とうとう優勝チームが決まる…/原ゆみこのマドリッド

2021.05.22 20:00 Sat
©Atlético de Madrid
「何か懐かしい言葉ね」そんな風に私が感慨を覚えていたのは金曜日、ホセ・ソリージャで行われるバジャドリーvsアトレティコ戦がalato riesgo/アルト・リエスゴー(高危険度)の試合に指定されたと知った時のことでした。いやあ、昨季の途中からコロナ禍が始まって、無観客がスタンダードになる前はクラシコ(伝統の一戦)やら、マドリーダービーがあるたびに、そういう注意喚起があったものですけどね。前節から、一部の州で収容人数25%の入場が認められたため、この最終節もシュタット・デ・バレンシアのレバンテvsカディス戦、マルティネス・バレロのエルチェvsアスレティック戦、バライドスのセルタvsベティス戦には2、3000人ぐらい入れるんですが、実はバジャドリーはまだ許可が出ていない地方。

それが何故、危険視されるかというと、ここ2試合、ワンダ・メトロポリターノ隣接の駐車場で応援して、チームが勝利したことに味を占めたか、はたまた7年ぶりのリーガ優勝のチャンスに舞い上がったか、昨年10月から続いていた警戒事態が解除され、自由に州外への移動ができるのに後押しされたか、土曜には大量のアトレティコファンがバジャドリーまで遠征することに。クラブがファンのために列車を貸し切ったというのはデマだったようですが、バス数台で乗りつけるペーニャ(ファンクラブ)や、3時間弱の距離を自家用車で駆けつけるグループなど、およそ5000人がバジャドリーのマジョール広場に集合して、午後6時(日本時間翌午前1時)にはスタジアムの外で応援するというのですから、凄いじゃないですか。

その一方で、当日はマドリッド市内にも厳戒態勢が敷かれ、警官730人が動員。アトレティコが躓いた場合、優勝の可能性があるレアル・マドリーのビジャレアル戦も同時刻開催のため、ネプトゥーノ(アトレティコが優勝を祝う広場)とシベレス(同マドリー)に人が詰めかけすぎないよう見張るそうですが、うーん、この2つの広場はプラド通りを歩いて5分程の距離。となると、もしや試合経過を見ながら、警官隊の配置を決めたりする?どちらにしろ、コロナ前のように広場に仮設ステージを作って、ファンとお祝いするためにチームが訪れるということはないんですけどね。すでに最短1部復帰が決まったエスパニョールやマジョルカのファンたちの騒ぎ具合を踏まえると、やっぱり用心にするに越したことはありませんって。
ちなみにミッドウィークの試合がなかった今週、私がマハダオンダ(マドリッド近郊)のアトレティコ練習場に偵察に行ったのは金曜だったんですが、やっぱり普段よりはカメラの数が多かったかと。セッションではリハビリ中のレマルだけが別メニューで、このまま試合に出ずに今季を終えてしまいそうですが、先日、発表があった6月11日に開幕する1年遅れのユーロ2020に向けたフランス代表には招集。現在、コロナ陽性で自宅隔離中、最終節に出られないお隣さんのクロースがドイツ代表に呼ばれていたのと同様、合宿までには治ると見込まれているようです。

アトレティコでは彼以外、ケガ人はいないんですが、この試合ではサビッチが累積警告で出場停止に。といってもCBには2014年のリーガ優勝時にも在籍していたヒメネスがいますからね。もう1人の経験者、コケとは違い、当時はまだ見習い扱いだったため、カンプ・ノウのスタンドで先輩ゴディン(現カリアリ)がチームを頂点に導く同点ヘッドを決めるのを眺めていただけですが、負傷に祟られさえしなければ、レギュラーだった選手となれば、特に心配しなくていいかと。それどころか、6月13日から始まるコパ・アメリカで、7年ぶりのアトレティコの戴冠をウルグアイ代表キャプテンに報告する気満々なんじゃないでしょうか。
え、もう1人のウルグアイ人選手、ルイス・スアレスは今週、昨季までの同僚だったメッシと、互いに奥さん連れでランチしている姿をマドリッド市内で目撃されていなかったかって?その通りでどちらも休養日だった火曜、高級ブランドショップなども多いサラマンカ地区のイタリア料理店、Numa Pompilio(ヌマ・ポンピリオ)から揃って出て来るところをマスコミに捕まったんですが、いやあ。街中でいきなり、そんな有名選手たちに遭遇したら、通りかかった人たちなど、ビックリしちゃうんじゃないかと思うんですが、わざわざメッシがバルセロナ(スペイン西部)からやって来たというのは一応、リーガ優勝の懸かった試合が控えている親友を気遣った?

実際、バルサにも土曜の統合時間帯に前節、2部降格の決まったエイバルとの試合があるんですが、週の早いうちにはペドリが、金曜にはメッシも前倒し休暇をもらって、参加しなくてもいいことに。でもねえ、先週末には完全に優勝の可能性がなくなった彼らですが、実は4位セビージャとの勝ち点差が2しかないため、最終節の結果次第では4位転落もあるんですよ。欧州ルーパーリーグの創設クラブの一員として、UEFAからマドリー共々、処分を受けない限り、それでも来季のCL出場はできるとはいえ、そうなるとTV放映権収入の分配金が700万ユーロ(約9億3000万円)程目減り。ラポルタ新会長の計画しているチーム大改造及び、メッシの契約延長に差し障りが出るんじゃないかと思うのは、私の余計なお節介でしょうか。

まあ、そんなのは些末事ですが、金曜夕方に大勢のファンに見送られて、マハダオンダからバジャドリーに2台のバスを連ねて向かったアトレティコは優勝決定に備え、全選手を招集。何せ、シメオネ監督も「Una final donde dos equipos luchan por objetivos diferentes/ウナ・フィナル・ドンデ・ドス・エキポス・ルチャン・ポル・オブヘティボス・ディフェレンテス(2つのチームが違う目標のために戦う決勝)。どちらも全力を尽くして達成しようとしている」と言っていたように、バジャドリーも1部残留が懸かっていますからね。ただ、自分たちが勝っても、上にいるウエスカがバレンシア戦で、エルチェもアスレティック戦で勝ち点を落とさないといけないとあって、あまり確率は高くないため、早いうちにゴールを奪ってしまえば、アトレティコもそんなに苦労しないで勝てるかもしれません。

一方、結末がどうあれ、このエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)でのビジャレアル戦がジダン監督最後の試合となりそうな雰囲気が漂っているマドリーでの今週の嬉しいニュースは、ベンゼマが6年ぶりにフランス代表に招集されたことになるかと。ええ、2015年に同僚のバルブエナに対する恐喝に協力した容疑により、今まで出禁にされていたんですが、どうやら2018年W杯優勝から早3年、前線の衰えを感じたか、デシャン監督がエムバペ(PSG)、グリーズマン(バルサ)、ベンゼマの3弾頭で立て直しを図ることにしたようで、常連のバランもようやくケガが治って、土曜の試合のリストに入ったのは良かったかと。

同様に今年になって、1月のスペイン・スーパーカップ準決勝以来、復帰してはまた負傷というのを繰り返しているセルヒオ・ラモスも戻ったんですが、何せ、こちらは週明けにルイス・エンリケ監督のスペイン代表ユーロメンバー発表も控えていますからね。そろそろ体調が万全になったところを見せておかないと、6月末で切れるマドリーとの契約延長交渉にも影響したりもする?といってもスタメンCBは、首位猛追を支えたナチョとミリトンだと思いますけどね。意外だったのは、ベルギー代表に招集され、ロベルト・マルティネス監督がその回復ぶりにお墨付きを与えていたアザールが金曜の練習を欠席。「algo tiene, poca cosa/アルゴ・ティエネ、ポカ・コーサ(大したことではないが、何かある)」(ジダン監督)という理由でベンチ入りしないことだったかと。

いや、まあ今季はほとんど彼なしでプレーしてきたマドリーですから、別にいいんでしょうが、相手のビジャレアルはEL出場権を目指すチームですからね。こちらは5位のレアル・ソシエダと勝ち点1差、6位のベティスと同じポイントで並んでいる7位とあって、できれば、コンフェレンスリーグ(来季から始まるUEFA第3のヨーロッパの大会)でパイオニアになるのは避けたいといった感じですが、加えて彼らには来週水曜のEL決勝でマンチェスター・ユナイテッドを下せば、来季のCL出場権を手に入れられるというオプションも。ウナイ・エメリ監督も「決勝のことは普通に考えているが、mañana estaremos al cien por cien en el partido de liga/マニャーナ・エスタレモス・アル・シエン・ポル・シエン・エン・エル・パルティードー・デ・リーガ(明日はリーガの試合に100%で挑む)」と言っていましたしね。そうそう簡単には勝てないかもしれませんよ。

そして前節には久保建英選手の決勝ゴールでレバンテを倒し、堂々1部残留を達成したヘタフェは統一時間帯と離れて、日曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)から、アウェイでのグラナダ戦で今季を終了。一応、勝てば順位が16位から、15位に上がる可能性もあるんですが、こちらはTV放映権料分配金が増えても87万5000ユーロ(約1憶2000万円)だけですからね。すでに今はボルダラス監督が来季、バレンシアに河岸を変えるんじゃないかという話題の方が中心になっていますが、こればっかりはシーズンが終わってみないことには何とも。逆にヘタフェの後任監督の名前が一切、出ていないのが私は気になってしまうものの、とりあえず、今季はマドリッドの1部チームが減らなかったのを喜ぶことにしましょうか。

え、それで再びマドリッド1部4チーム体制に復帰すべく、あと1席の昇格枠を争うプレーオフに出場できそうなレガネスとラージョはどうなっているのかって?いやあ、試合数の多い2部は残り2節で、後者の方は6位のスポルティング・ヒホンと同じ勝ち点の7位ともう一息のところなんですが、前節のミランデス戦で引き分けて、3位に上がった前者はかなり目標に近づいたかと。ただ、残念なことにシーズン終盤になって、アシエル・ガリターノ監督にスタメンを任されるようになっていた柴崎岳選手がその試合で肉離れを起こし、月曜のマラガ戦、30日のサラゴサ戦に出られなくなってしまったんですよ。

ちなみにプレーオフは6月2、6日に準決勝、13、20日に決勝とあって、早めに回復すれば、今回は日本代表にも呼ばれていないため、レガネスの力になれると思いますけどね。悩みの種はラージョが6位に喰い込んだ場合、準決勝で3位と対戦。マドリッド勢同士の骨肉の争いとなりかねないことですが、まあそれはそれ。8月中旬に開幕する来季はそろそろ、コロナ流行も落ち着いて、また日本からリーガを観戦に来ることができるようになるかもしれませんし、そうなった時はやっぱり、マドリッドに4チームあった方が沢山、試合が見られていいですよね。

NEWS RANKING
Daily
Weekly
Monthly