プレシーズンマッチが早く見たい…/原ゆみこのマドリッド

2021.07.14 20:00 Wed
「とうとう離陸できたのね」そんな風に私がホッとしていたのは火曜日、本来なら前日の夕方、アリカンテから飛び立つ予定だったスペイン・オリンピック代表のチャーター機が故障で動けず。ユーロ2020で準決勝敗退した後、ミニバケーションとなり、当日に合流した最優秀若手選手賞獲得のペドリ、エリック・ガリシア(バルサ)、オジャルサバル(レアル・ソシエダ)、ダニ・オルモ(ライプツィヒ)、ウナイ・シモン(アスレティック)、パウ・トーレス(ビジャレアル)らを含め、22人の選手たちは空港で2時間以上待機させられた挙句、ベニドロム(スペイン南東部のビーチリゾート)のホテルに引き返して延泊せざるを得ないことに。ようやく翌朝には機体の整備も終わり、燃料補給でタシケント(ウズベキスタン)を経由して、水曜に関西空港に着くという長い旅路に出たのを知った時のことでした。

まあ、彼らの合宿は7月1日から始まって、スペインの中では60%と、かなり湿度の高いベニドロムでの練習で少しは日本の真夏の気候に耐久性もついたんじゃないかと思いますし、神戸で行われるオリンピック前、最初で最後となるU24日本代表との親善試合も土曜ですからね。時差呆けを解消して、体調を整える時間が十分あるのは喜ばしいとはいえ、気が休まらないのはこの夏、ユーロとオリンピックの二重奉公に駆り出されている選手たちの所属する監督たち。

というのもマドリッド勢で言えば、レアル・マドリーのアセンシオやセバージョス(昨季はアーセナルにレンタル)、バジェホ(同グラナダ)、ヘタフェのククレジャらはバケーションを済ませて、オリンピック代表合宿でプレシーズン練習を始めたため、早ければグループリーグが終わる28日、最長で8月7日の決勝の後、すぐクラブの練習に参加できるんですけどね。
その一方でユーロから回って来た選手たちは、EL優勝組のパウ・トーレスだけは別ですが、リーグ終了後の1週間と今回の6日間という短いバケーションを取っているだけで、オリンピック参加が終わってからもお休みが必要。ラ・リーガなど、開幕が8月13日とあって、全然、間に合わないだけではなく、グループのエジプト、オーストラリア、アルゼンチン戦を始めとする日本での試合でケガをする可能性もあるとなれば、イタリアやイギリスのクラブが選手のオリンピック参加にノーと言うのもわかるんですが…。

え、それよりユーロ決勝も終わり、しばらく試合が楽しめない今は、各チームのプレシーズン練習が順調に進んでいるのか、気になるって?そうですね、まずは5日から、バルデベバス(バラハス空港の近く)で13人のトップチームメンバーにカンテラーノ(RMカスティージャの選手)を加えてスタートしたマドリーの様子から話すことにすると。実は彼ら、先週末にはどこより早いプレシーズンマッチを実施していて、いえ、去年の夏のヘタフェ戦のように練習試合と銘打って、マスコミは一切入れず。マドリッド2部の弟分、フエンラブラダとエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(バルデベバスの敷地内にあるRMカスティージャのホーム)ですらなく、練習用グラウンドの1つで対戦したんですけどね。
もちろん映像などもなく、大手スポーツ紙などから、伝わってきた結果はウーデゴール(昨季後半はアーセナルにレンタル)、チュスト(カンテラーノのCB)、マリアーノの3人がゴールを挙げ、3-1でマドリーが快勝。昨季終盤に痛めた脛骨がまだ治っていないメンディと筋肉痛のヨビッチ(昨季後半はアイントラハトにレンタル)は出場しなかったことぐらいしかわからないんですよ。ちなみに昨年同様、コロナ禍を懸念して、ずっとバルデベバスにいる彼らのプレシーズン、この先の親善試合がもう幾つか決まっていて、25日にはグラスゴーのアイブロックス・スタジアムで観客を入れてレンジャースと、8月8日にはオーストリアでミランと対戦。

その合間を縫って、ユーロやコパ・アメリカで敗退した順に7月19日にはモドリッチ(クロアチア)、クロース(ドイツ)、バラン、ベンゼマ(フランス)、ベイル(ウェールズ、昨季はトッテナムにレンタル)、アラバ(オーストリア、バイエルンから移籍)ら、数日置いて、クルトワ、アザール(ベルギー)、バルベルデ(ウルグアイ)、そして決勝まで行ったカセミロ、ビニシウス、ミリトン(ブラジル)が8月2日にアンチェロッティ監督のチームに合流することになっていますが、ちょっと寂しいのは今のところ、新顔がアラバしかいないことでしょうか。それどころか、あと1年だけになった契約の延長をまだしておらず、移籍の噂も多々聞こえてくるバランなどは戻って来もしないかもしれませんが、いえ、ペレス会長はエムバペ(PSG)やハーランド(ドルトムント)といったギャラクティコ獲得の努力を続けているんですけどね。

どちらも相手クラブの拒否姿勢や移籍金の問題でこの夏に決まるとは思えず、まあ、どちらにしろ、全面改装中のサンティアゴ・ベルナベウは新シーズンが開幕しても8月中は使用不能。3万から5万人と予想されている有観客試合は9月の各国代表戦の後、12日の週末、4節のセルタ戦まで待たないといけないため、今、ビッグネームを獲ってもスタンドにファンが溢れるメガプレゼンはできませんからね。それを見越して、クラブもワンダ・メトロポリターノがオープンした年のお隣さん同様、3節まではアウェイ開催をラ・リーガに頼んでおり、8月14日に原大智選手(クロアチアのイストラから移籍)が入団したアラベスと当たる開幕戦、レバンテ戦、ベティス戦は首都を離れて戦うことになりますが、あ、ダメですよ。それって、アトレティコがリーガ2連覇に向けて、序盤からマドリーに差をつける大きなチャンスじゃないかなんて思っちゃ。

まあ、確かに彼らは8月15日の開幕セルタ戦こそ、アウェイとなるものの、その後、エルチェ、ビジャレアルと2試合続けてホームゲームというクジ運の良さでしたけどね。お隣さんに遅れること3日、マハダオンダ(マドリッド近郊)で始動したトップチームメンバー9人とカンテラーノ(アトレティコBの選手)たちは、先日、2024年まで契約を延長したシメオネ監督の下、マヌ・サンチェス(昨季後半はオサスナにレンタル)がコロナ陽性になるというアクシデントも乗り越え、日曜にはロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)での地獄のキャンプ入り。こちらも代表参加中にケガをしたフェリペ(ブラジル)、足首の手術をしたジョアン・フェリックス(ポルトガル)を除いて、大会を敗退した順に19日頃にはベルサイコ(クロアチア)、レマル(フランス)、23日頃にはカラスコ(ベルギー)、ルイス・スアレス、ヒメネス(ウルグアイ)、27日頃にコケ、マルコス・ジョレンテ(スペイン)、そして8月になってから、コレア(アルゼンチン)、ロディ(ブラジル)、トリッピアー(イングランド)が戻って来ることになっています。

ただ、明暗が分かれてしまったのが最終到着組で、いやあ、ユーロ決勝でトリッピアーのラストパスから、ルーク・ショー(マンチェスター・ユナイテッド)のゴールが決まり、イングランドが先制点を取った時には私も嬉しかったんですけどね。試合が進んでみれば、後半にはCKからボヌッチ(ユベントス)のゴールで同点に追いつかれ、1-1のまま延長戦突入。それでも決着がつかず、PK戦が始まったところ、ルイス・エンリケ監督のチームどころか、ユーロ史上、誰も達成したことのなかった2試合連続PK戦勝利を達成してしまうとは!スペインとの準決勝でモラタ(ユベントス)を止めたのに続き、イングランドのジェイドン・サンチョ(ドルトムントからマンチェスター・ユナイテッドに移籍)、サカ(アーセナル)をGKドンナルンマ(ミランからPSGに移籍)が弾き、イタリアが53年ぶり、2度目の優勝を遂げてしまうんですから、もう感服するしかありませんって。

まあ、決勝当日のウェンブリー周辺の群衆やローマでの祝賀風景などを見ていると、今のコロナ情勢をわきまえたか、スペインが準決勝敗退となったのは、マドリッドでファンが集まって大騒ぎする前だったため、不幸中の幸いだった気すらしてくるんですけどね。実はリーガとのdoblete(ドブレテ/2冠優勝)を逃したのはトリッピアーだけではなくて、前日のコパ・アメリガ決勝ではロディも同じ目に遭っているんですよ。ええ、ブラジルがアルゼンチンに1-0で負けたからですが、勝者の側にいたコレアは出場しなかったって、ちょっとは当人の慰みになる?

でも凄い偶然もあって、何とそのマラカナでの大一番、ディ・マリア(PSG)の先制ゴールをアシストしたのが、この月曜、アトレティコ入団が発表されたMFロドリゴ・デ・パウル(ウディネーゼから移籍)だったんですよ。先週は20才のブラジル人FW、マルコス・パウロ(同フルミネンセ)も加入し、もう練習に参加しているんですが、こちらはディオゴ・ジョタ(現リバプール)やラウール・ヒメネス(現ウォルバーハンプトン)らのようにレンタル、レンタルの繰り返しとなって、シメオネ監督の下でプレーできるかは成長次第。一方、デ・パウルの方は27才の即戦力で、コケやジョレンテ、コンドグビア、そして現在、メキシコ代表としてコパ・デ・オロに参加中、最長、決勝のある8月1日まで拘束されているエレーラらと中盤の定位置を争うことになるんだとか。

うーん、そのせいでますます、サウール退団の噂が強くなっているようですが、昨季は本当にパッとしなかった本人が河岸を変えたがっているというのはともかく、2年前にバルサに移籍したグリーズマンとのトレードがまとまらなさそうなのは良かったかと。どうやらこれは最初、バルサから受け取った1憶2000万ユーロ(約160億円)をアトレティコがベンフィカに丸々払って獲ったジョアンと交換したいという話だったようなんですが、まだ頼りないところはあっても、彼はクラブの長期成長計画の中心となるべくして、一世一代の大番振る舞いをした選手ですからね。クラブ幹部が歯牙にもかけなかったところ、サウールにお鉢が回ったようで、でも彼では移籍金や年棒でバランスが取れず。

おまけにそのトレードの噂には、あまり退団の経緯を良く思っていなかったアトレティコファンもすぐ反応して、即日、#GriezmannNoTeQueremos(グリースマン・ノー・テ・ケレモス/グリーズマンはいらない)のハッシュタグがトレンディングトピック入りしたなんて話もありましからね。どうやら、この夏の課題であるルイス・スアレスをサポートするFW探しは昨季後半、オリンピック・リヨンからレンタルで来ていたウスマン・デンベレのリピートを含め、当分、続くことになりそうな。ちなみにアトレティコのプレシーズンマッチの予定は23日にヌマンシア(2部)戦、28日にザルツブルク戦、31日にボルフスブルク戦、8月4日にカディスとのカランサ杯となっていて、マドリッドで見られるものはありませんが、最初の試合以外はTV中継がきっとあると思いますよ。

え、それよりプレシーズンが始まってから、補強が止まらない弟分がいるようじゃないかって?それは昨季、最終節の1つ前で2部降格を回避、指揮官もボルダラス監督(現バレンシア)からミチェル監督に代わったヘタフェで、初っ端をビトロ(アトレティコからレンタル)が飾ったかと思いきや、21才のメキシコ人FW、JJマシアス(チバスから移籍)、31才のCB、ミトロビッチ(同ストラスブール)に続き、この月曜には昨季後半にレンタル移籍して、チームを助けてくれたアレニャ(バルサに500万ユーロ/約6億5000万円を払って5年契約で獲得)のプレゼンもあったんですよ。うーん、その席で当人の名プレー動画が上映された時には一緒に久保建英選手も映っていたせいでしょうかねえ。

マルカ(スペインのスポーツ紙)の記者が久保選手の再レンタルについて質問していたんですが、スポーツディレクターのアンヘル・マルティン氏は「No voy a decir ningún nombre de ningún jugador/ノー・ボイ・ア・デシール・ニングン・ノンブレ・デ・ニングン・フガドール(選手の名前は誰も言わない)」と取りつくしまもなし。まあ、まずは兄貴分クラブの都合が優先しますし、当人も今はオリンピックの準備で忙しいですからね。ビトロもアレニャもミチェル監督のボールを持って、いいプレーをするというサッカーに共感して来た口ですから、希望はあるかもしれませんが、どちらにしろ、夏のコリセウム・アルフォンソ・ペレスは恒例のメインテナンス工事中。

ユニフォームを着てピッチでお披露目もできませんし、コロナ感染予防のため、スタジアム正面ホールでのファンサービスもダメとあって、プレゼンの後、選手たちは丁度、その時間にabono(アボノ/年間指定席)の更新に来ていたサポーターたちのリクエストにこっそり応えてくれるぐらいなんですけどね。それが久保選手だったら、ちょっと楽しいかなと私なんか、思ってしまったものですが、ヘタフェもこの水曜からはトルコ代表のユーロ参加で遅れて戻って来たエネス・ウナルも同行して、ラ・マンガ(スペイン南東部のゴルフリゾート)でのキャンプがスタート。10日間の滞在中、あちらでイビサ(2部)、スタッド・レンヌ、アトロミトスとプレシーズンマッチを行い、その後はまた地元で練習となりますが、8月13日、メスタジャでボルダラス前監督と対決する開幕バレンシア戦までに補強が終わるかどうかはわかりません。

そしてプレーオフを経ての1部昇格だったため、他のクラブから1週間遅れのこの火曜にラージョも練習を始めたんですが、戦力では昨季、RMカスティージャからレンタルしていたフラン・ガルシアが200万ユーロ(約2億6000万円)の移籍金で、権利は半分ながらも保有選手に。プレーオフ準決勝レガネス戦1stレグで挙げた2得点で株を上げたベベも4年間の契約延長が決まったんですが、まだこちらは8月4日のバジャドリー(今季は2部)戦しか、プレシーズンマッチは決まっておらず。リーガ開幕戦ではセビージャと当たるため、あんまり呑気にもしていられないんですが、先週、1年契約延長となったイラオラ監督の下、今回こそ、最速2部Uターンしないチームを作れたらいいですよね。

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