リーガはダメでもCLがある?/原ゆみこのマドリッド

2021.12.15 19:00 Wed
Getty Images
「尋常じゃないことって起きるのねえ」そんな風に私が呆けていたのは月曜日、正午からのCL16強対決抽選会のライブストリーミングを見て、アトレティコの相手がバイエルンになったことを確認。それからスーパーに出かけがけら、キオスクのアトレティコファンのオジさんと「今季のCLは終わったね」という会話までしていたんですけどね。午後3時のお昼のニュースを見たところ、アトレティコの相手はマンチェスター・ユナイテッドと言っているのには???となるばかりだったんですが、それも当然。実はその時、まさに2回目の抽選が行われていたのがわかった時のことでした。

いやあ、これってUEFA始まって以来の大ポカで、最初の抽選でベンフィカvsレアル・マドリーのカードが決まった後、ビジャレアルの相手を選ぶホウルに同じグループの1位だったマンチェスター・ユナイテッドが入っていたんですよ。それもクジを引く役のアルシャビン(ゼニト、アーセナルで活躍した元MF)がたまたま、ユナイテッドを引いたせいで発覚したんですが、この時は司会もスルーを決め込み、もう1度、引いてもらったところ、マンチェスターでもシティの方が登場。それだけでなく、次のアトレティコの相手チームの入ったボウルにはユナイテッドが入っていなかったこともわかり、各方面から抗議を受けたUEFAは午後3時から、抽選総やり直しをすることに。

すると今度はアトレティコはユナイテッド、ビジャレアルはユベントスと当たり、どちらも名門ではありながら、今季は国内リーグ戦で苦境にあるせいか、両チームともちょっと得したような気になったんですが、ここで割を喰ったのがお隣りさん。ええ、無難な相手だったベンフィカがPSGに代わったため、すわ「欧州スーパーリーグ構想発案クラブへの嫌がらせか」なんて声が上がったものでしたが、いやいや。何せ、PSGにはセルヒオ・ラモス、ケイロル・ナバス、ディ・マリア、アクラフらのマドリーOBに加え、メッシやネイマールらのバルサOB、そして契約満了まで6カ月を切る1月にはもう、マドリーと来季入団の契約を結んでいるんじゃないかと言われているエムバペがいますからね。
それだけに2月15日、サンティアゴ・ベルナベウでの1stレグ、3月9日、パルク・デ・プランスでの2ndレグ共々、大盛り上がりするんじゃないかと思いますが、え?ユナイテッドなら、アトレティコにも16強突破の可能性があるのかって?うーん、向こうには2018-19シーズンの同ラウンド1stレグで2-0とワンダ・メトロポリターノで先勝されながら、トリノでの2ndレグでハットトリックを挙げ、ユベントスを逆転突破に導いたクリスチアーノ・ロナウドがいますからねえ。昨季は指揮官をCL決勝トーナメント前にランパード監督から、トゥーヘル監督に代えたチェルシーに16強対決で敗退しているだけに、ユナイテッドがスールシャール監督から、ラングニック監督に代わっているのも嫌な予感がしますし、とにかくアトレティコが今のようにイレギュラーな状態だと、あまり期待は持てないんですが、はあ。天下のバイエルンを相手にするよりは、ちょっとはマシってぐらいでしょうか。

ちなみに私が極端に悲観的になっているのは先週末のマドリーダービーが原因で、いえ、17節は土曜に弟分のヘタフェがアラベスと対戦して始まったんですけどね。それも前半20分にはエネス・ウナルのゴールで先制して、一時的に降格圏を脱出していたんですが、そうは問屋が卸しませんでした。ええ、終了まであと少しという後半40分、エドガルのクロスをクエンカがヘッドでクリアしたボールがホセルの前に落ち、同点ゴールを決められてしまうんですから、悔しいじゃないですか。
結局、1-1の引分けに終わり、19位のままだったヘタフェはこの日曜、コリセウム・アルフォンソ・ペレスでのオサスナ戦で年越しを残留圏で迎える最後のトライをすることになったんですが、何せ、クリスマスのparon(パロン/リーガの一時停止期間)明けの1月2日はマドリーとの兄弟分ダービーになりますからね。それを考えると、マタは累積警告で出場停止になるものの、年内最終戦には絶対、勝っておきたいところですよね。

一方、日曜の早い時間、私がブタルケでレガネスの試合を見ている間には、もう1つの1部の弟分ラージョも、いやあ、予想に反して、ファルカオの復帰が遅れているせいでしょうか。ラ・セラミカでのビジャレアル戦では前半30分過ぎに魔が差して、まずはマンディのヘッドで先制されると、その5分後にはPKでジェラール・モレノに2点目を奪われてしまったんですよ。苦手なアウェイというのもあったか、そのまま2-0で負けてしまったんですが、6位キープができたのは不幸中の幸いだったかと。ただ、こちらも7位のバレンシアが勝ち点差2で追ってきているため、土曜のアラベス戦では無敗のエスタディオ・バジェカスの地の利を生かし、是非ともヨーロッパの大会出場圏内で今年を終えて欲しいんですが、それが弟分仲間のヘタフェへの援護射撃にもなるとしたら、願ったり叶ったりでは?

そして夜にはサンティアゴ・ベルナベウに向かったんですが、昨季はコロナ禍により、バルデベバス(バラハス空港の近く)のエスタデォ・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)で無観客試合だったため、2年ぶりにファンの前で開催されるダービーながら、改装工事でスタンド下段の大部分がまだシートで覆われているせいでしょうかね。特に横断幕などもなく、普通の雰囲気で始まると、折しもミッドウィークにはCL最終節のポルト戦で1-3と勝利。土壇場のCL決勝トーナメント進出決定で意気が上がっていたか、序盤はアトレティコが積極的に攻めていたんですが、まさか前半16分、ビニシウスのクロスをノーマークのベンゼマに決められて、先制点を奪われてしまうとは、ホントに情けない。

だってえ、当人も潔く、「Un error mío en la primera parte terminó con el gol/ウン・エロール・ミオ・エン・ラ・プリメーラ・パルテ・テルミノ・コン・エル・ゴル(ボクのミスが前半のゴールに繋がった)」と認めていたように、このプレーの始まりはコケが前方へのスルーパスをモドリッチに奪われたことで、そこからマドリーはアセンシオ、ビニシウスと連携。サビッチ、ヒメメスの負傷でその日の先発CBだったエルモーソ、フェリペ、両SBのマルコス・ジョレンテ、カラスコもGKオブラクをヘルプしようとゴール前に駆けつけたんですが、デ・パウルまでそれに引きずられ、CLインテル戦を休んだだけで復帰した現在、ピチチ(リーガの得点王)のベンゼマを誰も見ていないって、一体、どういうこと?

「cuando aparecen los goles son errores colectivos, no individuales/クアンドー・アパレセン・ロス・ゴーレス・ソン・エローレス・コレクティーボス、ノー・インディビドゥアレス(ゴールを入れられるのは集団的なミス。個人のミスじゃない)」とシメオネ監督)は言うものの、今季のアトレティコのダメダメ守備ぶりもここに極まれりといった感じでしたが、この日の彼らはツキもありませんでしたかね。というのも前半途中にはグリーズマンがカルバハルからハードなタックルを受け、右太ももを負傷。ハーフで退くことになったんですが、このプレーがイエローカードどころか、ファールにもされなかったのは噴飯ものとはいえ、代わって後半頭から、ジョアン・フェリックスが入り、一筋の光明が差したのも確か。

ええ、10分間程は同点も夢じゃない、冴えたプレーを見せてくれたものの、またそんな時ですよ。「相手はボクらにボールを持たせて、自陣に引いて、ボールを取り返すやいなや、凄く速くなって…en dos contragolpes nos han hecho dos goles/エン・ドス・コントラゴルペス・ノス・アン・エッチョー・ドス・ゴーレス(カウンターアタックで2点を入れられた)」(コケ)のは。

それは後半12分、今度はビニシウスがアセンシオにボールを送り、そのシュートでゴールが決まったんですが、効率的なマドリーに対して、アトレティコは撃っても撃ってもGKクルトワに止められてしまう始末。あとで殊勲の2アシストのビニシウスも「彼は信じられないよ。世界一だね。En los entrenamientos las para todas/エン・ロス・エントレナミエントス・ラス・パラ・ドーダス(練習でも全部、止めちゃうんだ)」と褒めていたとはいえ、ロスタイムなど、ジョアンの至近距離volea(ボレア/ボレーシュート)まで、顔面ブロックされているようではとても得点など、望めませんって。

結局、最後の30分間はこちらもケガが治ったルイス・スアレスを投入しながら、そのまま2-0で負けてしまったアトレティコなんですが、これでとうとう、首位マドリーとの差は勝ち点13まで拡大。昨季前半、マドリーと勝ち点差7で折り返しながら、最終節には2差まで詰められて、青息吐息で彼らがリーガ王者となったことを考えれば、現在、消化試合が1つ少なくて、年内残り2試合で劇的に差が縮まったりすれば、奇跡のremontada(レモンターダ/逆転優勝)なんて単語も出てくるかもしれませんけどね。

試合の終盤にはマドリーファンから、「Cholo quédate/チョロ・ケダテ(チョロ、残って)」と歌われていたシメオネ監督に、いくら「Liga hay seguro, quedan muchas jornadas por jugar/リーガ・アイ・セグロ、ケダン・ムーチャス・ホルナーダス・ポル・フガール(リーガはまだ絶対にある。沢山の節が残っているんだから)」と言われても、アトレティコの次節は4位の彼らとこれまた、勝ち点5離れている2位セビージャとサンチェス・ピスファンでのアウェイ戦。クリスマス前最後のミッドウィークもロス・カルメネスでグラナダ戦ですし、何より、グリーズマンがケガで出られないのが痛いかと。その間、お隣さんはホームでのカディス戦とサン・マメスでのアスレティック戦となれば、差が広がることすらあれ、その逆はない?

よってまた、例年の如く、アトレティコは来季のCL出場権のもらえる4位以上をシーズン後半の目標にするしかなくなったんですが、一方のアンチェロッティ監督も慎重な姿勢を崩してはおらず。というのも彼のマドリー第1期2年目の2014-15シーズンには前半戦で22連勝までしながら、後半戦がパッとせず、最後はバルサに優勝をさらわれた上、当人も解任となったという前例があるからで、「lo que pasó me puede servir de experiencia/ロ・ケ・パス・メ・プエデ・セルビル・デ・エクスペリエンシア(自分に起きたことは経験として役に立つ)」のだそう。

そのせいで10連勝中の今も決して油断はしていないんですが、丁度、今週のミッドウィークはコパ・デル・レイ2回戦が開催。こちらはアトレティコ、バルサ、アスレティックらと共に彼らも1月のスペイン・スーパーカップに出場するため、シードされており、1週間、丸々調整に使えるのは、36才ながら、ダービーで文句なしに一番輝いていたモドリッチなど、年長の選手たちにはありがたいかも。それはアトレティコも同様ですが、火曜にワンダ・メトロポリターノで行ったセッションにはコケとオブラクが体調不良で欠席。最近はリーガでもまた、コロナ感染者がポツリポツリ、出てきているため、ちょっと心配ですね。

ちなみに今週コパを戦うマドリッド勢はラージョとヘタフェで、前者は水曜にベルガンティーニョ(RFEF2部/実質4部)と、後者は木曜にアトレティコ・バレアレス(RFEF1部/実質3部)と対戦。2部のレガネスも水曜にクルトゥラル・レポネサ(RFEF1部)と当たるんですが、何せ彼らは日曜のポンフェラディーナ戦でも1-1の引分けと、コロナ感染者3名が出てから、快進撃が止まってしまいましたからね。フル出場していた柴崎岳選手は大丈夫なようなんですが、まだ降格圏とは勝ち点3しか離れていない18位でもありますし、その下にいるフエンラブラダ、最下位のアルコルコンなどと一緒に、あまりコパには力を入れられない状況ではないでしょうか。

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly