まさかこんな三つ巴になるとは…/原ゆみこのマドリッド
2021.04.13 18:40 Tue
「もうCLで気を紛らわせるしかないか」そんな風に私がもやっとした気分を抱えていたのは月曜日、この先、リーガ戦があるたび、上位3チームの順位がコロコロ変わる可能性があることに気がついた時のことでした。いやあ、ほんの2カ月前ぐらいまでは後続に勝ち点10だか、12だかの差をつけて、絶対首位の座を誇っていたアトレティコだったんですけどね。ここ10試合程、トロトロしていたところ、あっという間に貯金が雲散霧消。今では1、2、3位の間が1ポイントずつという有様となれば、ミッドウィークはCL準々決勝を見て、スペイン勢唯一の生き残りであるレアル・マドリーを応援するという、現実逃避をしたくなってもムリはない?
ちなみに先週の1stレグではエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)にリバプールを迎え、ビニシウスのdoblete(ドブレテ/1試合2得点のこと)とアセンシオのゴールでマドリーが3-1と快勝。相手は今年になって、じわじわとアンフィールドが無観客なのが効いてきたか、ライプツィヒに勝ったブタペスト(ハンガリー)の代替会場、プシュカス・アレナでのCL16強対決2ndレグを除き、ホームで1勝もしていなかったんですが、先週末のアストン・ビラ戦でようやく2-1で勝利と若干、remontada(レモンターダ/逆転突破)への期待を抱かせる結果を出すことができたよう。
一方、ジダン監督のチームは土曜のクラシコ(伝統の一戦)で新たに負傷者が発生。それも未だに復帰のメドが立たないカルバハルの代役として、立派に右SBを務めていたルーカス・バスケスが左ヒザ裏靭帯を痛め、全治1カ月半、即ち、今季の復帰はほぼ絶望となってしまい、マルチDFのナチョもセルヒオ・ラモスのふくらはぎのケガ、バランのコロナ感染で、CBから動かすことができず、オドリオソラを使うしかありませんからね。もう1週間以上、普通にチーム練習をしているものの、アザールもイギリス遠征の招集リストには入らず、一応、同行するバルベルデもバルサ戦で受けた打撲から回復するか、わからないとあって、不安要素もなくはないんですが、でもこのチーム、大事な試合には滅法強いのが売り。というのも…。
またしてもそれが証明されたのが先週末のリーガ戦で、いえ、マドリッド勢の先陣を切った弟分のヘタフェは再び、ドツボにはまり込んでしまったんですけどね。ええ、コリセウム・アルフォンソ・ペレスでのカディス戦、久保建英選手が先発なのを知り、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に駆け込んだ私だったんですが、序盤にマタのチャンスなどはあったものの、両チーム共、前半は得点できず。後半6分には、「Es un cambio táctico/エス・ウン・カンビオ・タクティコ(戦術的な交代だ)。マタが前線で孤立していて、パートナーが必要だった」(ボルダラス監督)という理由で、久保選手もアンヘルに代えられてしまったんですが、悲劇が起きたのはその後、19分のことでした。
いや、もう間の悪さもここまで来ると処置なしと言いますか、エスピノがゴール前に入れたラストパスは味方のつま先に届かなかったものの、GKダビド・ソリアも触れられず、反対サイドに来ていた、その日は即興CBを務めていたティモルの胸に当たって、そのままゴールに入ってしまうとは。もちろん、残り時間で得点できなかったヘタフェが、ボルダラス監督も「A la falta de acierto, no hay mucho que analizar/ア・ラ・ファルタ・デ・アシエルルトー、ノー・アイ・ムーチョ・ケ・アナリサル(決定力不足。他にあまり分析することはない)」と言っていた通り、情けないんですけどね。オウンゴールによる痛恨の0-1負けが、次は日曜にマドリーとの兄弟分ダービー、来週木曜にはバルサ戦とハードな試合が控えている彼らにとって、大打撃だったのは間違いないところかと。
そして土曜の夜、再び、近所のバルに戻ってみると、おや、珍しい。最近はCLの夜ですら、空きテーブルの多かった店内がほぼ満席で、ちょっと3密が心配になってしまった私だったんですが、もうこれは仕方ないですよね。勝った方が首位に立つという、競った状態でのクラシコとなれば、誰だって、ひいきのチームを応援したくなるものですが、多数派だったマドリーファンが沸くまでにあまり時間はかからなかったかと。ええ、先日のリバプール戦のスタメンから、アセンシオに代わって入ったバルベルデがドリブルで上がり、右サイドのルーカス・バスケスへパス。そこからのクロスをベンゼマがアラウホを背にtaconazo(タコナソ/ヒールキック)でシュートして、見事な先制点を挙げたんですが、まったく。
こういうプレーを見ると、ジダン監督が「Esto es calidad, talento.../エスト・エス・カリダッド、タレント(あれが質の高さ、才能というもの)。ベンゼマには凄い才能がある」と褒めていたのも納得できるあと。それにしても最近のクーマン監督のお気に入りの3CB制を敷きながら、その日のバルサは何度もカウンターの餌食に。27分など、エリア近くでファールを犯し、そこからクロースが蹴ったFKがデストの背中に当たって軌道を変えると、ゴールライン上でジョルディ・アルバがクリアしようとしたのも空しく、マドリーに2点目が入ったとなれば、もう大船に乗った気でいていい?丁度、その後ぐらいから、バルデベバス(バラハス空港の近く)には先週のエイバル戦同様、ゲリラ豪雨が襲来。ブスケツに突っ込まれたルーカス・バスケスがオドリオソラに交代して前半が終わり、ハーフタイム明けにはとんでもないドシャ降りとなることに。
その頃にはもう、私のいたセントロ(市内中心部)にも雨雲が到着していたんですが、ゲームの方も後半14分にはジョルディ・アルバの左からのパスを、後半から入ったグリーズマンは飛び上がってスルーしたものの、後ろにいたミンゲサが足に当ててゴールに入れ、2-1と風雲急を告げることに。前半はルーカス・バスケスが上手くコントロールしていたジョルディ・アルバを逃したことで、カセミロがオドリオソラに雷を落とす映像が後々、出回っていたため、そこにちょっとリバプール戦への懸念が沸いたりもするんですが、勇気ありますよ、ジダン監督は。その日はビニシウスが先日の決定力をリピートできず、追加点が入らなかったにも関わらず、27分にはベンゼマ、ビニシウス、クロースを一気にマリアーノ、イスコ、マルセロにチェンジ。
それこそ38分、ブライトワイテがメンディに押されてエリア内右奥で倒れたプレーがPKにされていたら、大変なことになっていたはずですが、大丈夫。ヒル・マンサーノ主審はVAR(ビデオ審判)にも頼らず、スルーしてくれたため、1分間隔でイエローカードを続けざまに出され、カセミロが退場となった後のロスタイムの4分間、いえ、最後はGKテア・シュテーゲンも加わった全員攻撃で、カンテラーノ(バルサBの選手)イリアスのシュートがゴールバーに弾かれるなど、ヒヤリとさせられたんですけどね。メッシなど、震えが止まらず、終盤にユニフォームのシャツを着替える程、びしょ濡れの選手たちが寒さに苦しんだ試合を何とか、マドリーは逃げ切ることができましたっけ。
え、そんな悪天候の中、ケガが治って、滑り込みで招集リストに入り、先発を匂わせながら、結局はずっとスタンド観戦していたピケがわざわざピッチに下りて、主審の文句を言っていたのはよっぽど、腹に据えかねたんじゃないかって?そうですね、記者会見で文句を言っていたクーマン監督同様、PKスルーの件とロスタイムが短かったことに不満があったようですが、丁度、すれ違って握手していたモドリッチが、「A rajar ahora, ¿eh?Pero cuántos minutos quieres!/ア・ラハール・アオラ、エ?ペロ・クアントス・ミヌートス・キエレス(今になってゴネるのかい?でも何分、欲しかったんだよ)」と、ピシャリと言ってくれたのに胸がすっとしたマドリーファンは意外と多かったかも。
まあ、バルサにはこの土曜、アスレティックとの今季のコパ・デル・レイ決勝でタイトルを獲るチャンスがすぐ訪れますし、リーガだって、まだまだ到達範囲ですからね。そこまで大騒ぎすることじゃないと思いますが、ちょっと怖いのは、ジダン監督も「No sé cómo vamos a acabar la temporada, físicamente estamos al límite/ノー・セ・コモ・バモス・ア・アカバル・ラ・テンポラーダ、フィシカメンテ・エスタモス・アル・リミテ(今季がどんな風に終わるか、わからない。ウチはフィジカル的に限界点にいるからね)」と言っていたように、どこまでマドリーの選手たちがもつかの方。今のチームを支えているベンゼマ、クロース、モドリッチらは軒並み30代とあって、水曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのリバプール戦2ndレグまでにしっかり、回復してくれるのか、不安ではありますが…タレントがあれば、そんなこと、気にしなくていい?
いやあ、今回、私が妙に才能にこだわってしまうのは、翌日のアトレティコの試合の影響もあって、出場停止で尚且つ、負傷のリハビリ中でもあるルイス・スアレス、チーム2番目のゴールゲッターであるマルコス・ジョレンテを欠いていたシメオネ監督はベティス戦でコレアとジョアン・フェリックスをツートップとして配置。何と、前半5分には前節の出場停止から戻って来たカラスコが始めたプレーから、ジョアンがコレアにスルーパス。コレアはゴール右前で敵DFとぶつかって倒れてしまったんですが、GKクラウディオ・ブラボも釣られて出て来ていたのが幸いしました。ええ、転がったボールをカラスコがガラ空きのゴールに押し込んで、お隣さんから1日天下の首位を奪い返す先制点を挙げてくれたから、嬉しかったの何のって。
とはいえ、その喜びが続いたのもたった15分間程のことで、20分にはアレックス・モレノのクロスをワンタッチでテジョに撃たれ、スコアは1-1の同点に。おまけにまるで前日のルーカス・バスケスのデジャブのように、前半終了直前にシュートしようとしたジョアンがマンディにタックルされて足首を痛め、一応、後半開始の笛の音はピッチの上で聞いたものの、3分も経たないうちにトレイラと交代する破目になるって、一体、どこまで祟られているんでしょう。それからのアトレティコはプレーのスピードが異様に遅くなり、うーん、土曜にマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に私が見学に行った時には素早く、正確なパスができるよう、全員で取り組んでいたんですけどね。試合となると、敵選手がいるのがネックになるのか、まるでボールロストを恐れるようにトロトロやっていては、いつになったら、敵エリアに迫ることができるのやら。
それどころか、先週は得点のオプションを増やすため、特訓していたらしいセットプレーも不発。挙句の果てにはテジョに背中をヒザ打ちされたトリッピアーもベルサイコに交代と、ますます勝ち越し点が望めない状況になっていったんですが…いよいよ45分、千載一隅のチャンスを得たコレアがエリア内から撃ったシュートはGKブラボがセーブ。ロスタイムにも彼は詰めてきたブラボにボールを弾かれ、そのこぼれ球をフリーだったビトロもゴールとは全然、違う方向に蹴っているとは、ホント、どうしていいのやら。いやあ、実はコレアは前節のセビージャ戦でも同点のチャンスでGKボノに弾かれていて、スアレス=ゴール不在の危機にシメオネ監督はこの1週間、セッションの後、彼だけ残して、シュートの特訓をさせていたそうなんですけどね。
折しも試合前の記者会見で決定力は練習で改善できるのかと訊かれ、シメオネ監督が「できるが、それでも1シーズンに25から30本入れる選手と5本しか入らない選手がいる。Ahí están las diferencias entre unos futbolistas y otros/アイー・エスタン・ラス・ディフェレンシアス・エントレ・ウノス・フトボリスタス・イ・オトロス(そこにサッカー選手の差がある)」と言っているのを聞いていたため、やっぱり、年間8得点が上限で、大体、5本ぐらいのコレアは後者の部類に入るんじゃないかと思った次第でしたが、いやあ。20才と成長盛りのビニシウスなど、だんだん、練習の成果が出てきているように見えるものの、コレアはもう26才、アトレティコ6年目ですからね。
アシストは今季10本と他のことでは貢献しているものの、ゴールの責任を負わせるのはムリな気がしますが、それでもベティスと1-1で引き分けた後のシメオネ監督は「今はゴールが入らない時期なだけで、このまま続ければ、きっと入るようになる。La vida es trabajo y trabajo y un día paga/ラ・ビダ・エス・トラバッホ・イ・トラバッホ・イ・ウン・ディア・パガ(人生は努力、努力で、いつかきっと報われる)」と楽観的。そうなればいいと、私もアトレティコのために願っていますが、何せ、チームで一番、才能があると言われているジョアンは軽傷の期待も空しく、ネンザで次のエイバル戦には出られなさそうですからね。いくら相手が先週末、最下位に落ちた不調のチームとはいえ、ジョレンテが戻ってくることぐらいで、何とかなるのかどうか。
もうここまで悪い話が続くと、このベティス戦での朗報は、この勝ち点1のおかげで、「Seguimos líderes que al final es lo más importante en el día de hoy/セギモス・リデレス・ケ・アル・フィナル・エス・ロ・マス・インポルタンテ・エン・エル・ディア・デ・オイ(結局、ウチは首位のままで、それが今日、一番大事なこと)」(コケ)ぐらい。確かに2014年には、根性で才能に勝るお隣さんやバルサを押しのけて、リーガ優勝を遂げたアトレティコですから、それを経験している、現チームで唯一の選手であるキャプテンが、「メンタル的に強くいられれば、皆が手に入れたい目標を達成することができるはず」と精神論に傾いてしまうのもわからなくはないんですが…再び、努力で夢が叶えられることを世間に証明できるのか、ホント、正念場となる残り8試合です。
ちなみに先週の1stレグではエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)にリバプールを迎え、ビニシウスのdoblete(ドブレテ/1試合2得点のこと)とアセンシオのゴールでマドリーが3-1と快勝。相手は今年になって、じわじわとアンフィールドが無観客なのが効いてきたか、ライプツィヒに勝ったブタペスト(ハンガリー)の代替会場、プシュカス・アレナでのCL16強対決2ndレグを除き、ホームで1勝もしていなかったんですが、先週末のアストン・ビラ戦でようやく2-1で勝利と若干、remontada(レモンターダ/逆転突破)への期待を抱かせる結果を出すことができたよう。
一方、ジダン監督のチームは土曜のクラシコ(伝統の一戦)で新たに負傷者が発生。それも未だに復帰のメドが立たないカルバハルの代役として、立派に右SBを務めていたルーカス・バスケスが左ヒザ裏靭帯を痛め、全治1カ月半、即ち、今季の復帰はほぼ絶望となってしまい、マルチDFのナチョもセルヒオ・ラモスのふくらはぎのケガ、バランのコロナ感染で、CBから動かすことができず、オドリオソラを使うしかありませんからね。もう1週間以上、普通にチーム練習をしているものの、アザールもイギリス遠征の招集リストには入らず、一応、同行するバルベルデもバルサ戦で受けた打撲から回復するか、わからないとあって、不安要素もなくはないんですが、でもこのチーム、大事な試合には滅法強いのが売り。というのも…。
いや、もう間の悪さもここまで来ると処置なしと言いますか、エスピノがゴール前に入れたラストパスは味方のつま先に届かなかったものの、GKダビド・ソリアも触れられず、反対サイドに来ていた、その日は即興CBを務めていたティモルの胸に当たって、そのままゴールに入ってしまうとは。もちろん、残り時間で得点できなかったヘタフェが、ボルダラス監督も「A la falta de acierto, no hay mucho que analizar/ア・ラ・ファルタ・デ・アシエルルトー、ノー・アイ・ムーチョ・ケ・アナリサル(決定力不足。他にあまり分析することはない)」と言っていた通り、情けないんですけどね。オウンゴールによる痛恨の0-1負けが、次は日曜にマドリーとの兄弟分ダービー、来週木曜にはバルサ戦とハードな試合が控えている彼らにとって、大打撃だったのは間違いないところかと。
こんな状態では、もう1つの兄貴分の援護射撃を期待するなんて、とてもできないんですが、それでも残り6試合ありますからね。ヘタフェには希望を捨てずに現在、15位で降格圏まで勝ち点4という位置をキープしていくよう願うばかり。とはいうものの、第5足中骨の骨折でクーチョが今季絶望となった中、エネス・ウナルも代表戦期間中のコロナ感染でトルコからまだ戻れず、頼りのマタ、アンヘルがゴール運から見放されているというのはホント、辛いですよね。
そして土曜の夜、再び、近所のバルに戻ってみると、おや、珍しい。最近はCLの夜ですら、空きテーブルの多かった店内がほぼ満席で、ちょっと3密が心配になってしまった私だったんですが、もうこれは仕方ないですよね。勝った方が首位に立つという、競った状態でのクラシコとなれば、誰だって、ひいきのチームを応援したくなるものですが、多数派だったマドリーファンが沸くまでにあまり時間はかからなかったかと。ええ、先日のリバプール戦のスタメンから、アセンシオに代わって入ったバルベルデがドリブルで上がり、右サイドのルーカス・バスケスへパス。そこからのクロスをベンゼマがアラウホを背にtaconazo(タコナソ/ヒールキック)でシュートして、見事な先制点を挙げたんですが、まったく。
こういうプレーを見ると、ジダン監督が「Esto es calidad, talento.../エスト・エス・カリダッド、タレント(あれが質の高さ、才能というもの)。ベンゼマには凄い才能がある」と褒めていたのも納得できるあと。それにしても最近のクーマン監督のお気に入りの3CB制を敷きながら、その日のバルサは何度もカウンターの餌食に。27分など、エリア近くでファールを犯し、そこからクロースが蹴ったFKがデストの背中に当たって軌道を変えると、ゴールライン上でジョルディ・アルバがクリアしようとしたのも空しく、マドリーに2点目が入ったとなれば、もう大船に乗った気でいていい?丁度、その後ぐらいから、バルデベバス(バラハス空港の近く)には先週のエイバル戦同様、ゲリラ豪雨が襲来。ブスケツに突っ込まれたルーカス・バスケスがオドリオソラに交代して前半が終わり、ハーフタイム明けにはとんでもないドシャ降りとなることに。
その頃にはもう、私のいたセントロ(市内中心部)にも雨雲が到着していたんですが、ゲームの方も後半14分にはジョルディ・アルバの左からのパスを、後半から入ったグリーズマンは飛び上がってスルーしたものの、後ろにいたミンゲサが足に当ててゴールに入れ、2-1と風雲急を告げることに。前半はルーカス・バスケスが上手くコントロールしていたジョルディ・アルバを逃したことで、カセミロがオドリオソラに雷を落とす映像が後々、出回っていたため、そこにちょっとリバプール戦への懸念が沸いたりもするんですが、勇気ありますよ、ジダン監督は。その日はビニシウスが先日の決定力をリピートできず、追加点が入らなかったにも関わらず、27分にはベンゼマ、ビニシウス、クロースを一気にマリアーノ、イスコ、マルセロにチェンジ。
それこそ38分、ブライトワイテがメンディに押されてエリア内右奥で倒れたプレーがPKにされていたら、大変なことになっていたはずですが、大丈夫。ヒル・マンサーノ主審はVAR(ビデオ審判)にも頼らず、スルーしてくれたため、1分間隔でイエローカードを続けざまに出され、カセミロが退場となった後のロスタイムの4分間、いえ、最後はGKテア・シュテーゲンも加わった全員攻撃で、カンテラーノ(バルサBの選手)イリアスのシュートがゴールバーに弾かれるなど、ヒヤリとさせられたんですけどね。メッシなど、震えが止まらず、終盤にユニフォームのシャツを着替える程、びしょ濡れの選手たちが寒さに苦しんだ試合を何とか、マドリーは逃げ切ることができましたっけ。
え、そんな悪天候の中、ケガが治って、滑り込みで招集リストに入り、先発を匂わせながら、結局はずっとスタンド観戦していたピケがわざわざピッチに下りて、主審の文句を言っていたのはよっぽど、腹に据えかねたんじゃないかって?そうですね、記者会見で文句を言っていたクーマン監督同様、PKスルーの件とロスタイムが短かったことに不満があったようですが、丁度、すれ違って握手していたモドリッチが、「A rajar ahora, ¿eh?Pero cuántos minutos quieres!/ア・ラハール・アオラ、エ?ペロ・クアントス・ミヌートス・キエレス(今になってゴネるのかい?でも何分、欲しかったんだよ)」と、ピシャリと言ってくれたのに胸がすっとしたマドリーファンは意外と多かったかも。
まあ、バルサにはこの土曜、アスレティックとの今季のコパ・デル・レイ決勝でタイトルを獲るチャンスがすぐ訪れますし、リーガだって、まだまだ到達範囲ですからね。そこまで大騒ぎすることじゃないと思いますが、ちょっと怖いのは、ジダン監督も「No sé cómo vamos a acabar la temporada, físicamente estamos al límite/ノー・セ・コモ・バモス・ア・アカバル・ラ・テンポラーダ、フィシカメンテ・エスタモス・アル・リミテ(今季がどんな風に終わるか、わからない。ウチはフィジカル的に限界点にいるからね)」と言っていたように、どこまでマドリーの選手たちがもつかの方。今のチームを支えているベンゼマ、クロース、モドリッチらは軒並み30代とあって、水曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのリバプール戦2ndレグまでにしっかり、回復してくれるのか、不安ではありますが…タレントがあれば、そんなこと、気にしなくていい?
いやあ、今回、私が妙に才能にこだわってしまうのは、翌日のアトレティコの試合の影響もあって、出場停止で尚且つ、負傷のリハビリ中でもあるルイス・スアレス、チーム2番目のゴールゲッターであるマルコス・ジョレンテを欠いていたシメオネ監督はベティス戦でコレアとジョアン・フェリックスをツートップとして配置。何と、前半5分には前節の出場停止から戻って来たカラスコが始めたプレーから、ジョアンがコレアにスルーパス。コレアはゴール右前で敵DFとぶつかって倒れてしまったんですが、GKクラウディオ・ブラボも釣られて出て来ていたのが幸いしました。ええ、転がったボールをカラスコがガラ空きのゴールに押し込んで、お隣さんから1日天下の首位を奪い返す先制点を挙げてくれたから、嬉しかったの何のって。
とはいえ、その喜びが続いたのもたった15分間程のことで、20分にはアレックス・モレノのクロスをワンタッチでテジョに撃たれ、スコアは1-1の同点に。おまけにまるで前日のルーカス・バスケスのデジャブのように、前半終了直前にシュートしようとしたジョアンがマンディにタックルされて足首を痛め、一応、後半開始の笛の音はピッチの上で聞いたものの、3分も経たないうちにトレイラと交代する破目になるって、一体、どこまで祟られているんでしょう。それからのアトレティコはプレーのスピードが異様に遅くなり、うーん、土曜にマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に私が見学に行った時には素早く、正確なパスができるよう、全員で取り組んでいたんですけどね。試合となると、敵選手がいるのがネックになるのか、まるでボールロストを恐れるようにトロトロやっていては、いつになったら、敵エリアに迫ることができるのやら。
それどころか、先週は得点のオプションを増やすため、特訓していたらしいセットプレーも不発。挙句の果てにはテジョに背中をヒザ打ちされたトリッピアーもベルサイコに交代と、ますます勝ち越し点が望めない状況になっていったんですが…いよいよ45分、千載一隅のチャンスを得たコレアがエリア内から撃ったシュートはGKブラボがセーブ。ロスタイムにも彼は詰めてきたブラボにボールを弾かれ、そのこぼれ球をフリーだったビトロもゴールとは全然、違う方向に蹴っているとは、ホント、どうしていいのやら。いやあ、実はコレアは前節のセビージャ戦でも同点のチャンスでGKボノに弾かれていて、スアレス=ゴール不在の危機にシメオネ監督はこの1週間、セッションの後、彼だけ残して、シュートの特訓をさせていたそうなんですけどね。
折しも試合前の記者会見で決定力は練習で改善できるのかと訊かれ、シメオネ監督が「できるが、それでも1シーズンに25から30本入れる選手と5本しか入らない選手がいる。Ahí están las diferencias entre unos futbolistas y otros/アイー・エスタン・ラス・ディフェレンシアス・エントレ・ウノス・フトボリスタス・イ・オトロス(そこにサッカー選手の差がある)」と言っているのを聞いていたため、やっぱり、年間8得点が上限で、大体、5本ぐらいのコレアは後者の部類に入るんじゃないかと思った次第でしたが、いやあ。20才と成長盛りのビニシウスなど、だんだん、練習の成果が出てきているように見えるものの、コレアはもう26才、アトレティコ6年目ですからね。
アシストは今季10本と他のことでは貢献しているものの、ゴールの責任を負わせるのはムリな気がしますが、それでもベティスと1-1で引き分けた後のシメオネ監督は「今はゴールが入らない時期なだけで、このまま続ければ、きっと入るようになる。La vida es trabajo y trabajo y un día paga/ラ・ビダ・エス・トラバッホ・イ・トラバッホ・イ・ウン・ディア・パガ(人生は努力、努力で、いつかきっと報われる)」と楽観的。そうなればいいと、私もアトレティコのために願っていますが、何せ、チームで一番、才能があると言われているジョアンは軽傷の期待も空しく、ネンザで次のエイバル戦には出られなさそうですからね。いくら相手が先週末、最下位に落ちた不調のチームとはいえ、ジョレンテが戻ってくることぐらいで、何とかなるのかどうか。
もうここまで悪い話が続くと、このベティス戦での朗報は、この勝ち点1のおかげで、「Seguimos líderes que al final es lo más importante en el día de hoy/セギモス・リデレス・ケ・アル・フィナル・エス・ロ・マス・インポルタンテ・エン・エル・ディア・デ・オイ(結局、ウチは首位のままで、それが今日、一番大事なこと)」(コケ)ぐらい。確かに2014年には、根性で才能に勝るお隣さんやバルサを押しのけて、リーガ優勝を遂げたアトレティコですから、それを経験している、現チームで唯一の選手であるキャプテンが、「メンタル的に強くいられれば、皆が手に入れたい目標を達成することができるはず」と精神論に傾いてしまうのもわからなくはないんですが…再び、努力で夢が叶えられることを世間に証明できるのか、ホント、正念場となる残り8試合です。
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