あれこれ考えず、今は勝つしかない…/原ゆみこのマドリッド

2021.04.30 21:30 Fri
「完全に厄年だわね」そんな風に私が同情していたのは木曜日、カルバハルがCL準決勝チェルシー戦1stレグで今度は右のハムストリングスを負傷。全治3週間で今季残り試合の出場がほぼ絶望的になったとニュースで知った時のことでした。いやあ、レアル・マドリーの押しも押されぬレギュラー右SBである彼はこのシーズン、アザール程の注目は浴びていなかったものの、復帰してはまた離脱を繰り返し、たったの15試合しか、出場しておらず。最後のケガから戻ったのも3試合前のカディス戦で、続くベティス戦にもチェルシー戦にもフル出場していないというのにまたケガとは、当人はもとより、来週水曜のチェルシー戦2ndレグを始め、今週末のオサスナ戦など、優勝が懸かったリーガ5試合、一体、どうやってやりくりする?

いえ、ここは腹を括って、控えのオドリオソラを使えばいいという意見もあると思いますけどね。ただ、彼はあまり強敵との対戦では信頼されていないようで、ジダン監督はカルバハルの不在中、もっと前でプレーしていたルーカス・バスケスを右SBに起用。その彼もクラシコ(伝統の一戦)の後、今季中には戻れないケガをしてしまったため、CL準々決勝リバプール戦2ndレグではバルベルデを当てていましたが、そのウルグアイ人MFも現在、コロナ感染で自宅隔離中ですからね。一応、土曜でその期間が終わる予定とはいえ、いきなり当日夜の試合に出られるのかは不明ですし、ようやくチーム練習に加わることができたセルヒオ・ラモスが先発できれば、マルチDFのナチョを回すことができるといっても、彼にはメンディが戻るまで、左SBとしても需要があったりと、何ともまあ、ややこしい。

ちなみにカルバハルの長期欠場は3月のW杯予選で右SBを1人しか招集しなかった、ルイス・エンリケ監督率いるスペインにもユーロ開幕が6月に迫っているため、結構、打撃だったりするんですが、まずは先に今週のCLチェルシー戦がどうだったか、お伝えしていくことにすると。実はとうとう私もドシャ降りのエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)を体験したんですよ。ええ、これまでエイバル、バルサ、ベティス戦と週末リーガのホームゲームで立て続けに大雨に見舞われていたマドリーだったんですが、幸い、私はバル(スペインの喫茶店兼バー)観戦だったため、まあ大変ね、ぐらいでお気楽に眺めていたものでしたけどね。
その水曜もスタジアムに着く前から、空には黒い雲が立ち込め、雷鳴も聞こえていたため、いつ来るのか、いつ来るのかと、ドキドキしていたんですが、先に嵐を巻き起こしたのはチェルシーの選手たちでした。ええ、キックオフから積極的に攻めに出て来た相手は開始9分、プリシッチからパスを受けたヴェルナーがフリーでシュート。やられたと思った瞬間、GKクルトワが足でparadon(パラドン/スーパーセーブ)して、事なきを得たんですが、それって、「ボクは脚が長いし、足も大きいから」(クルトワ)で済む話?

とはいえ、今度は14分、リュディガーの放り込んだボールをエリア内でプリチッシが受けた時には、うーん、どうして周りに味方がいなかったんでしょうね。それでゴールから出て来て、相手からボールを奪えると思ったクルトワもちょっと早計でしたが、見事にかわされ、正面からのシュートがバランに当たって入ってしまったから、さあ大変!だってえ、そこまでマドリーは完全に相手に押されていたんですよ。
とはいえ、これには内心、アトレティコが16強対決でチェルシーに負けたのは、シメオネ監督のチームが弱かったのではなく、向こうが本当に強かったからなのかと納得がいったりしたんですが、その頃ぐらいからでしょうか。ピッチに大量の雨が降り注ぎ、ベンチ裏のスタンドに座る両チームの控え選手たちも屋根の庇が届く、段の上の方にゾロゾロ移動してきたのは。幸い、風はなかったため、私も濡れずにすみましたが、こうまで雨に祟られた試合ばかりとなると、先日、コリセウム・アルフォンソ・ペレスでヘタフェと0-0で引き分けた兄弟分ダービーで、ピッチがとても乾いていたとマドリーの選手たちが文句を言っていたのも当然だった?

でも大丈夫。29分には頼みの綱、ベンゼマがやってくれました。ええ、マルセロのクロスをカセミロ、ミリトンがヘッドで繋ぎ、当人も頭で落とした後、volea(ボレア/ボレーシュート)で同点ゴールを決めてくれたから、助かったの何のって。ただねえ、後半序盤にはエリア外からのシュートを枠に当てるなど、奮闘した彼も勝ち越し点を挙げることはできず。一旦は止んだ雨が再び激しく降りだす中、ビニシウスに代わって、ピッチに入ったアザールも古巣相手に決定的な働きはできませんでしたしね。ヴェルナー、プリシッチの両FWを一気にツィエク、ハヴァーツに代えたチェルシーも後半はプレーのテンポを緩めたせいか、あまり大した出来事もなく、試合は1-1で終わってしまいましたが、うーん、これって…。

そう、ジダン監督も「チェルシーは16試合無失点のチームで、それがわかる試合だった。Están en semifinales por algo/エスタン・エン・セミフィナレス・ポル・アルゴ(準決勝にいるだけの理由がある)」と言っていたんですけどね。この冬、ランパード監督から、トゥーヘル監督に代わった後、3人CB制で守備を固めた彼らから、ゴールを奪うのは至難の業。いえ、アトレティコが2試合共、無得点だったのは当時、イギリス勢がコロナ感染予防規制でスペインに入国できず、1stレグのホームゲームをブカレストで戦わなければならなかったのはともかく、初戦でスコアレスドローを目指して、0-1で負けてしまったのが元凶の自業自得でもあるんですけどね。このスコアだと、マドリーも来週水曜のスタンフォード・ブリッジで絶対、点を取らないと、5月27日、イスタンブールで行われる決勝に行けないじゃないですか。

それでも「前半で勝つべきだった。ウチは勝負をつけることができだのだから」とトゥーヘル監督が悔やんでいたように、翌日、パリでマンチェスターシティに1-2と逆転負けを喰らい、エティハド・スタジアムで2点を取らないといけなくなったPSGよりはマシではあるんですけどね。とはいえ、4月はCL準々決勝でリバプールと2試合、翌週は平日リーガ、そしてこのチェルシー戦とまったくミッドウィークに休みがなかったマドリーは選手の疲労も並大抵のものではなし。例のカルバハルの件はともかく、とりわけ30代のモドリッチ、クロースなどはかなり限界に近づいているそうで、一応、ジダン監督は「Vamos a gestionar los minutos de los jugadores/バモス・ア・ヘスティオナール・ロス・ミヌートス・デ・ロス・フガドーレス(選手たちのプレー時間を調整する)」と宣言していましたけどね。

要はこの土曜午後9時(日本時間翌午前4時)から、2試合前のバレンシア戦勝利で勝ち点40に到達。残留見込みゾーンに入ったオサスナをディ・ステファノに迎える試合ではローテーションを行うということでしょうが、さて。ゴールという点においては、マリアーノはあまり頼りならないため、ベンゼマを休ませるのも難しいでしょうし、同時にジダン監督はラモスの試し運転なども考えないといけないですからね。逆にもうプレッシャーのないアラサーテ監督のチームの方がノビノビ、有利に戦えるかも。ちなみにこのカード、1月には暴風雨フィロメナ襲来の中、大雪のエル・サダルで0-0と引分けているんですが、今度はどちらかがゴールを入れてくれることを期待しています。

え、私がお隣さんの話を書いているうちに、実はアトレティコの首がつながったんだろうって?いやあ、その通りで、木曜には先日、コパ・デル・レイ決勝により、後送りにされていたグラナダ戦があり、バルサがメッシのゴールで先制しながら、マチス、ホルヘ・モリーナの2点で逆転負けするという、奇跡的な結末に。前節、アスレティックに負け、勝ち点差2を広げられなかっただけに、もう首位陥落は確定。来週末、カンプ・ノウでの直接対決で勝つ以外、リーガ優勝への道はないと、おそらくアトレティコの選手たちも覚悟を決めていたはずですが、これで状況が少々、好転したんです。

といっても引き分けでも良くなったぐらいで、マドリーも同じ勝ち点差2の2位ですから、とにかく土曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)からのエルチェ戦では勝っておかないといけないのは同じなんですけどね。ここ4試合連続、アウェイで勝ち点を失っている彼らだけに、相手が降格圏の18位にいるとはいえ、決して楽観はできないんですが、まあ、こんな天からの恵みなど、滅多にあるもんじゃなし。今はいい方に考えないといけないかと。

そう、シメオネ監督のチームは前節にルイス・スアレス、ジョアン・フェリックス、レマルが負傷から戻り、出場停止だったヒメネスも処分が終わって、全員が遠征に参加可能。こちらはCLが16強対決で終わって以来、ほぼ週1ペースが続いているため、平日の練習ではマルコス・ジョレンテやコケら、レギュラーメンバーも交代でジムごもりなどで調整しているため、お隣さん程、疲れが溜まっていないのが強みでしょうか。マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場では今週、スアレルとコレアの前線を試していたようですが、誰が先発となっても残り5試合、もう2度と、眠ってピッチに上がるような失敗はしないでほしいところです。

そしてヘタフェは日曜午後4時15分から、ラ・セラミカでビジャレアルと対戦なんですが、相手は木曜にEL準決勝アーセナル戦1stレグをプレー。来週木曜にもロンドンで2ndレグがあるため、余力がなくなっているだろうという予想を立てていたんですが、トリゲーロスとアルビオルのゴールで前半に2点リードしたエメリ監督のチームは敵の反撃を後半のPK1点に抑え、2-1と先勝。こうなるとリーガで選手を温存するかどうか、微妙なところですが、8位のグラナダがバルサに勝ったせいで、7位のビジャレアルとの差も勝ち点4になってしまいましたからね。

実はコパ優勝チームに与えられるEL出場権はバルサがCL出場権をリーガで得るため、今季は6位に回り、7位は来季から始まるヨーロッパ第3の大会、コンフェレンスリーグに参加。未だに得体のしれない大会とはいえ、こうなるとリーガでももう負けられない?現在、6位のベティスとの差も勝ち点1だけとあって、ビジャレアルには勝利を求める動機しかないように思えますが、それは前節のウエスカ戦でエネス・ウナルが2ゴールを挙げ、ようやく8試合ぶりの白星を挙げたヘタフェも同じかと。

まだ残留見込みの勝ち点40には6ありますし、ラジオから伝わってきた話によると、リーガの残り4節、または2節は現敵的有観客試合になるかもしれないようですしね。となると、37節のレバンテ戦辺りでは、サポーターに来季も1部でマドリッド第3のチームとして、頑張るヘタフェの姿を見せたいところですが…木曜には保健大臣がまだ当分、スタジアムにファンを入れることは考えられないと会見で話していたため、やっぱり今季は最後まで無観客なんですかね。

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