今はまだ、コパには構ってられないけど…/原ゆみこのマドリッド

2021.12.18 20:00 Sat
©Atlético de Madrid
「どう見たって恥ずかしいわよね」そんな風に私が怒っていたのは金曜日、コパ・デル・レイ2回戦では1部4チームが早くも脱落したものの、マドリッド勢の弟分、ヘタフェ程、大量得点差で負けた例は他にないのに気がついた時のことでした。ええ、普通、goleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らうのは下位カテゴリーのチームの方で、このラウンドでもビジャレアルがサンルケーニョ(RFEF1部/実質3部)に1-7、先発した久保建英選手がCKでアシスト2本を挙げ、彼と交代したイ・ガンインも2アシストと活躍したマジョルカもジャネラ(RFEF2部/実質4部)に0-6と大勝。

ところが、ヘタフェときたら、早々に1点をリードされていた前半31分にカバコが敵選手に頭突きをして、一発退場になるという逆境はあったんですけどね。アトレティコ・バレアレス(RFEF1部)に更に4点も奪われた挙句、別にカンテラーノ(ヘタフェBの選手)を並べまくった訳でもなく、控えとはいえ、トップチームのメンバー中心だった彼らの枠内シュートは1本もないという体たらく。となれば、キケ・サンチェス・フローレス監督が、「Hoy no hay excusas, pedimos perdón a los aficionados/オイ・ノー・アイ・エクスクーサス、ペディモス・ペルドン・ア・ロス・アフィシオナードス(今日のことは言い訳できないし、ファンには謝るしかない)」と頭を下げていたのは当然だった?
こうも情けない姿をさらしてくれると、日曜のオサスナ戦で勝って、降格圏外か、18位でも17位と同じ勝ち点となり、1部残留に希望の持てる新年をコリセウム・アルフォンソ・ペレスのファンたちに贈って、2021年を締めくくってほしいという、私のささやかな願いも果たせるのかどうか、心配になってしまいますが、それとまったく対照的なのが、もう1つの弟分ラージョ。ええ、こちらも控え選手がメインだったものの、水曜にはブラガンティーニョス(RFEF2部)にマリオ・スアレス、シセ、セルヒオ・モレノのゴールで1-3と快勝。32強対決ではミランデス(2部)と、ちょっと相手のランクが上がりますが、まずは土曜のリーガ、17位のアラベスに勝って弟分仲間を援護射撃、今季のエスタディオ・バジェカス無敗神話を延長しつつ、EL出場圏の6位で年を越えられたらと。

ちなみにマドリッド勢2部チームのコパ2回戦の成績は2勝1敗。最下位爆走中のアルコルコンがスポルティング・ヒホンとの同格対決で敗退し、1月4~6日にある32強対決に煩わされることがなくなったのはむしろ朗報と言っていいかもしれませんけどね。降格圏19位のフエンラブラダなど、UDサンセ(RFEF1部)とのコパダービーに延長戦でも0-0のまま、PK戦でやっとこ勝利した直後、オルトラ監督が解任。その上、年明けすぐにはミッドウィークにカディスとの32強対決も入ってしまうことに。一方、柴崎岳選手は帯同せずにクルトゥラル・レオネサ(RFEF1部)に2-3と勝利したレガネスは次ラウンド、ブタルケにレアル・ソシエダを迎えるんですが、彼らもまだ、フエンラブラダと勝ち点3差の18位と、目標の1部昇格プレーオフ領域から、遥か彼方にいますからね。とはいえ、日程が混むのはちょっと微妙ですが、ファンには嬉しいお年玉カードとなるかもしれませんよ。

え、1月にスペイン・スーパーカップがあるため、コパの1、2回戦は免除。いよいよ、32強対決から登場となる、マドリッドの両雄はどうなったのかって?いやあ、丁度、金曜にはマハダオンダ(マドリッド近郊)にアトレティコの練習見学に行った私だったんですけどね。セッションが終わって、駐車場でウダウダしているうちにRFEF(スペイン・サッカー協会)の抽選会が進み、何と彼らがセッションで使っているミニスタジアムをホームとするラージョ・マハダオンダ(RFEF1部、ラージョ・バジェカーノと経営関係はない)と当たるって、物凄い偶然じゃないですか。うーん、ここ、セロ・デ・エスピーノでプレーしたら、アトレティコの選手たちが練習試合気分になってしまいそうなのは困りますが、だったらいっそ、ワンダ・メトロポリターノを会場として提供してあげる訳にはいかない?
それはともかく、いつもなら15分のセッション公開時間で、選手たちがウォーミングアップのかなりレクリエーション的なエキササイズをやっているのを眺めた後、すぐ帰ってしまっていた私だったんですが、この日はまだマドリーダービー敗戦のショックが尾を引いていてねえ。天気も良くて暖かったし、ミニスタジアムでない下のグラウンドに選手たちがいたため、久々に敷地を囲った目隠しにどこか、穴でも開いてないかと、グルリと外を回って見たところ…。

丁度、ゴールのある側に着くと、いえ、もう覗き見できる穴はなかったんですけどね。「自分の前に5人も集まって、敵のアタッカーが1人になった。ベンゼマとか」って声が中から聞こえてきて、え?これ、喋っているのはオブラク?どうやらGKコーチと話していたようで、「ビデオも見たけど、un error infantil/ウン・エロール・インファンティル(子供みたいなミスだよ)。それももう、8回ぐらいやってる。エルモーソには自分の前をカバーしてって何度、言ったことか。フェリペもニアポストでミスするし」。そんな愚痴が5分以上も続き、物音を立てないよう、こっそり一緒に聞いていたラ・セスタ(スペインの民放)のレポーターのお姉さんと思わず、顔を見合わせていたんですが、その間、フィールドプレーヤーたちはグラウンドの他の場所で練習中。

いえ、オブラクの口調は穏やかで、別に怒っているようには聞こえなかったんですけどね。大体がして、毎度のようにセッションの最初から、GKたちは真摯にボールを止める練習をしているのに、チームメートたちがキャッキャッとやっているのは常々、ちょっと損な役割だなと思っていた私でしたが、ダメですよね。彼のような一流の守護神に16試合で18失点もさせるようでは。これではそのうちオブラクもデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)やクルトワ(レアル・マドリー)のように、アトレティコを見限って、もっとお給料の高いチームに行ってしまうかも。

ただ、それでも裏から前日の様子も覗っていた彼女によると、サイドからのクロスをクリアする稽古は延々とやっていたようですけどね。この日は全員練習が終わった後、シメオネ監督はコレア、マルコス・ジョレンテ、デ・パウルを残して、右サイドからの攻撃を集中特訓。どう動いたら、敵より数的優位に立って、ルイス・スアレスやジョアン・フェリックスへラストパスが送れるのか、直々に指導しているのも聞こえたんですが、何せ、今年はもう、ダービーでケガをしたグリーズマンが使えませんからね。サビッチ、ヒメネス、ベルサイコら、負傷中のDFもまだ誰1人、戻って来てませんし、果たして土曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのセビージャ戦はどうなることやら。

そう、相手は首位のマドリーからは勝ち点8離れているとはいえ、4位のアトレティコと5差の2位。弱みがあるとすれば、あちらはコパ1回戦から参加しているため、ここ3週間、CLも挟んで連戦が続いている上、水曜のアンドラ(RFEF2部)戦では1-1で延長戦に入り、PK戦5-6で何とか勝利した辺りかと。元々、負傷が多いのに加え、その試合でもオリベル・トーレスがケガしたり、オカンポス、アクニャ、そして長期リハビリから戻ってきたエン・ネシリも当日まで出場できるかどうかは不明ということで、プレー時間の多い選手にはかなり疲れも溜まっていそうですが、それもアトレティコがCLポルト戦のような、優良バージョンを出せなければねえ。

ダービーに負けた後、お隣さんとの勝ち点差が13になったため、もう、アトレティコのリーガ連覇の夢は叶わないとしてもとにかく、来季のCL出場権がもらえる4位内には入ってもらわないと、クラブ財政的にもマズことになりそうな。そうそう、火曜にモドリッチ、マルセロの2人がコロナ陽性となったマドリーとプレーしたばかりの彼らからは、陽性者はとりあえず、金曜までは出ていないんですが、大ごとになっているのはアンチェロッティ監督のチームの方。水曜には午前練習の代わりにバルデベバス(バラハス空港の近く)の施設で選手全員にドライブスルーPCR検査を実施したところ、更にアンセシオ、ロドリゴ、ベイル、控えGKのルニン、監督の息子のアシスタントコーチの5人も陽性に。

幸い、重い症状のある選手はおらず、おまけにラ・リーガはカンテラのヘルプも含め、13人以上(うちトップチーム所属が最低5人)いれば、試合を開催するとしているため、日曜午後9時からのカディス戦延期の恐れはないんですが、ちょっとややこしいんですよね。金曜にはもう新たな陽性者も現れず、おまけにモドリッチが早くも陰性になったというんですが、ラ・リーガのコロナ感染予防規則では10日間の隔離措置が義務なのだとか。それとは異なって、マドリッド市はワクチン接種済みならば、陰性になった直後から隔離解除OKとなっているため、モドリッチがカディス戦に出られるかどうかは土曜にならないとわからないんですが、もうマドリーは10連勝もしていますからね。

そろそろ、アザールやルーカス・バスケス、バルベルデ、カマビンガといった辺りに先発のチャンスを与えて、サンティアゴ・ベルナベウでの年内最終戦を楽しませてあげてもバチは当たらないんじゃないかと思いますが、さて。気になるのは先週のCLインテル戦を負傷でお休みし、ダービーも先制ゴールを挙げた後、ハーフで交代したベンゼマ、グリーズマンのケガの原因となるタックルをしたカルバハルがグラウンドでの練習に参加しておらず、こちらもカディス戦に間に合うか、微妙ということなんですが、来週水曜のアスレティック戦が終われば、選手たちは1週間程、クリスマスのバケーションがもらえますからね。

年明けは1月2日、ヘタフェとの兄弟分ダービーで始まるマドリーですが、続くミッドウィーク開催コパ32強対決ではアルコジャーノ(RFEF1部)と顔を合わすことが決定。実はこの、レバンテをPK戦で下して勝ち上がってきた相手とは、昨季のコパ同ラウンドでも顔を合わせており、その時は1-2でマドリーが早期敗退させられているんですよ。まさか、2度も続けて奇跡が起きるとは予想しづらいんですが、そういった意外性が一発勝負形式となったコパの醍醐味でしょうか。その他、スペイン・スーパーカップ出場組ではバルサがリナレス(RFEF1部)、アスレティックが実質4部唯一の生き残りであるアトレティコ・マンチャという組み合わせになりましたが、どちらのチームも今はリーガで手一杯。1月はまたしても波乱があるかもしれませんね。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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