来年もマドリッドでCL三昧できる…/原ゆみこのマドリッド

2021.12.10 21:30 Fri
©Atlético de Madrid
「確かにこんなの、大昔以来よね」そんな風に私が頷いていたのは木曜日、降りしきる雪の中、アリアンツ・アレナでのバイエルン戦に3-0と完敗。CLグループ3位でEL決勝トーナメントに回ることになったバルサのチャビ監督のコメントを知った時のことでした。「He visto una realidad muy dura que ya viví como jugador/エ・ビストー・ウナ・レアリダッド・ムイ・ドゥーラ・ケ・ジャー・ビビ・コモ・フガドール(すでに選手として経験しことのある現実を見た)」と言っていたんですが、ええ、彼らが最後に、当時はUEFAカップと呼ばれていたヨーロッパ第2のクラブ大会に参加したのは2003-04シーズン。
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奇遇というか、その年もラポルタ氏が会長となったばかりで、決勝の地、「イエーデボリ(スウェーデン)に行こう」みたいなスローガンを唱えていたのを覚えているんですが、チームは16強対決でセルテッィクにあえなく敗退。チャビもまだ若手のバリバリでプレーしていたんですが、その頃のアトレティコなど、UEFAカップ出場権のもらえる6位にすらなれず、今はもうない、インタートトカップなる変なプレシーズン大会に参加、そこでもよく負けて、ヨーロッパとは無縁のシーズンが普通でしたからね。キケ・サンチェス・フローレス監督(現ヘタフェ)の下、2010年に初のEL優勝(この時はまだCL出場権はもらえなかった)を遂げた後、シメオネ監督が赴任して、そこからようやくCL決勝トーナメント常連チームとなるも、唯一、2017-18シーズンはCL3位でELに転戦。もちろん、敗退直後は当時のキャプテン、ガビなども「ELなんてクソみたいなもの」なんて見下していたものの、最後は決勝でオリンピック・マルセイユを破って優勝することに。
久々にネプトゥーノ広場でタイトルを祝えたため、今はチャビ監督も「Hay que comenzar para poner al Barça donde se merece, que no es la Europa League/アイ・ケ・コメンサール・パラ・ポネール・アル・バルサ・ドンデ・セ・メレセ、ケ・ノーエス・ラ・エウロッパ・リーグ(バルサをふさわしい場所に戻すために始めないと。それはELではない)」と言っていても、何せ、今はELに優勝すれば、来季のCL出場権が手に入りますからね。現在、首位と勝ち点差16のリーガ7位にいる彼らにしてみれば、そっちの方が近道だったりしない?

え、同じ水曜にザルツブルクに負け、セビージャもELに回ることになったんだろうって?そうですね、昨季はアトレティコがそのザルツブルクに最終節で勝利して、グループ突破を決めていただけに、ちょっと意外だったんですが、こちらはELで最多の6回も優勝している第2の大会の名門中の名門。折しも今季の決勝がセビージャのホーム、サンチェス・ピスファンで開催されるとなれば、ファンの前でSeptima(セプティマ/7度目の優勝のこと)を達成して、いつかはレアル・マドリーのCL優勝最多記録、Decimotercera(デシモテルセーラ/同13度目)と肩を並べるなんていう夢を見てもいいんじゃないでしょうか。
ちなみに私がこんなお気楽な話をしているのも、それより1日早い火曜開催CLグループ最終節でマドリッドの両雄が揃って、100満点の結果を出したから。実際、サンティアゴ・ベルナベウでインテル戦を見ながら、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の2元中継で同時進行のポルトvsアトレティコ戦に気を取られっぱなしだったんですが、最初に悲報は前半13分。まさか、ルイス・スアレスがケガをして、急遽、クーニャに代わるとは、どんなに背筋が凍ったか。というのもポルトのGKジオゴ・コスタの名を聞くたび、元アトレティコのFWジエゴ・コスタを連想。2014年CL決勝では同じポルトガルのリスボンで試合開始早々、彼のケガがぶり返して交代、最後は延長戦でお隣さんに4-1と負け、Decima(デシマ/10回目のCL優勝のこと)を達成されてしまったことが思い出されたから。

何せ、奇しくもその時の指揮官、アンチェロッティ監督が率いるレアル・マドリーはすでに前節で突破が決定済み。おまけに17分にはキックオフ前のアップで熱心に利き足でない左でのシュートを練習していたクロースが狙い通り、エリア外からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めて先制点をゲットしてくれましたからね。序盤から、「Ancelotti nos pidió que esperásemos en bloque medio en vez de presionar arriba/アンチェロッティ・ノス・ピディオ・ケ・エスペラセモス・エン・ブロケ・メディオ・エン・ベス・デ・プレシナル・アリバ(監督はボクらに前線でプレスかける代わりに、中盤のブロックで待つように頼んだ)」(カルバハル)という戦術を用いたせいか、敵エリアに近づいてシュート撃っていたのは、1位になるため、勝利が必要なインテルの方が多かったんですが、ことごとくマドリーのDFに命中。GKクルトワの手を煩わすこともほとんどなかったとなれば、やっぱり気になるのは今季の命運が懸かったお隣さんですって。

ええ、それも最悪なことに、ド・ドラゴンではこの日もパスが3度と続かなかったか、「Si hay que sufrir, hay que sufrir/シー・アイ・ケ・スフリルウ、ハイ・ケ・スフリル(苦しまないといけない時は苦しまないといけない)」という、健気なGKオブラクがparadon(パラドン/スーパーセーブ)で1人、チームを支えていたよう。アトレティコと2位の座を争っている第3のチーム、ミランもトモリのゴールでリードしたものの、サラーに返され、サン・シーロではリバプールと1-1の引分けだったのは好都合とはいえ、アトレティコも0-0だったため、相変わらず、前半終了時、2位で突破するのはポルトのままだったんですが…。

まさか、そこから激動の後半が始まるとは一体、誰が予想したでしょう。インテルがダンフリースをディマルコに代えただけで始まったベルナベウで同じような展開が続いている中、11分のことでした。CKからタレミがヘッドクリアしたボールをファーポストに1人でいたグリーズマンが押し込んで、アトレティコが1点を取ったという朗報が飛び込んで来たのは。それと前後して、オリジのゴールでリバプールがミランを1-2とリードという知らせも入ったとなれば、もうあとは、その日はサビッチ、ヒメネスが負傷、フェリペは出場停止処分2試合目でおらず、本業のCBはエルモーソだけ。MFのコドグビアと右SBのベルサイコを足しての急造3CB制だったとて、死ぬ気で守り切ればいいだけ?

いえいえ、そうは簡単にいかないのがアトレティコ。ベルナベウでは19分、「敵GK前でのシュートを失敗して、カリカリしていたというのはありうる」(シモーネ・インザーキ監督)というバレッラがミリトンに倒されて過剰に反撃。一時、大勢の選手が集まって、すわtangana(タンガナ/小競り合い)かというムードになったものの、ミリタオにイエローカード、バレッラにはレッドカードが出て決着したんですけどね。これでますますマドリーが有利になったのはともかく、あっちはもう無茶苦茶です。ええ、23分にカラスコがオタビオを叩いて退場になった後、その2分後にはベンデウがクーニャの首にチョップ。ほんの僅かの間に1人少なくなった絶望が10対10の対等で消えているって、一体どういう天の配剤なんでしょう。

その後も両ベンチでは揉み合いが続き、ポルトは他の選手も退場させられていたようですけどね。手元に映像がなかったのもあって、私がただ目を白黒させているうちに、アンチェロッティ監督は形勢有利と見たか、先発のロドリゴ、ヨビッチ、クロースをアセンシオ、マリアーノ、バルベルデに一気に交代。それがまたバッチリ当たって、35分にはアセンシオがやはり、エリア前から撃ったシュートが見事にネットを揺らし、マドリーはインテルに止めを刺すことに。おかげでビニシウスに代わって、アザールも久々にピッチに立つことができたんですが、2人の才能ある選手が悠々シュートするのを遠巻きで眺めているだけでは、インテルが2位の座に甘んじてしまったのも仕方なかったかと。

一方、出発前日にPCR検査など、ポルトガル入国に手間とお金をかけて駆けつけた2000人から、「La afición del Atlético cantó más que todo el estadio/ラ・アフィシオン・デル・アトレティコ・カントー・マス・ケ・トードー・エル・エスタディオ(アトレティコファンはスタジアム全部より歌っていた)」(クーニャ)と言われる程の応援を受けていたシメオネ監督のチームには、ロスタイムなしでマドリーが2-0の勝利を決めた後にも続きがあったんです。何と45分にはグリーズマンからスルーパスを受け、途中出場していたコレアがGKジオゴ・コスタを破って2点目を追加。これには前半に頬骨弓を骨折し、痛みを我慢してプレーしながら、プレシーズンに練習したCBの任務をしっかり全うしていたベルサイコなど、思わず涙していたとか。

それどころか、47分にもデ・パウルからラストパスをもらったグリーズマンはシュートを敵DFに当ててしまったものの、跳ね返りをデ・パウルが押し込んで、とうとう3点目をゲットとなれば、残り時間でまたしてもエルモーソがPKを献上。オリベイラに1点を返されたって、1-3で勝利は揺らぎませんし、大体がして、ミランがリバプールに1-2で負けているんですから、もうアトレティコの決勝トーナメント進出を阻むものはありませんって。

いやもう、これが先週土曜にはロスタイムに2点を奪われ、マジョルカに逆転勝ちされたチームかと思う程の変わりようだったんですけどね。今季CL4得点目を挙げたグリーズマンなど、「Esto es el Atleti/エストー・エス・エル・アトレティ(これがアトレティコ)。だから自分は戻って来て、とっても楽しんでいる。Nunca dejamos de creer/ヌンカ・デハモス・デ・クレエル(決してボクらは信じることを止めない)」とシメオネ監督の名台詞まで引用していましたが、最近は「No muchos creían en nosotros /ノー・ムーチョス・クレイアン・エン・ノソロトリス(ボクらを信じてくれていた人は多くない)」(オブラク)というのも本当ですからね。

ここでヨーロッパの大会から全敗退していたら、賞味期限切れの声も出かねかったシメオネ監督も「ese es el camino, competir, dar todo, jugar con inteligencia.../エセ・エス・エルカミーノ、コンペティル、ダール・トードー、フガール・コン・インテリヘンシア(これが進む道だ。競って、全力を尽くして、賢くプレーする)」と記者会見では指を立てて、宣言していましたが、いえいえ。「ウチからも退場者が出たことで、全てが負ける方向に行ってしまった」(コンセイソン監督)という巡り合わせに感謝しつつ、カラスコには最後の部分をよく言って聞かせないといけませんよ。

だってえ、本当にラッキーだったんですよ。というのもこの勝利で勝ち点7の2位となった彼らですが、実は翌日、3位敗退したバルサも同じ勝ち点7。2017-18シーズン、カラバフ(アゼルバイジャン)との2引分けが尾を引き、3位となった時も7ポイントで、今回は8グループの2位の中でもこんなに少ない勝ち点で通過したのはアトレティコだけとなれば、それこそ、全勝してくれたリバプールには足を向けて眠れない?何にしろ、16強対決では同グループのチームとは当たらないのは慰めになるでしょうか。

といっても対戦可能性のある1位突破チームにはバイエルン、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、ユベントスらの強豪、アヤックスも6試合全勝していますし、リールぐらいしか、勝てそうなチームがないのが辛いところ。それは水曜にベルガモでのアタランタ戦が激しい降雪で延期、せっかく応援に来てくれていたファンが泣く泣く帰国便に乗った翌木曜、2-3で勝利して、2位突破を決めたビジャレアルも同じなんですけどね。3月でCLが終わるか、EL転戦して決勝まで行けるかもしれないセビージャ、バルサの方がいいかはちょっと、微妙なところです。

一方、1位通過のマドリーは月曜の16強対決抽選会でPSG、スポルティングCP、チェルシー、ベンフィカ、ザルツブルクと当たる可能性があるんですが、今はもう、マドリッドの両雄は日曜午後9時(日本時間翌午前5時)のマドリーダービーで頭が一杯になっているはず。そう、とりわけ現在、首位のマドリーと4位のアトレティコの差は勝ち点10あって、後者が負けた場合、ほとんどリーガ2連覇の野望が断たれてしまうんですけどね。おまけに負傷のスアレスはもちろんリハビリを始めたばかりですし、ベルサイコも顔の手術が必要なため、フェリペと上手くいけば、トリッピアーとヒメネスが回復して戻ってくれるぐらいしか、戦力増強が見込めないのは辛いですよね。

対して、このベルナベウでの試合に勝てば、とうとう10連勝となるマドリーではインテル戦を左ハムストリンングスの負傷でお休みしたベンゼマが急ピッチで調整中。その試合でMVPとなったモドリッチなど、36才という年齢から、そろそろ疲れが溜まっている頃じゃないかと思うんですが、アンチェロッティ監督が「Ahora tiene cinco días. Creo que descansa bien en su casa/アオラ・ティエネ・シンコ・ディアス。クレオ・ケ・デスカンサ・ビエン・エン・ス・カサ(今は5日間ある。自宅でよく休めるだろう)」と言っていたところを見ると、やはり中盤のローテーションはなさそうな。

その他、マドリッド勢の週末のリーガ戦は土曜に降格圏脱出への更なる一歩、17位で勝ち点差3のアラベスとアウェイでガチンコ対決するのが19位の弟分ヘタフェ。前節アスレティック戦でレッドカードをもらい、2試合のベンチ入り禁止処分を喰らったキケ・サンチェス・フローレス監督はスタンドから指揮を執ることになりますが、ヤンクトも復帰していますし、ここ2連敗している相手の弱みに付け込むことができるといいのですが。

もう1つの弟分、6位の高みにいるラージョは日曜午後2時にラ・セラミカでビジャレアル戦なんですが、何せ相手はCLアタランタ戦がズレたため、中2日の強行軍になりますからね、要注意は決勝トーナメント進出でチームの士気が上がっているところでしょうが、今度はファルカオも万全の態勢で挑めるため、アウェイ2勝目をゲットできるかも。ちなみに同時刻には2部の弟分、レガネスもブラルケでポンフェラディーナと対戦するんですが、先週はサビン・メリーノ、ルーベン・パルド、レシオの3人がコロナ陽性に。スタッフ6人も感染というクラスター発生でジローナに3-0で負け、ナフティ監督の初黒星となってしまったとはいえ、こちらもまだ降格圏とは勝ち点差2の17位のため、ホームでの善戦を期待しています。


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