決勝を考えるのには早いけど…/原ゆみこのマドリッド

2021.04.17 21:15 Sat
©Atlético de Madrid
「またスペイン勢でヨーロッパの王座を独占できるかもしれないのね」そんな風に私が思いを馳せていたのは金曜日、前夜のEL準々決勝では残念ながら、グラナダがオールド・トラフォードでも2-0と連敗。やはりマンチェスター・ユナイテッドとの格の違いには抗えなかったか、予選2回戦から、延々と戦ってきた大会をとうとう後にしたものの、ビジャレアルの方はディナモ・ザグレブにラ・セラミカでも2-1と勝ち、準決勝(4/29、5/6)でアーセナルを負かせば、5月26日にポーランドのグダニスクで行われる決勝が待っていることに気づいた時のことでした。いえ、彼らには、ペジェグリーニ監督(現ベティス)が率いていた2006年のCL準決勝でアーセナルに2試合合計1-0で屈し、夢の決勝進出を逃した苦い過去があるのは知っているんですけどね。

もう1つの準決勝、マンチェスター・ユナイテッドvsローマ戦で前者が勝てば、決勝ではレアル・ソシエダ(16強対決で4-0負け)、グラナダのリベンジもできますし、いえ、まだ5月29日、トルコのイスタンブールで開催されるCL決勝共々、その大一番に観客が入れるのかどうかはわからないんですけどね。そこは無理でも、セビージャでEL3連覇の経験があるウナイ・エメリ監督のチームが優勝して、水曜にCL準決勝進出が決めたレアル・マドリーも3年ぶりに大好きなトロフィーを掲げることができたらなら、8月のUEFAスーパーカップもマドリッドの両雄が争った2018年以来のスペイン勢対決に。さすがその頃ともなると、ヨーロッパ諸国のコロナワクチン接種もかなり進んでいるでしょうしね。となれば、北アイルランドのベルファストで開催される試合にファンが応援に行くのも可能になるのでは?
いやあ、スペイン国内では今はまだ、6月のユーロですら、グループリーグ3試合が行われるはずだったサン・マメス(アスレティックのホーム)のあるビルバオ市の規制緩和基準が高くて、UEFAの主張するキャパの20~30%の有観客試合を実施するのがほぼ不可能な見込み。セビージャ(スペイン南部)のカルトゥーハに代えてもらえるよう、サッカー協会があの手この手を尽くしているところなんですけどね。リーガの方もいつから観客を入れるといった話はほとんど聞かなくなっていて、今季はこのまま終わってしまいそうな気配も漂っているんですが、まあ、それはそれ。今は先にマドリーのCL準決勝2ndレグがどうだったか、お伝えしていくことにすると。

ちなみに同じアンフィールドでも、リバプールファンがスタジアム入りするチームバスのお出迎えをして、公道でbengala(ベンガラ/発煙筒)を焚くぐらいしかできず、場内には入れず。アトレティコの昨季CL16強対決2ndレグでTV越しでさえ、伝わってきた熱気などまったくなく、1stレグのエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)とは比べものにならない程、スタンドが広いのも逆に寒々しさを強調することに。それでも1週間前の試合を3-1で負けていたクロップ監督のチームは立ち上がりから、ゴールを挙げようと猛攻撃。前半2分には早くもGKクルトワが、「いつもなら、目を閉じてても決めている」(クロップ監督)という、サラーの至近距離シュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)で弾き、窮地を脱していましたが、更に彼は10分にも自慢の長身を生かし、ミルナーのミドルシュートも枠外に逸らしてくれたから、助かったの何のって。

前半のうちはまだ、クラシコ(伝統の一戦)で受けた打撲の腫れが足に残っていながら、痛み止めを打ち、カルバハル、ルーカス・バスケスの負傷で穴の開いた右SBに、本職のオドリオソラを差し置いて、抜擢されたバルベルデが不慣れだったせいでしょうか。他にもサラーやワイナルドゥムのフリーのシュートが外れるなど、ドキリとするシーンが多かったマドリーですが、まあ、相手が得点しない限り、この日は頑張って攻撃に出る必要性もありませんでしたからね。後半も初っ端からフィルミーノがガンガン狙ってきましたが、照準悪く、マドリーのゴールネットを揺らすことはできず。逆に20分にはビニシウスがGKアリソンに迫ったものの、こちらも弾かれてしまったため、結局、最後はマドリーが全員守備で凌ぎ、スコアレスドローで突破を決めることになりましたっけ(2試合合計3-1)。
え、あの景気の良かった1stレグのせいもあって、スカッとしたゴールを期待していたのに裏切られた気がするって?うーん、クルトワなども「Veniamos de dos partidos muy duros y quiza nos falto algo de fisico/ベニモス・デ・ドス・パルティードス・ムイ・ドゥーロス・イ・キサ・ノス・ファルトー・アルゴ・デ・フィシコ(ウチはハードな2試合をこなした後で多分、フィジカル的に何か欠けていたんだろう)」と言っていたんですけどね。この日も後半途中でクロースが代わらないといけなかったり、30代多めの固定メンバーには体力的にも大変な1週間だったかと思いますが、ジダン監督によると、このリバプール戦2ndレグでは、「Terminamos físicamente mucho mejor que contra el Barcelona/テルミナモス・フィシカメンテ・ムーチョ・メホール・ケ・コントラ・エル・バルセロナ(フィジカル的にバルサ戦よりずっといい感じで終われた)」のだとか。

クロップ監督も「今日、負けたのではなく、もうマドリッドでの対戦で負けていた。ウチは得点できず、マドリーの経験が勝利を導いた」と言っていましたが、やはり2試合制では、1stレグで余裕勝ちしておくのが一番ですよね。その辺は16強対決の1stレグ、ホーム扱いのブカレストでのチェルシー戦で0-0狙いの戦いをして、結局、0-1で敗戦。スタンフォード・ブリッジでの2ndレグで逆転することのできなかったアトレティコなど、重々、見習ってほしいところなんですが、皮肉にもマドリーの準決勝の相手もそのチェルシーに。ポルトとの準々決勝を2試合合計2-1で勝ち上がった彼らを4月27日にはディ・ステファノに迎えることになりますが、もう1つの準決勝がPSGvsマンチェスター・シティであることを考えると、マドリーが優勝を狙うには願ったり叶ったりのクジ運だったかも。

まあ、それはまだ先の話で、この1週間、レギュラーCBのセルヒオ・ラモスとバランを欠きながら、リバプールとの2試合、そしてクラシコをナチョとミリトンの2人で無事に乗り切ったジダン監督のチームはこの週末のリーガ戦、更なる試練に直面するんですよ。ええ、土曜の午後9時30分(日本時間翌午前4時30分)から、バルサとアスレティックの今季コパ・デル・レイ決勝がカルトゥーハであるため、この33節はその2チームの含まれる2試合を除いた、残り8試合が日曜開催となるんですが、金曜のPCR検査で隔離期間の10日間が過ぎながら、まだバランがコロナ陽性だったから、さあ大変!というのも日曜午後9時(日本時間翌午前4時)から、コリセウム・アルフォンソ・ペレスであるヘタフェとの兄弟分ダービーではナチョが累積警告で出場停止となるから。

要はトップチームのCBがミリトンしかおらず、普通に考えれば、カンテラーノ(RMカスティージャの選手)のチュストが入るしかないんですけどね。バルベルデの右SBで意表を突いたジダン監督となれば、3CB制で入ったことのある、左SBメンディを使ったりすることもありうる?まだラモス、カルバハル、ルーカス・バスケスらは戻れませんし、クラシコで退場したカセミロも出場停止となると、今回もスタメンのやりくりが大変になりそうですが、相変わらず、予測ができないのはアザール。もう1週間以上、チーム練習に加わっているものの、リバプール遠征には呼ばれませんでしたし、このヘタフェ戦の招集リストに入るかどうかもわかりませんが、攻撃陣にはベンゼマ、ビニシウス、アセンシオ、ロドリゴ、マリアーノ、イスコと余裕があるのは羨ましいところかと。

逆にここ5試合で3分け2敗とまた、白星なし生活に戻ってしまった弟分はとにかく、ゴールが入らないのが悩みの種。それだけに兄貴分の守備弱体化を利用できるか、微妙なところなんですが、朗報は先日の各国代表戦週間にコロナ感染して、今週まで、トルコから戻って来られなかったウナル・エネルがチームに合流したこと。一応、これでマタ、アンヘルに加えて、FWが1人、増えましたしね。CBチャクラも出場停止処分を終えたため、ボルダラス監督も今季絶望のクーチョとカバコ以外、全戦力を使えることになるんですが…現在、降格圏と勝ち点差4の15位というポジションを改善するには、来週木曜のバルサ戦と合わせて、ここ2試合はあまり最適な機会とは言えないかもしれません。

そして日曜には午後4時15分(日本時間午後11時15分)から、一時は勝ち点10~12差の絶対首位、今では2位マドリーに1差、3位バルサも2差、とうとう4位のセビージャにも6差と迫られてしまったアトレティコもエイバル戦をワンダ・メトロポリターノで迎えるんですが、いやあ、彼らも弟分に負けないぐらいのゴール不足でねえ。そこへエースのルイス・スアレスの負傷に続き、前節ベティス戦で足首をネンザしたジョアン・フェリックスも全治10日間と、またしてもゴールをコレアに期待するという、怖いことになっているんですが、せめてもの慰めは出場停止処分の終わったマルコス・ジョレンテの復帰と、3月の各国代表戦期間中の練習で気を失って以来、ずっと別メニューだったFWデンベレがようやく出場できそうなことぐらいでしょうか。

何せ、今季はシーズンのスタートがずれたせいか、延期試合があったりしたせいか、最近はホームとアウェイが交互にやって来ず。セビージャ遠征が2週続いた後、最下位のエイバル、来週木曜は16位のウエスカと、下位チームとの待ち望んでいた貴重なホームゲームが続きますからね。その後はアスレティック、エルチェ、バルサとアウェイ3連発になるため、乾貴士選手や岡崎慎司選手には悪いんですが、ここで勝ち点をフルに稼げないようでは、とてもアトレティコにリーガ優勝など、目指す資格はないかと。ちなみに今年は1月最初の試合に勝って以来、13試合白星なしという不調に陥っているエイバルでは、3月にスペインA代表に初招集されたブライアン・ヒルがマドリー戦でのケガがまだ治らず、欠場の予定。CLの重荷からはすでに解放されているアトレティコだけに、体力だけは十分あるはずなんですが、果たして3試合ぶりの勝利は掴めるのでしょうか。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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