久々に怖い思いをした…/原ゆみこのマドリッド

2021.03.31 21:30 Wed
©Atlético de Madrid
「アップするから問題になるのに」そんな風に私が呆れていたのは月曜日、セマナ・サンタ(イースターウィーク)直前の先週末から、スペインはコロナ予防策の一環で州をまたぐ国内移動を禁じていたにも関わらず、レアル・マドリーのマルセロがバレンシアのビーチでミニバケーションを楽しんでいたことについて、いえ、まあ、インターナショナルマッチウィークによるparon(パロン/リーガの停止期間)中、大抵の1部のチームが週末を練習休みにしてしまったせいもあったんでしょうね。代表戦以外の話題もなかったせいか、Estudio Estadio(エストゥディオ・エスタデイオ/スペイン国営放送のサッカー番組)で延々と議論をしているのを見た時のことでした。

うーん、コロナ禍が始まって以来、イロイロな規制があったものの、昨季の再開リーガ中に発覚したセビージャの選手たちによる制限人数オーバーのバーベキューにしろ、足がつくのは全て参加者のSNS投稿写真からで、いい加減、皆、学んでいるはずだと思うんですけどね。大体がして、普通の年なら、セマナ・サンタに旅行に行く庶民も多いんですが、ここ2年間は我慢をさせられているとあって、やっかみもあったか、インスタに写真を上げたマルセロはコメンテーターから、厳しく批判されることに。中には、「規制があることを彼が知っていたはずがない」という擁護の声もありましたが、何せねえ。

噂によると、バルサのクーマン監督もマルベジャ(スペイン南部のビーチリゾート)の別荘に行ったとかで、確かにこうも移動制限が続くと、見張っているはずの警官たちだって、ウンザリするのは当然。現在は以前程、空港などでの厳しいドキュメントチェックなどないそうで、要は軍資金と行動力さえあれば、バケーションに出るのも簡単のよう。といっても、夜間外出禁止が始まる午後11時以降にレガネス(マドリッドの衛星都市)から、試合観戦の後、セルカニアス(国鉄近郊路線)に乗って市内に戻って来るのさえ、ビクビクしていたような小市民の私など、マドリッドの外に出る勇気もなく、気温がかなり上がって、すでに海水浴客さえいる、全国各地のビーチの様子をTVで眺めているしかないんですが…。
まあ、そんなことはともかく、スペイン代表のW杯予選2試合目がどうだったか、お話ししていくことにすると。先週は木曜の初戦でギリシャと1-1で引き分けた後、翌日にはジョージアのトビリシ入り。夜には会場となるボリス・パイチャーゼ(ディナモ・トビリシのホーム)で前日練習を行った彼らだったんですが、今時、珍しいこともあるんですね。開始から30分程でスタジアムの電気系統にトラブルが発生し、セッションが中断。それどころか、ロッカールームにも灯りがなく、選手たちはスマホの懐中電灯を頼りにシャワーを浴びないといけなかったとなれば、ま、最近はリーガ戦の後なども、スペインではロッカールームの使用制限があるため、そのまま、ビジターチームはホテルに戻ってシャワーを浴びるのが慣習化していますからね。よって、そんなに大袈裟に騒ぐこともないんですが、これをジョージア側の嫌がらせと取る向きもなきにしろあらずだったかと。

幸い試合当日は照明も復活し、無事にキックオフとなったんですが、まず驚かされたのは、ルイス・エンリケ監督の大々的なローテーション。ええ、ギリシャ戦のスタメンから大量7人を入れ替え、リピートしたのがGKウナイ・シモン(アスレティック)、モラタ(ユベントス)、フェラン・トーレス、エリック・ガルシア(マンチェスター・シティ)だけというのも凄いんですが、そのせいもあるんですかね。先日は「自分の代表戦で守備的に一番いい試合だった」というルイス・エンリケ監督のチームは、その強みを失ってしまった感も。そう、ずっと自陣に閉じ込められていたギリシャとは違い、サニョル監督(DFとして2000年代にバイエルン、フランス代表で活躍)率いるジョージアは速攻カウンターができるんですよ。
最初のヒヤリは前半18分、この時はCKからのヘッドをGKウナイ・シモンがparadon(パラドン/スーパーセーブ)してくれたため、難を逃れることができたんですが、44分、とうとうクワランヘリア(ルビン・カザン)に先制点を決められてしまった日には、スペインがあまりにゆったりボールを回しているのに瞼が重たくなっていた私も一気に目が覚めましたよ。さすがにこれはマズいとルイス・エンリケ監督も思ったか、1-0で始まった後半頭からはこの日、エリック・ガリシアとCBコンビを組んでいたディエゴ・ジョレンテ(リーズ)をイニゴ・マルティネス(アスレティック)に、ギリシャ戦でただ1人、スペイン代表の未来を照らす光を垣間見せ、初スタメンに抜擢されたブライアン・ヒル(セビージャからのレンタル移籍でエイバルでプレー)をダニ・オルモ(ライプツィヒ)に代えて、反撃を目指すことに。

すると11分、ファビアン・ルイス(ナポリ)もチアゴ・アルカンタラ(リバプール)に代わった後に同点ゴールが生まれます。何故か、昨年9、10,11月のネーションズリーグ中には1度も招集されなかったジョルディ・アルバ(バルサ)が左サイドから送ったラストパスをゴール正面にいたモラタは逃してしまったものの、右側から駆けつけたフェラン・トーレスがシュート。これが決まって、ひとまずホッとすることができたんですが、それから、なかなか勝ち越し点が入らなくてねえ。更なる攻撃力アップを狙って、ルイス・エンリケ監督も19分には、この日が代表デビューとなった右SBペドロ・ポロ(スポルティングCP)をマルコス・ジョレンテ(アトレティコ)へと代え、27分にはブスケツ(バルサ)をオジャルサバル(レアル・ソシエダ)へと、アタッカーを増やしていったんですが…。

いやもう、通常の90分を過ぎた時には私も冷や汗もの状態になっていて、何せ同日、グループ最大のライバル、スウェーデンがコソボに0-3で勝って2連勝。スペインがこのまま、2試合で勝ち点2に留まったら、そう、W杯に直接出場できるのは各グループ首位チームだけですからね。2位の10チームとネーションズリーグ上位として回ってくる2チームを合わせた12国が3グループに分かれ、準決勝、決勝の2試合戦って、3チームが選出される、いつやるんだかもよくわからない、2006年W杯予選以上に面倒なプレーオフに巻き込まれる破目に陥るかもしれないと、ドキドキしてしまったんですが、大丈夫。

天啓はロスタイム2分にやって来て、ジョルディ・アルバからパスをもらったオルモが、いやあ、その試合ではキャパの30%強の1万8000人の地元サポーターが賑やかに応援していて、後でルイス・エンリケ監督も「El público juega un papel a favor del equipo rival/エル・プブリコ・フエガ・ア・ファボール・デル・エキポ(観客も相手チームを有利にする役目を果たした)」と愚痴っていたんですけどね。それでも「Desde el banquillo y desde el campo los compañeros me animaban a tirar/デスデ・エル・バンキージョ・イ・デスデ・エル・カンポ・ロス・コンパニェロスメ・アニマバン・ア・ティラール(ベンチやピッチにいたチームメートから、シュートするようにけしかけられた)」(オルモ)のが聞こえたそうで、エリア外から狙ったところ、そのボールがGKロリア(アノルトシス・ファマグスタ)の手を弾いて決勝点となってくれるんですから、本当にラッキーだったかと。

おかげで1-2の土壇場逆転勝利を挙げたスペインだったんですが、ランキング係数が近いチームを集めたネーションズリーグはともかく、メジャー国際大会の予選って、こんなに苦労するものでしたっけ?ちなみにこの試合でも確認できたのは、ギリシャ戦同様、ボールは支配してもゴールがなかなか入らない、今のスペインの「No estábamos tan lúcidos como habitualmente/ノー・エスタバモス・タン・ルシドス・コモ・アビチュアルメンテ(ウチはいつものようには冴えてなかった)」(ルイス・エンリケ監督)という状態なんですが、それより目を引いたのは、スペイン代表戦最多出場記録を更新中、今は世界記録に並ぶのを目指しているセルヒオ・ラモス(レアル・マドリー)に出場機会がなかったこと。

いえ、ルイス・エンリケ監督は「Su suplencia fue una decisión técnica/ス・スプレンシア・フエ・ウナ・デシシオン・テクニカ(彼が控えだったのは戦術的判断)」と、ラモスの健康状態にお墨付きを与えていましたけどね。よくよく考えれば、先発したエリック・ガリシアとディエゴ・ジョレンテは所属チームであまりプレーしていませんし、イニゴ・マルティネスにはペナルティやらかし癖の疑いが。やはりスタンドでフル観戦となったコケ(アトレティコ)などはともかく、ラモスは得点源にもなれる選手なんですから、それって、やっぱり、2月初旬の手術から、CL16強対決アタランタ戦2ndレグに超特急で間に合わせたツケが出ているのでは?

代表週間入り直前のカディス戦も欠場していましたし、チームがトビリシから帰国、セビージャ(スペイン南部)入りした翌日、火曜には35才のバースデーもチームメートに祝ってもらっていますからね。単に水曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からのコソボ戦で、ご当地選手となるための温存だったら良いのですが、さて。どちらにしてもルイス・エンリケ監督のスタメンは読みにくいので、丁度、5チーム編成のグループで今回はスウェーデンがお休み。首位を奪って、9月、11月に再開される予選後半戦を迎えるには最適なコソボ戦に誰が出るのかはよくわからないんですが、去年最後の試合となった、それこそカルトゥハでのドイツ戦6-0勝利程ではなくとも、ゴールをもっと入れて、あまりファンをハラハラさせない試合展開になってほしいです。

そして、招集免除された南米系の選手がいるため、いつもより少ないとはいえ、やはり相当数、各国代表へ出張しているマドリッドの両雄クラブについては、とにかく全員揃うのは木曜以降になりますからね。今はさらっとだけ触れておくと、土曜にエイバル戦を控えているマドリーは月曜からバルデベバス(バラハス空港の近く)で練習を再開。朗報は、アザール程ではないにしても、今季はとかくケガに悩まされているカルバハルが合流したことで、何せ、CL準々決勝生き残り唯一のスペイン勢である彼らはこの先、2週間、リバプール戦2試合がミッドウィークに入って、かなりハードスケジュールになりますからね。

ベルベルデは無理そうですが、ドイツ代表を早退してきたクロース、リハビリ総仕上げ中のオドリオソラ、マリアーノらも復帰が近いようなので、今は何より、新たな負傷者を発生させないことが大事かと。それに関しては現在、3位のマドリーと勝ち点差6で首位を行く、お隣さんも同じなんですが、1日遅れで日曜のセビージャ戦の準備を始めたアトレティコではまだ、先週、貧血でセッション中に倒れたデンベレとこちらも筋肉系の故障が今季は慢性化しているヒメネスが個別調整中。それはまあ、いいとして、各国代表参加組では火曜の夜、ようやく3試合目のルクセンブルク戦で先発出場させてもらったジョアン・フェリックス(ポルトガル)がハーフタイム間際、足首を痛めて交代するという、バッドタイミングこの上ないニュースが。

うーん、まだ程度の方はわからないんですけどね。早い時間帯ではGKオブラクがキャプテンを務めるスロベニアがキプロスに1-0で負けるという波乱もあり、アトレティコの守護神が落ち込んでいないか、心配になったりもしたんですが、もうこうなると水曜の代表戦最終日は誰もケガせず、終わってくれることを祈るばかり。そうそう、火曜のU21ユーロ本大会グループリーグでは、マドリッドの弟分ヘタフェのククレジャの出番はなかったものの、ダニ・ゴメス(レバンテ)の2ゴールでスペインはチェコに2-0と勝利。グループ首位突破を果たして、これもコロナ禍で1年延期されたせいで、かなり変則的なんですが、6月に行われる決勝トーナメントの準々決勝進出を決めることに。

まだ残留確実圏に入っていないヘタフェのボルダラス監督にしてみれば、久保建英選手を始め、6人の各国代表選手が土曜のオサスナ戦でプレーできる状態で戻って来てくれるのを心待ちにしているはずかと。それにしてもコロナ禍で遅れた日程を取り戻すため、今季から始まった代表ウィークで3試合というのは、ケガの危険も前より1試合分増大。とりわけ、リーガが佳境に入ってきた3月などは、ちょっと避けてもらいたかったかもしれませんね。

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