検査をすればコロナは見つかる…/原ゆみこのマドリッド

2022.01.01 21:00 Sat
©Atlético de Madrid
「せめてもの慰めだわね」そんな風に私がホッとしていたのは大晦日の金曜日、元旦をまたいで開催されるリーガ19節で1つだけ年内試合となったバレンシアvsエスパニョール戦が夕方に終了。8位のホームチームが1-2の逆転負けをしたため、アトレティコもラージョも順位を落とさず、新年を迎えられるのを知った時のことでした。いやあ、1部に帰って来たシーズンながら、CL出場圏内の4位と頑張っている弟分はともかく、昨季王者の兄貴分が5位とその後塵を拝したまま、クリスマスのparon(パロン/リーガの停止期間)に入ったせいで、アトレティコファンにとっては、あまり気分がいいとは言えない1週間だったと思うんですけどね。

とはいえ、年明け早々の2日にはそのラージョとの兄弟分ダービーがワンダ・メトロポリターノであるため、まだCL出場圏復帰は手の届く課題なんですが、実は最近はスペインもオミクロン株によるコロナ感染者激増となり、サッカー界も影響を受けることに。ええ、ここのところ、スタジアムのキャパ100%で通常営業できていた試合が、メスタジャのバレンシア戦を最後に1月からは75%に減らされてしまうんですよ。それも決まったのが今週半ばだったせいで、何せ、マドリッドではもう1つのカードもヘタフェvsレアル・マドリーの兄弟分ダービーで、チケット販売が始まった後の通達だったため、アトレティコもヘタフェもアボナード(年間指定席購入者)を優先。ビジターチームファンの席をなしにすることにして、粛々と返金しているんですから、新年のサッカー観戦を楽しみにしていた家族連れなどにはかなりいい迷惑だったかと。
おまけにスタジアム内での規則も厳しくなり、いえ、シーズン開始当初に戻っただけとも言えますけどね。最近はまだ絶賛改装中で、場内に売店もないサンティアゴ・ベルナベウを除き、ワンダ・メトロポリターノでもコリセウム・アルフォンソ・ペレス、エスタディオ・バジェカスでもスナックやドリンクを販売していたため、いつの間にか、OKになったんだなと思っていた観戦中の飲食が再び、水以外は禁止となり、喫煙もダメ。常にマスク着用を求められるようになったんですが、そういえば、大晦日のカウントダウンに毎年、大量の人が集まるプエルタ・デ・ソル(マドリッド市の中心にある広場)でも、スペインの慣習で午前0時の鐘の音に合わせて、12粒のブドウを食べる時以外、マスクを外してはいけないとニュースで何度も注意喚起していましたけどね。いや何か、オミクロンだと、その間にうつってしまわない?

といってもサッカーを見る側はまだ気楽なんですが、大変なことになっているのは主役のチームの方で、うーん、これもまたラ・リーガのコロナ予防規則で毎日、練習前に抗原検査を実施。試合前日にはPCR検査と、一般人とは比べものにならない回数の検査を課しているからなんですけどね。おかげでバケーションから帰って来た選手たちから、金曜までに100名近くの陽性者が発見されることになったんですが、とりあえず、マドリッド勢の状況を報告していくことにすると。11月の代表戦週間が終わってから、リーガを6勝1分けの無敗で乗り切り、2位セビージャに勝ち点差8をつけて独走態勢に入っているマドリーは水曜にバルデベバス(バラハス空港の近く)での練習を再開。

ちなみに彼らは例外的にクリスマス前最後となったアスレティック戦前に早くもコロナ禍に襲われており、その時にはモドリッチ、マルセロ、ロドリゴ、アセンシオ、ベイル、ルニン、イスコ、アラバが欠場しながら、サン・マメスではベンゼマの2ゴールで1-2と手堅く勝利することに。そこから約1週間の休暇があったため、その8人はすっかり陰性となって戻って来たんですが、もう仕方ないですよね。クリスマスを国外で祝ったクルトワ(ドバイ)、ビニシウス(マイアミ)、バルベルデ(ウルグアイ)、カマビンガ(フランス)が最初のPCR検査で陽性を出してしまったのは。
よって、この4人は夕方からの練習に参加できなかったんですが、一体、どうなっているんですかね。翌日にはクルトワが「もう2回、PCRで陰性になった」と自身のSNSで呟いたのを皮切りにバルベルデ、カマビンガも陰性になっていたそうで、え、つまり彼らはバケーション前、最後の検査直後に感染、旅行先でウィルスをふんだんにまき散らして、戻って来た頃は丁度、治りがけだったということ?ただ、木曜にはマドリッド州の衛生規則で陽性者の隔離期間が10日間から7日間に減ったものの、まだその日数をクリアしていない3人はチーム練習には合流できず。

クルトワのように自宅で自主トレをするしかないんですが、日曜午後2時(日本時間午後10時)からのヘタフェ戦も出ていいのかどうか、現在はラ・リーガと州当局との結論を待っているところなのだとか。いえまあ、バケーション前のオサスナ戦後半ロスタイムにポベダのゴールで1-0と勝利。やっとこさ降格圏を抜け出し、16位となったものの、17位エルチェ、18位アラベスと同じ勝ち点で、ちょっとでも気を抜くとまたしても深みにはまってしまうヘタフェなどは、来週水曜のコパ・デル・レイ16強対決アルコジャーノ(RFEF1部/実質3部)への準備も兼ねて、GKルニンがコリセウム・アルフォンソ・ペレスで今季初先発してくれるのは大歓迎でしょうけどね。

ただ、クラブの方針でコロナ感染者情報を公開しないことにしたキケ・サンチェス・フローレス監督のチームにもオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の情報によると、3人程、陽性者がいるそうで、練習も完全非公開のため、それが誰かわからないのは不安。出場停止処分を終えて戻って来る予定のマタやジェネでも困りますし、誰が欠けるにしても、2012年8月以来、9シーズン、兄貴分に勝っておらず、ゴールも2019月10月のホルヘ・モリーナ(現グラナダ)以来、挙げていないとなれば、もうそれだけで地元のファンはあまり楽観的にはなれないんじゃないかと思いますが、さて。

それでも運が味方してくれれば、同日、グラナダと対戦するエルチェ、解任されたカジェハ監督に代わり、メンディリバル新監督(昨季までエイバルを指揮)の下でレアル・ソシエダを迎えるアラベスに抜かれないで済みますけどね。そうそう、アンチェロッティ監督のチームではコロナ感染以外でもカルバハルとベイルが別メニュー練習で、ヘタフェ戦には間に合わない模様。逆に復帰するのはアスレティック戦で出場停止だったカセミロで、ここ2試合先発しているアザールは引き続き、スタメンに入って、真価を示すチャンスをもらえそうです。

え、それでお隣さんの試合のすぐ後、日曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)から、4位の座を懸けて、ラージョと対戦するアトレティコはどうなんだって?いやあ、こちらも水曜に練習を再開し、当日は抗原検査で全員陰性だったため、マハダオンダ(マドリッドの近郊)のグラウンドでなるたけ、選手同士が近づかない個人練習セッションを実施。ところが翌日になってPCR検査の結果が出てみれば、シメオネ監督を筆頭にコケ、グリーズマン、ジョアン・フェリックス、エレーラの4選手が見事、陽性判定だったから、さあ大変!それこそコケとグリーズマンなど、家族同伴で一緒にニューヨークに飛び、やはりコロナ感染で大勢の欠場者が出ているNBAやNFLの試合観戦を楽しんでいる様子をSNSに上げていたせいで、軽率の誹りを免れなかったんですけどね。

私が練習見学に行った金曜日には、いよいよまた、選手は自宅から練習着に着替えて出勤、ロッカールームは使用せず、シャワーも家に帰って浴びるという、ラ・リーガが課した規則を守っていたのが幸いしたか、それ以上の陽性者が増えることはなし。とはいえ、お隣さんのように陰性になった選手もいなかったため、まだ負傷のリハビリ中のグリーズマンはとにかく、他の3人は前日のテストでOKとなっても、州当局との兼ね合いもありますからね。来週木曜にホームチームはラージョ・マハダオンダ(RFEF1部、ラージョ・バジェカーノと経営関係はなく、アトレティコの練習用ミニスタジアムをホームとして使っている)ながら、ワンダを会場として提供するコパ16強対決も出場は難しいかと。

いやあ、このところ、マドリッドは年末とは思えない好天が続き、気温も15℃以上になるなど、妙に春めいていたため、冒頭15分のフィジカルトレを見ただけで外に出された後も敷地の裏に回って、自宅隔離のシメオネ監督に代わり、第2監督の指揮するセッションの様子を覗ってみた私だったんですけどね。まだファンの目が届くグラウンドでは楽しそうにテーブルサッカーをやっていたりしたものの、シートで覆われた隣のグラウンドに移ってからは何か、やたらコーチの声ばかりが聞こえるセッションに。どうやらルイス・スアレスに敵のプレスがかかっているか、いないかで、トリッピアーとコレアの右サイドの動き方を変えるみたいなことをやらされていたんですが、やっぱりここ4連敗という重圧を選手たちも感じている?

その後はセットプレーからの攻撃で、CKやFKの蹴る位置を取っかえ、ひっかえやっていたんですが、毎日見ている訳ではないので断言はできないものの、できれば守備の方を優先してほしかったりもしないではなかったかと。その一方で1つ上に立っているラージョでは、アトレティコ以上のコロナ感染者が発生中。そう、水曜には選手、スタッフ合わせて計17人とも言われ、イラオラ監督も自宅隔離でいなかった練習場にはトップチームの選手が8人しかおらず、一時は日曜の試合を延期してもらうよう、ラ・リーガにお願いするなんて話も出ていたんですけどね。それは最低、カンテラーノ(Bチームの選手)を含めて13人(うちトップチーム5人)を切らないうちは試合をするという決まりにより、実現せず。

そうこうするうちに木曜には3人、金曜にも5人が陰性となり、練習に復帰してきたため、やはりPCR検査をクリアしたイラオラ監督はもう15人のトップチームの選手を使えることになったんですが、何故こうなったかというと、こちらはクリスマス休暇直前の検査で陽性になった12人が続々、回復してきたから。ただ最後のアラベス戦で負傷したアルバロ・ガルシアはリハビリ中ですし、復帰メンバーの中にはキャプテンのトレホやファルカオの名前がなかったため、この辺はまだ陽性なんじゃないかと思いますが、何ともねえ。

今季ホームのエスタディオ・バジェカスでは9試合8勝1分けと無敗を誇るラージョもアウェイでは9試合でまだ1勝だけという低空飛行。だからといって、ワンダでも4勝3分け1敗と、かなり勝ち点を落としているアトレティコが強気に出られる訳でもないんですけどね。休暇明けはヒメネスとベルサイコがチーム練習に合流して、手薄だった守備陣が少しマシになり、コケやマルコス・ジョレンテのいない中盤にコンドグビアが戻れるというのは好材料ではあるものの、とにかくいい加減に勝たないことには。すでに勝ち点差17と首位マドリーは雲の上のチームになってしまったとはいえ、レアル・ソシエダやバルサにも抜かされて、それこそマストの4位ゲットが一筋縄ではいかなくなる可能性もありますし、ここ8試合無得点のルイス・スアレスもそろそろ、昨季のようにゴールづいてくれないでしょうか。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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