優勝候補が多すぎる…/原ゆみこのマドリッド

2021.05.04 19:00 Tue
Getty Images
「クラスター起こしたら、どうするつもりなんだろう」そんな風に私が面喰っていたのは月曜日、バレンシアに2-3で競り勝ち、この週末のリーガ首位決戦を勝ち点差2で迎えられることになったバルサの選手たちがメッシの豪邸に集結。バーベーキューをしながら、必勝を誓ったという記事を見つけた時のことでした。いやあ、その対戦相手であるアトレティコもいつぞやは練習後に皆揃って、マドリッド郊外にあるヒル・マリン筆頭株主の別荘にバスで行き、決起ランチ会を開いたりしていたんですけどね。未だにマドリッドにはコロナ感染予防の制限条例があるため、事前に保健省の許可を取ったり、1テーブルにつき6人にまでにするといった配慮をしながらだったようですが、バルセロナの状況も似たりよったりではなかった?

まあ、その辺はクーマン監督が考えればいいことですが、何にせよ、上位3チームが勝利したため、先週末のリーガでは優勝戦線の状況がまったく変わらず。また、胃がチクチクする1週間を過ごすことになるかと思うと憂鬱ではあるものの、それだけにミッドウィークにCL準決勝チェルシー戦2ndレグをレアル・マドリーがプレーしてくれるのは、ちょっと気晴らしになってくれるかも。ただ、日曜には、すでにスペインでは誰も口にすることのなくなった、欧州スーパーリーグ構想に反対するマンチェスター・ユナイテッドのファンがオールド・トラフォードを占拠。マンチェスター・シティのプレミアリーグ優勝が決まるかもしれないリバプール戦が延期になったなんて聞くと、その元凶であるペレス会長のいるマドリーが訪れるスタンフォード・ブリッジは大丈夫なんだろうかと、ちょっと心配になってしまったりするんですが…。

とりあえず、今は先週末のマドリッド勢の試合がどうだったか、お伝えしていくことにすると、先陣を切ったのは首位のアトレティコ。マルティネス・バレロでのエルチェ戦でしたが、一応、選手たちは前節のサン・マメスでの過ちから学んでいたようです。ええ、当たり前のことですが、ちゃんと目を覚ましてピッチに立った彼らは序盤から、積極的に敵ゴールを目指し、前半16分にはマルコス・ジョレンテのスルーパスに抜け出したルイス・スアレスのシュートも決まったんですけどね。オフサイドを取られてしまったため、こちらはスコアボードには上がらず。それでもしつこく攻め続けたおかげか、23分にとうとう、先制点を奪えることに。
そう、カラスコがエリア内右奥から出したラストパスをジョレンテが撃ったところ、ボールがホセマの手に当たって軌道を変え、ゴールに入ってくれたんですが、うーん、これだけだったんですよ。この日のゴールは。ハーフタイム入り直前にはコレアとジョレンテが続けて、どちらのシュートもエリア内で敵の腕に当たりながら、審判にハンドをスルーされてしまうというアンラッキーもありましたけどね。後半も18分にまたスアレスがゴールをオフサイドで認められなかった後、得意の一歩下がって、守りを固める態勢に入ってしまったとなれば、最後の最後にアトレティコが試練に見舞われたのも自業自得だった?

といっても残り1分に敵のクロスが腕に当たったとして、エリアのすぐ脇でFKを与えることになったトリッピアーのファールは前半の例を考えると、どうにも納得がいかないんですけどね。ただ、悪いことは続くもので、そのFKからのプレーで今度はジョレンテがハンドを取られ、場所がゴール前だったため、PKを献上って、こんな不幸の連鎖があっていいんでしょうか。でも人生、捨てる神あれば拾う神あり。先日はアラベス戦でホセル、セビージャ戦でもオカンポスと連続でPKを弾いていたGKオブラクだったため、2度あることは3度あるんじゃないかと藁にもすがる思いで見ていたところ、何とキッカーのフィデルがPKをゴールポストに当ててくれるとは!
いえ、エルチェも残留争いの真っ只中ですし、人の不幸を喜んではいけないんですけどね。自身のゴールが決勝点となったジョレンテなど、「No creo en la suerte/ノー・クレオ・エン・ラ・スエルテ(ボクは運なんて信じないよ)。PKがポストに行かなくたって、オブラクは方向を読んでいたんだから、止めてたさ」と言っていましたが、それこそシュートが人に当たったおかげでゴールになった選手が口にするのもどうかと。1-1の引き分けに持ち込むチャンスが泡と消えたエスクリバス監督は、「後半も前半のようにプレーしていたら、PKが決まったかどうかなんて、関係なかっただろう。porque hubiéramos perdido por goleada/ポルケ・ウビエラモス・ペルディードー・ポル・ゴレアダ(ウチは大量点で負けていただろうから)」と潔かったものの…。

本当に私が説明してほしかったのは、「後半の始まり方が悪かったとは思わないが、luego el equipo ya no atacó tras los 15 minutos/ルエゴ・エル・エキポ・ノー・アタコー・トラス・ロス・キンセ・ミヌートス(15分過ぎから、チームは攻撃しなくなった)」というシメオネ監督のコメントで、どうしてそうなったのかという点なんですけどね。当人は「Me quedo con las cosas positivas, las negativas suman poco/メ・ケド・コン・ラス・コーサス・ポシティーバス、ラス・ヘガティーバス・スマン・ポコ(私はポジティブなことを覚えておく。ネガティブなことはあまり役立たないからね)」と言うばかりなんですよ。でもお、毎回、そんなだから、「Tras el fallo, la alegría fue como un gol/トラス・エル・ファジョ、ラ・アレグリア・フエ・コモ・ウン・ゴル(敵が失敗した後の喜びはゴールが入った時のようだった)」という、せこい勝ち方になるのでは?

これではピケなどが、「Con la única idea de ganar./コン・ラ・ウニカ・イデア・デ・ガナール(勝つことしか頭にない)」と張り切って待っている土曜のバルサ戦、カンプ・ノウで晴れて勝利を手にして、アトレティコが勝ち点2差を守れるのか、私には不安しかありませんが、今週の彼らは日月を練習休みにして、火曜から活動再開。またしても筋肉系のトラブルで途中交代したヒメネスの様子も気になりますし、エルチェ戦ではコンドグビアに先発を譲ったコケがスタメン復帰できるのかとか、後半に途中出場したジョアン・フェリックスにまったく存在感がなかったのは何故なのかとか、スアレスはいつオフサイドにならずにゴールを決められるようになるのかとか、イロイロ、疑問はありますが、その辺はちょっと置いておくことにしましょうか。

そして土曜の夜は再び、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に戻って、マドリーvsオサスナ戦を見た私だったんですが、おや珍しい。ここ4試合、いつも雨が降っていたエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)の天気がいいじゃないですか。このお隣さんもバルサと同じ勝ち点差2の2位でリーガ優勝を争っているんですが、この日のジダン監督はCLチェルシー戦を見据えて、クロースとモドリッチを控えにするローテーションを敢行。代わりにカンテラーノ(RMカスティージャの選手)のブランコがボランチに入ったとはいえ、ベンゼマ、ビニシウス、アザールと前線はトップメンバーだったため、リードするのにそれ程、時間はかからないだろうと思っていたところ…。

何と、前半25分からの3分間にオサスナのGKエレーラがparadon(パラドン/スーパーセーブ)を連発。まずはアザールのシュートを弾くと、2度に渡るミリトンのヘッドも止めてしまうんですから、やってくれるじゃないですか。ちなみにこの日はミリトンが後半10分にもエリア内でvolea(ボレア/ボレーシュート)を外すなど、マドリーの中で誰より、シュートを撃っていたんですが、そろそろスコアレスドローも見えてきた30分過ぎのことでした。まさかイスコのCKから、彼のヘッドが3度目の正直で決まってしまうとは!いやあ、その日はかろうじてGKクルトワが間に合った、オウンゴールになりかねないバックパスなどもあったとはいえ、セルヒオ・ラモスの負傷離脱、バランのコロナ感染などで、繰上りスタメンとなってからのミリトンはほとんど完璧。このままだと攻守において、キャプテンがいなくてもどうにかなりそうな感じになってきましたが、まあ、そうもいきませんよね。

その後は40分にもベンゼマのパスをカセミロがコントロールしそこなったものの、逆にそれが功を奏して、2点目のゴールが入り、試合は2-0でマドリー勝利で終了。それはまあ、いいんですが、後半頭からナチョと代わったバランについて、ジダン監督は「Varane dice que es poca cosa y ojalá sea así/バラン・ディセ・ケ・エs・ポカ・コーサ・イ・オハラ・セア・アシー(バランは大したことないと言っていたし、そうであってほしいね)」と言っていたものの、翌日には右太もものケガで全治10日間となったことが判明することに。丁度、入れ違いでラモスとメンディが日曜のチーム練習で復帰の用意ができているところを見せていたんですが、果たして2人が水曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのチェルシー戦で先発できる程、調子が整っているのかどうかはまだわかりません。

他にもマドリーには土曜に1度、PCR検査で陰性を出しながら、日曜、月曜と結果が曖昧で、チームがロンドンに移動する当日朝の検査次第で遠征に加われるかどうか決まるバルベルデ、火曜にある地方自治体選挙で立会人に補欠指名されながら、期限内に免除の手続きをしなかったため、午前8時に投票所に出頭することが義務に。投票が終わった後、プライベートジェットで駆けつけることになったマルセロなど、幾つか逆境はあるんですけどね。といっても今季、CLではインテル、アタランタ、リバプールとヨーロッパの強豪を危なげなく、退けてきた彼らですから、ホームの1stレグが1-1の引き分けで、アウェイの2ndレグでは絶対、勝たないといけないと言っても、何とかなっちゃうような気がしないでもありませんが…週末のプレミアリーグでもフラムに2-0と勝っていたチェルシーも調子が良さそうですよ。

そして日曜には弟分のヘタフェが゛ビジャレアルと戦ったんですが、せっかく木曜のEL準決勝アーセナル戦2ndレグを重視して、ジェラール・モレノ、アルビオル、ペドラサといったレギュラーを温存してきた相手にしてやられてしまうとは。ええ、前節はエネス・ウナルが2ゴールを挙げて、0-2でウエスカに勝ちながら、この日は再び、ゴール日照りに陥った彼らは後半34分にジェレミーに決められた1点を返せず。1-0で負けてしまったんですが、ホント、今季のヘタフェはじれったいですよね。幸い、降格圏と勝ち点4差の15位というのは変わらず、こんな感じで自分たちが勝てなくても下のチームもそのままなら、あと4試合、何とか残留はできそうですが、日曜のエイバル戦はちょっと気合を入れないといけないかも。

というのも現在、最下位の相手は先週末、キケ・ガルシアがハットトリックを挙げ、アラベスに3-0で勝利していますが、残留ラインの17位までは勝ち点差5と、いよいよリーチが懸かってきているから。もっともその試合で乾貴士選手と武藤嘉紀選手は後半37分からの出場で、久保建英選手もラ・セラミカのピッチに入ったのが後半38分だったため、日本人選手対決となるかどうかはわかりませんけどね。現在、エイバル、エルチェ、ウエスカ、バジャドリー、アラベスの5チームで争っている1部残留の戦いも、月曜の試合ではアスレティックに0-1で4位のセビージャが負け、首位まで勝ち点差6と少し開いたものの、4チームに可能性がある優勝争い同様、目が離せなくなってきました。

え、それで彼らと交代で表舞台への返り咲きを狙っているのが、昨季降格した2部の弟分、レガネスなんだろうって?その通りで日曜は私もブタルケに応援に行ったんですけどね。前節、アルコルコンとの兄弟分ダービーで0-2の勝利に貢献する先制点を挙げた柴崎岳選手も2試合連続で先発していたんですが、4位の彼らのすぐ下、5位につけるスポルティング・ヒホンの前にゴールを入れられなかったんです。後半18分に柴崎選手のいい位置から撃ったヘッドも決まらず、スコアレスドローで終わってしまったのはちょっと残念だったかと。こちらもあと5試合で直接昇格のできる2位のマジョルカまでは勝ち点差9。こうなると真剣に6月のプレーオフまで決着が長引くことを覚悟しないといけませんが、どうにも最近はスタジアムにチームバスをお出迎えに来るファンもあまりいなくてねえ。

大体がして、せっかくラ・リーガが残り4試合もしくは2試合で人数制限をした有観客試合を提案したにも関わらず、保健省のOKがもらえず、やっぱり今季は最後まで無観客になりそうなのがいけないんですよ。実際、昇格や降格が懸かった大事な試合は選手たちだって、スタンドの声援を受けたら、もっと頑張れるんじゃないかと思うのは、きっと私だけではないはず。とはいえ、昨今ではオランダでアヤックスが、イタリアではインテルがリーグ優勝を決め、現地ではコロナ禍などまるで存在しないかのように大勢のサポーターがお祝いに集結。凄い騒ぎになっている映像を見たりすると、結局、サッカーファンはこうなるから、1部2部のスタジアムには観客を入れたくないのかと穿ってしまいますが、果たしてどうなることやら。そうそう、月曜にサダベル戦だったマドリッド2部のもう1つの弟分、ラージョは0-2で負けて、7位に後退。あちらもプレーオフ出場圏の6位以内で終われるといいのですが。

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