あっという間にリーガが始まった…/原ゆみこのマドリッド

2021.08.14 21:30 Sat
©Atlético de Madrid
「これじゃ、昨季と同じよね」そんな風に私がガッカリしていたのは金曜日、2021-22シーズン開幕戦を翌日に控えたアンチェロッティ監督の記者会見をレアル・マドリーTVで見ていた時のことでした。いやあ、昨今では自前の放送局がなくとも、大抵のクラブはYouTubeのチャンネルでライブ配信してくれるからいいんですけどね。アンチェロッティ監督も、土曜に予定しているお隣さんのシメオネ監督も相変わらず、Zoomを使ったリモート会見のままとなると、これはやっぱり、試合後も監督はともかく、選手を記者たちが囲むミックスゾーンもまだ復活しない?

ちなみにマドリッド勢の1部チームでプレスルームに人を入れての会見を再開したのは弟分のヘタフェだけで、一足早く、金曜にバレンシア戦に挑むミチェル監督が対面で話していましたけどね。3年ぶりに彼らと肩を並べたラージョなどに至っては、クラブ広報が記者たちの質問を事前に取りまとめ、イラオラ監督に尋ねるという自作自演会見だったんですが、でもお、今季は開幕戦から、有観客試合になるんですよお。州によって、キャパの20%から40%という制限はあるんですが、それが生憎、マドリッドの4チームは全てアウェイスタート。2部の3チームもレガネス、アルコルコンはビジターで、1年半近くぶりにホームサポーターの応援を受けてプレーできるのは、テネリフェをエスタディオ・フェルナンド・トーレスに迎えるフエンラブラダしかないというのもちょっと、淋しい気がしないでもないんですが…。

え、開幕戦も気になるけど、今週は先んじて、公式戦をプレーしたチームがあったんじゃないかって?その通りで水曜にはUEFAスーパーカップがベルファストで開かれ、ビジャレアルがチェルシーと対戦。会場のウィンザー・パークには1500人程のファンが地元から、スタジアム以外には立ち寄らないバブル方式で移動し、クラブ史上2度目の決勝に挑むチームに寄り添っていたんですが、何せ相手は昨季のCL16強対決ではアトレティコ、準決勝ではマドリーが叶わなかった強者ですからね。行きつけのバル(スペインの喫茶店兼バー)がバケーションで休業中だったため、私が中継の見られるお店を探し出した時にはもう、開始15分ぐらい経っていましたが、まさか前半27分、ハヴァーツがゴール前に送ったラストパスを、オリンピックから直行したパウ・トーレスがヴェルナーに気を取られていたせいもあり、フリーのツィエクに悠々決められてしまうとは!
こうなると相手は鉄壁の守備を誇るチームだけに、私も悲観的になったものでしたが、更に前半終盤にはアルベルト・モレノのシュートがゴールバーに弾かれ、後半6分にもジュラール・モレノのシュートがポストに当たってしまうのを目の当たりにしてはねえ。そういえば、この夏のユーロ2020のスペイン代表でもジェラール・モレノのシュート失敗は割とあったかもと思い出したりしていたところ、昨季30得点を挙げ、リーガではサラ(スペイン人選手の得点王)を獲得。月曜には2027年までの契約延長をこの猛暑に関わらず、クラブのマスコット着ぐるみの中から現れて、サプライズ発表した彼を決して侮ってはいけません。

ええ、28分にはこの夏、加入したディア(スタッド・ランスから移籍)に折り返しをもらい、同点ゴールを決めているのですから、凄いじゃないですか。ただ、その後、両チーム共、追加点が挙げられず、うーん、ちょっと私もユーロ、オリンピックで食傷気味だった延長戦に突入した時にはまたかという感じだったんですけどね。スコアは最後まで1-1で、とうとうPK戦が始まって、アセンホがチェルシー最初のキッカー、ハヴァーツを止めた時には、壮絶22人のPK戦を制したEL決勝マンチェスター・ユナイテッド戦のGKはルリだったとはいえ、この日も行ける気がしたのは自分だけではなかったかと。でもねえ、トゥーヘル監督もさるもの、延長戦終了1分まえにGKメンディに代え、ケパ投入がバッチリ当たり、ビジャレアル第2キッカーのマンディが弾かれてしまったんですよ。
結局、それぞれ、5人蹴り終わっても決着がつかなかったんですが、後攻のビジャレアルの7人目、6月にはユーロ出場メンバーのコロナ感染懸念でバックアップとして追加招集、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設で一緒に1週間、汗を流した仲間だったアルビオルをケパが弾き、PK戦6-5でチェルシーが勝利することに。うーん、セビージャ時代のEL3連覇もあって、これで3回目のUEFAスーパーカップ挑戦となったエメリ監督ですが、これまで1回も勝つことができず。アトレティコなど、ELに優勝するたび、スーパーカップで時のCL王者、インテル(2010年)、チェルシー(2012年)、マドリー(2018年)を倒し、計3個のトロフィーをゲットしているため、結構、ハードルの低い大会のイメージがあったんですけどね。ここにルカク(インテルから移籍)も加わったチェルシーは、今季のCLでも怖い存在になりそうです。

そして木曜には42のプロクラブが集まるラ・リーガ総会があったんですが、いやあ、先日、ちらっとお話ししたCVCという投資ファンドからの資金提供案件がかなりの大問題になっていてねえ。各クラブの代表者とラ・リーガ幹部が、席間も空けてない密な会議室で6時間以上もかけて議論した結果、反対票を投じたマドリー、バルサ、アスレティック、そして2部のオビエドだけが、この契約に含まれないことになり、当初、予定だった27億ユーロ(約3500億円)の提供が21億ユーロ’(約2700億円)に減ることに。

それはともかく、マドリーがラ・リーガのテバス会長を訴えるとまで息巻いていたのもわかるところがあって、だってえ、各クラブに分配されるお金は利子なしの40年ローンで返す代わりに、50年に渡り、ラ・リーガ放映権料とそれ以外の収入の11%をCVCが受け取るっていうんですよ。それって、契約満了時、テバス会長を始め、一体、何人のクラブ会長が生きている?

実際、今のままの放映権料だと、CVCは50年間で100億ユーロ(約1兆3000億円)近くを稼ぐことになるのだとか。元手の3倍以上になるって、何だか、サラ金並みのボッタクリに思えるんですが、ただ、コロナ禍の影響で収入が減り、選手のサラリーキャップ遵守に悩むクラブにとって、分配金のうち、15%を人件費に充てられるのがおいしいようでねえ。それこそ、メッシ(PSGに入団)の契約延長ができなかっただけでなく、新加入のデパイ(オリンピック・リヨンから契約満了で入団)、エリック・ガルシア、アグエロ(同マンチェスター・シティ)のリーガ仮登録も未だにできないバルサなど、割り当てられた1憶5300万ユーロ(約200億円)があれば、かなり助かったはずなんですが、大丈夫。この、CVCからの1憶8100万ユーロ(約240億円)がなくても、アトレティコは3500万ユーロ(約46億円)で獲ったデ・パウル(ウディネーゼから移籍)の登録ができています。

むしろ、日曜午後5時30分(日本時間翌午前0時30分)から、何故か、この月曜から、スタンド改修工事を始めたバライドスに7300人のファンが入るセルタ戦に挑むシメオネ監督のチームにとって、障害となっているのはEU外選手枠の方。要は未だに移籍予定のアリアスの行き先が決まらないため、ネウエン(昨季はグラナダにレンタル)が登録できないんですが、その脇でクラブは水曜にサビッチが2024年まで、木曜にはヒメネスが2025年まで、次々と主軸のCBを契約延長。マストのFW補強でグリーズマン(バルサ)復帰計画が頓挫した後、1500万ユーロ(約20億円)でラファ・ミール(昨季はウエスカにレンタル)の移籍をウォルバーハンプトンと交渉しているものの、なかなか進まないため、まずは足元から固める作戦に出たようです。

開幕戦のスタメンに関しては、シメオネ監督もイロイロ考えているようで、何せ練習開始から、まだ2週間経っていないルイス・スアレスは使えて30分といったところですからね。先週末、最後のプレシーズンマッチとなったフェイエノールト戦に近いものになるかと思いますが、誤算はゴールド・カップ準優勝のメキシコ代表から直帰したエレーラが筋肉痛でこの3日間、ジムごもりとなり、出場が難しくなってしまったこと。金曜の練習を見る限り、コレア、カラスコの前線、ルイス・エンリケ監督の下、スペイン代表ユーロで右SBの修行をしたマルコス・ジョレンテが右のカリレーロ(長い距離をカバーするSB)、サウールが左のカリレーロ、サビッチ、ヒメネス、エルモーソの3CB制で、中盤はデ・パウル、コケ、レマルの3-5-2を試していたようですが、どうなるかは見てのお楽しみ。ジョアン・フェリックスとフェリペ、マルコス・パウロ(フルミネンセから移籍)の3人はまだ負傷のリハビリ中のため、お休みです。

え、お隣さんなんて、サラリーキャップのせいではなく、頭数の問題で登録できない選手がいるんじゃないかって?いやあ、本当にそうで、EU外枠3人からはみ出る久保建英選手など、オリンピック日本代表を終えてスペイン入りしても、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場に顔も出さず、水曜には昨季、最速1部Uターンを果たしたマジョルカに2度目のレンタル移籍してしまったほどでしたしね。ルイス・ガルシア監督も「Ha llegado con mucho rodaje y muy bien físicamente/ア・ジェガードー・コン・ムーチョ・ロダヘ・イ・ムイ・ビエン・フィシカメンテ(実戦を多く積んでいて、フィジカル的にも非常にいい)」と、土曜午後7時30分(日本時間翌午前2時30分)からのベティス戦での開幕デビューを期待させるコメントをしていたんですが、マドリーにはそれ以外にもレンタルからの帰還組が。

とりわけ、スペイン・オリンピック代表帰りのバジェホ(昨季はグラナダでプレー)、セバージョス(同アーセナル)が加わると、トップチームの選手が26人となってしまうため、アンチェロッティ監督はとりあえず、23人だけを仮登録することに。まあ、後者に関しては、オリンピック初戦で重度2の左足首ネンザを負いながら、ムリして、大会中の復帰を目指したせいですかね。帰国した後、マドリッドで受けた検査では、前距腓靭帯と踵腓靭帯の完全断裂が判明。全治2カ月を診断されてしまったため、急ぐ理由はないんですが、プレシーズン練習に最初から参加していたウーデゴーアも仮登録されていなかったのにはかなり驚かされたかと。

アンチェロッティ監督によると、MFは8人もいるため、選ばないといけないそうですが、今はクロースも恥骨炎でお休み中なことを考えると、これは移籍ルートへの布石とも言えるかも。トッテナムへのレンタル移籍から戻り、あと1年しか契約の残っていないベイルは背番号18をもらいましたが、何せ、昨今はゴール不足に苦しんでいるマドリーですからね。この夏にはベンゼマに次ぐ供給源だったセルヒオ・ラモスもPSGに行ってしまい、一応、アンチェロッティ監督はビニシウス、ロドリゴ、ヨビッチによる嵩上げを期待しているものの、待望のエムバペ(PSG)加入は当面、実現する気配はなし。ケガがなくて、やる気さえ出れば、ベイルもゴール要員として勘定に入れるということでしょうか。

その彼らの開幕戦、土曜午後10時(日本時間翌午前6時)からのアラベス戦に向けては、クロースの他にメンディが休場確実だったんですが、何と、木曜の練習でマルセロも負傷。どうやらカンテラーノ(RMカスティージャの選手)のミゲール・グティエレスが左SBのスタメンに抜擢されそうですが、CBにはナチョ、ミリトンがいるため、この夏、唯一の新顔、アラバ(バイエルンと契約満了して移籍)を使う手もありそうな。ちなみに移籍3年目、今季こそ、移籍金1憶ユーロ(約130億円)プレーヤーの真価を見せたいと願うアザールはここまで、プレシーズンマッチには出ていないものの、「Está listo para jugar/エスタ・リスト・パラ・フガール(プレーする準備はできている)」(アンチェロッティ監督)状態だそう。オドリオソラがコロナから回復した右SBでは、すでにカルハバルもチーム練習に加わっているため、もう心配はいりませんかね。

そして日曜午後10時15分からは、今週もレアル・ソシエダからサイドアタッカーのマルケランスと、2年前はレガネスで、昨季はエイバルで連続2部降格を経験したケビン・ロドリゲスをレンタルするなど、着々と戦力補強を進めているラージョもサンチェス・ピスファンでセビージャと対戦なんですが、このところ、連日、気温40℃越えの彼の地はその日、最高気温が46℃という予想が。キックオフ時でも35℃近くあるようなので、選手たちの体調が心配ですが、マドリッドでもかなり暑い中、毎日、セッションをやっていますからねえ。

8月中はどこも週1試合ですし、セビージャもまだ、GKディミトロビッチ(エイバルから移籍)とラメラ(同トッテナム)ぐらいしか、新戦力がいないため、今季初勝利とまではいかなくとも、ラージョは1部復帰に恥じない試合をしてくれればいいんですが…そうこうしているうちにやられちゃいました。金曜に開幕カードの皮切りとなったメスタジャでのバレンシア戦でヘタフェがマドリッド勢初黒星をゲット。それも開始1分にギジャモンがマクシモビッチにスパイクを向けたタックルを見舞い、レッドカードで退場となったため、数的優勢になったミチェル監督のチームだったんですが、8分にはジェネがチェリシェフをエリア内で倒してPK献上とは、これ如何に。

オリンピック帰りのカルロス・ソレルに先制点を奪われ、それからガンガン反撃した彼らだったんですが、やはり昨季から続くゴール日照りは解消していなかったよう。サンドロ(ウエスカから移籍)、エネス・ウナルの前線も、代わったマシアス(同グアルダハラ)、マタ、ウーゴ・ドゥーロ(昨季はRMカスティージャにレンタル)、ビトロ(アトレティコからレンタル)もその1点を返すことができず、後半32分にはカバコが2枚目のイエローカードをもらって、こちらも10人に。アランバリやオリベイラも今季からバレンシアに移ったボルダラス監督への恩返し弾を放つ夢は叶わず、1-0で終わってしまったんですが、まあドンマイ。23日月曜の2節ではいよいよ、コリセウム・アルフォンソ・ペレスで6500人のファンが応援してくれるセビージャ戦を迎えることができますしね。今のところ、どのスタジアムにもアボナード(年間指定席購入者)以外の観客がいないというのはホームチームが断然、有利になるんじゃないでしょうか。

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