どんなに応援されたって、勝てない時は勝てない…/原ゆみこのマドリッド

2021.10.27 22:00 Wed
©Atlético de Madrid
「これじゃ、クラシコの余韻もないわね」そんな風に私が溜息をついていたのは火曜日、昨晩やっとリーガ10節が終わったばかりというのに、レアル・マドリーのアンチェロッティ監督の11節前記者会見が生配信されているのを見た時のことでした。いやあ、先週末は梯子観戦こそなかったものの、午後9時キックオフ試合の3連投で毎日、帰宅が午前様になっていたせいで、少々、自分も疲れが溜まっているのを感じていたんですけどね。見ているだけでこれなのに、飛行機での移動を挟みつつ、中2日や3日でプレーを続けている選手たちの身になってみれば、ケガ人がそこここで発生しているのもムリないかと思いますが、先週はヨーロッパの大会がある中、2部がミッドウィークにリーガ開催、今週は1部がミッドウィークにリーガ開催とはホントにせわしない。
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まあ、気の毒がっていても仕方ないので、前節のマドリッド勢の様子をお伝えしていくことにすると、やはりドツボから抜け出せなかったのが、近郊南部に並ぶ弟分のお隣さんたちで、ええ、土曜のブタルケでは、いえ、水曜のサント・ドミンゴ(アルコルコンのホーム)より、ずっとファンの数は多く、熱心に応援してくれていたんですけどね。スタンドに座る奥さんに見守られて、柴崎岳選手も先発していたんですが、前半19分にはエラディに決められて、テネリフェが先制。後半20分にはFKから、VAR(ビデオ審判)によりオフサイド疑惑が晴れたセルヒオ・ゴンサレスのゴールで一時は同点に追いついたものの、36分には再び、エラディに勝ち越し点を奪われていてはねえ。それどころか、ロスタイムにはイライラ感マックスだったんでしょうか。ルベン・パルドがスローインのボールを近くにいた敵選手の顔面に投げつけて、レッドカードで退場って、いかにも悪い流れに取り込まれているチームの典型だったかと。結局、1-2の敗戦で20位のままだったレガネスはこの金曜、首位のアルメリアと対戦するんですが、実は試合後にはアシエル・ガリターノ監督が兄貴分のアトレティコからレンタルで修行に来ているボルハ・ガルセスの造反を告発するという出来事も。何と、監督もクラブも許可しなかったにも関わらず、メリージャ(スペイン南西部)であった兄弟の結婚式に行ってしまい、試合当日午前中のアップ練習を無断欠勤したのだとか。
キックオフ前には戻って来たものの、「ese chico mientras yo esté aquí, no volverá jugar con la camiseta del Leganés/エセ・チコ・ミエントラス・ジョ・エステ・アキー、ノー・ボルベラ・フガール・コン・ラ・カミセタ・デル・レガネス(あの子は自分がいる限り、2度とレガネスのユニを着てプレーすることはない)」とガリターノ監督は宣言していましたが、そこは現在、10人近くの負傷者を抱え、指揮官の続投すら疑問視されている絶不調のチーム。月曜には普通に練習セッションに参加していたガルセスは罰金を科され、お詫びのビデオも出していたため、これで一件落着になりそうですが、まったく。同日にはフエンラブラダもイビサに3-1で負けて14位に後退するし、最下位生活が続くアルコルコンに至っては前半早々、退場者を出し、ラス・パルマスに3-0の完敗と、最近は2部弟分チームから、とんといい話が聞けないのは悲しいですよ。

その一方で翌日曜のクラシコ(伝統の一戦)では一息つけたんですが、マドリーは先週のCLシャフタール戦で0-3と快勝したスタメンをカンプ・ノウでもリピート。前日の会見でアンチェロッティ監督が、「Si no tienes miedo te enfrentas al león pensando que es un gato/シー・ノー・ティエネス・ミエードー・テ・エンフレンタス・アル・レオン・ペンサンドー・ケ・エス・ウン・ガトー(恐れを持っていなければ、ネコだと思って、ライオンに当たるかもしれない)」と慎重な姿勢を示していたせいか、ガンガン前に出て行くことはなかったんですが、彼らが狙っていたのは必殺の高速カウンターだったんです。ええ、前半24分にはデストのシュートが枠を外れ、失点を免れた後の32分、それは起こりました。
え、自陣エリア付近でボールを取り戻したマドリーがビニシウス、ロドリゴと繋ぎ、最後に強烈なシュートでGKテア・シュテーゲンを破ったのが、何でダビド・アラバなんだって?いやあ、その日は左SBをメンディが務め、CBだった当人も「それは直観。いつ攻撃に行くか、いつ残らないといけないかを選ぶっていうね」としか言っていなかったので、私も実際、よくわからないんですけどね。何より大事なのはこれでマドリーが先制できたこと。

後半開始時には、クーマン監督もビニシウスにキリキリ舞いさせられていたミンゲサを下げてデストを右SBに、コウチーニョ投入で前線を強化したんですけどね。「práctico e inteligente/プラクティコ・エ・インテリヘンテ(実際的で賢い)」試合を心掛けたマドリーは、ロドリゴと交代したバルベルデがヒザを捻り、45分にカルバハルと交代。更にGKクルトワもゴールキックした際に右ヒザに痛みを覚え、倒れてしまうなんてアクシデントはあったものの、リードしたまま、ロスタイムに入ることに。

その頃には今回は随分、淡々としたクラシコだと、私もバル(スペインの喫茶店兼バー)を出る準備を始めていたんですが、いやあ、49分にはまたマドリーの高速カウンターが発現したから、ビックリしたの何のって。今度はこむら返りを起こしたビニシウスに代わって入ったアセンシオが敵エリアまで爆走し、そのシュートはGKに弾かれてしまったものの、追走していたルーカス・バスケスがエリック・ガルシアに先んじて押し込みます。最後の最後にはデストのパスからアグエロが決め、スコアを1-2として面目を保ったバルサでしたが、これでマドリーはもう5試合続けてクラシコで負けなし。昨季も2勝していますし、やはりメッシがいないのは大きいのか、何せ、その後継として期待されているアンス・ファティはまだ18才ですからね。

その日も途中で痛みを訴え、交代してしまいましたし、フランキー・デ・ヨングもこの試合で負傷。そろそろ復活かと思われていたデンベレも間に合わないとなると、水曜午後7時(日本時間翌午前2時)のラージョ戦でも、エスタディオ・バジェカスで無敵の弟分相手に苦労しそうですが、さて。こちらはファルカオとアグエロ、アトレティコの旧エース対決が注目になりそうですが、その脇でマドリーは木曜午後9時30分(日本時間翌午前4時30分)から、久々のサンティアゴ・ベルナベウでオサスナ戦。まだスタジアムの改装工事は終わっていないものの、今度は5万人程に入場者数が増えるというのは朗報でしょうか。

ただ、10月の各国代表戦前、最後のホームゲームが1-2で不覚をとったCLシェリフ戦でしたからね。先週末はグラナダと引分けたとはいえ、6位の高みにいる今季のオサスナはなかなかの好敵手かもしれないため、マドリーに不利なスコアとなった時、pito(ピト/ブーイング)の音量も観客数に比例して,上がるのは心配なんですが…まだ負傷が癒えずに欠場するのはベイル、セバージョス、イスコ、そしてバルベルデ。この試合では、せっかく復帰しながら、バルサ戦では出番のなかったアザールや、少ししかプレーしなかったアセンシオら、ローテーションもあるかもしれませんが、絶好調のビニシウス、ロドリゴから、スタメンを奪うのは難しいかもしれませんね。

そして次の時間帯でプレーしたラージョが序盤から、2点をリードされながら、最初のゴールを挙げたアレックス・モレノには3年前、チームが2部最短Uターンした際、ベティスにそそくさと逃げ出してしまった負い目があったんですかね。前半ロスタイム、GKクラウディオ・ブラボの前にいたトレホにバックパスして、エヌテカのゴールで1点差に。後半にはアロバロ・ガルシアが決めて追いつきながら、最後はバリウがアレックス・モレノをエリア内で倒し、ウィリアム・ホセのPKゴールで3-2と負けてしまうのをネットで追いながら、夜にはワンダ・メトロポリターノ入りしたところ、またしてもアトレティコ伝統のお家芸、眠ったままピッチに入っていたのを見せつけられることになるとは!

うーん、序盤はルイス・スアレス、グリーズマン、ジョアン・フェリックス、自慢のFW陣を並べて積極的に攻めていただけに、どちらかというと、単に後ろがお留守になっただけだったのかもしれませんけどね。前半6分、ジョアンが奪われたボールから、イサクが疾走、パスを受けたセルロートのシュートが、GKオブラクが出遅れたせいもあり、先制ゴールになってしまったんですが、シメオネ監督に言わせると、レアル・ソシエダはいつもと違う戦法を取ってきたのだとか。「前線からプレスをかける代わりに少し下がって待って、スペースを作り、手薄なところを狙って攻めてきた」そうなんですが、いやあ。1点目はそうでも、後半早々、イサクの直接FKで2点目を取られているって、ハーフタイム中にまた、シエスタ(昼寝)でもしてきた?

それでも今季のアトレティコはゴール力があるため、ワンダのファンも絶望はしていなかったんですが、いよいよ反撃の狼煙が上がったのは後半15分。ジョアンのクロスをスアレスがヘッドで決めると、31分にはその場はスルーされたものの、ずっとスアレスが敵エリア内で倒れていた甲斐があったか、審判がVARの連絡でモニターをチェック。サビン・メリノに蹴られていたことがわかったため、PKが与えられ、スアレスが同点にしてくれたんですが、やはり後悔先に立たずですよ。最後はスアレス、ジョアン、コレア、クーニャの4人FW体制でゴールを目指したアトレティコでしたが、勝ち越し点は取れず、2-2の引分けで終わってしまいましたっけ。

いやあ、この結果には勝ち点1ゲットで首位を死守したイマノル監督など、「Muy content/ムイ・コンテントー(とても満足だ)。先週など、天下のリバプールが10人のアトレティコに苦労させられていたからね」と安堵していたようなんですけどね。そうは言っても、そのCL戦だって、0-2から、2-2に追いついたものの、最後はサラーのPKゴールで2-3と負けてしまいましたし、何より頂けないのは今季12試合中、彼らは7試合を敵に先行されていること。うち3試合は逆転勝利できたものの、このレアル・ソシエダ戦を含めて引分けが2試合、負けてしまったのも2試合あるとなれば、とにかくこの早期失点体質を改善しないと、リーガ2連覇やCL初優勝の夢なんて、とても見られたもんじゃない?

「Es difícil explicarlo/エス・ディフィシル・エクスプリカールロ(説明するのは難しい)」と試合後、言っていたシメオネ監督ももちろん、対策を考えていない訳ではないんでしょうが、この日など、ヒメネスがまだ完調ではなかったため、お気に入りの3CB制ができず、フェリペとエルモーソだけでしたからね。一応、木曜午後9時30分(日本時間)からのレバンテ戦に備え、サビッチが火曜からチーム練習に復帰しているんですが、果たして出場できるのかどうか。マルコス・ジョレンテは全治1カ月ですし、ハーフタイムでカラスコと交代したレマルのケガの程度も気になりますしね。他チームに比べると負傷者の少ないアトレティコですが、ホームでの躓きが祟って、首位とは勝ち点3差のまま、お隣さんとも1差がついて、今はベティス、オサスナと並んで第3陣の4位というのはちょっと、悔しい感じがしなくもありません。

え、それで昨季は久保建英選手(今季はマドリーからマジョルカにレンタル移籍)のゴールで37節に1部残留をようやく決めたのも反省に繋がらず、それどころか、シーズン序盤からどっぷり降格圏に沈んでいるヘタフェの状況は少しぐらい、上向いたのかって?いやあ、それが月曜のセルタ戦では、お隣さんのレガネス同様、コリセウム・アルフォンソ・ペレスにかなりの数のサポーターが応援に来てくれたんですけどね。前半こそ、0-0で拮抗していたものの、ここまでの9試合での3得点中、2ゴールを挙げていたサンドロがハーフタイム前にケガで交代せざるを得なかったのが響きました。

後半になると、やはり不本意なスタートを切っていたセルタが活気づき、10分にはCKからサンティ・ミナのヘッドで先制。その3分後にはイアゴ・アスパスにもゴールを決められ、でも2点差ぐらい、先輩のアトレティコはともかく、弟分仲間のラージョだって、跳ね返しているのだからとまだ、その頃まではファンも「Echare huevos/エチャレ・ウエボス(根性見せろ)」と歌って、諦めていなかったんですけどね。そこはやはり、運気のせいもあるのか、ヘタフェは18分にキャプテンのCBジェネがミナの足を蹴ったとして、一発退場になってしまったから、さあ大変!

27分にはミナが自身2点目を入れ、0-3となったところで、カンティコが「Estamos hasta los huevos/エスタモス・アスタ・ロス・ウエボス(もうウンザリだ)」に変わり、スタンドの観客が続々、席を立ってしまうのも悲しい光景でしたけどね。そのまま今季8敗目となった後、選手たちが応援団のいるゴール裏に近づいて、謝っているかと思えば、3期目のコリセウムデビューでファンを失望させてしまったキケ・サンチェス・フローレス監督も会見では頭を下げるばかり。「A partir de la expulsión se acabó el partido/ア・パルティル・デ・ラ・エクスプルシオン・セ・アカボ・エル・パルティードー(退場を機に試合は終わってしまった)」そうですが、ホント、これではジェネが出場停止となる木曜のグラナダ戦もどうなることやら。

サンドロと入れ替わりにマタやビトロ、ヤンクトら、現在、負傷のリハビリ中の選手たちが戻って来てくれれば、少しは期待が持てるかもしれませんが、火曜には新たに11節でアラベスがエルチェに勝ち、カディスがビジャレアルと引分けたため、残留ゾーンまでの距離も勝ち点6に増えてしまいましたからね。どうも今年の冬はラージョ以外、マドリッドの弟分チームたちに厳しい風が吹きそうなのは、何とも気が滅入ります。

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