シーズンは終わっていなかった…/原ゆみこのマドリッド

2021.06.02 23:15 Wed
「またZoom会見なんだ」そんな風に私がガッカリしていたのは火曜日、ジダン監督の後任がアンチェロッティ監督(昨季はエバートンを指揮)に決まったというレアル・マドリーからのメイルを読んだ時のことでした。いやあ、先週から筆頭候補がアッレグリ監督(ユベントスに復帰)、コンテ監督(インテルを退団)、ポチェッティーノ監督(現PSG)とコロコロ変わり、2013-15年にチームを率いた彼の名前が挙がったのはそれこそ、火曜の朝だったんですけどね。前日にはカンプ・ノウでアグエロ(マンチェスター・シティとの契約が満了)の入団プレゼンがマスコミ在席で行われていたため、そろそろマドリーのイベントもコロナ前のように現場で見られるようになるんじゃないかと期待したんですが、まあ、そうですよね。

だってえ、サンティアゴ・ベルナベウは昨年から始まった全面改装の真っ只中で、来季は一応、9月ぐらいから試合に使えるようにするようですが、完成は2022年夏の予定。今はミュージアムぐらいしか残っておらず、簡易ステージを設けるスタンドすらありませんからね。3年契約を結んだアンチェロッティ監督がbufanda(ブファンダ/マフラー)を掲げてポーズするピッチもないとなれば、会見がバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場で行われるのも頷けますが、何せ、あそこは車を持っていない者にとってはメトロの最寄り駅から徒歩30分と、不便極まりない立地。
おまけにスペイン各メディアのマドリー番記者はスペイン代表番を兼ねていることが多いため、それこそ、前回、2017-18シーズン終了後にジダン監督が電撃辞任した日など、W杯前合宿が始まっていたラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設で皆、右往左往していたものですが、ネット経由で質問できるとなれば、移動の手間が省けるだけ、むしろ親切と言っていい?

ついでに言えば、もうマドリーの試合はなく、まだ6月末に切れる契約の延長もしていないにも関わらず、ユーロに参加するスペイン代表にも招集されない原因となったケガのリハビリにセルヒオ・ラモスはいまだに毎日、バルデベバスに通勤。アンチェロッティ監督も直接、顔を見て、2013-14シーズンのCL決勝後半ロスタイムに殊勲の同点ゴールを決め、最後は延長戦でお隣さんを破って、栄えあるDecima(デシマ/10回目のCL優勝のこと)をクラブにもたらした英雄と将来の見通しについて話し合えるのもいいかもしれませんよね。

え、それより月曜にはジダン監督のお別れの手紙というか、契約を1年残して、辞任した理由を説明する書簡をAS(スポーツ紙)が掲載して、結構、騒ぎになっていなかったかって?そうですね、「Me voy, pero no me tiro del barco y no estoy cansado de entrenar/メ・ボイ、ペロ・ノー・メ・ティロ・デル・バルコ・イ・ノー・エストイ・カンサードー・デ・エントレナル(自分は出て行くが、船を下りた訳じゃないし、監督をするのに疲れた訳でもない)」という彼は、その理由をここ数カ月、中長期的にチームを成長させるための信頼や支持が欠けていたせいと、クラブとペレス会長を告発。
とりわけ、昨年の冬、CLグループリーグ敗退の危機や首位アトレティコとの距離がどんどん開いていった頃、次の試合で負けたらクビみたいな噂が、意図的にクラブ内の誰かによって流されたことに心を痛めていたようですが、うーん。似たような話はいつぞや、バルトメウ会長のいた頃、バルサのピケなどからも聞いたような気がしないでもなし。とにかくビッグクラブは内部関係が複雑で、もちろん、アンチェロッティ監督みたいなベテランになると、酸いも甘いもわかっていると思いますが、何せ、延べ60人に及ぶ負傷禍のせいもあったものの、シーズン終盤は30代のベテランたちとRMカスティージャ(マドリーの下部チーム)の助っ人頼りになってしまった昨季を反省して、この夏はチームの人事刷新もしないといけませんからね。

一応、移籍金1憶ユーロ(約134億円)のギャラクティコとして入団して2年、ケガ続きで、チェルシー時代の実力を発揮できなかったアザールなど、現在、参加中のベルギー代表合宿から、「マドリーからは出て行かないよ。あと3年、契約があるし、自分が100%になれば、沢山、チームに貢献できる」と残留をアピールしていましたが、どうやら、リーガ最終節を欠場した太ももの痛みはまだ消えていないよう。6月1日に発売となった新ユニフォームのビデオでモデル出演していたマルセロ、アセンシオらも先行きはわかりませんしね。補強選手第1弾としては金曜にDFアラバ(バイエルンとの契約が満了)との5年契約が発表されましたが、入団プレゼンはユーロの後。何にしろ、このオフシーズンはマドリーの動きに注意していた方が良さそうです。

え、同じ監督交代組でもマドリッドの弟分、ヘタフェはミチェル新監督のプレゼンを月曜にコリセウム・アルフォンソ・ペレスのプレスルームにマスコミを入れてやったんだろうって?その通りで、私も10年ぶりの復帰とあって、つい駆けつけてしまったんですけどね。嬉しかったのは、同席したアンヘル・トーレス会長も「Míchel es de los que juega con la cabeza/ミチェル・エス・デ・ロス・ケ・グエガ・コン・ラ・カベッサ(ミチェルは頭を使ってプレーする監督)。ウチには2つのモデルがあって、どちらも有効だった。キケ・サンチェス・フローレス、ラウドルップ、シュスター、ミチェルは頭を使うタイプ。もう1つの足を使うタイプの監督はチームを5位に導いた(ボルダラス監督のこと)」と言っていたように、来季は昔のようにいいプレーをするヘタフェが見られそうなこと。

ただ、クラブ2度目のEL出場も遂げた第1期の後、セビージャ、オリンピアコス、オリンピック・マルセイユ、マラガ、UNAMプーマス(メキシコ)などで経験を積み、「Soy mucho más entrenador ahora que antes/ソイ・ムーチョ・マス・エントレナドール・アオラ・ケ・アンテス(今の自分は前より、もっといい監督になっている)」というミチェル監督の下で再び、久保建英選手やアレニャのレンタル移籍が叶うかは今のところ、まだ不明。「A mí me gustan los buenos jugadores/ア・ミー・メ・グスタン・ロス・ブエノス・フガドーレス(私はいい選手が好きだ)が、補強はクラブ次第」と当人も言っていたように、こればっかりは貸し出し元のクラブや選手の都合もあるため、かなり夏も深まってからでないとわからないかと。

その他、昨季の主力16~17名は原則的に契約破棄金額を積まれない限り、放出するつもりはないとアンヘル・トーレス会長は話していたんですが、翌火曜には契約満了だったFWアンヘルが延長のオファーを蹴って、退団を発表。彼ももう34才とはいえ、昨季は39才のホルヘ・モリーナがグラナダに移籍してEL、コパ・デル・レイ、リーガと大車輪の活躍。15ゴールも挙げていますし、次のクラブでもまだまだ頑張れるのでは?ああ、そうそう、ヘタフェも毎年夏の恒例、メンテナンス工事により、ミチェル監督のピッチでのポーズはなしで終わったのはちょっと、兄貴分と似てますでしょうか。

そしてマドリッド南部のお隣さん、先週末、リーガ2部の全節が終わったレガネスについても伝えておくと、彼らは日曜の統一時間帯の試合でサラゴサに0-5と大勝。ケビン・ブア、フアン・ムニョスの2発、ルーベン・パルド、デ・ラ・フエンテがゴールを挙げて、しっかり3位を確保しただけでなく、肉離れでプレーオフ決勝に間に合えば御の字と言われていた柴崎岳選手も途中出場で復帰したという朗報が。ただ、恐れていた通り、プレーオフ準決勝が弟分対決になってしまい、いえ、もちろん、最終節でルーゴに0-1と負けながら、スポルテイング・ヒホンもアルメリアに屈してくれたため、ラージョが6位に留まれたのはラッキーだったんですけどね。

アルコルコンに1-0で負け、第3のマドリッド2部勢の残留を助けたエスパニョール、続く2位で終わったマジョルカに加え、8月半ばから1部でプレーできる枠はあと1つだけ。よって、今更、嘆いても仕方ないんですが、木曜午後9時からのエスタディオ・バジェカスでの1stレグでは、私もラージョを応援すべきか、レガネスを応援すべきか、大いに迷うところかと。ちなみにアシエル・ガリターノ監督のチームは柴崎選手も日本代表に呼ばれなかったとあって、抜けるメンバーはいないんですが、イラオラ監督には正GKディミトリエフスキがユーロに初出場するマケドニアに、アドビンクラもW杯予選でペルーに招集されるという逆境が。

一応、GKの方は3試合前から、ジダン監督の次男、控えのルカが腕慣らしに出場しており、心配はなさそうですが、さて。こちらの2ndレグはブタルケで日曜に開催。決勝はジローナvsアルメリア戦の勝者と13日、20日に戦うことになりますが、アルメリアのクエンカも現在、スペインU21代表に呼ばれていたりと、各国代表選手の多い2部チームは何だか、割を喰っているような。ちなみにハンガリー・スロベニア共催のU21ユーロ、3月開催のグループリーグに続いて、決勝トーナメントに参加しているスペインはモンカジョラ(オサスナ)がコロナ陽性となり、土曜まで全員揃って練習ができなかったハンディキャップにめげず、月曜にはクロアチアを延長戦で2-1を破り、ポルトガルと当たる木曜の準決勝に進出。

殊勲の2ゴールを挙げたプアドなども早々にエスパニョールの1部昇格が決まっていたからいいようなものの、争っている最中でラスト2試合離脱とかいう破目になっていたら、大変でしたけどね。このU21ユーロ、マドリッド勢からはヘタフェのククレジャ、モンカジョラの代わりに追加招集されたRMカスティージャのブランコが加わっているだけですが、先週水曜にEL決勝が終わるやいなや、祝賀行事に加わることせずにビジャレアルのジェレミー・ピノ、フェル・ニーニョも合流。リーガが終わっても止まらない、この過密日程、ちょっと可哀そうですよね。

え、だからコケは月曜から、ラス・ロサスで始まったA代表ユーロ合宿にマイベッドを持ち込んだのかって?いやあ、サッカー協会のメディアセンターで火曜にあった選手記者会見で、リーガ優勝したアトレティコのキャプテンだから何だか、先陣を切った当人によると、自宅で使っているHogo社製の高機能マットレスだと疲れが取れるからだそうですが、実は他にも同僚のマルコス・ジョレンテ、ユベントスにレンタル移籍中のモラタ、ラモスの非招集を受けて、速攻スペイン国籍取りをしたラポール、火曜にはカンプ・ノウで入団プレゼンを終えたエリック・ガルシアのマンチェスター・シティの2人も持ち込むなど、今回のヨーロッパ11都市で広域開催されるユーロのグループリーグ中、スペインはずっと協会の宿泊施設に滞在。

当初、ビルバオ(スペイン北部)のサン・マメスでグループリーグ開催だった予定がセビージャ(同南部)のカルトゥハに代わっただけなので、14日のスウェーデン戦、19日のポーランド戦、23日のスロバキア戦までは前日移動、試合後帰京を繰り返すため、ラス・ロサスにいる時間が長いのは確かですけどね。普通のユーロやW杯なら、開催国付近のキャンプ地で合宿するなど、メリハリがつけられるんですが、ユーロ開幕前の足慣らしとしてプレーする金曜午後7時30分(日本時間翌午前2時30分)からの親善試合、ポルトガル戦もワンダ・メトロポリターノとなると、ここはいっそ、どっぷりお家気分に浸ってしまおうということ?

ポルトガルにはジョアン・フェリックスもいるとあって、今回はマドリッド当局がキャパ30%程度の有観客を許可、2万人分のチケットが代表オフィシャルウェグで売り出されたため、つい私も買ってしまったんですけどね。日本のクレジットカードが使えず、あたふたしているうちにタイムアウトしてしまうなど、不慣れなせいでドタバタしたのはともかく、値段が35ユーロ(約5000円)から60ユーロ(約8000円)と通常の代表戦に比べ、かなりの高額設定だったのはやっぱり、人数が少なくても同じ入場料収入を協会が得たかったからでしょうか。

その一方で月曜夕方に16人で練習を始めた代表には、火曜にEL王者ビジャレアルのジェラール・モレノ、パウ・トーレス、同敗者、マンチェスター・ユナイテッド11人目キッカーとして決められず、PK戦で涙したGKデ・ヘアも到着。水曜にはCL決勝組、先週末にはポルトでキャプテンとしてトロフィーを掲げたチェルシーのアスピリクエタ、ベンチでマンチェスター・シティがまるで16強対決のアトレティコのように、もしくは準決勝のマドリーのように、トゥヘル監督自慢の鉄壁の守備を崩せず、ハバーツのゴールで0-1と負けてしまうのを揃って見守るしかなかったロドリ、フェラン・トーレス、ラポール、エリック・ガルシアも合流しますが、ホント、代表って、昨日の敵は今日の友という言葉がピッタリですよね。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している

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