苦労しているチームは多いけれど…/原ゆみこのマドリッド

2021.10.05 21:30 Tue
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「どこより大変なのはヘタフェよね」そんな風に私が心を痛めていたのは月曜日、世間がバルサのクーマン監督の進退にかかりきりになっていた間もひっそり噂はあったものの、とうとうミチェル監督の解任が発表された時のことでした。いやあ、開幕から8試合、勝ち星が1つもない最下位では仕方ないんですけどね。結果的に2連敗して、Semana Negra(セマーナ・ネグラ/暗黒の週)となりながら、後任も、契約解除金の当てもなかったバルサはラポルタ会長がクーマン監督の続投を土曜のアトレティコ戦前に宣言。アンチェロッティ監督の立場は揺らいでいないとはいえ、ここ3試合、勝てていないレアル・マドリーもミニクライシス突入となれば、アラベス戦の負けから立ち直ったアトレティコのSemana Fantastica(セマーナ・ファンタスティカ/ファンタスティックな週)ぶりが、目に眩しかったのは私だけではない?

いえ、話は順番にしていかないと。先週末のマドリッド勢は土曜の昼間、弟分のラージョのオサスナ戦からスタート。実は彼ら、ファルカオが後半11分に0-0のままで交代したのが災いしたか、ロスタイムにアトレティコからレンタル移籍しているマヌ・サンチェスにヘッドを決められて、1-0と土壇場で負けてしまったんですが、まあ、ここまで3連勝していましたからね。順位も6位と昇格組にしては合格点以上の成績ですし、この敗戦は頭を冷やすいい経験になったかと。各国代表戦明けのリーガ戦の相手はエルチェで、いよいよキャパ100%入場が認められたエスタディオ・バジェカスでプレーできるのも奮起が期待されていいんですが、コロンビア代表のW杯予選が14日の木曜まであるファルカオが日曜午後2時からの試合に出られるかはちょっと、微妙かもしれませんね。

そして土曜の夜にはワンダ・メトロポリターノでのビッグマッチ、アトレティコvsバルサ戦に行った私だったんですが、いやあ、忘れていましたよ。スタジアムに来るファンが増えると、メトロや周辺も大混雑になることを。もちろん、おかげでキックオフ前のカンティコもCLミラン戦逆転勝利の余韻もあってか、大音量で盛り上がっていたんですが、この日のシメオネ監督は前線のルイス・スアレスのお供にジョアン・フェリックスを抜擢。足首のリハビリが終わり、今季初出場となったアスレティック戦では審判に口答えしたのが仇となり、イエローカード2枚で退場、リーガ2試合の出場停止となった彼でしたが、それで当人もじっくり反省できたんですかね。まずは前半23分、スアレスへ出したボールがワンタッチでレマルに繋がり、そのシュートでアトレティコが先制したから、場内もどんなに沸いたことか。
それ以外にも「バルサがプレーするスペースを与えてくれるのはわかっていたから、si yo tenía la pelota y me giraba, íbamos a tener ocasiones/シー・ジョ・テニア・ラ・ペロータ・イ・メ・ヒラバ、イバモス・ア・テネール・オカシオネス(ボクがボールを持って前を向けば、チャンスを作ることができた)」と当人も認めていた通り、ジョアンは随所で冴えたプレーを披露。シメオネ監督も「前半が終わった時、彼にはesto es lo que tienes que hacer/エストー・エス・ロ・ケ・ティネス・ケ・アセル(これがやらないといけないことだった)」と、スタンドの応援で大声を張り上げないと選手への指示が届かなくなったせいか、記者会見ではかすれ声で褒めていたんですけどね。昨季はケガのせいもあり、パッとしなかったものの、このままジョアンの才能の発露が続いてくれれば、FW大激戦区となったアトレティコでも生き残ることはできる?

更に彼らは43分にも今度はレマスのパスから、エリア内でシュートを撃ったスアレスが2点目をゲット。こちらは試合前から、昨年夏のプレシーズン、自分を構想外として、ぼっち練習に追いやったクーマン監督へのリベンジが話題になっていたんですけどね。「Por el respeto, el cariño, por ser un culé más/ポル・エル・レスペト、エル・カリーニョ、ポル・セル・ウン・クレ・、マス(リスペクト、愛情、そして自分もバルサファンの1人であることから)」、ゴールを祝わず、謝るポーズをしていた彼ですが、その後、電話をかける真似をしたのは決してその日、ベンチ入り禁止処分でパルコ(貴賓席)から指揮を執っていたクーマン監督に当てつけたものではないと否定していましたっけ。
そして後半にはコケ、エルモーソの連続ミスから、コウチーニョが1対1のシュートチャンスを迎えたんですが、ここはGKオブラクがparadon(パラドン/スーパーセーブ)で阻止。いやあ、コウチーニョは前半にもフリーで撃っていたんですが、そこでも枠を外してしまい、肝心のデパイも不発、後半途中から入ったアンス・ファティも、メッシ(現PSG)なら決めていたかもしれないFKをゴールの上に蹴ってしまいましたからね。26分、スアレス、ジョアンと代わったコレア、グリーズマンもカウンターで敵ゴールに迫りながら、後者がラストパスを誤って、アトレティコも追加点は取れなかったため、試合はそのまま2-0で終了したんですが…。

いやあ、クーマン監督も「Puede ser que ahora comprendáis por qué a veces hemos jugado con tres centrales/プエデ・セル・ケ・アオラ・コンプレンダイス・ポル・ケ・ア・ベセス・エモス・フガードー・コン・トレス・セントラレス(今なら、どうしてウチが時々、3CB制でプレーしたのか理解してもらえるかもしれない)」と言っていたように、守備には大穴。その上、「No es un problema único. Hay varios/ノー・エス・ウン・プロブレマ・ウニコ。アイ・バリオス(それが唯一の問題じゃない。幾つもある)」(ピケ)という、弱体化した相手だったこともありますが、こんなにヤキモキしないで済んだバルサ戦は昨今、経験したことがなかったからでしょうかねえ。

審判が笛を吹いた後、最初は応援団の陣取るfondo sur(フォンド・スール/南側ゴール裏席)にアトレティコの選手たちが揃って挨拶に向かったと思いきや、そのままVuelta de Honor/ブエルタ・デ・オノール(場内一周)をしているって、いや、これ、ただのリーガ戦ですよ。確かに昨季のリーガ優勝の後、トロフィー授与式も無観客とピッチから、ファンに感謝する機会を持てなかったアトレティコですが、彼ららしいと言えば彼ららしい?実は翌日にはこの試合でサビッチが左太ももを、マルコス・ジョレンテも右太ももを痛め、先週の練習中にケガしたクーニャと共に代表に行かず、リハビリすることが判明したんですが、ここ2週間はクラブの試合はなし。paron(パロン/リーガの休止期間)明けのグラナダ戦も中南米代表の帰還の遅れを考慮されて延期されたため、19日(火)のCLリバプール戦までに治っていればいいというのはホント、不幸中の幸いではあります。

そして翌日曜にはお隣さんがバルセロナでエスパニョール戦をプレーしたんですが、次の時間帯でコリセウム・アルフォンソ・ペレスに行く予定だった私が近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で見られたのは前半のみ。しかも18分にはエンバルバのラストパスをラウール・デ・トマスにゴール前から押し込まれ、リードを奪われてしまったのには驚かされましたが、何せ天下のマドリーですからね。そのぐらい、メトロに乗っているうちに逆転しているだろうと思いきや、ヘタフェに着いた時には2-1となっているとは!そう、後半はカマビンガをロドリゴに代え、攻撃力を高めたアンチェロッティ監督のチームでしたが、15分にも守備ミスが発生。アレイシ・ビダルにエリア内まで持ち込まれ、2点目を決められているんですから、困ったもんじゃないですか。

いえ、相変わらす絶好調のベンゼマが23分には1点を返してくれていたんですけどね。伝統の根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)を期待して、残り10分程をコリセウム近くのバルで立ち見した私ですが、アザールやヨビッチもピッチに入ったとはいえ、シーズン序盤の試合でゴールづいていたビニシウスが最近、当たらなくなったのは痛かったかと。前日にはアセンシオ、イスコ、マリアーノが揃ってケガで招集外となったのもあり、ベンチにはバジャホとミゲール・グティエレスらDFと控えGKしか、残らなかったマドリーは、ベンゼマ、アザールのゴールがオフサイドで認められなかったこともあり、結局、2-1のまま敗戦。前節はビジャレアルとスコアレスドロー、そしてCLシェリフ戦に続いて2連敗となれば、まさに悔やむべきは安定しない守備システムだった?

いえ、アンチェロッティ監督は「Ha sido el peor partido/ア・シードー・エル・ペオール・パルティードー(一番ひどい試合だった)。このリーガ休みの間に反省して、どうして1週間のうちにチームの態度がこうも変わったのか見極めないと」と言っていたんですけどね。当人は絶対、公の場で認めない主義とはいえ、試合のたびにナチョがCBになったり、左右のSBなったり、その日などはシェリフ戦後半のカマンビンガで懲りたか、アラバを左SBにしたのももしかして、監督の人員配置ミスだったかも。どちらにしろ、何より辛いのは今のマドリーが取られたら、取り返すだけの攻撃力を備えていないことの方ですけどね。延期されたアスレティック戦の後、最初の試合となるCLシャフタール戦までには、バルデベバス(バラハス空港の近く)のグラウンドに出て来てもすぐにジムに戻ってしまうメンディやマルセロら、左SBの本職選手が復帰していればいいのですが。

え、それでせっかく前半40分にはアランバリが奪ったボールをアレニャが繋ぎ、サンドロがGKラミロを1対1で破って先制点を挙げながら、どうしてヘタフェは初白星が掴めなかったのかって?いやあ、ホームでリードしてハーフタイムに入るのはアトレティコとの兄弟分ダービー以来なんですが、やはり勝っていないというのは凄いプレッシャーなんでしょうね。後半23分にはゴロサベルのクロスをオジャルサバルにヘッドで決められて、レアル・ソシエダに同点にされると、ロスタイムにはオリベイラのシュートがスベルディアの手に当たったペナルティ疑いもあったものの、審判はスルー。勝ち越し点を挙げることはできず、1-1の引分けで終わると、一応はこれが嬉しい今季初勝ち点のはずなのに、スタンドからは「Miche vete ya!/ミチェル・ベテ・ジャー(ミッチェル監督、もう出て行け)」の大合唱が聞こえてくるなんて、これはもう末期症状ですって。

翌日にはとうとう解任されてしまったんですが、ミチェル監督にも同情できるところはあって、その日、アランバリこそ戻ったものの、まだヤンクトやビトロは負傷中。先発したマタも完調ではなかったそうで、負傷禍がモロに致命傷となった例かと思いますが、残念なのはエルチェ以外、上位チームばかりと当たったここまで8試合と違い、代表戦週間後はやはりパコ・ロペス監督が先週末に解任されたレバンテ、セルタ、グラナダと下の方のチームとの対戦が続くこと。そこまで待ってもらえれば、ヘタフェの成績も上がったかもしれませんが、今はもう、キケ・サンチェス・フローレス監督を筆頭とする後任指揮官にチームの立て直しを期待するしかありません。

そして月曜にはネーションリーグ・ファイナルフォーに備え、スペイン代表がラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設に集合したんですが、うーん、やっぱり国際大会三昧だった夏の影響が出ているんですかね。元々、今回はモラタ(ユベントス)、ジェラール・モレノ(ビジャレアル)、ダニ・オルモ(ライプツヒ)、カルロス・ソレル、ガヤ(バレンシア)らがケガで来られなかったんですが、先週末の試合でも犠牲者が出たんですよ。そう、まずは木曜にリストが発表されるのに前後してペドリ(バルサ)が負傷を再発、代わりにブライス・メンデス(セルタ)を呼んだところ、彼も日曜のエルチェ戦でネンザして、最後は17才初招集のガビ(バルサB)同様、ルイス・エンリケ監督の勝手知ったるセルジ・ロベルト(バルサ)が久々に参加することに。

ジョレンテの代わりはブライン・ヒル(トッテナム)が務めますが、何せ水曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)から、サン・シーロで開催される準決勝で当たるのはイタリアですからね。この夏のユーロ2020でも同じラウンドのPK戦で涙を呑んでいる相手だけに、今度はリベンジといきたいところですが、メンバーに絶対的CFがいないのはネックになるかも。前線では初招集のジェレミー・ピノ(ビジャレアル)も楽しみとはいえ、こちらも18才の若輩者。ここはオジャルサバル(レアル・ソシエダ)やフェラン・トーレス(マンチェスター・シティ)、サラビア(スポルティングCP)らの先輩が頑張って、2012年ユーロ以来のタイトル獲得に繋がるゴールを挙げることができればいいんですが…。

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