだまだ弟分の勝利は遠いように見えていたんですが…。
仕方ないんですよ、まだ1-0だった前半が終わるやいなや、私がコリセウムを出たのは。というのも午後4時15分から、もう1つの弟分、ラージョをアトレティコが迎えるワンダ・メトロポリターノへはセルカニアス(国鉄近郊路線)とメトロを乗り継いで行くと、1時間以上かかるんですから。それでも途中経過はオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の中継で追っていたんですが、いつになっても、実況アナからゴールの絶叫は響いてこず。

うーん、後半頭からはアセンシオ、メンディをアザール、マルセロに代え、更にはロドリゴをマリアーノに、最後はイスコやカンテラーノ(RMカスティージャの選手)のペテルまで入れて、同点を目指したマドリーだったんですけどね。GKダビド・ソリアの好セーブとボルダラス監督がバレンシアに行ってしまった後も選手たちが忘れることのない、今季も20チーム中2番目に多い(1位はバレンシア)敵の連携をぶち切るファールの妙技。そして「マドリーの11人、全員を無効化することはできないから、hemos decidido que Kroos, Modric y Casemiro era el lugar a estrangular/エモス・デシディードー・ケ・クr-ス、モドリッチ・イ・カセミロ・エラ・エル・ルガール・ア・エストラングラール(クロース、モドリッチ、カセミロの中盤を締め上げることにした)」(キケ・サンチェス・フローレス監督)という戦法が上手くはまったか、そのままヘタフェが1-0で勝ってしまうとは!
おかげで彼らはクリスマスのparon(パロン/リーガの停止期間)前、最後の試合で抜け出した降格圏外の16位を維持できただけでなく、同じ勝ち点で並んでいたエルチェとアラベスがそれぞれ、グラナダ、レアル・ソシエダと引分けたため、勝ち点差2をつけることができたんですが、喉元過ぎれば熱さ忘れるとはよく言ったもの。こうなると、昨年中にコパ2回戦でアトレティコ・バレアレス(RFEF1部/実質3部)に5-0で敗退したのも、このミッドウィーク、他のチームが32強対決に駆り出されるのを尻目に丸々、日曜のセビージャ戦の準備に当てられるんですから、有難いじゃないですか。

一方、マドリーでは試合後、「Nos hemos quedado de vacaciones un día mas/ノス・エモス・ケダードー・デ・バカシオネス・ウン・ディア・マス(ウチは1日多く、バケーションを続けてしまった)」とアンチェロッティ監督が怒っていたとはいえ、彼らが「Seguimos líderes, sin tragedias/セギモス・リデレス、シン・トラヘディアス(悲劇という訳でもなく、ウチは首位のままだ)」というのは、紛れもない事実ですからね。もう翌日には水曜午後9時30分(日本時間翌午前5時30分)からのコパ、アルコジャーノ(RFEF1部)戦に向けて練習を始めていますが、実はこの相手には昨季のコパ32強対決で延長戦にもつれ込み、2-1で負けるという苦い思い出が。

そのせいか、アンチェロッティ監督も「Voy a poner el mejor equipo posible/ボイ・ア・ポネール・エル・メホール・エキポ・ポシブレ(最良のメンバーを並べる)」と前日記者会見で言っていたものの、ヘタフェ戦で体に不具合が出たベンゼマ、モドリッチ、メンディ、そしてGKルニンの出番を作るため、クルトワもお休み。カルバハルとベイルはまだリハビリ中のようですし、せっかく日曜にはコロナ陰性となったビニシウスも加わらず、ヨビッチはまだ陽性と、CFがマリアーノしかいないって、ちょっと大丈夫?昨季の対戦でプレーして、痛い目に遭っている選手が沢山いるため、もちろん今度は決して油断などしないでしょうが、一発勝負なだけに怖いところはありますよね。

え、それで私がヘタフェを見捨てて、何とか開始6分頃にはスタンドに辿り着けたアトレティコの試合はどうだったのかって?いやあ、最初にシメオネ監督がイエローカードをもらっているのを見て、何せ彼はバケーション明けにコロナ陽性となりながら、2回のPCR検査陰性で当日、試合開始の1時間前にやっとこ、ベンチ入りが許されたばかりでしたからね。序盤から、そんなに審判に噛みついていてはまた、退席処分になってしまうんじゃないかと心配になったものですが、大丈夫。ルイス・スアレスはここ8試合連続ノーゴールのスランプから抜け出せず、普段なら絶対決めているはずのシュートを2本も外していましたが、前半28分、救世主が現れたんです!

それはFKから始まったプレーで、丁度、先週マハダオンダ(マドリッド郊外)の練習場に私が見学に行った際も熱心に稽古していたのを知っていたため、ここは修練の成果を見せてくれるかと、少し期待していたんですけどね。ただ、思っていたのとは違って、デ・パウルの蹴ったFKは難なくクリアされてしまい、戻って来たボールを右サイドに展開。カラスコがエリア内奥から折り返して、エルモーソが撃ったものの、マラスに防がれ、コメサニャがクリアしきれなかったところにコレアがいるとはまったくもって、運がいい。彼のシュートがゴールに入った時は、あまりにプレーがゴチャゴチャしていたせいで、ファールか何かで認めてもらえないんじゃないかという心配もしたんですが、ちゃんとスコアボードに挙がってくれたんですから、今年のアトレティコにはツキがある?

とはいえ、昨年の幕を飾った4連敗では終盤に点を奪われて、土壇場で負けた試合も1つではありませんでしたからね。決して安心はできなかったんですが、この日のラージョは4人がまだコロナで隔離中、陰性になって、前日に出場できることになったメンバーも6人程いて、「練習したのが1回だけ、1回もしていない選手もいた。No estábamos preparados para jugar ante el Atlético/ノー・エスタバモス・プレパラードス・パラ・フガール・アンテ・エル・アトレティコ(ウチはアトレティコ相手にプレーする準備ができていなかった)」(イラオラ監督)せいでしょうかね。元々、アルバロ・ガルシアの負傷で右サイドの戦力が落ちていた上、ハーフには左のイシも痛みで交代を申し出ることに。

そこへ後半8分、ロディがゴール前に送ったラストパスをまたコレアが決めて、2-0とされては、いくら31分、キャパが制限されたため、ラージョファンは入れなかったにも関わらず、2010年から2012年にアトレティコに在籍。EL優勝やお隣さんを決勝で下してのコパ優勝の喜びを与えてくれた恩を忘れていないホームサポーターの大喝采を浴びて、ピッチに入った(こちらもコロナ明けの)ファルカオだって、どうすることもできませんって。いえ、アトレティコもコケ、ジョアン・フェリックス、エレーラ、グリーズマンとコロナ欠場者はいたんですけどね。ケガが治ったヒメネスが復帰しながら、3CB制を取らず、シメオネ監督がアトレティコ基本の4-4-2に戻したせいで、コンドグビアが本職のボランチでいい働きをしてくれたのも大きかったかと。

何はともあれ、「Ganar era tremendamente importante/ガナール・エラ・トレメンダメンテ・インポルタンテ(勝利することが非常に大事だった)」とシメオネ監督も認めていたように、しばらくチームが勝つ試合を見せてもらえなかったファンもこの、年明けのクリスマスプレゼントには大喜びだったんですが、もしや一番のご褒美をもらえたのはコレアだった?というのも今季7得点目を挙げた後、火曜には2024年までだった契約が2026年まで延長されたことが発表されたからで、いやまあ、彼は昨季のリーガ優勝の立役者の1人ではあるものの、ここぞという時に外す日も決して珍しくなく、ちょっと評価が難しい選手ですからね。

とりわけ今季は開幕2試合で3得点挙げながら、グリーズマンの加入後は控えに回ることが多かったんですが、それでも「Siempre trato de estar bien físicamente para dar lo máximo/シエンプレ・トラト・デ・エスタル・ビエン・フィシカメンテ・パラ・ダール・ロ・マキシモ(最大限に貢献できるよう、常にフィジカル的にいい状態を保つようにしている)」という当人の心がけは見上げたもの。霧煙る火曜の練習では、いよいよグリーズマンとマルコス・ジョレンテがチームに合流したとはいえ、ルイス・スアレスとヒメネスが累積警告で出場停止となる日曜のビジャレアル戦では再び、コレアのゴールが待たれるところです。

そしてコパでは木曜午後9時30分から、アトレティコの練習場にあるミニスタジアムをホームにしているラージョ・マハダオンダ(RFEF1部、ラージョ・バジェカーノと経営関係はない)と対戦する彼らなんですが、そこは気分の問題でしょうか。通常は格下チームのホーム開催となるところ、ワンダ・メトロポリターノを会場として貸してあげることになったんですが、実はここ2年間、コパはアトレティコの黒歴史になっていてねえ。そう、2019-20シーズンには初戦の32強対決でクルトゥラル・レオネサ(当時は2部B)に負け、昨季も2回戦でコルネジャ(同2部B)に早期敗退に追いやられているんですよ。

それだけに今季は選手たちも気を引き締めていると思いますが、こちらもGKだけはお隣りさん同様、オブラクではなく、控えのルコントにする程度で、後はトップチームの精鋭で挑む模様。丁度木曜はReyes Magos/レジェス・マゴス(東方の3賢人)の祝日とあって、15ユーロ(約2000円)の格安チケットの売れ行きも上々のようですし、今年こそは1部チームの貫禄と余裕で勝利してもらいたいものですが…過去2年もまさか負けるなんて思っていなかったため、あまり楽観はしない方がいいかもしれません。

一方、兄貴分には歯が立たなかったものの、元々、苦手のアウェイですし、シーズン前半戦だけで勝ち点30。土曜の夜には16人ものコロナ&負傷による欠場者を抱えたバルサがマジョルカに勝ったため、6位で折り返すことになったとはいえ、昇格組としては賞賛すべき高みにいるラージョも水曜にはコパのミランデス(2部)戦があるんですが、これも不思議な縁ですよね。2019-20シーズンにリーガの指揮官としてデビューをしたイラオラ監督が率いていたのが、このミランデスで、その時も2部ながら、セビージャやビジャレアルを下して、準決勝に進出。レアル・ソシエダに敗れて、惜しくも決勝は逃しましたが、そうそう滅多にある快挙じゃなかったかと。

今季は逆に格上のラージョを率いて、アンドゥーバを訪れるんですが、どうやら週明けのチーム状況も「毎日、新しい陽性者が出て、戻って来た選手もまだ練習が足りない」(イラオラ監督)とあまり変わっていないよう。まあ、といってもコロナ感染者多発に悩まされているのは今や、どこのチームも同じですからね。こちらは週末のベティス戦が終われば、来週はスペイン・スーパーカップ(アトレティコ、マドリー、バルサ、アスレティクの4チームが参加)開催週でゆっくりできるため、その辺りで戦力が整うように調整できるのではないでしょうか。

ちなみにコパではマドリッド勢2部チームも2つ残っていて、水曜にはレガネスがブタルケにレアル・ソシエダを迎えることに。先週末はバジャドリーに1-0で負けてしまった彼らですが、今は降格圏まで勝ち点差5の17位と、ちょっとリーガでも余裕が出て来ただけに、ナフティ監督も力を入れてくれるかもしれません。その真逆なのがフエンラブラダで、こちらは木曜にカディスとフェルナンド・トーレスで対戦なんですが、20位とどっぷり降格圏に浸っていてはねえ。すでに2回戦で敗退した、最下位を爆走するアルコルコンと共に、今年は残留達成に専念したいところでしょうが、もし1部で19位の相手も同じことを考えていたら、微妙な試合になるかもしれません。

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