実はあんまり余裕じゃなかった…/原ゆみこのマドリッド

2021.06.19 18:30 Sat
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「淋しくなっちゃうわね」そんな風に私が溜息をついていたのは木曜日、レアル・マドリーTVで6月末に契約が切れるセルヒオ・ラモスの退団お別れ会見を見ていた時のことでした。いやあ、ご存知の通り、コロナ流行により、リーガが中断した去年の3月から、サンティアゴ・ベルナベウは全面改装工事に突入。今季はずっと無観客だったのを幸いとばかり、全てのホームゲームをバルデベバス(バラハス空港の近く)のエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)で開催したのはいいんですが、あちらには未だにピッチもスタンドもないんですよ。それどころか、8月14日の週末に始まる2020-21シーズンのスタートにも間に合わないとあって、態勢が整う9月半ばまで、一時はお隣さんのワンダ・メトロポリターノを借りるという話もあったぐらいなんですけどね。

よって、当然、ラモスのお別れセレモニーも在りし日のベルナベウの写真をバックに映した練習場プレスルームで行われ、その場には関係者のみが出席。記者会見もZoomを通してと、2005年にセビージャから19才の若さで移籍した当人が経験した入団プレゼンとはまったく趣きの違うものとなりましたが、昨今のいいところは、クラブのTV局のみならず、Gol(ゴル/スポーツ専門放送局)やマルカ(スポーツ紙)のウェブページでもライブ配信で一部始終が見れてしまうこと。それでもやっぱり、ラモスを見送りたいと集まったファンでバルデベバスの選手用出入り口は凄いことになっていましたが、せめてベルナベウの改装が終了する1年後には、ラウール(現RMカスティージャ監督)のようにサンティアゴ・ベルナベウ杯に相手チームの一員として招かれて、大勢のサポーターに挨拶することができるといいのですが…。

え、マドリーはどうして、2015年にカシージャスがポルトに移籍して以来、キャプテンを務め、その間、前人未踏のCL3連覇も達成。671試合出場のレジェンドと契約延長をしなかったのかって?うーん、クラブは12月頃から、1年契約で年棒据え置き、但し、コロナによる減収により、今季同様、10%カットというオファーを出していたんですけどね。ラモスの弁によると、「Yo solo he pedido dos años. El tema no ha sido de dinero/ジョ・ソロ・エ・ペディードー・ドス・アーニョス。エル・テーマ・ノー・ア・シードー・デ・ディネーロ(自分は2年契約を頼んだだけ。お金の問題じゃなかった)」そうで、一旦は拒否。
先週になって、1年という条件でOKすると伝えたところ、「Me dicen que la oferta tiene fecha de caducidad y yo no me había enterado/メ・ディセン・ケ・ラ・オフェルタ・ティエネ・フェチャ・デ・カドゥシダッド・イ・ジョ・ノー・アビア・エンテラードー(オファーには期限があったと言われたけど、ボクは知らなかった)」のだとか。マルカなど、返答期限は3月末で、新聞を読んでいれば、わかったはずとか、少々、理解に苦しむ解説をしていましたが、実際、その頃には後継CBとして、ダビド・アラバ(バイエルンとの契約を満了)の獲得が進んでいましたからね。結局のところ、再交渉を先延ばしにしているうちに、当人が負傷でほとんど出場できなくてもチームはCL準決勝まで進出。リーガ優勝も最終節までお隣さんと争ったという辺りから、絶対不可欠な選手というステータスが失われてしまったんじゃないかと思いますが、こればっかりはねえ。

ちなみにマドリーを離れたラモスがどこに行くかはまだわからず、いえ、古巣のセビージャ復帰は自ら否定。バルサも絶対ないということで、彼にはまだ、あと4試合で世界最多出場記録に並べるスペイン代表復帰の目標もあるため、もう35才とはいえ、おそらく、PSGやマンチェスターの2強といったヨーロッパの一流チームになるよう。このユーロ2020に招集されない原因となったケガはリーガ終了後もリハビリを続けていたおかげで、すっかり治っているそうで、早めに決まれば、プレシーズン練習にも最初から参加できますからね。違うユニフォームを着た姿にファンが慣れるのは時間がかかるかもしれませんが、来季は体調万全でプレーするラモスの雄姿を見ることができるのを祈っています。
そうそう、この木曜の会見にとばっちりを受けた選手もいて、実は同じ時間にはラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設ではサラビア(PSG)の記者会見が予定されていたんですが、やっぱり代表番とマドリー番の記者が被るメディアが多いせいですかね。こちらは30分繰り上げてやっていましたが、今週のスペイン代表は月曜にグループリーグ初戦でスウェーデンとスコアレスドローした後、水曜がオフに。といっても合宿が始まって以来のバブル体制は変わらないため、選手たちは外出も家族との面会もできず。そこで1回目の休養日同様、チーム全員でバスに乗って、マドリッド郊外のレストランへランチに出かけたりしていたんですが、ブスケツ(バルサ)以外、ディエゴ・ジョレンテ(リーズ)も擬陽性と、コロナ感染者は出ていませんからね。そのくらいの息抜きは許してあげないといけないかと。

そして木曜、金曜は練習となったんですが、いやあ、ここ数日、スペインは気温がいきなり10℃程下がって、今はセビージャ(スペイン南部)もあまり暑くないんですよ。それでも前日のセッションをカルトゥーハでやらなかったのはピッチの状態が気になったから?そう、スウェーデン戦の後、ルイス・エンリケ監督がそこここで黄色くなっていたり、穴が開いたりする芝に不満を訴えたため、協会が大慌てで整備しているんですが、何せ、土曜のポーランド戦まで、あまり時間がありませんからね。せいぜい肥料を撒いたり、日のあまり当たらない場所にライトを当てたりぐらいしかできないんですが、今となれば、どうして4月19日に今季のコパ・デル・レイ決勝があった後、芝の総張替えをしなかったのか、大いに悔やまれるところ。

ユーロの会場が有観客を保証できないビルバオ(スペイン北部)から、カルトゥーハに変更されたのは、その決勝の6日後でしたから、十分、余裕はあったはずですけどね。直接、様子を確かめるためか、相手のポーランドは金曜にスタジアム練習をしていましたが、とにかく、スペインの課題はユーロ直前のポルトガルとの親善試合から続くゴール日照り。シュートはかなり撃つんですが、敵GKに弾かれたり、枠を外れたりと精度が悪く、おかげでモラタなど、完全にスペインサポーターから、pito(ピト/ブーイング)の標的にされてしまったから、さあ大変。今季、リーガでサラ(スペイン人の得点王)となったジュラール・モレノ(ビジャレアル)推しが増えたのもあってか、ルイス・エンリケ監督がわざわざ、「Mañana jugamos con Morata y diez más/マニャーナ・フガモス・コン・モラタ・イ・ディエス・マス(明日はモラタとその他10人がプレーする)」と先発予告までする破目になっていましたっけ。

ただ、ポーランドの方も初戦はスロバキアに1-2と負け、黒星発進と、バイエルンのレジェンドと化したFWレバンドフスキを擁しながら、あまり勝ち星に恵まれていないんですよ。それこそ、1月にパウロ・ソウサ監督が赴任してから、6試合で勝ったのがアンドラ戦だけという有り様なんですが、怖いのは木曜に先行開催となったグループEの試合でスウェーデンがスロバキアに1-0で勝利。その結果、スペインに負けると敗退決定という絶体絶命の危機に陥ってしまったため、これは窮鼠猫を噛む状態になる危険性もあったりする?

逆にスペインが負けたら、負けたで、グループ最終戦のスロバキア戦で勝ってもグループリーグ敗退の可能性が出てくるため、もうここは歯を食いしばってでも勝ち点3を手に入れないといけません。そうそう、金曜の夕方には、チームがセビージャに移動する前にとうとう隔離期間が終わり、PCR陰性が出たブスケツが合流するという朗報も。ルイス・エンリケ監督によると、当人はずっと無症状で、バルセロナの自宅でトレーニングしていたため、「Estaría en condiciones de participar/エスタリア・エン・コンディシオネス・デ・パルティシパル(試合に出られるコンディションだ)」そうですが、ベンチ入りするかどうかは試合の日の朝、決めるようです。

その他、1試合目から、スタメンの変更があるとしたら、フェラン・トーレス(マンチェスター・シティ)の代わりに右のFWとしてジュラール・モレノを入れ、モラタ、ダニ・オルモ(ライプツィヒ)の3弾頭で得点を狙うといったぐらいですが、果たして土曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのポーランド戦でスペインは初勝利を掴むことができるのか。せめて24チーム中16チームが突破できる激甘グループリーグぐらいはクリアしてもらいたいものですが、だんだん大会が進むにつれ、イタリア、ベルギー、オランダ、フランスなど、強いチームがはっきりしてきましたしね。

金曜には、コロナ感染予防のための規制緩和を4週間延期することにしたイギリス政府が入国者の10日間隔離措置を続けると、国外からの招待客が観戦に行けず。特例入国を認めない限り、ウェンブリー開催予定だった準決勝、決勝をスタンドフルオープンのプシュカス・アレナに変更すると、UEFAが脅しているなんて話も聞きましたが、黄金の日々は去り、最近は結構、16強対決でも負けることが多いスペイン。今の時点ではまだまだ、そんな先のことは想像つかないんですよね。

そのブダペストでは同じ土曜にハンガリーvsフランス戦もあって、こちらには来季、マドリーの第1キャプテンとなるかもしれないベンゼマや、あと1年契約を残しながら、この夏には河岸を変えたがっているというバラン。更には今回、ベルナベウでのメガプレゼンはできなくとも、ペレス会長が獲得にかなり前向きなエムバペ(PSG)もいるため、興味をそそられる試合でもあるんですが、マドリッド勢を追う私として、やっぱり気になるのは日曜午後9時から、ラージョが戦う1部昇格プレーオフ決勝ジローナ戦2ndレグ。

何せ、先週の1stレグで2部の弟分はエスタディオ・バジェカスでプレーしながら、1-2と不覚を取ってしまいましたからね。今季のリーガの試合はこれで本当に最後の最後ですし、スペインも来週の土曜からは屋外でのマスク着用義務が解除されるとあって、来季はどのスタジアムでも有観客試合となる線が濃厚。となれば、観戦オプションを増やすため、是非ともマドリッド1部4チーム体制が復活してもらいたいものですが、さて。remontada(レモンターダ/逆転劇)にはモンティリビで0-2の勝利が必要とちょっと、ハードルは高いものの、ラージョがエスパニョール、マジョルカに続く、第3の昇格チームになって、ファンを喜ばせることができたらいいですよね。

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