ESL構想はあっけなく崩壊/六川亨の日本サッカー見聞録
2021.04.23 20:35 Fri
「大山鳴動して鼠一匹」ではないが、欧州スーパーリーグ(ESL)構想はたったの1~2日で崩壊したようだ。
このESL構想、過去にも何度か創設が噂に上ったものの、いずれも消滅してきた歴史がある。例えは古いが詐欺の口実に使われる「M資金(第二次世界大戦後、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が占領下の日本で接収した財産などを基に、現在も極秘に運用されていると噂される秘密資金)」のようなものだ。
古くは1998年頃からESLの構想はあった。「強豪同士の試合を増やせばスタジアムは満杯になる」というビッグクラブのオーナーの発想で、それは今も変らない。そこでUEFAは各国のカップ戦の勝者が戦うカップ・ウィナーズ・カップを廃止して、CL(チャンピオンズ・リーグ)の出場チームを24から32に増やし、イングランドやイタリア、スペイン、ドイツといった実績のある国には出場権を4クラブに増やした。
しかしこの時も具体的な参加チームなどが発表されるわけではなく(クラブからの参加の意思表示はなく)、ペレス会長のかけ声倒れに終わった。
そんなESL構想が、今回は12クラブが参加を表明したのは、ひとえにコロナ禍の影響に他ならないだろう。Jリーグは制限があるとはいえ有観客で試合を開催しているが、ヨーロッパの主要リーグはいまなお無観客だ。このため入場料収入はもちろんのこと、飲食やレプリカユニホームなどの物販からの収入もない。
にもかかわらず、選手とスタッフには賃金を払い、試合運営のための経費もかかる。昨年10月、バルセロナは約250億円の減収により、最終的に約120億円の赤字になったとAFP(フランス通信社)が報じていた。おそらく他のビッグクラブも似たような財政事情だろうし、現状では放映権料の引き上げ交渉も難しいだろう。
そのためのESL構想だったが、今回はファン・サポーターが「NO」の意思表示をしたことで、クラブも考えを改めざるをえなかったのではないだろうか。なぜなら彼を抜きにクラブの存続はありえないからだ。これはこれで、サッカー界にとって健全なリアクションではないだろうか。
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イングランド・プレミアリーグのアーセナル、チェルシー、リバプール、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、トッテナムの6クラブ、スペインのレアル・マドリー、バルセロナ、アトレティコ・マドリーの3クラブ、そしてセリエAのユベントス、インテル、ミランの3クラブが参加して創設される予定だったESL。しかし創設の発表直後からUEFA(欧州サッカー連盟)とFIFA(国際サッカー連盟)はもちろんのこと、各国FA(協会や連盟)と各クラブの監督や選手、著名なOB選手、ファン・サポーター、さらにイングランドでは政界も巻き込んでの大ブーイングが起こった。その結果、イングランドの6クラブは早々にESLからの離脱を表明。そしてインテルとミラン、アトレティコも6クラブに続き撤退を表明している。古くは1998年頃からESLの構想はあった。「強豪同士の試合を増やせばスタジアムは満杯になる」というビッグクラブのオーナーの発想で、それは今も変らない。そこでUEFAは各国のカップ戦の勝者が戦うカップ・ウィナーズ・カップを廃止して、CL(チャンピオンズ・リーグ)の出場チームを24から32に増やし、イングランドやイタリア、スペイン、ドイツといった実績のある国には出場権を4クラブに増やした。
次に創設が噂されたのは2010年のこと。今回と同様にレアルのフロレンティーノ・ペレス会長が創設を訴えた。彼曰く、「The best always play the best」(強豪は、いつも強豪と戦う)と、CLから脱退して欧州4大リーグの上位チームによる欧州スーパーリーグ構想をぶち上げた。
しかしこの時も具体的な参加チームなどが発表されるわけではなく(クラブからの参加の意思表示はなく)、ペレス会長のかけ声倒れに終わった。
そんなESL構想が、今回は12クラブが参加を表明したのは、ひとえにコロナ禍の影響に他ならないだろう。Jリーグは制限があるとはいえ有観客で試合を開催しているが、ヨーロッパの主要リーグはいまなお無観客だ。このため入場料収入はもちろんのこと、飲食やレプリカユニホームなどの物販からの収入もない。
にもかかわらず、選手とスタッフには賃金を払い、試合運営のための経費もかかる。昨年10月、バルセロナは約250億円の減収により、最終的に約120億円の赤字になったとAFP(フランス通信社)が報じていた。おそらく他のビッグクラブも似たような財政事情だろうし、現状では放映権料の引き上げ交渉も難しいだろう。
そのためのESL構想だったが、今回はファン・サポーターが「NO」の意思表示をしたことで、クラブも考えを改めざるをえなかったのではないだろうか。なぜなら彼を抜きにクラブの存続はありえないからだ。これはこれで、サッカー界にとって健全なリアクションではないだろうか。
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