全然、学んでいない…/原ゆみこのマドリッド

2021.12.07 22:30 Tue
「あんなことしてていいんだろうか」そんな風に私が首を傾げていたのは月曜日、アトレティコがCLポルト戦の前日セッションをマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でやると聞き、やっぱり見ておくだけは見ておこうと駆けつけた時のことでした。いやあ、敷地の周辺にはチームを励まそうと歌っている集団もいたんですが、生憎、その日の練習は外からは覗けないグラウンドで実施。コロナ禍の無観客試合でスタジアムに入れない時ですら、ワンダ・メトロポリターノの駐車場で応援するぐらいファンですから、それにもめげず、キャンバス地の目隠しで覆われているフェンスの外から、bengala(ベンガラ/発煙筒)を焚いたりしていたんですが、何とも皮肉と言うか、その間、選手たちは4人組になってのテーブルサッカーに夢中だったんですよ。

先週末の大失敗を考えれば、私など、セッションの最初から最後まで、セットプレーやクロスのクリア特訓に専念するべきだと思ったりもしたんですけどね。更に恐ろしいことにグラウンドには日曜には戻っていたというヒメネスの姿が見えず。結局、カディス戦でのケガが癒えなくて、サビッチの負傷、フェリペの出場停止も相まって、「no tenemos tres de los cuatro centrales disponibles/ノー・テネモス・トレス・デ・ロス・クアルト・セントラレス・ディスポニブレスス(4人いるCBのうち、3人がいない)」(シメオネ監督)状態で、火曜午後9時(日本時間翌午前5時)には必勝かつミランがリバプールに勝たないor勝っても僅差でアトレティコが得失点差を覆すgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)をすることが勝ち抜け条件となるポルト戦に挑むことに。

そしてその、使える唯一の本業CB、エルモーソに至ってはテーブルサッカーには参加せず、コーチとマンツーマンで直線の上に立ち、利き足で真っすぐパスを蹴る練習をしているって、え、それが彼の克服課題なんですかあ? それにしたって、何でこうも私がアトレティコの練習を皮肉な目で見てしまうのかというと、その原因は土曜のマジョルカ戦。丁度、ワンダ・メトロポリターノのスタンドに腰を落ち着けた頃にはカンプ・ノウでバルサがフアンミのゴールによる1点を返せず、ベティスに負けたという報が入っていて、いくら来週のCLグループリーグ最終節バイエルン戦に突破が懸かっているとはいえ、行き過ぎたローテーションがマズかったのだろうかなどと、考えたりしていたんですけどね。
同じ身分のアトレティコは幸い、痛みを抱えるカラスコとヒメネスをベンチ外に、控えで温存したのはルイス・スアレスとレマルだけだったため、何せ相手はここ7試合、リーガで白星がありませんからね。開始11分でサビッチが太ももを痛め、急遽、エルモーソと交代せざるを得なかったのは予期せぬ逆境でしたが、一応、スアレスの代理として、初先発したクーニャやグリーズマンがチャンスを作っていたため、それ程、心配はしていなかったんですが…。

流れが変わったのは前半25分、アブドン・プラッツがエリア前から放ったシュートがゴール枠ギリギリをかすめた後からで、あれだけ金曜に見た練習では上手かったパス回しが乱れ始めたのはもしや、皆、急に失敗するのが怖くなった?ゴールも奪えないまま、後半に入ったため、15分にはシメオネ監督がもう、グリーズマン、デ・パウルを負傷から復帰したジョアン・フェリックスとレマルに代えていたんですが、すると23分、嬉しいことにピッチの残ったスタメンが先制点を挙げてくれたんですよ。ええ、エリア内右奥からコレアが送ったボールをゴール前でクーニャが1度は撃ち損じたものの、お尻をついたままま、前につっぷしていたGKレイナの頭上に足を伸ばしてボールをキック。それがゴールに入ってくれたとなれば、今年最後のホームゲームを楽しみに来たファンたちもどんなに盛り上がったことか。
ただ、解せないのはその後すぐ、シメオネ監督がクーニャとコレアをルイス・スアレスとベルサイコに代えてしまったことですが、せっかく追加点を取るべく、エースが出て来たというのに、チームが慣例の一歩引いて守る態勢に入ってしまってはねえ。そのせいか、失点を機に先日のコパ・デル・レイ1回戦の延長戦で2ゴールを挙げたアンヘル、その試合は見学だった久保建英選手、バッタリアを入れて反撃に転じたマジョルカに押されっぱなしになってしまったんですが、またしてもセットプレーでやられてしまうとは。そう、35分、イ・ガンインの蹴ったFKをノーマークのルッソにヘッドで決められてしまったから、さあ大変!

いやあ、「Yo reclamo y reclamaría más concentración/ジョ・レクラモ・イ・レクラマリア・マス・コンセントラシオン(もっと集中するように言っているし、言い続けるだろう)」と会見で解決策を訊かれ、答えていたシメオネ監督だって、大体がして、直近のワンダでの試合だったCLミラン戦でもマシアス・ジュニオールのヘッドで終盤に失点。マークミスが現在ののっぴきならない状況を作り出した敗戦に繋がっていますからね。これじゃ、指揮官も砂漠に水を撒いているような虚しさを覚えるんじゃないかとさえ、穿ってしまいますが、実はロスタイムには更なる悲劇が待ち構えていたんですよ。今度はアトレティコのFKが発端でマジョルカがカウンターを発動。アンヘルからパスをもらった久保選手が一気にドリブルで駆け上がると、1対1でGKオブラクの脚の間を抜くシュートで勝ち越しゴールって、このアトレティコ、一体、どこまで間抜けになってしまったんでしょう。

え、試合後には珍しいことにビジターチームの選手、マジョルカに1-2の逆転勝利をもたらした久保選手が会見に出て来てなかったかって?いやあ、その通りで、「チームはわからないけど、yo si confiaba en que iba a marcar el gol de la victoria/ジョー・シー・コンフィアバ・エン・ケ・イバ・ア・マルカル・エル・ゴル・デ・ラ・ビクトリア(自分は勝利のゴールを決めることを信じていた)」と話していたのには感心するばかり。途中出場する選手にはそのくらいの覚悟がないといけません。

その横でちょっと気になっているのは、彼が不在の間にがっちりレギュラーの座を確保したイ・ガンインとの併用について、ルイス・ガルシア監督が何度も「得るものもあるが、失うものもある。Va a costar que jueguen los dos juntos/バ・ア・コスタル・ケ・フエゲン・ロス・ドス・フントス(2人一緒にプレーするのは大変だろう)」と言っていること。この日も久保選手が入った10分後ぐらいには、スタンドの前の方に陣取って、韓国旗を振って応援していた母国のファンに見送られ、イ・ガンインは交代していますしね。

ただ、久保選手自身は「今回、コパの試合の後から4日間、ずっとチームは合宿していて、食事とかも一緒だったし、彼とも仲良くなった」と話していましたし、試合が終わって、ロッカールームに戻る途中にはイ・ガンインと会話するビデオもクラブが公開。「Me he cagado/メ・エ・カガードー(ビビッたよ)。他にもCBがいると思って、これを失敗したら、ボロクソに言われるだろうなって」と屈託なく返していたため、両人の関係がいいのはわかりますが、やはり課題はピッチ上でチームのためになる連携が取れるかどうかってことでしょうか。

そしてもちろん、他にカバーするCBなぞ、どこにもおらず、唯1人、久保選手に追いすがったコケの方は、「今やっていることじゃ、上手くいかないシチュエーションがあるから、estudiarlas y mejorarlas/エストゥディアールラス・イ・メホラルラス(学習して改善しないと)」と会見でひとしきり、反省の弁。それでも「今週は試合なしで練習できたから残念だ。セッションではよくやっていたのに、ダメージを与える結果になった。A veces es difícil encontrar soluciones para cosas que se repiten/ア・ベセス・エス・ディフィシル・エンコントラール・ソルシオネス・パラ・コーサス・ケ・セ・レピテン(時に何度も繰り返すことに対する解決策を見つけるのは難しい)」というシメオネ監督の言葉を聞くと、もう正直、今季のアトレティコのダメダメ守備には救いがないような。

何せ、リーガの次節はお隣りさんとのマドリーダービーですからね。マジョルカ戦の前には最悪、クリスマスのparon(パロン/リーガの休止期間)前に勝ち点差13ぐらいつくかもしれないと悲観的な予想をした私ですが、こうなるとこの週末負けたら、もう13。それどころか、土曜の早い時間の試合でビジャレアルに1-0で勝利して、バルサに勝ったアンダルシア州の首都のお隣りさん、ベティスと足並みを揃えてアトレティコを追い越したセビージャや下位のグラナダにですら、アウェイということもあって、勝てずに19ポイントまで差が拡大という空恐ろしい可能性すら、脳裏に浮かぶことに。

さすがにミランに負けた後の楽観的発言を繰り返すことはできなかったか、これにはシメオネ監督も「Hay dos escenarios, uno te rebelas y otro te deprimes/アイ・ドス・エセナリオス、ウノ・テ・レベラス・イ・オトロ・テ・デプリメス(反発するか、落ち込むかの2つのパターンがある)。ウチの選手たちは反発してくれると思うが」と言っていましたけどね。この調子ではポルト戦でも何が起こるかわかりませんし、リーガもヨーロッパもない最悪のシーズン後半戦を恐れているアトレティコファンは意外と多いんじゃないでしょうかね。

そしてレアル・アレーナから、前半16分にベンゼマが負傷。ヨビッチと交代したのをワンダのプレスコンフェレンスルームで知った私は、ちょっと前まで首位だったレアル・ソシエダが少しは意地を見せてくれるのを期待しながら、自宅近くのバル(スペインの喫茶店兼バー)に駆け込んだんですが、本物だったんですよ、レアル・マドリーの好調ぶりは。そう、前半は0-0だったものの、メトロを出たところで、後半2分にビニシウスがヨビッチに折り返しをもらい、エリア内から先制点を挙げていたのには気づいていたんですけどね。15分頃、ようやく目にしたTV画面ではもう0-2に。

ええ12分には、今季ほとんど出番がなく、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)のマドリー番実況アナにまで、「マリアーノを入れた方が、プレーに絡めていいんじゃないか」と言われていたヨビッチが、クロースの蹴ったCKから、カセミロが頭で繋いだボールを低い位置でヘッド。アンチェロッティ監督に「su gol es de un delantero de área/ス・ゴル・エス・デ・ウン・デランテーロ・デ・アレア(彼のゴールはエリア内で本領を発揮するFWのもの)」と褒められることになる2点目を取っていたから、ビックリしたの何のって。

ただ、もちろん、リーガのピチチ(得点王)のベンゼマがいなくなっても、イマノル監督も「el jugador más desequilibrante de la Liga/エル・フガドール・マス・デセキリブランテ・デ・ラ・リーガ(リーガで一番、相手の均衡を崩せる選手)」と賛辞を惜しまなかったビニシウスがゴールを挙げ、滅多に出番のもらえないヨビッチまでが活躍というツキがあるのは羨ましいんですけどね。それもこれも、アンチェロッティ監督が「lo que me más gusta es que este equipo sabe defender/ロ・ケ・メ・マス・グスタ・エス・ケ・エステ・エキポ・サベ・デフェンデール(チームが守り方を知っているのが何より気に入った)」と言っていたように、少なくなかったレアル・ソシエダのチャンスをミリトン、アラバのCBコンビがミスなく阻止してくれたおかげかと。

実際、ミリトンなど、終盤、自陣から絶妙なロングスルーパスをビニシウスに贈り、いえ、残念ながら、1対1のシュートはGKレミロに弾かれてしまったため、3点目にはならなかったんですけどね。真っ当に守れるだけでなく、セットプレー以外の攻撃にも貢献できるDFがいるなんて、贅沢極まりないと思うんですが、これではますます、日曜のダービーが怖くなる?ちなみに2位のセビージャと勝ち点8差、3位のベティスと9差、4位アトレティコと10差、7位のバルサと16差いう、独走態勢に片足を掛けたマドリーはお隣りさんと同じく、火曜午後9時からはCL最終節インテル戦に挑むんですが、すでに決勝トーナメント進出は決定済み。引分けなら首位突破とあって、ベンゼマの欠場もあまり響かなそうですし、少しはローテーションがあるかもしれませんね。

え、翌日曜にはCL出場圏には届かなくても、EL出場圏の6位で頑張っている弟分のラージョが得意のエスタディオ・バジェカスでエスパニョール戦をプレーしたんだろうって?いやあ、前節にメスタジャで1-1と引分けたバレンシア戦ではあまりいい感触がせず、ベンチを外れていたファルカオも復帰していたものの、先発には入らず。それも影響したか、トレホやイシのシュートは惜しくも外れ、彼らのホームゲームにしては珍しく、なかなかゴールが決まらなかったんですけどね。前半は古巣に恩返しをしたいRdT(ラウール・デ・トマス)のヘッドもGKディミトリエフスキが弾いて、両チームとも無得点で折り返したところ、もうこれはバジェカスには幸運のオーラが漂っているとしか言えませんよね。

後半9分、アルバロ・ガルシアがゴール脇から出したパスをクリアしようとして、カブレラがオウンゴールにしてくれるんですから、有難いじゃないですか。29分にはとうとう、セルジ・グアルディオラに代わって、ファルカオがピッチに立ったんですが、ムダ撃ちはしないのがEl Tigre/エル・ティグレ(虎、ファルカオの愛称)の流儀。プアドのシュートがゴールバーに弾かれるというツキもあり、そのまま1-0でラージョはホーム7勝目、試合後もピッチに残った選手たちと共にLa vida pirata/ラ・ビダ・ピラタ(海賊の人生)のカンティコを歌っていたファンの前で、無敗記録を8試合に更新していましたっけ。

これですぐ下のバルサとの差も勝ち点4となったため、あとはこの日曜、早くゴールを取り戻したいファルカオがラ・セラミカで先発して、まだ1勝しかしていないアウェイでビジャレアルに勝てれば最高なんですが、その横で月曜試合となったもう1つの弟分、ヘタフェはどうだったかというと。それがpuente(プエンテ/連休のこと)中の夜ということで、地元のファンも先週水曜にはサンティアゴ・ベルナベウのfondo norte/フォント・ノルテ(北側ゴール裏)4階から、応援していたアスレティックファンもリベンジとばかりに集まって、序盤から賑やかな応援合戦が繰り広げられたんですけどね。

肝心の試合の方は、この日は弟のニコと2人で先発しながら、相変わらずウィリアムスは決定力を欠き、ヘタフェもサンドロのシュートが決まらず、至近距離で撃ったオリベイラもウナイ・シモンにスペイン代表正GKの実力を示されてしまう始末。最後はファールを取らない審判に抗議したキケ・サンチェス・フローレス監督にレッドカードが出され、大勢でピッチで揉めている間にスコアレスドローで終わってしまったのは残念でしたが、どんまい。土曜には残留ラインぎりぎりにいる17位のアラベスとの直接対決があるため、まだ年内に降格圏脱出の夢を捨てることはありませんし、とにかくファンの不安はできるだけ早く、解消してあげてほしいところです。

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