そうそう隔離合宿はしていられない…/原ゆみこのマドリッド

2021.07.28 19:20 Wed
©Atlético de Madrid
そうそう隔離合宿はしていられない…/原ゆみこのマドリッド

「やっぱりハジけちゃってる」そんな風に私が頭を抱えていたのは火曜日、グループリーグ2試合を札幌で終えた後、月曜にオリンピック選手村に入ったスペイン代表のペドリ(バルサ)とダニ・オルモ(ライプツィヒ)が同胞の卓球女子選手たちとピンポンに興じている動画を見つけた時のことでした。いやあ、確かにこの2人は大人のユーロ2020にも参加して、6月の頭から、1カ月以上もラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設に缶詰。広い敷地内でキックボードに乗ったり、散歩ぐらいはできたんですが、試合で移動する以外、外食も数回の決起ランチだけ、家族や友人を呼ぶこともできないという、単調な生活を続けていましたからね。

準決勝でイタリアに負けた後には1週間弱のミニバケーションをもらったものの、すぐにオリンピック代表に加わって日本へ移動。入国してからはホテル暮らしが続き、それこそ札幌では1人部屋の自室を出ることすら憚れる雰囲気だったようで、そんな環境が2週間近くも続いていたとなれば、オジャルサバル(レアル・ソシエダ)も「何日もチームは今みたいな状況で上手くやってるけど、cambiar de aires es positivo y vivir una experiencia como lo de la Villa es bueno/カンビアル・デ・アイレス・エス・ポシティボ・イ・ビビール・ウナ・エクスペリエンシア・コモ・ロ・デ・ラ・ビジャ・エス・ブエノ(空気を変えるのはポジティブだよ。選手村みたいな経験をするのもいい)」と言っていたんですけどね。
今度はチームメート数人と一緒のシェアハウス、その上、選手村内は自由に動けるため、チーム外の人たちと交流したくなる気持ちもわかりますが、ちょっと待って。いくらグループリーグ突破に王手をかけたとはいえ、最近は選手、関係者らから、連日のようにコロナ陽性者判明の報告が。チームには22人の選手がいるとはいえ、東京の病院で診察してもらったセバージョス(レアル・マドリーから昨季はアーセナルにレンタル)は重度2の足首ネンザで通常なら、全治3~4週間ですし、ミンゲサ(バルサ)はハムストリングのケガが意外と軽かったとはいえ、グループ3節はちょっと難しい感じですからね。うっかり誰かが感染しようものなら、手痛い戦力ダウンとなるのは必至。

大体がして、コロナなど誰も知らなかった2012年のロンドン・オリンピックでも選手村に泊まったスペイン代表でしたが、開会式の入場行進に参加できたことだけがいい思い出で、グループリーグでは日本、ホンジュラス、モロッコ相手に1勝もできず。最下位敗退するダメダメぶりだった前例もありますからね。唯一、オリンピックで優勝した1992年のバルセロナ大会のチームは準決勝までバレンシアで合宿し、カンプ・ノウでの決勝のため、バルセロナ入りしても選手村には泊まらなかったなどと聞くと、水曜午後1時(日本時間午後8時)からのアルゼンチン戦は会場が埼玉スタジアムですし、別に選手村滞在にこがわることもないような気がしますが…ま、彼らもオリンピックのお祭りムードに少しは浸りたいんでしょうかね。
え、それで日曜のオーストラリア戦ではスコアレスドローだったエジプト戦より、スペインのプレーは進歩していたのかって?いやあ、そうともはっきり言えなくて、デ・ラ・フエンテ監督は初戦のスタメンから、負傷の2人に加え、アセンシオ(マドリー)、ミケル・メリノ(レアル・ソシエダ)、ミランダ(ベティス)をスビメンディ(レアル・ソシエダ)、オスカル・ヒル、プアド(エスパニョール)、ソレル(バレンシア)、ククレジャ(ヘタフェ)に代えてきたんですけどね。やはりゴールがなかなか入らない病は改善しておらず、前半20分にはオジャルサバルのシュートがゴールバーに当たる惜しいシーンもあったものの、0-0のままでハーフタイム入り。後半になると、プアドからブライアン・ヒル(昨季はセビージャからエイバルにレンタル、火曜にトッテナムへの移籍が発表)、ソレルからアセンシオ、オスカル・ヒルからラファ・ミール(昨季はウォルバーハンプトンからウエスカにレンタル)へと、アタッカーを増やしていったんですが、シュートは撃つものの、一向に得点にならないんですから、どうしたものやら。

それこそ、「Generamos mucho juego y ocasiones y evidentemente, nos cuesta hacer gol/ヘネラモス・ムーチョ・フエゴ・イ・オカシオネス・イ・エビデンテメンテ、ノス・クエスタ・アセール・ゴル(沢山、チャンスを作り出すプレーはあったが、明らかにウチはゴールを入れるのに苦労している)」とデ・ラ・フエンテ監督が認めていた通りだったんですが、半分、私もユーロ同様、2試合連続ドロー発進になるのかと諦めかけていた後半36分、とうとう天啓が訪れたんです!まだ、プレシーズンモードで調子が上がっていないかに見えていたアセンシオが右から上げたクロスをオジャルサバルが敵の長身DF2人に挟まれながらヘッド。これがGKグローバー(メルボルン・シティ)を破り、先制点になってくれたから、有難いじゃないですか。

この1点がモノを言って、初勝利を挙げたスペインだったんですが、いやあ、パウ・トーレス(ビジャレアル)など、「porque era imposible que presionaran así los 90 minutos/ポルケ・エラ・インポシーブレ・ケ・プレシオナラン・アシー・ロス・ノベンタ・ミヌートス(90分間、ああいう風にプレスをかけ続けるのは不可能なんだから)、相手がリズムを落とすのはわかっていたよ」と、まるで終盤に得点したのは計算づくだったように言っていたんですけどね。それでもあれだけ攻撃しながら、なかなかゴールにならないのは問題かと思いますが、さて。

これで勝ち点4となり、グループCの首位に立ったスペインは同日、エジプトに1-0で勝って、オーストラリと勝ち点3で並ぶアルゼンチンと引分ければ、決勝トーナメントに進めることになりましたが、この3戦目もデ・ラ・フエンテ監督はスタメンローテーションを予定。ハードな試合が続いていて、間隔も中2日と短いため、フレッシュな選手を投入したいそうですが、ここまで来ると、準々決勝の相手も気になるかと。1位通過なら、グループDの2位、2位通過なら、Dの1位と対戦になるんですが、ただ、あちらもブラジル、コートジボワール、ドイツで熾烈な勝ち抜け争い中。A代表とオリンピック代表では選手が全然、違うチームもあるため、どこが強いとも私には言えないんですが、できれば1位通過で会場が宮城スタジアムとなり、一旦、選手村からスペインが離れてくれた方が安心はできますかね。

そして日曜夜にはこのプレシーズン初となる、マドリーの公開親善試合があったんですが、グラスゴーのアイブロックス・スタジアムは1万3000人が入る盛況。オリンピックの寒々とした無観客試合とは対照的な賑やかさでしたが、レンジャーズの選手たちもそれに勇気づけられたんですかね。開始早々、GKレニンがサカラの危ないシュートをそらしていたりしましたが、意外なことに先制したのは、CBチュストとボランチのブランコ以外、トップチームの選手で固めながら、一方的に攻め込まれていたマドリーの方。ええ、自陣エリア前からのカウンターでウーデゴーアが敵エリア近くまでドリブルで上がり、ロドリゴにパス。一度はシュートをDFに当ててしまった彼でしたが、戻って来たボールをまた蹴ってゴールに入れ、今季、EU外選手枠をはみ出るのは自分ではないとアピールしているのですから、偉いじゃないですか。

ただ、その後も攻めるのはレンジャーズばかりという構図は変わらず、相手の決定力のなさに助かっていた彼らですが、後半10分には昨季末に2年間の契約延長を勝ち取ったルーカス・バスケスが自陣エリア前でボールを奪われるという、先日のアトレティコのサウール並の大ポカを犯してしまったから、さあ大変。サカラに同点ゴールを決められてしまったのはともかく、チュストがケガをして、RMカスティージャの同僚、マリオ・ヒラに代わった後、30分にはナチョが2枚目のイエローカードをもらって退場と、CBコンビに穴が開いたのがマズかったですかね。その2分後にはイッテンに勝ち越しゴールを挙げられただけでなく、相手は3点目も奪おうかという勢いだったんですが、幸い、最初に第4審判が電光ボードで提示したロスタイム4分はアンチェロッティ監督の猛抗議により、30秒に短縮。何とか、2-1の最少得点差負けで終わることができましたっけ。

まあ、この試合はクロース、モドリッチ、新加入のアラバ(バイエルンとの契約を満了して移籍)もプレシーズン練習を始めたばかりとあって、マドリッドでお留守番。ジダン監督から、アンチェロッティ監督に代わり、チームが昨季より強くなったかどうかも判断しようがないんですが、やっぱり心配なのはセルヒオ・ラモス(PSGに移籍)に続いて、火曜にはバランのマンチェスター・ユナイテッド行きが発表された守備陣かと。アラバが来て、コパ・アメリカのブラジル代表で決勝進出したミリトンもいずれ戻って来るとはいえ、ナチョの他はカンテラーノ(RMカスティージャの選手)しかいませんからね。現在、オリンピック参加中のバジェホ(昨季はグラナダにレンタル)で収まればいいんですが、クラブはDFの補強にはお金をかけたくないみたいなんですよ。

おまけに今季は第1キャプテンに昇格したものの、マルセロが往年のレベルを取り戻す気配はまったくなく、メンディも未だに昨季終盤のケガからのリハビリ中とあって、アラバは左SB起用になるかもしれませんしね。この遠征に参加しなかったカルバハルもどこまで回復しているのかわからないため、またルーカス・バスケスが右SBとして重宝されることになる?何にしろ、火曜からはクルトワ、アザール、バルベルデも合流し、だんだんバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場も人が増えてきたため、次に予定されている8月6日、オーストリアでミランと戦う親善試合ではもっと、マドリーらしいプレーが見られると思いますが…それにしてもリヨンでコロナ陽性になったベンゼマはいつ帰って来られるんでしょうかね。

その一方でマドリッドの弟分たちは、ラ・マンガ(スペイン南東のビーチリゾート)から戻って来たヘタフェが金曜に2部のフエンラブラダと、翌日には1部復帰したラージョと、コロナ陽性者4人発生でタラベラ(RFEF1部/実質3部)との親善試合が中止となり、先週金曜には全選手が1回目のワクチン接種をしたレガネスは水曜にラージョ・マハダオンダ(RFEF1部、ラージョと経営関係はない)と、近場のチーム同士でプレシーズンマッチをするんですが、いよいよ飛行機に乗って遠征に行くのは兄貴分のアトレティコ。ええ、水曜午後7時45分(日本時間翌午前2時45分)から、レッドブル・アレナでザルツブルクと対戦するため、月曜には私もマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に新顔がないか、確かめに行ったんですが、いましたよ。ヒメネスの姿はPCR検査の結果待ちとかで見えなかったんですが、カラスコ、そしてウディネーゼに3500万ユーロ(約46億円)を払って獲得した期待の27才、MFロドリゴ・デ・パウルが。

実は彼、コレアと一緒にコパ・アメリカのアルゼンチン代表でトロフィーを掲げているんですが、新しいチームに慣れるため、バケーションを1週間返上して早めに合流。早速、ゴム製半球やミニトランポリンの上をバランスを崩さず渡るという、妙なフィジカルトレーニングをさせられていましたが、それからすぐ、カラスコと一緒にチーム練習に加わったため、かなり体調は整っているような。そうそう、2週間前、ロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)のキャンプにチーム訪問した時は松葉杖をついていたジョアン・フェリックスも来ていて、いえ、こちらはまだグラウンドを歩くぐらいのことしかしてないんですけどね。

皆と練習できるのはちょっと先のことになりそうですが、コパ・アメリガが始まってすぐ、ヒザの靭帯を部分断裂、ブラジル代表を離脱していたフェリペも火曜から、チーム練習に合流したそうなので、ザルツブルク戦はともかく、土曜のボルフスブルク戦辺りでは、アトレティコBにトップチームのメンバーが加わるのではなく、トップチームをカンテラーノが補う感じにスタメンも変わるのでは?ちなみに移籍関連の方では、うーん、シメオネ監督も練習を日影に座って見ていたベルタ・スポーツディレクターのところまで来て、「Novedad?/ノベダッド(新しいことは?)」と訊いていたんですが、今のところ、動きはなし。

グリーズマン(バルサ)とのトレード話が止まったままのサウールも連日、マンチェスター・ユナイテッドだ、リバプールだと移籍先を噂されていますが、まだ一緒に練習していますしね。シメオネ監督が補強を要請しているFWに関しては、マキシ・ゴメス(バレンシア)、ラファ・ミールといった名も挙がっているものの、バルサには高額年棒の選手を放出しないと、ラ・リーガのサラリーキャップに引っかかって、メッシの選手登録ができないという究極のジレンマが。アトレティコもその辺を期待して、グリーズマンの叩き売りを待っているんじゃないかっていう気もしなくもないんですが、果たしてどうなるんでしょうかね。

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