あと10試合で全てが決まる…/原ゆみこのマドリッド

2021.04.04 00:30 Sun
©Atlético de Madrid
「滅多にないタイトル獲得のチャンスとなれば、ファンだって応援したいわよね」そんな風に私が共感を示していたのは金曜日、コパ・デル・レイ決勝の地、セビージャ(スペイン南部)に移動するため、スビエタ練習場を出るレアル・ソシエダのチームバスを大勢のサポーターがお見送りしている映像をお昼のニュースで見た時のことでした。いやあ、折しも世間はセマナ・サンタ(イースター週間)の祝日でしたし、1日早く出発したバスク地方最大のライバル、アスレティックのファンもレサマ練習場周辺に8000人が詰めかけたなんて聞くと、いても立ってもいられない気分になるのはわかりますけどね。いまだ、スペインのコロナ流行は現在進行形中。

おかげで土曜午後9時30分(日本時間翌午前4時30分)から、1年遅れで開催される昨季のコパ決勝もカルトゥーハは無観客。セマナ・サンタ前後は州外への移動禁止措置も強化され、ビルバオ(スペイン北部、アスレティックのホームタウン)からも、サン・セバスティアン(同レアル・ソシエダ)からもサッカー観戦といった理由では行かれないため、せめてお見送りぐらいはと思ったファンが多かったんでしょうが、ちょっとその辺は2014年にレアル・マドリーがメスタジャ(バレンシアのホーム)でバルサを下して以来、決勝進出チームすら出ていないマドリッドのサッカーファンにとっては他人事。開催地のセビージャにしても去年に続き、今年もスペイン有数の年間行事であるprosecion(プロセシオン/キリストやマリアの像が載った神輿を担いで信者が練り歩く)が中止となってしまったこともあり、街頭インタビューで勝敗予想を訊かれていた地元の人々も適当に日和ってましたが、ま、私もそんな感じでしょうか。

とはいえ、1月のスペイン・スーパーカップでは、まさにそのカルトゥーハを舞台にマドリー、バルサを下して優勝。すでにガバラ(ビルバオの運河を航行した木材運搬船。1984年にアスレティックがリーガ優勝パレードに使って以来、博物館に格納されていた)の進水テストも終了し、まずはこの昨季の決勝、そして17日のバルサとの今季決勝と2回、優勝のチャンスがあるアスレティックの方が、丁度、水曜のスペイン代表戦でもGKウナイ・シモンとCBイニゴ・マルティネスがカルトゥーハでプレーして、そのままチームが到着するのをセビージャで待っていたりと、地の利があるような気がしなくもないんですけどね。もちろん、32年ぶりのコパ決勝となるレアル・ソシエダも頑張るはずですが、勝敗は時の運。スタンドは空でも、ピッチでは熱戦が繰り広げられることだけは間違いないんじゃないでしょうか。
え、それよりスペインの2022年W杯予選3戦目はどうだったかを知りたいって?そうですね、初戦でギリシャに1-1でドロー、2試合目のジョージア戦では後半ロスタイムにダニ・オルモ(ライプツィヒ)が挙げたゴールで1-2と勝利。かろうじて連続引き分けを逃れた彼らだったんですが、終わってみれば、最後のコソボ戦が一番、余裕があったような。ちなみにスタメン3連投となったのはGKウナイ・シモン、エリッグ・ガルシア、フェラン・トーレス(マンチェスター・シティ)、モラタ(ユベントス)の4人で、ビックリしたことにこの日もジョージア戦に続いて、キャプテンのセルヒオ・ラモス(マドリー)がベンチだったんですよ。

折しも前日にはポルトガル代表のルクセンブルク戦ハーフタイム前に、ジョアン・フェリックスが足首を痛めて交代したという報があったため、コケとマルコス・ジョレンテのアトレティコ・コンビがまた先発に戻っていたのはちょっと心配でしたが、ブスケツ、ジョルディ・アルバ、そしてデビュー戦途中出場での活躍が認められ、残り2試合でスタメン入りした18才のペドリと、バルサ勢も全員出場。よって、それ程、不公平感はなかったんですけどね。先制点が入ったのは前半34分と少々待たないといけなかったものの、この日もダニ・オルモが魅せてくれました。ええ、ジョージア戦同様、ジョルディ・アルバからパスを受けた彼がエリア内左から、見事なvaselina(バセリーナ/ルーップシュート)を決めちゃうんですから、大したものじゃないですか。
更にその2分後には、こちらも先日、殊勲の同点ゴールを挙げたフェラン・トーレスがセンターラインからペドリの出したスルーパスに追いつき、2点目をゲット。コソボはジョージアと違い、高速カウンターをかけてくる訳でもなかったため、これでほぼ勝負はついたように見えたんですが、いえいえ。まさか、後半25分、自陣エリアを出てクリアに行ったウナイ・シモンがハリミ(ザントハウゼン)にボールを取られ、その孤を描くシュートがゴールに入ってしまうって、大丈夫ですかあ?それでも昨年11月から、デ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)に代わる正GKとして抜擢した、彼への信頼をルイス・エンリケ監督が失うことはなかったようですけどね。正直、その5分後、ようやく打撲が癒え、今回の代表戦で初のお勤めを果たすことができたジェラール・モレノ(ビジャレアル)が、コケの蹴ったCKを頭で3点目に変えてくれてなければ、終盤はもっと緊迫した展開になっていたかと。

そのまま試合は3-1で終わり、これでスペインは消化試合が1つ少ないスウェーデンを勝ち点1上回って、グループ首位に君臨。6月はユーロ準備の親善試合2つをこなした後、本大会が始まるため、W杯予選の方は9月までないんですが、その時にはまず、スウェーデンとの直接対決から再開することに。何ともまあ、わかりにくいことになっているのは、昨年の夏、開催する予定だったユーロ2020がコロナ禍のせいで、1年遅れになってしまったからなんですが、真剣勝負の公式戦を3つやったおかげで、ユーロに行く選手もかなり見えてきたかと。ええ、ルイス・エンリケ監督も今回の集まった24人に加え、現在、負傷や不調などで呼ばれなかった10人程の中から、最終的に23人(UEFAの決定で増える可能性あり)を選ぶことになりそうだと言っていましたっけ。

え、実はこの試合後にはとんでもない災難に見舞われた選手がいたんじゃないかって?その通りで、後半41分には、この日も「Es una decisión técnica/エス・ウナ・デシシオン・テクニカ(戦術的判断だ)。他の選手が出るべきと私が決めただけ」と、ルイス・エンリケ監督に温存されていたラモスがピッチに入れ、代表最多世界記録にあと4と迫る180試合出場にすることができたんですけどね。TVのインタビューを受けた後、そのまま、おとなしく着替えに行けば良かったところ、「tras el partido, me quedé entrenando sobre el terreno de juego y noté un pinchazo en el gemelo izquierdo/トラス・エル・パルティードー、メ・ケデ・エントレナンドー・ソブレ・エル・テレーノ・デ・フエゴ・イ・ノテ・ウン・ピンチャソ・エン・エル・ヘメロ・イスキエルドー(試合の後、ピッチに残って練習していたら、左のふくらはぎに鋭い痛みを感じた)」って、勤勉が裏目に出るとはまさにこのことでは?

そう、2月初旬に左ヒザ半月板の手術をしたラモスは、昨季はマンチェスター・シティ、その前はアヤックスとのCL16強対決2ndレグに出場できず、チームが敗退してしまったことに責任を感じていたんでしょうか。今季は絶対、アタランタとの2ndレグに間に合わせると超スピードでリハビリをして、実際、2連勝で準々決勝進出を遂げることができたんですけどね。その影響で、表向きは打撲と言ってはいるものの、paron(パロン/リーガの休止期間のこと)直前のセルタ戦を欠場し、代表でもギリシャ戦は前半だけ、ジョージア戦はスタンド観戦、コソボ戦は7分間の名誉出場という、スローペースにならざるを得ず、おまけに翌日、帰京して受けた検査では全治1カ月って、ちょっとお、マドリーは今、シーズンの山場を迎えているんですよ。

勝ち点差6で首位のお隣さんを追う中、もちろん、この土曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)からのエイバル戦には出られませんし、来週土曜のクラシコ(伝統の一戦、マドリーvsバルサ戦のこと)もアウト。それだけでなく、来週火曜のCLリバプール戦1stレグ、再来週の2ndレグにも出られないとあっては、さすがのジダン監督も頭がクラクラしているかもしれませんが、何せ、ラモスは今季いっぱいで切れる契約の延長交渉にもまだ合意できていませんからね。ホントに間の悪いことになってしまいましたが、一応、マドリーのいいニュースも伝えておくと。それは筋肉痛でドイツ代表の試合に出ず、早退してきたクロース、ベルギー代表の3試合目、ベラルーシ戦を背筋痛で休んだGKクルトワが回復したことで、土曜の出場に支障はなさそう。

実は3月中旬にチェルシーから移籍後、10回目の負傷をしたアザールも金曜にはバルデベバス(バラハス空港の近く)でのチーム練習に参加しているんですけどね。こちらはまだ招集リストに入れなかったんですが、オドリオソラとマリアーノが戻って来たため、少しは助けになるかと。ちなみに相手のエイバルにも負傷者は5人いて、武藤嘉紀選手もその1人なんですが、乾貴士選手はエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)に来る予定。今は降格圏の18位、年初のグラナダ戦以来、11試合白星なしという、大スランプ中のチームですが、今季はホームでカディスやアラベスに負けた黒歴史もあるマドリーだけに気を引き締めてかからないといけないですよね。

そして続いて、土曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からはマドリッドの弟分、ヘタフェがエル・サダルでオサスナに挑むんですが、実はトルコ代表に行っていたエネス・ウナルがケガをして帰って来るという逆境が。セルビア代表に行ったマクシモビッチも私的な理由で到着が遅れ、月曜にU24代表でアルゼンチンとの親善試合を日本でプレー。とっくに戻っているはずだった久保建英選手も金曜まで練習に合流してなかったりと、いえ、各国代表に招集された6人以外はこの2週間、じっくり調整できているんですけどね。相手のオサスナは勝ち点差1でヘタフェの1つ上の13位と、似たり寄ったりのところにいるため、結構、拮抗した戦いになりそうな。丁度、エースのマタが2試合の出場停止処分を終えて復帰しますし、ここはしっかり勝ち点3を獲得して、現在6差の降格圏から、もっともっと遠ざかってくれたらと思います。

そして日曜に首位防衛戦となるのが、いえ、2位のバルサともまだ勝ち点差4あるため、たとえ、午後9時(日本時間翌午前4時)から、サンチェス・ピスファンでセビージャに負けても今週末、アトレティコが追い抜かれるということはないんですけどね。一応、私も気になって、金曜には代表戦帰りの選手たちの様子を覗きにマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に行ってみたところ、足首のケガは軽傷と言われているジョアンはまだ、グラウンドに現れず。他はコケ、ジョレンテを始め、GKオブラク、サビッチ、トリッピアー、レマルらだけでなく、ウルグアイ代表には行っていないものの、またケガをして、しばらくジム調整となっていたヒメネスも元気に参加していたから、ホッとできたの何のって。

ちなみにジョアンに関しては、土曜のセッションでいい感触なら、招集リストに入るようですが、欠場確実なのは先週、コロナに感染して重症化した母親を見舞いに帰国したところ、まだ53才という若さにも関わらず、助からなかったというトレイラ。ショックでなかなか、マドリッドに戻って来られないようですが、すでにCL16強対決でチェルシーに敗退しているアトレティコにはミッドウィークの試合がありませんからね。来週日曜のベティス戦までに気を持ち直してくれればいいかと。とりあえず、この2回連続となるセビージャ遠征を終えれば、またワンダ・メトロポリターノでウエスカ戦となるアトレティコなんですが、残り10試合中アウェイが6つと多いのはバルサと同じ。比べてお隣さんには4試合しかないというのはちょっと、ハンデになるかもしれませんね。

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